自由気ままな傍観者になりたくて!   作:時間が無い

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プロローグ

 私は何ものにも縛られない自由に生きることに憧れている。

 

 社会で生きる上で人は法律など様々なものに縛られる。

 社会で生きる中でなければならないものも多いが、一人で好き勝手に生きたい人にとっては煩わしいものだ。

 しかし、何にも縛られずに生きることが出来るほど、私に力はなかった。

 だからこそ、強大な力を持ち何ものにも縛られずに生きることに憧れた。

 

 そして叶うなら、アニメや漫画のような激しい戦いを近くで高みの見物をしたい。

 正義でも悪でもなく、中立な立場で好きに生きる。

 そんな生き方が出来れば、楽しいだろうなぁ。

 

 

 

 そんなことを思っていた私の人生は呆気なく幕を閉じ、新しい人生が始まった。

 何が起きたか分からないが、おそらく転生したのだろう。

 私は生後数か月の女児になっていた。

 そして周囲は魔力で満ちていた。

 アニメや漫画のような世界に転生したのだろう。

 

 私は喜びの声を上げたが、まだ赤子で声帯が発達していない為に「オギャー」という音しか出なかった。

 前世の知識を持っての転生、特別な力が無かろうとも化学の知識や考え方と魔力を組み合わせれば圧倒的な力を手に入れられるかもしれない。

 憧れた何ものにも縛られない自由な生活を送ることが出来るかもしれない。

 

 早速、私は自分なりに魔力の研究を始めた。

 魔力の知覚はすでに出来ていたため、魔力の操作から始めた。

 魔力を手足のように動かすことは簡単に出来るようになった。

 次に、魔法などの魔力を使ってできることを検証したが、出来ることは身体強化程度のことだけだった。

 物に込めたり、吹き飛ばしたりも出来たが、火や雷を発生させたりすることは出来なかった。

 

 次に、知覚能力の検証をした。

 体内の魔力を知覚できるということは、視力や聴力により魔力を知覚しているわけではない。

 眼を閉じて周囲の魔力に意識を向ければ、魔力を知覚することは出来た。

 しかし、体内の魔力ほど鮮明には知覚できなかった。

 それでも練習を続ければ、体内の魔力と同様に知覚できるようになった。

 少しずつ知覚できる範囲が広がっていき、私はある可能性に行きついた。

 

 

 魔力と同じように光や音、熱なども魔力と同じように知覚できるのでは……

 

 何の根拠もない仮説だが、魔力を感知する器官を電磁波や熱、空気の振動を感知できるように拡張できれば可能性はある。

 そこから私は魔力の知覚訓練をしながら、魔力を利用して感覚器官の改造を行った。

 当然のように何度も失敗し、魔力暴走を何度も起こした。

 感覚器官の改造だけでなく、神経や筋肉などをイメージ通りに動かせるように成長に合わせて改造する。

 

 二年が経つ頃には、イメージ通りに身体を動かせるようになり、イメージとの誤差はナノ単位あるかどうかでしょう。

 肉体改造という危険を冒し続けた結果、私の肉体は魔力に良く馴染み、魔力を扱い易い肉体に変異させることに成功した。

 その為、内包する魔力は両親とは比べ物にならない程に膨大になった。

 感覚器官の改造にも成功し、光や音、熱、物の動きを感じ取れるように知覚できるようになった。

 しかし、まだ知覚できるようになっただけで、視覚や聴覚、触覚以上に優れているとは言えない。

 それでも時間を掛けて鍛えれば超えることも出来る。

 そうなると、次は知覚できる情報を処理しきる能力が必要になってくる。

 となれば、またまた肉体改造。

 

 

 

