この作品が恋愛系になることはありません。
俺は元の世界で俗に言う厨二病なる病にかかっていた。その病にかかった俺は"ぼくがかんがえたさいきょうのまほう"本をつくったのだった。
想像力豊かなお年頃の俺によって作れた魔法、数は百以上...。とんでもない数の厨二魔法を作ってしまったものだ。嫌な努力である。
そして俺は時に魔法を作り_
時に魔法を詠唱(笑)し_
時には役に成り_...。
まぁ、前の世界での黒歴史はもう取り返しはつかない。いくら過去の自分を殴りたいと思ってもその術はない。(現在の自分なら何度も殴った)
問題は、今も現在進行形で黒歴史を作り続けている事だ。何が悲しくて前の世界の黒歴史を今の世界で晒さなきゃならないのか。勿論、人の命と比べたら俺の恥など比べるにも値しないが。人を守る為、と思っていてもキツい部分がある。と言うかキツい所しかない。
しかし今、こんなにも自分の黒歴史に嫌気が指している俺だが、(この世界に来てからの)少年期はこんな感じではなかった。
勿論初めて黒歴史本を見つけた時は胃が痛くなったし、涙を流した。どうやって処分すればいいかも考えた。
そう、考えて考えて考えて......考えすぎてしまったのかもしれない。
俺はある日、ふと思ったのだ。
『あれ?俺ってつまりは選ばれし者なわけだし、魔法も使えるわけだし、厨二病じゃないんじゃ...』と。
あの頃の俺は頭のネジが3、4本取れてたのだろう。そうして誕生したのが....
"さいきょうの俺"だ。
アレはヤバかった。人前で簡単に厨二魔法を使い、厨二的な言葉を発し、今思い出しただけでも吐血しそうだ。
そんな厨二期は俺が正気と理性を取り戻したことにわり数ヶ月で終了した。取り戻した時は何度壁に頭を打ち付けたことか...。
さて
何故そんな事を思い出したのか、簡単だ。
「久しぶりだな。ロイド...いや、呪王ロイド」
その時の
ヤバいヤバい現実逃避してる暇はないッ
向こう完全に俺のこと覚えてるぞ。
え、逃げ道なくね?
え、過去のこと話されたら俺死ぬくね?
え?ぇ......
助けて
_ラキュースサイド
ロイドは私の呼び掛けに応えることなく、黙って私を見つめた。忘れられたのだろうか、あの時はロイドも私も子供であれから長い間会ってなかったからな...少し寂しいが仕方ないことだ。
私は、ロイドに助けられた。
7歳の頃、私は領地の端にある小さな町を調査しに出かけた。後学のためにと父に連れてこられた私はうんざりで仕方なかったのをよく覚えている。
調査に行くのは、これから行く町がここ数ヶ月で暴行犯や盗賊の検挙率が目に余るほど向上しているからだ。大方、優秀な傭兵か冒険者が町にいるのだろう。そんな予想を立てて私達はその町に向かったのだ。
___子供ラキュースサイド
予想していた傭兵は想像よりも遥かに幼かった。私と同じくらいの年頃の少年が馬車を襲ってきた盗賊を倒している。
私達を襲おうとしていた荒々しい盗賊は、今では少年の近くで倒れて呻いている。
『貴様らまだここにいたのか...この間も馬車を襲っていたな』
「ま、またお前かよッ」
やはり町を守っていたのは彼のようだ。一冊の本を手に持つ彼は言葉で表せない禍々しいオーラを感じる。
『俺の町から出て行ったかと思えば、こんなところで馬車狩りとは...随分とあさましくなったな』
「くそっ、クソガキがぁ」
『今回の仕置きは前よりも辛いぞ。...`
「ッグ...ハッ」
そうして見たことも無い魔法で最後に残ってた盗賊を倒した。顔が顔がよく見えないが、彼は呆れたようなため息を吐いた。
『何度も...学ばない奴らだ。』
「ま、待ちなさい。君は...」
盗賊が倒されたことを確認したお父様は物陰から出て彼に声をかけた。しかし、彼は私達を見ることなく背を向けた。
『......名乗る程のものじゃない。』
