その瞳の先に   作:天星

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 前回までのあらすじ!

 私のラブレターもどきを見た響野さんがこれを基に作曲するとか言い出した。

 え? 流石に冗談だよね? 冗談じゃなかったとしてもどこかで正気に戻ってくれるよね?

 

 

 

 という訳で翌日、生徒会室。

 皐月先輩は流石に今日は来ていなかったので純粋な生徒会メンバーが集まっての曲発表だ。

 もう響野さんったら。結局自力で作曲したんだね~。あはははは~……

 ……現実逃避しててもしょうがない。没になる事を祈ろう。いや、通るに越した事は無いんだけどさ。

 そんな矛盾した期待を抱えながら曲を聞く。

 

 

「よし決定。これでいこう」

 

 曲を聞き終えた彼の発言である。

 そっかー。これで決定かー。反対派の人も居なそうだしこれで決定ぽいねー。

 

「ところで、歌詞を基に作曲すると聞いていたが、歌詞は?」

「はい、これ」

「ほぅ……なるほどなぁ……」

 

 めちゃくちゃすまし顔で見てるけど脈を測ったらきっと心拍数が上がっているに違いない。後で問い詰めてやろう。そうじゃないと割に合わない。

 

「……これを学校賛歌の歌詞にするのはちと厳しくないか?」

「だよね!? そう思うよね!?」

「しかし、曲が良いのも事実……ん? 次のページのコレは?

 賛歌の歌詞としては結構模範的だと思うが」

「ああ、そっちはボツ。気持ちが乗ってないって」

「……だったら曲はさっきのを採用して歌詞はこっちを採用すれば良い。

 少々強引だが、歌詞の作者は同じなんだ。何とかなるだろ」

「あっちの歌詞自体をボツにするのは大賛成だけど……そんな事できるの響野さん?」

「…………ちょっと難しい。けど不可能じゃない」

「できるの!?」

「歌詞に合わせてちょっと曲を手直ししてみる。やってみる」

「最初の曲調は崩さないように……って指摘は釈迦に説法か。頼んだ」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 その後、無事に賛歌は完成した。

 彼や皐月先輩の確認も終わって後は全校生徒に向けた発表だけになる。

 ピアノを演奏するのは勿論響野さん。学校賛歌なのでピアノだけでもちゃんとした演奏になるように作曲されてるらしい。

 講堂に集めた生徒たちの前で演奏して終わり。

 ……そうなるはずだったのに……

 

「……どうして、こうなったんだろう」

「諦めろ。この賛歌は歌詞あっての曲であり曲あっての歌詞だ。

 ボーカルが居なければ魅力半減だぞ?」

「それは分からなくはないけど、何で私が単独で歌う事に?」

「いや、誰かが歌うならあんた以外有り得んだろ。頑張ってくれ作詞者」

「いやいや、せめて生徒会全員による合唱とか……」

「……はっ、その手があったか」

「気付かなかっただけなの!? じゃあ今からでも……」

「スマン、もう時間無い。別に武道館で単独ライブしろとか言ってる訳じゃないんだから我慢してくれ。

 別に人の前に立つのが嫌って訳じゃ無いんだろ?」

「それは……そうだけどさ」

「だったら後は作詞した歌詞を発表するだけ。言うなれば弁論大会みたいなもんだろ」

「…………いや、かなり違うものなんじゃないかなアレは」

「そうか?」

「そうだよ!!」

 

 いや、逆に考えよう。アレに比べたら大分マシだって。

 ……うん。アレに比べたら全然マシ。少しは気が楽になってきた。

 

「落ち着いたみたいだな。行ってこい」

「……うん。行ってくる」

 

 丁度タイミングよく私が入場する時刻になった。

 さっきは色々文句言ったけど、ちゃんと事前に練習はこなしている。さっきのは……アレだ。彼とのじゃれあいであり、緊張を取るためのルーティーンみたいなものだ。

 後は間違えずに歌いきるだけ。

 さぁ、歌おう。この学校を賛える為の歌を。

 

 

 

 

 さあ一歩 踏み出そう

 

 希望の花を 咲かせる為に

 

 叶える勇気 いつだって

 

 きっと誰かが 見てるから

 

