その瞳の先に   作:天星

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一年目 二学期

 二学期が始まった。

 二年生は修学旅行があるらしいけど、今の私たちには関係のない話だ。

 

 それ以外でこの時期にある大きなイベントっていうと……やっぱり文化祭かな。

 私は帰宅部だからクラスの展示に少し参加するくらいだけど、文化部の人たちは忙しなく動いてるみたいだ。

 例えばつぐみとか。

 そして勿論、柳さんや例の彼も。

 

「なあなあ、放送部って文化祭だと何するんだ?

 展示はしてないよな?」

「ん? ああ。まぁ、基本的には放送だな。

 あと、他の部活の催し物で実況とかやったりするからその辺とかも」

「あ~、だから準備要るんだな」

 

 私も少しだけ気になっていた疑問は小林くんが代わりに尋ねてくれた。

 しかし色々と妙な部活だ。放送部って。

 

「化学部の郡山(こおりやま)先輩が結構な無茶振りしてくるから大変だよ。何か変なサプリの実験台にしようとするし」

「へ~……ってお前、郡山先輩と知り合いなのか!? あの大人っぽくてグラマラスで美人と噂の郡山先輩と!?」

「いやに説明口調だな。知り合いと言うか、あの人俺の事はただのモルモットとしか見てないぞ?

 健康的だからっていう理由だけで声かけられただけだし」

「そんだけで声掛けられたなら俺にだって掛けてくれてもいいじゃねぇかよ!!」

「いや、オレに言われてもな……」

 

 どうやら化学部の先輩と仲良くなってるらしい。

 へ~。ふ~ん……

 

「どうしたの? 怖い顔して」

「え? ううん、何でもないよ~」

 

 柳さんに心配されてしまった。一旦落ち着こう。

 

「と、ところで、放送部の準備は順調?」

「うん! うちにはエースが居るからね! バッチリだよ!」

「自称とかじゃなくて本当にエースになってたんだ……」

「うん。部長にはまだ敵わないみたいだけどね」

 

 何がどう敵わないんだろうか? 気になるような怖いような……

 ……放送部に入らなくてある意味正解だったのかもしれない。もし入ってたら今頃着いていけてなかった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、文化祭当日を迎えた。

 最初はクラスの出し物を少し手伝って……そして自由時間がやってきた。

 まずはつぐみの居る文芸部に顔を出して、その後は……どうしようかな。

 そんな事を考えながら歩いていたせいか、うっかり人とぶつかってしまった。

 

「うわっと、ごめんなさい」

「気にするな。そっちこそ怪我は……うん?」

「あれ?」

 

 顔を上げて目の前に居たのは、例の彼だった。

 放送部の仕事は……休憩中なんだろうか?

 

「こんな所で会うとは奇遇だな。今から休憩か?」

「うん。そっちも?」

「ああ。ついさっきだ。

 そうだ、良かったら一緒に文化祭を回ってくれないか?」

「うん。いいよ。

 …………え? わ、私と!? ど、どうして!?」

 

 彼であれば他にも一緒に回ってくれそうな人はたくさん居そうなのに。小林くんとか七河くんとか、柳さんとかも多分一緒に回ってくれる。

 何でわざわざバッタリ出会っただけの私を誘うのだろうか?

 

「さっき学の野郎に『どうせ女子も誘えずに寂しく一人で回るんだろwww 俺たちが一緒に回ってやるよwww』とか言われてな。

 ムカついたんでぶっ飛ばしてきたんだが、せっかくだから見返してやりたい。

 そしたら丁度あんたが居た。だから誘っただけだ」

「そ、そう……正直だなぁ……

 と言うか、小林くんは大丈夫なの?」

「まぁ、大丈夫だろ。多分。

 それより、どこに行くつもりだったんだ?」

 

 小林くんの存在が凄く軽く扱われてる気がするけどきっと気のせいだろう。そういう事にしておこう。

 

「それじゃあまずは文芸部から」

「よしきた」

 

 

 

 

「展示品は自作小説や小説の研究資料、あと古本の販売か」

「え~っと……あった。つぐみの作品!」

「つぐみ? ああ、語堂つぐみか」

「知ってるの?」

「ああ。前に図書館で会った。何かオレの名前聞いてブチ切れてたから適当にあしらったな」

「そ、そんな事があったの!? ごめん、私の親友が……あれ? でも何をそんなに怒ってたの?」

「なんか、あんたにちょっかいかけてるとか何とか」

「……私がキミの名前をちょくちょく出してるせいだったみたいだね。本当にごめん」

「なに、気にするな。こんな部活ばっかりやってる変人が親友と仲良くしてたら心配になるのも無理は無い」

「そ、そう……」

 