静かにそういう彼を私は不気味に思った。名前を知ることが出来ないのは残念だが、ここは彼の機嫌を損ねないように大人しく引くしかない。
しかし、お父様はそうはしなかった。
「そうか...私はここの貴族なんだ..どうだ?私と契約を結ばないか?君を雇いたい」
貴族、その身分を出せば平民は簡単に拒否する事はできない。ましては、自身の住んでいる領地の貴族の言葉に逆らえるはずもないのだ。
もし拒否することで貴族の気分を害そうものなら、良くて家族諸共領地から追放され、最悪殺される。
要するに、お父様は彼を脅しているのだ。家族を人質にとって.........なんて浅はかなのだろう、
途端に空気が重くなった。...苦しい。
少年は振り返り、お父様に近寄った。
その顔は無表情。だが、明らかに盗賊以上の敵意を示していた...お父様に。
『...分をわきまえろよ。貴様程度が俺を使役できるなど天変地異に等しい。俺の町の者に手を出してみろ?貴様を死より苦しい呪いにかけてやる』
そう言って彼は町がある方向に歩いていった。重かった空気が、息もできなかった空気が澄んでいく。彼が離れていったことを確認した私はドキドキと鳴り響く胸に手を当てた。
「(殺されるかと思った......)」
普通の子供なら泣いていたはずだ。実際、お父様は涙目になっている。泣いていなかったのは、子供に泣かされる訳にはいかないという貴族のプライドがあったからだろう。
「(私も...あんなふうに強くなれる...かな......)」
この国で面と向かって貴族を脅せる人はいったい何人いるのだろうか。
そして、彼なら実際お父様を呪い殺せると思う。それだけの力を彼は持っていた。私も彼みたいに権力なんかに関係なく真っ直ぐ立てる力が欲しい。
そうして町に着いてから私は彼に付きまとうようになった。私は彼と少しずつ仲良くなっていった。
彼の名前はロイド。
ロイドの持つ本は呪われた物らしい。
ロイドは本に書かれた魔法を使うことができる。
ロイドが魔物の倒し方を教えてくれた。
ロイドが魔法を見せてくれた、とってもかっこいい魔法だ。
ロイドが苦しんでいた...呪物の影響だろうか。
ロイドの口調がたまに変わる...呪物に負けないで。
ロイドが外に出なくなった。
一人、部屋に引きこもっているらしい。
ロイドの叫ぶ声が聞こえる。苦しんでいる声が聞こえる。物が荒らされる音が聞こえる。うっすら血の匂いがする。
私は何も出来なかった。
そして、私は町を出た。家に帰ってしまった...ロイドに会えないまま。
___
私とロイドの関係はこんなものだ。数日間一緒に過ごしたくらいの仲だ。
あれから、ロイドが冒険者になったと知った。呪物を使って敵と戦っているのは、あの本の呪いに勝ったということだ。私も精進しなくては、と心に刻んだ。
今、私はロイドと肩を並べるほど強くなった。もう何も出来ない私ではない。私の強さを見せ、ロイドに頼れる人間だと証明するのだ。そして私は力強く目を合わせた。
ラキュースは昔、厨二期ロイドに会っている。しかしただの厨二を呪い的なアレだと勘違いしてしまった。呪いと戦いながら敵と戦う、というロイドをかっこいいと思ってしまったのが始まり、その後魔剣を手に入れて厨二スタート。厨二期ロイドを参考にした部分も多々...。
厨二期ロイドの解説
・ロイドが苦しんでいたのはフリ。厨二病特有のアレ。胸とか抑えてる。呼吸が荒くなったりするやつ。
・ロイドの口調がたまに変わるのは正気を取り戻す少し前の話。正気が少しずつ近づいているから。
・ロイドが外に出なくなったのは正気を取り戻してしまったから。叫び声も苦しみ声も物音も全部ロイドが恥ずか死んでいる時。血の匂いは壁に頭を打ち付け過ぎて血が出た。
ロイドは呪いという名の黒歴史と戦っている。この戦いが終わることは無い。そして勝ち目もない。ギリ引き分けが狙える。