もう一つの連載も中途半端なのに
──世界は不思議に満ちている──
それはとある探検家の言葉。
そんな
そして二度と戻ることのなかった主の言葉。
彼は太陽の様な人だった。
人に好かれ易く、また人から頼られると断れない性格だった。
私はそんな彼の使用人だった。
彼は定職にも就かず、ぶらぶらと世界を巡る。
ある時、世界最高峰からの景色を見てくると言って、三年程帰って来なかった。
またある時は、悪魔に会ってくると言って、びしょ濡れになって帰って来た。
だから、彼が旅先で行方不明になったと、彼の親友から聞いたときあんまり心配はしていなかった。
どうせまた何時ものようにひょっこり帰ってくるだろう、チープな子供騙しのお土産を持って。
だが、彼は帰って来なかった。
彼が死んでしまったのだと、覚った。
ある日、彼の荷物を整理していた時、彼の親戚を名乗る
『此処から出ていけ』
何を言われているのか理解できなかった。
『私は“ ”の身内の者だ。だから彼の遺産を管理する役目がある』
彼の存在を迷惑がってたらい回しにしていた癖に何を言う。
どうせ管理と言って、金目のものを売り飛ばすだけの癖に。
『おい!聞いているのか!』
嗚呼、五月蝿い。
彼が居なくなった途端にコレか。
喋るな、黙れ、息をするな、貴重な酸素が消費されるだろう。
──メキッ!
『グペッ!?』
余りに五月蝿いから殺してしまった。
やはり最期の言葉すらも醜いモノだった。
それからも彼の親戚を名乗るモノは絶えなかった。
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“私”は目を開ける。
其処にあるのは無限に続く白と黒の境界線。
何処が空で何処が地面なのか分からない空間。
自分は地面に立っているのか、それと空に立っているのかそれすらも考えられない世界。
それ以前に、自分に肉体が有るのかさえも疑わしい。
(“私”は死んだはずだ。
しかし、意識はある。
どういう事だ?)
《そう、お前は死んだ。だから此処に居る》
いきなり目の前に、一人の男があらわれる。
“彼”の顔には薄く靄の様なモノがかかっていて見ることが出来ない。
その声はまだ幼い少年の様でもあり、年をとった老人の様でもあった。
(此処は何処だ?)
《此処は生と死の狭間。魂の境界線。完全であり、不完全な世界》
(狭間?何故私は此処に居る?)
《普通此処に来た魂は溶け合い、そして新たな体を造り転生する》
《だがお前は神々が造り上げた、人という枠組みから外れている》
《結果、溶けず混ざらず。自我までも残っている》
《異質な存在は世界を滅ぼす》
(私が居ると世界が滅びるのか。ならどうする?)
消されるのか?
《我々はお前をそのまま違う世界へと転移させることにした》
(なるほどな)
《何故すぐに納得する?》
(納得したんじゃない、諦めたんだ。どうせ拒否権は無いんだろう?)
拒否したところで意味は無い。
それならばいっそ諦めた方が早く済む。
それに
(主が居ない世界なんて居ても意味が無いしな)
《そうか》
《では転移を始める。何か最後に一つ叶えてやろう》
(………出来れば私の主に関する記憶を消してくれ)
転移先には主は居ない。
ならば記憶を持っていても悲しいだけだろう。
《良かろう》
私の身体が淡い光に覆われ始める。
コレが転移の前兆なのだろう。
《名前を言え。それによって転移が終わる》
(私の名前は……)
コレは主につけてもらった大事な名前。
記憶が失われてもこの名前が有る限り、主との絆は無くならない。
(……葉月だ)
次の瞬間、視界が白で染まる。
葉月が居た場所にはもう何も残ってはいなかった。
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“日本:東京のとある路地裏”
「此処は何処……?」
転移先はまさかの路地裏。
“銀色のふさふさの尻尾と狼の耳”を持つ少女が呟いた言葉は、誰にも聞かれずに虚空へと溶けていった。
更新は遅めになります