自由気ままな傍観者になりたくて!   作:時間が無い

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異世界って素晴らしい

 トアを助けてから一か月の間、トアに魔力の使い方を教え、強くするために摸擬戦と称してボコボコにする。

 まあ、魔力の使い方は赤子の頃から手探りで色々して来たから教えられるけど、戦い方なんて私分からないし仕方が無いよね。

 だって、前世も今世も剣技や武術なんてしたことないもの。

 戦い方に関して私が出来ることは、動きの無駄とか隙を指摘しながらスライムで叩くだけ。

 もともと才能があったのか、一か月でかなり動きの無駄や隙は無くなったけれど、私の高性能な知覚能力ならまだまだ見つけられるわね。

 魔力は十分あるし、そこそこ制御出来ているけれど、十歳ならこんなものよね。

 

「エルがおかしいだけですよ」

「私、何も言ってないのだけれど……」

「顔に書いてますよ」

 

 私の顔、上半分がスライムの仮面で隠れてるのによく分かるわね。

 というか、私ってそんなにおかしいのかしら?

 

「私一般的な魔剣士の強さ知らないのよね。私の魔力の技術って全体のどれくらいなのか分かる?」

「私も詳しくは知りませんが、武神祭で見た人達を基準するなら、彼らは同じ土俵にも立てないんじゃないでしょうね。エルの魔力制御は次元が違いますから……」

 

 最近、トアは敬語を使い始めたが、本当に人なのかと言いたげな目で私を見て来る。

 しかし、なるほど、私の魔力制御はこの世界の基準から大きく外れているのね。

 それなら私のことを化け物を見るような目で見て来るのも納得ね。

 

「まあ、表に出てこないだけの実力者もいるでしょうし、力を付けて置いて損はないわね」

「一体何と戦うことを想定しているんですか?」

「魔人ディアボロスのことを調べているのに、戦う想定をしていないとでも思うの?」

「魔人ディアボロスが復活するということですか?」

「可能性はゼロじゃないと思っているわ」

 

 まあ、私はディアボロスと戦うつもりはないけれどね。

 だって、ディアボロスと勇者の戦いを近くで見たいじゃない。

 

「トアも力を付けておきなさい。ディアボロスの秘密を調べる過程で邪魔が入る可能性もあるのだから」

「はぁ、この一か月でかなり鍛えられましたよ」

「何言ってるの?まだまだ強くなってもらうわよ。最低でも私の間合いに入って来れる程度には強くなってね」

「あの殺戮領域に踏み込めということですか?」

「殺戮領域?」

 

 ジトっとした目を私に向けて来る。

 その目は『本気でいってるのか?』と言いたげな目ね。

 別に私の間合いは殺戮領域ではないのだけれど、踏み込んで来た敵をスライムの刃で細切れにしているだけよ。

 それに私の間合いって言っても100m辺りまで伸ばすスライムの刃は少ないから普通に避けれるし、逸らせば近づけるわよ。

 

「エル、人間基準で考えてください。音速を超える速度で十数本の刃が全方位から襲い掛かってくるのですよ。対処できるのは化け物だけです」

「そんなことないと思うけど、魔力を使いこなせれば誰でも対処できると思うけどなぁ」

「はぁ、エルに何を言っても無駄なことだけはよく分かりました」

「酷くない!?」

 

 最近、私の扱いが酷いと思う。

 戦い方はともかくとして、魔力の使い方や食料を提供してるのは私なのに、こんな扱いはあんまりだ。

 そうそう食料と言えば、良いものを見つけたんだった。

 

「トア、美味しそうな毒キノコ見つけたけど、一緒に食べる?」

「毒キノコを私に勧めないでください。というか、食べるつもりなんですか?」

「毒なんて魔力でいくらでも分解できるし、仮に分解せずに臓器をズタズタにされても魔力で治療できるもの」

「もはや何でもありですね」

「魔力ってすごいわよね」

 

 本当に、ドクツルタケを食べれるなんて素晴らしいわよね。

 前世で味は美味しいって聞いてたけど、死の天使って呼ばれるくらいに凶悪な毒を持ってるのよね。

 どんな味か気になってたけど、命を犠牲にしてまで食べる勇気はなかったのよね。

 なのに、この世界では魔力で毒を分解できるし、臓器を壊されても治せる。

 毒があるけど美味しいものを好きなだけ毒を気にせずに食べれるなんて素晴らしい力よね。

 

「トア、そろそろ食料調達お願いね。ディアボロスの情報を集めるのはまだ無理でしょうけど、食料の調達くらいは出来るでしょう」

「そうですね。私は毒キノコを食べたくありませんから」

「別に強制するつもりはないわよ」

「私も本気では心配はしていません」

「そう。なら、明日から食料調達よろしくね」

 

 

 

 トアと出会って半年が経ち、トアはかなり成長した。

 半年の修行で漸く私の間合いに入ることが出来るようになった。

 まだ100m辺りで避けたり防いだりするだけで近づいて来れないが、二、三年すれば50m手前くらいまでは近づけそうね。

 そこから先は踏み込まれたら私が困るのよね。

 半径50m圏内は生物が生きられるスペースがないほどの斬撃の密度にしてるから、近づかれると正直怖い。

 半径10m圏内は全てを塵に出来るほどの斬撃密度による攻撃が可能だけれど、その中を進んで来られると私じゃあ勝てないかな。

 まあ、私のことは良いとしてもトアはある程度強くなったし、そろそろディアボロスの調査をさせても良いわね。

 心配なのは、スライムを剣状にしているから、私ほど攻撃範囲が広くないし、手数も少ない。

 私と同じようにスライムを鞭のような薄い刃上にした方が良いと思うんだけどね。

 まあ、十分に戦えているから大丈夫でしょう。

 