 変人だという自覚はあったんだ。地味に驚きである。

 

 

 

 

「続けて漫研部に来てみたわけだが」

「やっぱり自分の作品の展示とかみたいだね。方向性としては文芸部とあんまり変わらなそう」

「確かにな。本質は変わらなそうだ」

 

 つぐみと違って意見が一致した。少しうれしい。

 

 

 

「吹奏楽部は……まぁ、演奏会だな」

「そうみたいだね」

「所詮は学生同士の趣味の集まり。プロの演奏とは比べるべくもないか」

「ちょっと、そんな言い方は無いんじゃないの?」

「プロと比べてしまえば下手なのは事実だ。

 だが、だからこそ良いんだろうな。こういう演奏は。

 楽譜をなぞるだけのものが聞きたいならプロに……いや、機械任せで十分だ」

「……ふふっ、確かにそうかもね。

 人の手じゃないと奏でられない音楽がある。だからこそ、音を奏でる人は居なくならない。な~んてね」

「良いことを言うじゃないか。

 じゃ、次行くか」

「うん!」

 

 

 

「残ってるのは……化学部だけか」

「? 何か問題があるの?」

「いや、あそこの先輩少し苦手で……」

「あら後輩クン。私の事を呼んだかしら?」

「げぇっ」

 

 振り向くと白衣の女性が立っていた。

 一瞬先生かと思ったけど、襟元から見える白衣の内側がうちの制服だ。どうやら先輩らしい。

 

「……奇遇ですね郡山先輩。では」

「まあ待ちなさい。丁度あなたで実験したいと思ってたのよ。

 都合よくギャラリーも連れてきているみたいだし」

「え、わ、私の事ですか!?」

「あなた以外に誰が居るのよ。まったく、人の誘いを断っておいてデートだなんて良いご身分ね」

「いや、先輩の実験に最後まで付き合ってたら命がいくつあっても足りないでしょう」

「後輩クン? キミは私の事を何だと思ってるのかしら?」

「究極の美を追求する狂気のマッドサイエンティスト」

「あらあらあら……そんなに褒めてくれるなんて嬉しいわ。

 ご褒美にこの私の最先端の研究を一番に味合わせてあげるわ」

「いや、それどう考えても罰ゲーム……ちょっ、先輩腕引っ張らないで! 痛いんでフムギュッ」

 

 布を口に当てられた彼はぐったりとしている。どうやら意識が完全に落ちているらしい。

 

「こ、郡山先輩……? その布って……」

「クロロホルムよ。この子ちょっと借りていくわね」

「…………はい」

 

 その威圧感の前には逆らえそうになかった。

 助けられなくてゴメン。せめて変な事が無いようにしっかりと見ておくから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、酷い目に遭った」

「大丈夫? 少し休んだ方が……」

「問題ない。むしろ体調は良くなってる。

 ……怪しげなのに本当にちゃんと成果が出てるから何も言えないんだよなぁ……」

「そ、そうなんだ」

 

 そういう事ならそもそもあそこまで嫌がる必要は無かったんじゃないのかな?

 ……いや、あの雰囲気の人を相手に喜んで実験台になるのは私は嫌だ。やっぱり何か怖いし。

 

「んじゃあ気を取り直して……どこ行くか」

「とりあえず近くの教室を回ってみようよ。えっとここは……」

 

 手近な教室の扉を開けてみる。

 しかし、中にあったのは展示じゃなくて事務処理をしてる人たちの姿だった。

 職員室? いや、こんな所には無かったはず。

 疑問に思って立ち尽くしていると声が掛けられた。

 

「あら? どうかしたのかしら?」

「あなたは……えっ!? さ、皐月(さつき)先輩!?」

 

 このきらめき高校に通う生徒で彼女の事を知らない者はいない。

 完璧超人な優等生であり、一年生でありながら生徒会長に就任したという。

 生徒会長が居るという事は……

 

「そうか、ここって生徒会室か。

 すみません。何か展示があるかと適当に入ってみたのですが……」

「そうだったの。ごめんなさいね。ここでは展示はやってないの」

「生徒会の仕事は展示じゃなくて運営だから仕方ないと言えば仕方ないですね。

 ここに居てもしょうがない。行こうか」

「あ、うん。そうだね。失礼しました!」

「ふふっ、今日は楽しんでいってね」

 

 いつも動じない彼のおかげで多少は落ち着いて対処できた。と言ってもちょっと挨拶して部屋から出ただけだけど。

 

