皆さんが求めているようなものかは分かりませんがお楽しみいただければ幸いです。
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「どうして、ダメなんですか? この曲じゃダメなんですか!?」
彼女、
何故、部外者である彼女がここに居るのか。
何故、彼女がそんな台詞を吐き出しているのか。
事情を説明するには私たちが3年生になる前、数か月前まで遡る必要がある。
「この学校の賛歌を作りましょう」
「……皐月先輩、どうしたんですか突然。何か変な物でも食べました?」
当時の生徒会長だった皐月先輩の宣言に対してかなり失礼な返答をしたのは説明するまでもなく彼であった。
あんまりな物言いに一瞬吹き出しそうになったけど何とか顔を背けてこらえた。
「もぅ、そんなんじゃないわよ。
ほら、前に『生徒会にして欲しい事』っていうアンケートを生徒を対象に取ったじゃない? その中にあったのよ」
「そんなピンポイント過ぎる回答が目立つ程度には複数あったんですか?」
「いえ、正確には『今の校歌が古すぎるから新しい校歌が欲しい』っていう回答が何点かあったわ。
ただ、今あるものを上書きして消してしまうのはちょっと難しいから……」
「『校歌』ではなく『賛歌』という別枠で作って、あわよくば取って代わろうと」
「取って代わるまではやらなくてもいいけど……まぁ、そんな所よ」
「なるほど、理解しました。決して変な物を食べたわけではなかったんですね。隣の客喰う柿とか」
「……どんな柿なのそれ?」
そういう訳で、『学校賛歌を作ろう!』という企画が生徒会で審議され、教師への承認を通して予算が下りた。
古すぎる……良く言えば歴史のある、悪く言えば時代遅れな校歌に先生たちも思う事があったのかもしれない。
賛歌を……歌を作る上で必要な要素は大きく2つに分けられる。歌詞、そして曲だ。
生徒会主導で作成する学校の賛歌である以上私たちが自作するのが理想的だ。だけど、歌詞はまだなんとかなるとしても曲まで作るのはほぼ不可能だと思う。
「皐月先輩は……曲作りとはできませんよね?」
「流石に無理よ。それっぽいメロディを作るくらいならできるかもしれないけど、専門的な知識があるわけでもないからどうやっても素人臭くなってしまうと思うわ」
「……キミはできたりは……」
「うっかりデスメタルになってしまっても良いならやっても構わんが」
「良くないよ!? と言うかどうやったらうっかりデスメタルになるの!?」
「まぁ、冗談だ。オレは美術の成績は高い方だが、ぶっちゃけ先生が求める答えを推理して回答しているに過ぎん。
どうしても他に選択肢が無いならやってはみるが……なんだかクソつまらない曲になるぞ。多分」
高い方というか満点以外見たことが無いんですけど……それはさておき、彼も作曲は無理とまではいかずとも向いていないようだ。
純生徒会産の賛歌は不可能なようだ。
「となると、やっぱり『彼女』に頼む事になりそうですね」
「ええ。時間がある時を見計らって呼んでみましょうか」
「あいつ程の適任は居ないでしょうからね。
って言うか、今呼んでみましょうか? 携帯の番号は知ってるんで」
「知ってるの!?」
「ああ。それじゃあ早速。
もしもし響野。今時間あるか? 手が空いてるなら生徒会室に来てくれ」
響野里澄さんは私たちと同学年の生徒だ。
そして、学生の身でありながら音楽の仕事をしている人でもある。
学校の賛歌を作る上でこれほど適した人材は恐らく居ないだろう。
そして数分後、生徒会室の扉が開かれた。
「失礼します」
「お、よく来てくれた。え~、諸君。彼女が響野里澄さんだ。彼女は我々と同じ学生でもあるが、同時に現役のプロでもある。失礼の無いように!」
「そんなにかしこまらなくてもいいけど……ところで、どうして私は呼ばれたの?」
「よくぞ訊いてくれた。実はこういった企画が……皐月先輩、これって外部に見せていい資料でしたっけ?」
「大丈夫よ。はい、コピー」
「あざっす。実はこういった企画が動いている」
「学校賛歌……?」
「平たく言うと校歌のリニューアルだな。
んで、あんたには作詞作曲を頼みたい。やってくれるか?」
響野さんは返事を返す事もなく資料を読み込んでいる。
少しして読み終えたのか、顔を上げて彼にこう訊き返した。
「あの、どうして私に? わざわざ私に頼まなくても……」
「不服か?」
「そういう訳じゃないけど」
「スマンスマン。質問で返すのは失礼だったな。まぁ、理由はいくつかある。
いくつかあるが……細かい理由を除いた一番の理由はあんたが一番適任だと思ったから、だな」
「…………」
「で、どうだろうか? 引き受けてもらえるだろうか?」
「…………少し、考えさせてほしい」
「……そうか。まぁ、無理強いはできんからな。
肚が決まったらまた連絡をくれ」
「分かった。それじゃ」
こうして、断られるでもなく引き受けてくれるでもなく、響野さんは去って行った。
いやまぁ、絶対に引き受けてもらえるとか思っていたわけじゃないけど……引き受けてもらえなかったらどうしよう。
「ふぅむ……あいつ、迷っているようだな」
「え?」
「あんた、ちょっと様子を見てきてやってくれないか? 依頼者であるオレよりも適任だろう」
「様子を見ろって言われても……」
「話を聞いて、手助けをする。クラス委員長としてあんたがやってた事と同じだ。簡単だろ?」
「言うほど簡単じゃないけど……分かった。やってみるよ」
生徒会室を出て響野さんを追いかける。
どこに行ったんだろう……他の生徒たちに話を聞いて探してみよう。
響野さんは生徒会役員でもないのに生徒会に関わる貴重なキャラ。
賛歌イベントは本編に入れようかと迷ったくらいです。まぁ、三年生編が本編から除外されたから没になったけど。
この辺のイベントは主人公が生徒会に入っていてもいなくても普通に進行しますが、入っているにも関わらず入っていないのと同じ程度にしか関われない為メチャクチャ疎外感を感じるイベントとなっております。星川さんや皐月先輩に主人公は信用されていなかったんだろうか……?
なお、響野さんだけでなく語堂さんも一度だけですが生徒会室に足を踏み入れている描写があります。役員同伴とはいえ部外者が普通に入れてるという。きらめき高校の生徒会はかなりオープンな感じなんだろうか?