美少女アクゲーに転生しました!! 無力な男にどうしろと!?   作:伸縮大王

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執筆素人童貞です
寛大な心で対戦お願い致します


一話 タイムスリップものですね! え、違うの? ってお話

 

チリリリ、チリリリ、と。

日差しが差し込む朝の中で、目覚まし音により俺は、朧気(おぼろげ)ながらも眠たい目を開けた。

アラームを鳴らすスマホを手に取り、時刻を見る。

 

06:30

 

設定した時刻より三十分超えているが、現状問題無し。眠気で重たい身体を根性で動かし、ベットから離れ、学生服に着替え、寝間着と昨日準備した学生鞄等を持って、顔を洗いに洗面所へと向かう。

 

何せ今の俺にとって早起きは絶対なのだ。早起きは一日の時間を大幅に広げるのでするに限るが、それ以上に俺にとっては必須科目だ。

 

俺の命の為にも。

 

頭の中がボヤケているものの、無事に洗面所へと辿り着くと、洗濯機へと寝間着をぶち込み、洗面台にて、泡立った洗顔クリームを顔に塗りたくり、そのまま水でジャブジャブする。

 

洗うというよりは、寝惚けた頭への気付けに近い。洗顔クリームは、あれだ。やらないと怒られるから。

 

まだ眠気は取れないのか、大きな欠伸をしてしまうが、先程よりは随分マシになった。

そのまま歯を磨いて口もリフレッシュ。

ぼんやりしたままの頭で、何やら美味しそうな匂いのするリビングへと向かう。

 

「――お。おはよー、今日も早いわね。もう朝食にする?」

「おはよっす、今から食べるわ」

「まだ眠たいんじゃないか? 二度寝してても良いぞ? 寧ろ起こしに来てもらえてお得だろ」

「嫌っす……」

 

リビングには朝食を作り終え、献立をテーブルに並べている母さんと、それを手伝っている父さんがいた。

それぞれに反応を返しながら、俺はただ席に着く。予定通りに起きれば自分も手伝いは避けられないが、こういう時間なら完成された朝食にありつくだけでいい。

 

「それじゃ、頂きます」

 

母さんの掛け声に合わせて挨拶を済ませると、そのまま目の前の料理を口に運ぶ。

 

昨日の残りの豚汁。

白飯。

照り焼きにした白身魚に、これまた残りのニラの卵炒め少々。

ハムとトマトとキュウリ、それと……なんだっけ、これ? ベビーリーフだったっけ。それをシーザードレッシングで和えたサラダ。

 

うーん、豪華。いや、いつもこんな感じだが、やはりいつ見ても母の努力には感謝しかない。

朝食って用意すんの意外と大変だもんね。晩飯の残りもん使わなきゃ彩りとかやってらんねぇのである。

 

テレビでニュースや占いを見たり、母さんと父さんのテレビから提供されたネタによる談笑を聞きつつ、たまに相槌を打ちながら、その彩り豊かな食材達を腹に押し込む。

食べ終わると共に、皿を纏めて流し台に置き水につけると、今度は荷物の点検。この時点なら目も頭もそこそこ冴え始めるので、寝ぼけ眼で失敗する事もない。

 

ここで忘れ物は極力減らすのが朝で一番重要だ。自分に損しか無い事など起きない方が良いからね。

因みに今まで五敗以上している。宿題は忘れた事は無いが、体操服とかね。

幾ら調子良くてもやらかすのがボクの悪い癖。

 

「弁当はいらなかったわよね?」

「ん。学校の購買で買うわ」

「食堂あるんでしょ? お金あげるからそこで食べたら? ほらぁ、愛しのあの娘と――」

「バイトで金はあるし、愛しのとか、そういうのは俺には荷が重いんで」

 

母の質問に返しつつ、財布も確認。オッケー、手持ちは十分。

荷物の点検も問題無し。後は記憶してなかった忘れ物が無いかが気掛かりだが、それはもう、流石に諦めよう。

 

「んじゃ、行ってきます」

「早いなぁ。もう少しゆっくりしたらどうだ?」

 

いや、父さん。そうは言いますけどね?