「こんなお祭りの影であんな風に過ごしてる人たちが居たんだね」

「そうだな。ああいう裏方の存在があってこその祭りだ。感謝しないとな」

「確かにそうだね。生徒会……か」

「どうした? 入りたくなったか?」

「そんな事は……ううん、そうかも。

 なんて言うか……凄くカッコよかったもん!」

「そうか。あんたにはピッタリかもな。

 ちなみにだが、加入条件は知っているか?」

「ううん、何かあるの?」

「いや、オレもそんなに詳しくはないんだが……何か、選挙が必要って聞いた気がする。

 一定以上の生徒から認められないと入れないという事だな」

「うわぁ、大変そう……私にできるかな?」

「…………それは分からん、が、オレはあんたに投票するとしよう」

「ホントに? 嬉しいなぁ。

 私、頑張ってみるよ。目指せ! 生徒会長! な~んてね」

「やるからには徹底的にやれ。生徒会長、上等じゃないか」

「え、いや、流石に私なんかが無理だよ……」

「無理と言う前にまずはやってみろ。諦めるのはそれからでも遅くないだろ?」

「そっか……そうだね。ありがとう」

 

 

 

 こうして、私たちの文化祭は終わった。

 生徒会の選挙は約一ヵ月後だ。頑張ろう。

 

 

 

 

 

 そして選挙当日。

 特に山も谷も無く、無事に当選した。

 ……うん、本当に何事も無かった。あくまでも生徒会役員を決める信任投票みたいなものだからそこまで大がかりな事はやらなかった。

 選挙期間なんてものは無く、たった一回の簡単な演説だけしてそのまま投票するだけだった。これだけなら私の他にもたくさん当選した人が居そうなものだけど、どういう訳か私とあと一人だけだった。意外とハードルは高いらしい。

 

「とりあえず、おめでとうと言っておこう」

「う、うん。でも、こんなに簡単に役員になれちゃって良かったのかな……? なんだかちょっと実感が湧かないよ。

 本当に私なんかが大丈夫なのかな?」

「意外と日常の行動は生徒たちから見られている、という事だろうな。

 落選した人も結構居るんだ。あんたがそんな態度だとそいつらが浮かばれないぞ」

「……そっか、それもそうだね。

 あ、あと、そっちも当選おめでとう!」

 

 あと1人の当選者とは彼の事だ。一学期の期末では全部満点というとんでもない成績を見せつけ、苦手とか言っていた運動方面も何気に常人以上の能力を見せつけてくる彼は私以上に余裕で当選していた。

 

「ああ。どうも」

「にしてもビックリしたよ。まさかキミが立候補してるなんて。どうして?」

「簡単な事だ。『放送部エース』よりも『放送部エース 兼 生徒会役員エース』の方がカッコいいだろ?」

「いやまぁ、確かにそうだけど。もう生徒会のエースになるつもりで……いや、キミなら余裕か」

「愚問だな」

 

 こんな凄い人と一緒に活動すると私はちょっと霞んじゃうかもなぁ……

 別に目立つために生徒会に入ったわけじゃないけど、ちょっとだけ憂鬱だ。

 ……いやいや、こんな事思ってたら彼に失礼だよね。私は私なりに頑張ろう!

 

 

 

 

 

 

 生徒会選挙から約一ヵ月が経過した。そろそろ期末テストだ。

 生徒会としての活動中の雑談もそういう話が増えてくる。

 

「キミはテスト勉強は……大丈夫そうだね」

「まぁな。普段の生徒会や放送部の活動でもテストに通じるものがある。

 後は一夜漬けで調整すれば完璧だ」

「す、凄いね……何か勉強のコツとかあるの?」

「そうだな……疲れた時は紅茶を飲む事だな。脳が活性化する」

「休憩も大事って事だね。なるほど」

「後は……全ての科目をまんべんなく勉強して全て満点を取るのが理想だが、難しい場合はとりあえず文系の勉強をするといい。

 国語と社会のテストに直結するし、理系や芸術の知識にも通じる所がある。結果的に全体的な底上げに繋がるだろう」

「なるほど……分かった。ありがとう!」

 

 

 

 という訳で、テスト結果がこんな感じである。

 

国語数学理科社会美術

100100100100100

 

 ……うん、彼の結果は前と同じだ。念のため言っておくけど満点は100点だ。1000点満点のテストとかではない。

 え? 私? ま、まあ、前回よりは良かったよ。

 

 

 

 

 テストが終わった後はクリスマスが待っている。

 きらめき高校の理事長は伊集院財閥の偉い人らしく、在校生はクリスマスパーティーに招待されるのだ。

 なんでも『漫画でしか見られないようなセレブなパーティー』といった感じらしく、しっかりとドレスコードを意識しないと門前払いされる事もあるとか。

 そんなパーティーにタダで参加できるなんて、理事長様々である。

 