 あれから三年経ち五歳になった私は、両親に捨てられた。

 膨大な魔力を使って肉体を改造している最中に魔力暴走を起こし、抑えるのに数日かかったせいで悪魔付きと間違えられて商隊に売られてしまった。

 辺境の田舎から王都に戻ろうとしていた商隊は、盗賊に襲われ私は積み荷と一緒に廃村に運ばれた。

 廃村について盗賊が宴会を始めて少し経った頃に漸く魔力暴走を抑えることが出来た。

 三年で私の内包する魔力量は更に増え、より効率的な魔力の運用も理解している。

 魔力の感覚器官も視覚や聴覚などを格段に上回るほど、機能が向上し情報も問題なく処理出来るようになった。

 知覚範囲も廃村全体をナノ単位の狂いもなく把握できる。

 

 そんな訳で盗賊程度、素手で皆殺しに出来る。

 剣術を習っているものもいたが、無駄な動きが多すぎて話にならない。

 知覚能力を強化したことで、物の動きや力の移動が鮮明に分かる私にとって無駄のない動きは息をするようにできる。

 その上、攻撃範囲なども手に取るように分かるし、死角もない。

 目を閉じたまま攻撃を紙一重で躱し、人を豆腐のように握り潰す私を盗賊たちは化け物のような目で見ていた。

 失礼な話よね、魔力で改造したのもあるけど、美少女であるのは間違いない。

 膝裏まである絹のような黒髪、宝石のような赤い瞳(閉じてるから見えないけど)、人形のように整った顔、間違いなく美少女、いや、まだ美幼女かな。

 

 まあ、何はともあれ、お金と食料は確保できたし、両親や周りの人の目を気にしなくていい場所と時間も確保できた。

 この世界にどんな化け物が居るか分からない以上、出来ることは多少の危険は無視してやった方が良いわね。

 後、一度王都に行ってこの世界の情報を集めたいわね。

 それに、何か扱い易い武器も欲しいわね。

 自由に生きるためには、まだまだやらないといけないことが多いわねぇ。

 

 あれから肉体の改造が出来ないか試したが、魔力量を増やす以外はあまり意味が無いことが分かった。

 なので、成長に合わせて筋肉や神経を強化するのみに留めた。

 女子としては筋肉を鍛えてマッチョになるのは少し嫌だったから、見た目は変えずに質だけを向上させた。

 魔力はより緻密により強固に膨大な量の魔力を練れるように訓練を行い。

 

 武器と防具は魔力伝導率が高いスライムを使うことを決め、スライムゼリーを集めて研究し、私が自由に操り強化出来るスライムゼリーの作成に成功した。

 黒い色素のスライムゼリーを使い和服の打掛の形にして着こむ。

 打掛にした理由は、布面積が多い着物を重ねて着る為、持ち歩けるスライムゼリーの量が多いことと元日本人として憧れていたから。

 ただ、黒一色だと微妙なので、赤と黄色のスライムゼリーで刺繍のような模様をあしらう。

 後、目元を隠す仮面も同じように黒を基調に作り、目の部分に穴は開けずに塞いだ。

 そもそも目と耳は塞いでも問題ないしね。

 戦闘時は、内側の見えない部分の着物を操り、鞭のような刃に変えて斬り裂く。

 打掛のままでも防御力に問題はない。

 

 知覚能力に関しては緻密に知覚できる範囲を半径三百メートルに絞り、それ以上の範囲は精度を落として範囲を広げる。

 正直な話、一キロ離れた物までミリ単位の狂いもない精度で知覚できることに必要性を感じなかった。

 

 そしてさまざまな情報を集めるために、目立たないように黒いワンピースをスライムゼリーで作成して王都に行った。

 気配を消して様々な場所に忍び込み、大量の資料をあさって知識を集める。

 古代文字は少し難しかったけど、この世界の歴史を知るために学んだ。

 おかげで面白いことも知れたしね。

 

