三学期が始まった。
この時期のイベントとなると……卒業式かな。と言っても3年生の知り合いの先輩はあんまり居ないけど。
あと、学校行事ではないけどバレンタインがある。今年は2月14日が日曜だから1日だけ繰り上げて13日に行うらしい。*1
ついでにホワイトデーも日曜日。ただ、13日はテスト休みがあるから更に繰り上げて12日に行うとか。
という訳で……
「クラスの皆に配るチョコレートを作って行こう!」
「お~!」
富美子ちゃんと一緒に準備する事になった。
つぐみも誘ったんだけど、『私はチョコ配るとかそういう事はしないわ。友達だけで十分よ』との事だった。
「それじゃ、まずは買ってきたチョコレートを溶かして……」
「ストップストップ! 直火で焼いたら焦げちゃうよ!?」
「えっ、そうなの? チョコレートって焦げるの?」
「焦げるって言うか、美味しくなくなる? そんな感じ。
……もしかして、手作りチョコって初めて?」
「う、うん……実はそうなの」
去年までは市販品のチョコを配るだけだった。つぐみもさっき言ったようにあんまり積極的じゃなかったし。
今年は折角だからこうして手作り……と言っても市販のチョコを溶かして型に流すだけだけど……をチャレンジしてみたが、まさかそんな注意点があろうとは。
「それじゃあ、どうやって溶かすの?」
「湯煎するんだよ。こうして……こう!」
水が入った鍋の上からチョコ入りボウルがくべられる。そして鍋に火がかけられた。
なるほど。これなら間接的に温められるんだね。
「ごめん。ちょっとお料理は苦手で……」
「ううん、大丈夫。知らないなら仕方ないもんね。初めてなら初めてなりに一緒に頑張ろう?」
「お~!」
こうして、無事に準備を終える事ができた。
富美子ちゃん様々である。
バレンタイン当日!
「……何か今日は甘ったるい匂いがするな」
「当たり前だろ! 今日はバレンタインだぜ!!」
「……学、オレの記憶が正しければバレンタインは2月14日なんだが」
「チッチッチッ、明日は日曜だろ? だから繰り上げで今日開催なのさ!」
無頓着だった彼が異常なのか、あるいは耳聡い小林くんが異常なのか。微妙に判断に苦しむ。
「なんだよ、そういう事なら学校休めば良かった」
「正志? 何でだよ」
「こっちは朝からチョコ責めで参ってるんだよ。受け取るつもりも無いから迷惑なだけだっていうのに」
「な、何だとー!?!? 正志ぃっっ!!!! この裏切り者めぇぇええええ!!!!」
……うん、小林くんの方が異常だった。多分そうだ。
さて、それじゃあ渡しに行こうか。
「おはよう!」
「おうおはよう! む? も、ももももしやっ!」
「うん。はい、どうぞ!」
「お、うおおおおおお!!!! やった!! チョコだ!!
このチョコは大切に! 大切に取っておいて家宝にするぜ!!」
「いや、腐っちゃうからちゃんと食べて。
それと、はい、どうぞ」
「ん? ああ、オレか。感謝する」
「どういたしまして。ちゃんと味わって食べてね。
あと七河くんは……」
「要らないよ。下心が無いのは分かるけど、受け取ったら面倒な事になりそうだし」
「あはは、だよねぇ~。一応訊いてみただけだよ。じゃあね!」
他のチョコは軒並み断っているのに、義理チョコとはいえ私からだけ受け取ったなんて事になったら変な噂が立ちかねない。
このチョコは予備にしておこう。他の人たちにも配ってこないと。
「もぐもぐ……本当に市販品を溶かして型に流し込んだだけだな。量産品の義理チョコか」
「たとえ義理だとしてもっ!! チョコの価値は決して陰るものではないっ!!!!」
「でも本命チョコの方が良いんだろ?」
「無論だ!!!!」
「矛盾してるな……ま、そこに籠められた『愛情』に違いはあっても『気遣い』には違いは無いというのはオレも同じ意見だ。
ホワイトデーはしっかりと準備しないとな」
「おうよ!!!!」
期末テストをいつも通りに頑張って終わらせた私の前に紙袋が差し出された。
「え? これ何? どうしたの?」
「今日は2日繰り上げのホワイトデーだ」
「あ、そっか。えへへ、ありがとう」
「柳から聞いたぞ。今回初めて手作りチョコにチャレンジしたと。