「トア、ある程度強くなったし、そろそろディアボロスの調査もお願いするわね」

「分かりました」

「勝てない敵が居たら逃げるのよ」

「情報収集に命はかけないですよ」

「じゃあ、頑張ってね」

 

 

 

 トアにディアボロスの調査を頼んでから四年経った。

 最初の二年くらいは少ない情報から色々と推論を立てていたけれど、三年目からトアが協力者を見つけ入ってくる情報が増えた。

 協力者はシャドウガーデンという組織のようで、ディアボロス教団の壊滅を目的としているらしい。

 なんでもリーダーのシャドウ以外は全員が女性の組織らしい。

 ハーレム願望がある男子が喜びそうな組織ね。

 まあ、彼女達のおかげで私が知りたかった情報は得られたので、感謝はしている。

 それに、シャドウガーデンとディアボロス教団の戦いなんて面白そうなものイベントは逃せない。

 

 トアも教団に思うところがあるようで、私の手伝いがない暇な時間はシャドウガーデンに協力している。

 四年間でかなり鍛えたけど、三年目からは修行の量が減り、最近はほとんどしていない。

 四年前とは比べ物にならないくらいに強くなったから鍛える必要性はもうないのだけれどね。

 

 私もこの四年間何もしてなかったわけではない。

 トアに散々化け物扱いされたので、無法都市に訪れて三人の支配者を離れたところから見て来た。

 無法都市で頂点に立つだけの実力者というだけあって確かに強そうだったわ。

 けど、強そうくらいしか思わなかった。

 確かに、彼らがこの世界で上位に入る実力者ということなら、トアが私を化け物扱いするのも理解できる。

 無法都市を支配するつもりはないから、適当にそこら辺の極悪商人からお金を大量に奪って帰ったけれどね。

 それ以外は魔力の訓練を基本的に行い、空いた時間は王都で情報収集。

 

 という建前で、最近は王都近くに拠点を移し、無法都市や盗賊から奪ったお金で異世界観光中。

 

「エル、楽しそうですね」

「あら、トアも観光?」

「違います。教団の情報収集をしに来たんですよ」

「シャドウガーデンが情報を提供してくれるんじゃないの?」

「彼女達はあくまで協力者ですよ。情報を貰ってばかりで何もしないわけにはいきませんよ」

「まあ、それもそうね」

 

 確かに、協力者なのに一方的に情報を貰うのは流石に問題ね。

 ということは、今までも彼女達の手伝いや情報の提供をしていたのかしら、大変そうね。

 

「そういえば、シャドウガーデンのメンバーは皆強いのよね?」

「……エル基準で強いと言えるのは、最高幹部の七陰くらいだと思いますよ」

「七陰ねぇ」

 

 組織の最高幹部、そしてトアが私基準で強いって言うならかなりの実力者ね。

 今度挨拶のついでにからかってみようかな。

 

「ん?」

「どうかしましたか?」

 

 彼女は確か、アレクシア王女よね。

 もう一人は魔剣士学園の学友かしら?

 いや、学友というより犬?のような扱いだけど……

 彼女ってそういう趣味だったのかしら?

 優秀な姉と比べられて心がすれているせい?

 まあ、もう一人の男も喜んで金貨拾ってるし、見なかったことにしましょう。

 

「エル?」

「少し見てはいけないものを見ただけよ。見え過ぎるのもの考えものね」

「目を閉じているのに、見え過ぎるって意味が分かりませんね」

「目なんかより良く見えるわよ。トアも目に頼らない知覚能力を身に着けた方が良いわ」

「人間が簡単に知覚能力を増やせると思わないでください」

「私も簡単には増やせないわよ。結構頑張って身につけたのよ」

「エルが頑張って身につけたのなら人間には無理ですね」

「私も人間だよ!?」

「あはは、面白い冗談ですね」

「冗談じゃないわよ!」

 

 棒読みで笑い真似するトアは全然笑ってない。

 その上、何を言ってるのか分かりません見たいな顔して見てくる。

 私の従者はずなのに、私のことを主として慕っている様子がまるでない。

 まあ、自由気ままに遊び歩いてるだけだから、慕われえる要素は何もないのだけどね。

 それでも従者になったのなら、もう少し慕ってくれてもいいんじゃない。

 

「それで、わざわざ私に会いに来た用事は?」

「エルが持っている教団のアジトの情報を聞きに来たんです」

「なるほどね」

「エルのことだから、王都にある教団のアジトは全て把握しているのでしょう」

「まあね」

 

 王都にある教団のアジトは把握しているけど、ただ教えるのも面白くないわよねぇ。

 いや、アジトの場所をトアに教えれば、トアがシャドウガーデンに情報を流してくれるのよね。

 そうなれば、シャドウガーデンはアジトを潰すために動いてくれるはず。

 

「地図と何か書くものを貸しなさい」

「?……どうぞ」

 

 トアは私が情報を簡単にくれないと思っていたのか、少し不思議そうに首を傾げて地図とペンを出す。

 私はトアから受け取った地図に王都にある教団のアジトの情報を全て書き込んで返す。

 

「その情報、シャドウガーデンに渡してあげなさい」

「?分かりました」

 

 トアは最後までよく理解していないようだったけど、問題はなさそうね。

 後は、シャドウガーデンが動くのを待つだけね。

 さて、王都の観光を続けましょうか。

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