 

「ゆっくりする、つったってなぁ」

 

そう口にした途端。

 

ピンポーン。

 

「……ほら」

 

玄関の方を親指で指すと、父さんは「あぁ、確かに」と納得したように頷いた。

おう、そのニンマリした笑顔は何や。

 

「んじゃ、そういう事で」

「そんな事言ってぇ。私が出るから、翔太郎、アンタ自分の部屋で寝てなさい?」

「行くから」

 

母さん、貴女何企んでんのや。いや分かるけど。

制服シワシワになるから嫌だ。後、その後の展開が目に見えるのも嫌だ。

 

男のロマンもな。この世界じゃ地雷、死亡フラグなんだよ。

 

母の戯言を切り捨てながら、そそくさと玄関へと向かう。幸いにも彼女は一度チャイムを鳴らしてから直ぐに2回目を押す程、野暮ではない。

 

靴を履き、少し、いや、なんかもう諦めに近い気持ちで大きく溜息をつきながら。

 

俺は扉を開け、

 

「あ、おはようございま――もぉ。また翔、早起きしてるぅ……」

 

――目の前にいる、蒼い瞳をした、銀の長い髪の少女を視界に入れた。

 

浮世離れした容姿に反し、紺のブレザーに赤いストライプ柄のネクタイ、赤と白と緑の混ざったチェックのスカートとまぁ王道の女子高生の制服らしい制服を着込んでる美少女一人が、肩に学生鞄をかけて立っている。

 

いやぁ、非現実的。びゅーてぃふぉー。目の保養とは正にこの事。

元気な表情が一転してジト目にコロコロ変わって可愛いね。でも、それを俺に向けんのはやめて?

 

死ぬから。

 

「毎朝懲りませんねぇ、ホント」

「私の台詞だよ。ゆっくり寝ててよ。幼馴染を起こすのは女の子の夢なんだよ?」

「逆は兎も角、そんなん聞いたことねぇよ。つかお(あつら)え向きの幼馴染、他にいるじゃんよ。女の子同士だと見栄え良いらしいよ?」

「その幼馴染と一緒に狙ってたりするんだけどなぁ、男の子の幼馴染起こすの」

「へぇー男の幼馴染いたのー? 知らんかったー、びっくしぃ」

「あれー? 目の前の男の子は誰かなー? こんなに親しく話してるのに知らない人かなー?」

(まさ)しく赤の他人じゃないですかね」

「きさまー? 怒るぞー?」

 

んー? んー? と可愛げな唸り声を上げてこちらを覗き込むような動作をする幼馴染。

やめて? 可愛いから。惚れるから。

 

その時点で詰みだから。

 

「……まぁ、いいでしょう」

 

と、急に態度を変えた目の前の女の子。

その瞳の先には、何故か俺の頭に向けられている。

怖いよ? どしたん?

 

「……なんかついてる?」

「んーん?」

 

思わず不安になって聞いて見ると、なんか、してたやったり! みたいな笑顔を向けられた。

やだ怖い、あと可愛い。

 

「いやー? 別にー? ちょっと急ぎ過ぎちゃったんだなーって」

「へ?」

「鏡、見てみたら?」

 

彼女の意味の分からぬ言葉に間抜けな声で返すと、幼馴染を名乗る銀髪の少女は、俺の隣に視線を移す。

思わず、それに釣られて、俺は後悔した。

 

この家の玄関には、身嗜みに不備が無いかをチェックする為の全身鏡が備えられている。靴箱の向かい側に当てられており、中々広い面積を誇るものだ。

 

「あー、ね」

 

その鏡が、俺の姿を写している。

ツンツン頭の手入れも糞もない髪。それでもだらしないというのに、後頭部が、変な形にぺっちゃんこになってるのを。

その影響なのかなんなのか、両方の横髪がピンと伸びてやがる。

こりゃ鉤爪出せる狼的な外人イケオジを彷彿とさせるね。もしくは、ハッピーバースデー悪魔男。

 

……髪、切っときゃ良かったなぁ。

 

「ホント。だらしないなぁ、翔はぁ」

 

今週の休みにでも散髪屋でスポーツ刈りにして貰う事を決意している傍らで。

とても甘く、魅惑的な声が聞こえる。視線を彼女に戻すと、まるで聖母のように微笑む幼馴染がいた。

その手には、何処から用意していたのか、女子らしいヘアクリーム一つ。

 

「朝の内に寝癖は直して置かないと。ほーら、クリームあるから直してあげる。屈んで?」

 

それは、俺にとって本来嬉しい筈の、今の俺にとって、胃が痛くなるシチュエーションの始まり。

 

「……あい」

 

俺は、ただ彼女に従うしかなかった。

 

 

 

……あと、リビングから覗いてニヤニヤしてる、そこの父母二人?