 

 

 クリスマスイブ当日。会場へと向かう。

 あれは……門番の人かな? ちょっと厳ついと言うか怪しい見た目だけど……いや、逆に門番向きなのかもしれない。

 

「プリーズ、エクスキューズミー。

 きらめき高校の、生徒さんですか?」

「あ、はい! あ、えっと、学生証……」

「ノープロブレム。お通りいただいて、結構です」

「え? 大丈夫なんですか? ま、まさか生徒全員の顔を覚えて……」

「ノンノンノン。そういう訳ではありまセーン。

 タダ、伊集院財閥を騙そうとする者は、後で必ず報いを受けるでショウ」

「………………そ、それじゃあ入らせていただきます。失礼します」

 

 深くは考えないでおこう。うん、そうしよう。

 

 

 

 

 

 会場をうろついているといかにもセレブという感じの人たちに混ざってちらほらと見覚えのある姿があった。

 

「あ、皐月先輩!」

「あら、来ていたのね」

「はい! にしても、凄いパーティーですね。先輩は去年も参加したんですか?」

「ええ。去年も参加したし、なんならその前も参加していたわ」

「え? えっと……せ、先輩に限って留年とか……いや、無いですね」

「ふふっ、当時はまだ中学生だったけど、別口で招待されていたの」

「別口?」

「父がきらめき市の市議会議員を勤めているの。だから、元々伊集院の人たちとはご縁があったのよ」

「し、市議会議員!? す、凄いですね」

「それで、私自身がきらめき高校が第一志望だった事もあってご招待を受けたの」

「へ~。そうだったんですか」

 

 まさか皐月先輩のお父様が市議会議員だったとは……いや、皐月先輩なら納得だ。

 自慢するような感じではなかったから言いふらすのは止めておこう。調べれば分かる事だと思うけど。

 

「それじゃ、私は挨拶しなければならない人が居るから。

 パーティー、楽しんでいってね。その方が理事長も喜ぶわ」

「はい! 勿論です!」

 

 なんて言うか、凄い場慣れしてた感じがする。

 やっぱり皐月先輩は凄いなぁ……

 

 

 

 次に会ったのは富美子ちゃんだ。

 夏休みの遊園地の一件があってから色々あってそれなりに仲良くしてる。『彼』と同じ部活動をしているという中途半端な共通点もあるので話題には事欠かない。いやまぁ、生徒会は部活とはちょっと違うけども。

 

「富美子ちゃん、楽しんでる?」

「あ、うん! お料理がとっても美味しいよ~!」

「へ~。オススメってある?」

「そ~だね~。あっちの伊勢海老の活け造りとか~」

「そ、そんな凄そうなのがあるんだ……」

「他には、A5和牛のサーロインステーキとか~」

「そ、それ大丈夫だよね? ホントに私が食べちゃっても大丈夫だよね?」

「うん。他にもいっぱい並んでたよ~」

「そうなんだ。食べきれるかなぁ……」

 

 美味しいのかもしれない……と言うかまず間違いなく美味しいんだろうけど、食べ過ぎがちょっと心配だ。

 最近体重がちょっと……あ、ううん、何でもない。太ったなんて事は無いったら無い。

 

「あれ? でも富美子ちゃんはさっき言ったの全部食べたの?」

「うん! 勿論だよ!」

「…………」

 

 そんなに食べて太らないんだろうか? まさか胸の成長に使われているのだろうか? 羨ましい……

 

「私はもう少し食べてくるね。じゃあね~」

「うん……」

 

 まだ食べ足りないらしい。彼女の胃は底無しだ。

 

 

 

 

 また少し歩いていると『彼』の姿が見えた。

 

「あ、居た居た」

「……あんたか。まぁ、そりゃ来てるよな」

「何その反応。もっとこう、えっと……わ、私みたいな美少女に会えて嬉しい……な、なーんて……」

「自分で言ってて恥ずかしくないか?」

「言わないで! 私もちょっと言い過ぎたって思ったから!」

「まったく……

 ……すまんな。ちょっとチカチカしてて疲れてたんだ。あんたに非があるわけじゃない」

「そ、そっか。それなら良かったよ」

「さっきの冗談のおかげで少し楽になったよ。ありがとな」

「さっきのは忘れて!」

「どーしよっかなー」

「も~、どうしてこういう時だけ意地悪なの」

「ははは。それより、そろそろプレゼント交換があるみたいだぞ。一緒に行こう」

「あ、うん! って、誤魔化されないよ!?」

「そろそろプレゼント交換なのは本当なんだが……まあいいや。誰かに言いふらしたりはしないから安心しろ」

「うーん……できれば忘れて欲しいけど……はぁ、分かったよ。それじゃあ行こうか!」

 