 

 さあ音を 奏でよう

 

 希望を乗せて 願いを籠めて

 

 煌めく想い 映え渡れ

 

 旋律に乗せ 貴方へと

 

 

 

 

 響野さんのピアノの音が止む。

 

 静寂。

 

 そして、割れんばかりの拍手が私の耳に響いた。

 

 私は一礼をしてから舞台袖へと戻った。

 

 

 

 

 

「お疲れさん。流石はオレの彼女だ」

「都合の良い時だけそんな事言わないでよもう」

 

 ずるいよ。それが今一番嬉しい言葉だってちゃんと分かってるんだからさ。

 

「お疲れ様。立派だったわ。流石は生徒会長」

「いえいえ。皐月先輩だったらきっともっと上手く歌えてましたよ」

「ううん、そんな事無いわ。あの歌を歌えたのは、そして作れたのはあなただったからこそよ。

 私では、きっと無理だったわ」

「そうですかね? そう……かもしれませんね」

「そうよ。もっと胸を張って!」

「はい!」

 

 これまで皐月先輩と比べられる事は多々あったけど、上回ったと言われるのは初めてかもしれない。

 そう実感すると何だか凄く嬉しくなった。

 

「……音程が三箇所ズレてた」

「えっ、響野さん? ご、ごめん……」

「練習し始めの頃は十倍はズレてた。だから及第点」

「えっと……?」

「響野なりに褒めてるんだ。『ありがとう』って返事してやれ」

「え、あ、うん。ありがと」

「……ん」

 

 合っていたらしい。響野さん相手でもしっかりと翻訳できる彼は一体何者なんだろうか?

 それはそれだけ響野さんを理解してるって事で……ちょっと妬けちゃいます。

 

「さて響野。まずはおめでとうと言っておこう。

 あと、最初にボツにした時の事は謝らんぞ。アレは必要な事だった」

「……あの時の事は正直今思い出しても腹が立つけど、確かに必要だった事は認める」

「なら良かった。んじゃ、報酬の話をしよう。

 今回の作詞作曲の報酬である1000リッチ、そっちの要望通り現ナマで用意したぞ」

「ありがとう」

 

 当初の予定とは結構ズレた仕事になったと思うけど、それでも最初の契約通りの報酬が支払われる事となった。

 拘束時間が増えた分だけ増額する案もあったんだけど、響野さん自身が拒んだ事もあって特に増額はされなかった。

 

「銀行振り込みと比べてそれなりに面倒だったぞ? ただのフインキ出しとかの為だけに用意したんなら怒るぞ?」

「大丈夫。現金じゃないとダメだった理由があるから。それじゃ、はい」

 

 彼から響野さんに札束が手渡され、

 そして響野さんから私に札束が手渡された。

 ……はい?

 

「え? あの、何で私に?」

「今回の仕事は『作詞作曲』。そして詞を作ったのはあなた」

「いや、確かにそうだけどお金取るつもりでやったわけじゃないし。

 百歩譲って作詞の分は受け取るとしても作曲は響野さんだよね?」

「曲は詞から生まれてる。だから曲もあなたのもの」

「屁理屈じゃないの!? いやいや、要らないからお金なんて!」

「私だって要らない。今回の仕事はお金よりもとっても大事な経験を得られた。だから今回は要らない」

「いやいや」

 

 こんなの全く予想してなかったよ。誰か、って言うかキミが助けて欲しい。

 そう思って視線を投げかける……前に彼が動いた。

 

「響野、全額放棄する事は許さん。

 それは作曲者全てに対する侮辱であり冒涜だ」

「っ!」

「お前は他全ての同業者に対して『あなたがやっている事はちり紙以下の価値しか無い』と言うつもりか? それとも……」

「……それ以上は言わなくていい。ごめん、軽率だった。

 全額放棄する事は止める」

 

 良かった良かった。それじゃあ全部響野さんに……

 

「何を他人事みたいにしてるんだ。作曲者だけじゃなく作詞者にも同じ事が言えるぞ」

「えっ、いやでも私プロとかじゃないし……どっちかって言うと依頼者側だし……」

「生徒会が響野に仕事を発注して、響野が作詞を外注した形だろ?