だからこの飴も手作りだ」
「えっ、て、手作り? えっと……飴ってチョコみたいに簡単に溶けないよね?」
「まあ、そうだな」
「同じ手作りでも労力が全然違うよ!? ほ、本当に貰っちゃっていいの!?」
「あんたに受け取ってもらわないと捨てる事に……いや、柳の取り分が倍に増えるだけか。
いやでも倍も渡すのは食べ過ぎ……いや、柳なら適量か」
「ちょっとちょっと。私に受け取らせたいのかそうじゃないのかどっちなの?」
「スマンスマン。これはあんたの為に作ったものだ。ちゃんと受け取ってくれ」
「……うん! ありがとう」
紙袋の中を覗くと歪な形をした無数の飴が詰まっていた。後で大事に食べるとしよう。
「ああ、あと学ももうちょいしたらやってくると思う。
色々とツッコミどころがあると思うが……まぁ、引かないでやってくれ」
「? うん」
その後、凄くハイテンションな小林くんから抱えるほどの大きさの袋を渡された。
中にはハート型のクッキーやら飴やらがこれでもかと言うほどに詰め込まれていた。
……ごめん、ちょっと引く。
「柳さん!」
「ん? なあに小林くん」
「これ、バレンタインのお返し! 受け取ってくれぇい!!」
「えっ、こんなに大きいの貰って良いの!? ありがとう!!」
「おうよ!!」
ちょっと引いてる私の側で同じように受け取っていた富美子ちゃんは凄く嬉しそうにしていた。
ちゃんと喜んでくれる人が居てよかったね、小林くん。
繰り上げホワイトデーが終わった後はテスト結果の発表がある。
| 国語 | 数学 | 理科 | 社会 | 美術 |
| 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
これが誰の成績だとかいちいち説明する必要は無いだろう。
え、私? いつも通りにちょっとだけ順位上がったよ。うん。
もうしばらくしたら先輩たちの卒業式を迎える。
そんなある日、私はふと『伝説の樹』の許へと足を運んでいた。
「『卒業式の日にこの木の下で結ばれた恋人同士は永遠に幸せになれる』か。
今年も誰か、この木の下に来るのかな?」
誰が言い出したのかも、そもそも本当の事かも分からない。
それでもこの木の下へと訪れる。その人は一体どんな気持ちで居るんだろう。
「そんな所で何をしているんだ?」
「え? ああ、キミか。何かしてるって訳じゃないけど……」
「ふぅん……誰かに告白でもする気か?」
「え? まだ卒業まで二年もあるよ?」
「例の伝説は何も『自分の』卒業式とは言われてはいまい。
極論だが、他の高校の卒業式の日に利用する事も可能だろう」
「そ、それは流石に極論過ぎるんじゃないかな……?」
「……まぁ、きらめき高校の敷地内に生えている木の逸話だ。伝説にあやかりたいならうちの高校の卒業式の方が妥当ではあるな。
ただそれでも、他の学年の卒業式なくらいなら問題ないと思うぞ」
「? どうして?」
「だって、『お互いに』かつ『自分の』卒業式とまで制限されたら他学年の人は使えないじゃないか。
3年の先輩に告白したいのであれば今年の卒業式であるべきだ」
「た、確かに。同い年じゃないと使えない伝説なんて悲しいもんね」
「ああ。そしてそこまで制限を緩めてしまえるのなら在校生同士で利用しても問題ないだろ」
「そ、そういう問題かな……?」
「前にも言ったが、伝説など信じたい人は信じれば良いという代物だ。
自分の都合の良いように解釈しても全く問題ない」
「そっか……確かにそうかもね。本当にキミらしい意見だよ」
彼は多分、伝説は信じていないんだと思う。
ただ、伝説に関わるのであれば最大限に利用しようとする。そんな感じなんだと思う。
とてもロマンチックな伝説なのに、いや、だからこそ彼はどこまで行っても現実的だ。
「さて、そろそろ戻るか。こんな所に二人で居たら告白してるとか思われそうだしな。
卒業式の日じゃなくても告白スポットとして普通に成立してる場所だし」
「あはは、そうだね。それじゃあ逃げろ~。な~んてね」
そして迎えた卒業式。それは厳かに行われた。
私たちもあと二年で卒業となる。この一年間、悔いの残らない高校生活を過ごせただろうか?