 そして十歳の時、王都から帰る途中で商隊を襲った盗賊を見つけて襲いお金や食料を奪う。

 お金と食料だけが目的だったのだけれど、悪魔付きが閉じ込められた檻を見つけた。

 助けるか悩んだけど、食料調達や魔人ディアボロスについての情報集めなど、やることは多いので協力してもらうために助けることにした。

 廃村まで運ぶのは面倒だったので、檻を破壊してその場で治療する。

 何度も魔力暴走を繰り返し、制御して来た私にとっては簡単に治療で来た。

 見るに堪えない肉の塊は、茶髪黒目の美少女エルフになった。

 

「え?えっ!?私の身体……どうして?」

「初めまして、私はエル。気分はどう?」

「貴女が治してくれたの?」

「ええ、そうよ。見た感じ、問題はなさそうね」

「問題ない、ありがとう」

 

 急に元に戻ったことで混乱しているみたいね。

 話は廃村に戻ってからにしましょうか。

 

「付いてきなさい。近くに私の住んでる廃村があるから、詳しい話はそこでしましょう」

「分かった」

 

 彼女は適当な布を身体に巻いて肌を隠す。

 まあ、女の子だし裸で歩き回るのは嫌よね。

 彼女が移動の準備を整えたので、私もスライムを伸ばしてお金と食料が入った木箱を持ち上げる。

 

「!?」

「どうしたの?行くわよ」

 

 大量の木箱を運ぶ私を見て目を見開いて固まる彼女に声を掛ける微妙な顔をしながらついて来る。

 廃村に着き廃屋を改良した家に入り、椅子に座って彼女に話しかける。

 彼女も近くに置いてあった空の木箱に座って話す体制を整えた。

 

「まず、何から聞きたい?」

「……じゃあ、貴女は何者なの?」

「私?……魔力の研究をしたり、たまに盗賊を狩ったりしてる……暇人?」

「暇人?」

 

 私を現す適切な言葉が出てこないせいで、二人揃って首を傾げる。

 私って客観的に見たらどういう存在になるんだろ?

 

「まあ、私のことは傍観者か暇人くらいの認識で良いと思うわよ」

「……じゃあ、傍観者の貴女が、どうして私を助けてくれたの?」

「君に手伝って欲しいことがあったのよ」

「手伝って欲しいこと?」

「ええ、悪魔付きの秘密について調べる手伝いをして欲しいのよ」

「!?」

 

 さて、手伝ってくれるかは、この説明次第ね。

 

「悪魔付きには、魔人ディアボロスや三人の勇者が関係しているみたいなのよね。そしてその秘密を隠そうとしている存在がいる。君も悪魔付きだったわけだし、気になるでしょう」

「その秘密を調べてどうするつもりなの?」

「私は何もするつもりはないわよ。別に恨みとか何もないし」

「……じゃあ、どうして調べようとしてるの?」

 

 私の言葉に困った顔で聞き返してくる。

 

「面白そうだから」

「…………」

「君がどうしたいかは、秘密を知ってからでも遅くないと思うわよ」

「それもそうね」

 

 まあ、彼女がどうするかは彼女が決めることだから、私が何か言うことじゃないしね。

 

「私が君にしてあげられることは、君が一人で生きられるように鍛えることくらいね。秘密を知った時に復讐するにしても、しないにしても、力はあった方が良いでしょう」

「……私を従者や奴隷にする気はないの?」

「え?従者も奴隷もいらないわよ」

 

 従者や奴隷なんて管理するのが面倒じゃない。

 自由気ままに世界を巡り、美味しいものを食べたり、裏の組織の抗争を見たりしたいもの。

 腹心なら一人くらいいてもいいけれど、彼女に強制することじゃないもの。

 

「君が腹心になってくれるっていうなら、嬉しいけれど強制するつもりはないわ」

「……すぐに答えられないけれど、考えてみるわ」

「そう。なら、しばらくは君を鍛えるということでいいわね。それで君の名前は?」

「…………トア。よろしく、エル」

「ええ。よろしく、トア」

 

 考えたってことは今自分でつけたのかな。

 まあ、私も似たようなものだから良いかな。

 さて、これから面白くなりそうね。

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