ロイドとイビルアイは目の前の悪魔、デミウルゴスと戦い続けていた。強烈な魔法の応酬が続く中、ロイドの精神は限界に近づいていた。デミウルゴスは冷静に攻撃を対応しているが明らかにダメージを負っていた。ロイドの呪いの本に書かれた魔法は、デミウルゴスの知らない呪いだ。デミウルゴスの能力をじわじわと削っていく。ついでにロイドの精神も確実に削っていく。
『(なんで俺、こんなやばい奴と戦ってんだよ!)』
心の中で叫びつつも、俺の体は生き残るために反射的に動き続けている。呪いの装備で何とか生きてるけど体力的にも精神的にも限界なんですが!?
『まだいけるか、イビルアイ。』
「私は問題ない。...奴と直接戦っているのはお前だろ、大丈夫なのか?」
女の子だし体力とか魔力とか大丈夫かな?って思ったら逆に心配されてた。嘘だろ、俺泣き言言えねぇじゃん。だってこんな幼くて、細くて......そういえばこの人もアダマンタイトだった。
『(さっきからまともなダメージ与えられてないのに)戦っている、ねぇ...』
「先程の呪いはもう一度放てないのか?奴も呪いを警戒して直接的な攻撃を避けているのだから。」
.........勘弁して下さい。タダでさえ胃と心臓と頭が痛いんです。あとついでに迷子になって走ってきたから、足にも疲労が.....
『......(アドレナリン先輩からの返事はありません。諦めましょう。)』
「いや、すまない。軽く言ってしまった。お前の事情を考慮すべきだった。」
なんか察してくれた。うれしい。優しい人だ。
「そろそろよろしいでしょうか?あまり時間を使ってしまっては、計画に支障をきたします。」
『もう少しなんだがな。』
因みに、もうすぐ俺が呪いをかけてから十分が経つ。呪いは一気に効果を発するものがあれば、じわじわと効果を発するものがある。俺の呪いの効果は贅沢にも両方だ。(当初厨二病患者)
その時のことは今でも覚えている。友人から変な奴判定されながらも、呪術に関する本を読み漁り作り上げたことを。丑三つ時という古風な言い方にカッコよさを感じ無理やりねじ込んだ設定でもある。
......思い出したら、頭がクラっとした。もうやめておこう。
さて、丑三つ時は時計の二時から二時半。分に直すなら、十分から十五分。俺の呪い効果が最も効果を発するのは丑三つ時である二時間後で、その次に大きいのは十分後だ。呪いとは蓄積、時間が経てば経つほど効果は大きくなる。
試したことは無いけど、設定()にそう書かれてた。さすがに二時間も呪い続けるほど残酷な俺じゃないので。だいたいが五分、耐性のタレント持ちなら十分でリタイアするため呪いの効果についてはよく知らない。
この悪魔は本当に強いんだろうな。弱体化は効いてるけど、痛みは最初以外効いてない。大人が喚くほどの痛みでも悪魔からすれば針が突き刺さるくらいにしか感じないのか?
でも痛覚がない訳では無いんだろ?
なぁ。時間だぜ?
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ロイドとイビルアイの攻撃を避けながら、攻撃をするデミウルゴスは徐々に焦りが生まれ始めていた。
「(何故だ。何故、この男にこれほどまでに追い詰められている。そこらの
デミウルゴスは数日間ロイドの周りを探っていた。隠密が得意な者に追わせ、ロイドの強さを分析していたのだ。
普段の生活は
ロイドによって装備された呪物が能力を跳ね上げる。結果弱者からそこそこの強者(ユグドラシル視点)になることができる。
『(アインズ様の警告は正しかった。そして何より警戒すべき点は......この呪いッッ)』
じわじわと広がり続ける呪いが着実にデミウルゴスの能力値を減少させていく。渋汗が止まらない。
更なる呪いを受けない為に近距離を避けているが、元よりデミウルゴスは戦闘には向かない能力値なのだ。頭脳面で合理的に与えられた能力値は悪くいえば戦闘で特筆するものがない。
ロイドの呪いの効果の一つは全体の能力値を下げる。つまりこのまま戦い続ければ、デミウルゴスの能力値はロイドの能力値よりも下回る危険性がある。
もちろん何度も解呪を試みてはいるが効果はない。
未知の魔法
ステータスの異常な向上
解呪の効かない呪い
「(ユグドラシルのデータが使えないとは厄介な.....。あと数十秒でアインズ様がご到着なさる。アインズ様が危険性を示していらしたのに、何たる不覚。)」
ふと、ロイドの表情が変化し口が動いた。また呪いかと、デミウルゴスは警戒し落ち着いて動きをみる。
「(..."じ、か、ん、だ、ぜ"......いったい何を、)」
「ッッッカッッグ、!?、、、ァ、ハァッ、、」
突如、心臓を何かに殴られたような痛みが体に駆け巡った。デミウルゴスは異様な痛みに思わず胸に手を当てて体をふらつかせる。
息を吸えば心臓が痛み、体を動かそうとすれば心臓が痛み、声を発すれば心臓が痛む。いっそ心臓を取り出して治した方が動けるのではないかと考えが生まれるが、今のデミウルゴスでは治す前に死ぬ可能性があった。
そしてこの場にデミウルゴスが思考する時間を与える程の善人はいない。
『どうした、隙だらけだぜ?』
ロイドの嘲笑が響く。デミウルゴスは拳を振りかぶったロイドの姿を捉えたが、直後ロイドの拳がデミウルゴスに炸裂する。
まともにガードできなかった拳を受け、デミウルゴスは殴り飛ばされた。
「クッ......ッ」
『しっかりと効いてくれて安心するな。さすがの悪魔も痛いのはイヤだったか?』
立ち上がろうとするも体が思い通りに動かないデミウルゴスはすぐに痛みに慣れようと魔力を巡回させる。対してロイドは一歩一歩とゆっくりとデミウルゴスに向かって歩いている。
先程までの戦闘音とは嘘のように辺りは静かだった。
デミウルゴスの荒々しい息づかい。
ロイドの靴の音。
その静かさが逆に不安感、不快感を与える。虚空に吸い込まれたかのような気味の悪い感覚が奥底に、じっとりと広がっていた。
そんな中、ロイドは本をめくりながら歩いていた。
デミウルゴスに近づく姿は...まるで判決を言い渡そうとしている裁判官のようであり、この世界の全てを決める支配者を彷彿とさせた。
ロイドは笑っていた。いつものような無表情ではなく、戦っていた時のような険しい表情でもなかった。
強敵を倒せることに対しての笑みには見えない。仲間を守れたことでも自分が生き残ったことでもない。
邪魔な敵を排除できる安心感
自分の強さを再確認した優越感
ソレはもう敵を見ていなかった。
ソレは問う。
『この世の別れは済ませたか?』
__大きな音と共に土煙と血が舞った。