後悔する事が無かったなんて事は絶対にない。ああしていれば良かった、こうしていれば良かったなんて事はいくらでもある。
でも私は精一杯頑張った。それは間違いの無い事で、だからこそ私は満足している。
あと2年も精一杯がんばろう。
今頃、伝説の樹の下には誰かが居るのだろうか?
誰かが告白をしているのだろうか?
居るのかも分からない誰か。その恋が伝説の通りに永遠である事を、私は祈ってる。
「しかし、下手すると伝説の樹の下は混雑しそうだな」
「何だ何だ。どうしたんだ突然」
「ああ学か。何か正志が呼び出しの手紙を貰ったらしいからさ」
「な、何だとぉう!? 正志ぃっ!! この裏切り者めぇっ!!」
「全く面倒だよ。机にいきなり手紙が入っててさ。
しかも差出人の名前が書いてないんだぞ? 宛名はしっかりと書いてあるのに」
「んン? どういう事だ?」
「伝説では『伝説の樹の下』で告白する必要がある。
こんな日にそんな所に呼び出す時点で告白みたいなもんだから場所が『樹の下』じゃなくて『教室』になってしまう。
だから『私は貴方が好きです』という告白ではなく、名前を省く事で『誰かが貴方を好きです』という連絡にする事で回避してるんだろう」
「そこまで考えてんのか? う~ん……」
「ヒマだったんで図書館で調べた事があるが、どうやら差出人の名前を省くマニュアルみたいなのが密かに流れているらしい。
誰かが考えて広めたって所だろうな。理屈まで知ってるのはごく一握りだろう。そもそもオレの勘違いかもしれんし」
「相変わらず夢が無ぇなぁ……
んで正志、お前行くのか?」
「行くわけないだろ。誰が待っているのかも分からないし、そもそも今の所誰とも付き合う気も無い」
…………聞かなかった事にしよう。伝説の樹の下で待ちぼうけを喰らう不幸な人は居なかった。そういう事にしておこう。
・バレンタイン
恋愛系かつ学園ものではお馴染みのイベント。
ときメモ4では評価が友好以上の女子(一部例外アリ)から義理チョコか本命チョコを貰える。
なお、友人である正志はチョコ責めにされるが一切受け取らず、学は誰からもチョコを貰えない。
結果両者ともホワイトデーがただの平日と化す。結果が同じなのに実に対照的な2人である。
しかし、主人公の行動次第では同級生の攻略対象ほぼ全員をダブルデートに誘える学がチョコを貰えないというのは考えにくい。
(かなり気難しそうな響野さん、ガリ勉な学とは対照的な前田さん、その気にさせるとヤベー事でお馴染みの都子さんすら誘い出す。一体どうやったのだろうか……?)
と言うか、星川さんの性格を考えたらクラスメイト全員に配ってそうである(好感度次第では主人公も貰えないのはきっと気のせい)
制作者はどうしても学を『チョコすら貰えないネタキャラ』にしたかったのだろうか? あまりにも可哀そうである。
・ホワイトデー
恋愛系かつ学園ものでは以下略
ときメモ4ではバレンタインでチョコを貰った女子相手にお返しする事ができる。もし1個も貰えていなければただの平日となる。
お返しは全員に対して行うが、『特別なお返し』を1名のみに返す事が可能。無論、その1名の好感度が上がる。
・伝説の樹
『卒業式の日にこの木の下で女の子からの告白で結ばれた恋人同士は永遠に幸せになれる』という伝説を持つ樹。
初代ときメモ時代から存在しており、ときメモ4の時代には伝説が一部風化して『女の子からの』という文言が省略されて伝わっている。
こんな木が現実にあったら卒業式の日に2人きりで静かに告白できるなんて事はまず起こらない気がする(他のカップルが利用しようとしてバッティングするか、あるいは野次馬が湧きそう)
しかし、ときメモ世界では何故か邪魔される事は無い。謎である。
ときメモ4では主人公が3年生の時に上級生や下級生からも告白されるので、少なくとも『告白する側』の人の卒業式である必要は無い模様。
『告白される側』の卒業式である必要があるのか、それとも卒業式ならいつでも良いのか、明言はされていない。
おまけ 『彼女』のテスト成績 1年目3学期
| 国語 | 数学 | 理科 | 社会 | 美術 | 順位 |
| 82 | 76 | 74 | 79 | 74 | 66 |
順位は同学年の『200名』からの順位