 お前さんも生徒会としての活動じゃなくて個人の時間を使った活動だから報酬を受け取る権利と義務があるぞ」

「むぐぐ……あ、そうだ。作詞中は生徒会の活動は免除されてたし……」

「生徒会はそもそも非営利活動だから、休んだ分減給されるとかは無いな。

 ハハハ、口先の屁理屈でオレに敵うと思うたか」

「屁理屈って言い切った!? むぐぐぐぐ……」

 

 屁理屈かどうかは置いておいて、確かに勝てる気はしないし万が一勝てたとしても響野さんがまた拒み出す可能性も有り得る。

 私が頑なに拒んでるのもちょっとビックリしてるだけみたいなものだし……受け取った方が良いのかなぁ……

 

「……分かったよ。じゃあ半分だけ。これでも貰いすぎな気はするけど」

「響野、文句はあるまいな?」

「……採用された詞と、曲の基になった詞の事の二つの事を考えるともっと貰っても良いような気もするけど」

「こういう言い方もどうかと思うが、作詞よりも作曲の方がより専門性の高い知識が要求される代物だ。

 それに、生徒会に提出された詞は結局一つだけだろ。半分で妥当だと思うぞ」

「……分かった。じゃあ、500リッチだけ貰う」

 

 札束が半分に分けられてその片方だけが私に渡される。

 って言うか、ちゃんと二等分できるように帯で留められてたんだね。コレ用意したのは彼だから最初からこうなる事を読んでいたみたいだ。

 どこまで行っても彼の掌の上なのだろうか? いつか絶対超えてやる。

 

「……何に使おう。これ」

「とりあえず貯金しておけば良いんじゃね?」

「……そうだね」

 

 

 

 こうして、去年から続いた企画『学校賛歌を作ろう!』は無事に完了した。

 

「よし、次は校歌に取って代わるまで頑張らないとな」

「本気だったのアレ!?」

 

 この歌が今後どう使われるかは今後の生徒たちの意向次第だろう。

 アレが皆で歌われるのはちょっと恥ずかしい気もするけど……ちゃんと大事に使われる事を願うばかりだ。







 作文の労力:作詞の労力=50:50
 あんな短文だけど作詞はかなり苦労しました。どっかから持ってきたりした訳では無く完全に自作です。『作詞:天星』と堂々と書ける代物です。
 テキトーにぼかして進める案もあったけど、歌う場面が無いと何となくボヤっとしそうだし、彼女が慣れないながらも頑張った仕事を筆者が逃げるのも何か嫌だったのでやってみました。
 なるべく『ときメモ4』や『本作』に合わせて『才能の開花』『きらめき』『他人の視線』なんかを盛り込みつつ、1番と2番の歌詞の文字数を揃えたりと結構大変でした。
 結果はまぁあんな感じでしたが……うん、きっと響野さんの曲がめちゃんこ素晴らしかったんでしょう。


 曲作りの報酬の相場をテキトーに調べてみましたが30万程度とかいう記述がありました。
 勿論、場合によるし曲の長さとかも影響しそうですが……詳細に見積もりを出すのはかなり困難なので今回もその程度としておきます。
 ときメモラジオか何かで『1リッチ=300円』という証言があったような無かったような気がするので報酬は1000リッチとしておきます。
 クリスマスのスペシャルパーティーの10倍と考えるとかなり高額な気はしますが、あっちが1時間足らずの仕事の給金なのに対して作曲はそれなりの期間を要しているのでまぁ妥当でしょう。
 逆に原付が3万円と激安になりますが……深くは考えないでおきます。


 以上で響野里澄編、通称『賛歌イベント』を基にした話は終了となります。
 原作と違って本作は響野さんが恋愛している訳ではないので参加イベントを本来の流れで進めたら多分失敗するかなという妄想から生まれました。
 欠けている部分を彼女に埋めてもらって、逆に影が薄くなる彼は生徒会の一員として頑張ってもらいました。

 こういう別ヒロインの話をベースにした話はあと2つほど案があります。その気になればもうちょい増やせるかも。
 次に書くとしたらハルちゃん関係かなぁ。いつになるかは分かりませんが次回もお楽しみに。
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