 このパーティーではプレゼント交換が毎年行われているらしい。一か所に集められてからランダムに分配される。

 ただ、セレブな人たちと交換となると色々と問題があるのできらめき高校の生徒だけで集められてから分配されるそうだ。

 という訳で、今私たちの目の前には箱詰めされたプレゼントが並べられている。さて、どれを貰おうかな~。

 

「外観からは判断できんか。超音波検査機でも持って来れば良かったか」

「いやいや、堂々と不正しようとしないでよ」

「冗談だ。じゃあコレで」

「それじゃあ私もコレで」

 

 リボンと包装を解いて箱を開ける。

 中に入っていたのは……本、かな?

 

「ん? オレが入れたヤツだな」

「ええっ!? こんなに沢山あるのに凄い偶然だね。ところでこれって何?」

「オレが発声練習の為に使った本だ。結構為になる事が書いてあったんでプレゼントに選んだ。

 中古品だと流石に失礼なんでわざわざこの日の為に新品を買ってきた」

「へ~。面白そうだね」

「放送部の柳とかが使うのが一番良いんだろうが、まぁ、生徒会でも演説したりとかするから結構使えるだろ。多分」

「そうだね。ありがとう」

 

 あれだけストイックに部活に打ち込んでいた彼が勧める本か。ちょっと怖いような気もするけどきっと役立ってくれるはずだ。

 

「ところで、キミは?」

「暖かそうな手袋だ。手作りかな」

「あっ、それ私が入れた物だよ!?」

「マジか!? この数でランダム抽選でペアができるってどんだけ低確率だよ」

「え~っと……在校生は600人くらい居たはずだから……600分の1?」

「門前払いされたり、そもそも来てない捻くれ者も一定数居そうだが……まぁ、とりあえず600人仮定でいいか。

 ただ、この場合は『自分が誰かとペアになる確率』じゃなくて『事前に指名した2名がペアになる確率』で計算して良いと思うぞ」

「あ、そっか。じゃあ自乗して……36万分の1かな?」

「そうなるな。いやはやビックリだ」

「そうだね。プレゼント、大事に扱ってね」

「……ああ。勿論だ」

 

 

 

 こうして、クリスマスは終わった。

 なお、貰った本は結構役立ったとだけ言っておこう。






 ・主人公
 『節約上手』を使用して紅茶を4割引きという暴利で大人買いする極悪人。
 カフェイン中毒になりそうでならない。
 体力を消費して『優等生』を演じているので能力成長が更に加速した。
 

 ・郡山先輩
 究極の美を追求する狂気でもマッドでもないサイエンティスト。
 主人公が塩対応なので原作よりもやや辛辣。
 ただ、一応信頼の裏返しでもある。多分。
 会うたびにサプリを飲ませてくるけど紅茶を嗜む主人公には大したダメージにはなってない。

 ・皐月先輩
 完璧超人とも呼ばれる生徒会長。
 この人のせいでストイックプレイをしている最中に『心の開錠術』が必須となる。邪魔。
 テストプレイでは一時的にだが星川(ほしかわ)さんよりも評価が高い状態になった。何もしてないのに……
 特に大きなキャラ変更は多分無い。腹黒キャラにしようかという案もあったけど没になった。

 ・生徒会
 選挙に当選した者のみが成れるエリート集団。
 システム的には『生徒会役員からの推薦』と『立候補する意思』と『一定以上のパラメータ』が必要となる。
 本文の方では『推薦』は無視して進めた。『彼女』であれば皐月先輩に直談判して推薦を貰うくらいはしてもおかしくは無いが……そこまで書こうとすると冗長になってしまうのでカット。
 ゲーム内での最初の選挙では1~2名しか当選しない。かなり狭き門である事が推測できるが、人数に幅がある為定員が決まっているわけではない模様。
 という訳でただの信任投票という扱いにしてみたのだが……それで最大2名しか当選しないというのも相当に謎である。
 ときメモ世界は色々と常軌を逸している世界なので生徒たちはお互いの事をしっかりと見ているのだろう。そしてしっかりと自分の意思を持って投票する理想的な選挙を実現しているのだろう。そういう事にしておく。


 おまけ 『彼女』のテスト成績 1年目2学期

国語数学理科社会美術順位
817472777172

順位は同学年の『200名』からの順位
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