寝癖くらい教えて? 頼むから。

 

♢ ♢ ♢

 

 

常盤(トキワ) 翔太郎(ショウタロウ)

唐突の自己紹介だが、俺は転生者だ。

といっても死んだ覚えなど無い。

それこそ目が覚めた時には、身体は昔の頃どころか母さんのお腹から出てきた直後に戻り、独り暮らしのアパートから両親と暮らしていた一軒家に戻されたもんだから、過去にタイムスリップしたのだと思っていた。

 

両親は前世のまま、名前もそのまま、過去に過ごした地もそのまま、自分は幼少期に戻り、チートとか特典を貰った覚えすらなければ、そう思うのも不思議じゃないと信じたい。

 

……まぁ、今思えば。

一つの遠方の国。

世界史、ニュース、SNS、ゲームとかその他諸々、よく見かけるその国の名前。

それが、覚えのあるモノから聞いたことないモノに変わっている事に、ただのタイムスリップではないと違和感を覚えそうな事ではあったのだが。

 

生憎、間抜けな俺では、てんで気付く事は無かった。

「あー、なんかタイムパラドックスとか世界のズレとかそーゆー感じね、はいはい、大体理解した」と高を括っていた。

我ながら馬鹿だと思う。

 

そんなこんなで、タイムスリップしたと勘違いし、二度目の人生をどう活用しようかと呑気な事を考えていた幼少期の頃。

 

突然、引っ越しする事になった。

 

父さんの仕事の関係らしい。詳しい内容は分からないが、少なくとも俺は浮足立ってた。

 

前世では起きなかったイベントだ。

折角の子供の頃の故郷を離れるのは勿体無い気もしたし、人生二周目による強くてニューゲーム計画がちょっと怪しくなった。

しかし、第二の人生の新たな門出としては悪くない。

前世では得られなかった新たな出会い。良いじゃん、なんかワクワクする。

 

前世では良い意味でも悪い意味でも思い出に薄い幼稚園の子達との別れを済ませ、

引っ越しの準備も終え、

大した問題も起きず、

俺は不安と高揚感に包まれながら、両親と共に遠い地へと赴いた。

 

M県、月読(つくよみ)市、天御中(あめみなか)町へと。

 

なんかご利益ありそうな町の名前だなーとか、オタク心(くすぐ)られるなーとか、のほほんとしながら。

 

前に住んでた家に負けない立派な新居で、荷物出しの続きを手伝っていた頃。

 

ピンポーンと。

家のチャイムが鳴らされ、母さんが「誰かしら」なんて言いながら、その応対に向かった。

そのまま少しすると、母はトタトタとこちらに戻り、

 

「あ、翔太郎! お父さん! ちょっとこっち来て!」

 

と、俺と父さんに軽く手招きする。

何か困り事か? と思ったが、嬉しそうな表情をしてる辺り、どうやら違うらしい。

 

「どうした、母さん?」

 

父さんが疑問符を浮かべながらもそう聞くも、

 

「もう、いいから早くっ。待たせたら悪いでしょ?」

 

なんて、妙に弾んだ声で返す母。

ますます疑問が残るが、取り敢えず母の後を追うように玄関に向かう。

 

お待たせしましたー、と朗らかに母が玄関の扉を開けると、そこには二人の男女が立っていた。

 

歳は、俺の両親と同じくらい。

男性の方は優しげな風貌の眼鏡のナイスガイ、女性の方は外人さんかハーフさんか、前世ではゲームでしか見たこと無いような銀髪を携えたべっぴんさんだ。

はえー高嶺の花カップルやー、と見惚れていると女性が紙袋を両手で持っている事に気付く。

 

「お二人は宝生(ホウジョウ) 誠司(セイジ)さんとその奥さんのサスラさん! ちょうど私達みたいに引っ越して来たんだって!」

 

きゃー! なんて顔に頬当てながらはしゃぐ母。喜ぶ基準が分からん。

 

夫妻の話を聞くに、どうやらお二人方は今日、隣家に越して来たらしい。

 

確かに俺達の引っ越し挨拶の時に周囲を回ったが、隣の一軒は人が住んでる様子は無かったので不思議だった。

しかし、成る程、知ってしまえばなんて事はない。運悪く? タイミングが合わなかっただけなんだろう。

俺達はもう挨拶は済ませているので、タイミング的には夫妻は引っ越し後輩となる、とは母の弁。

後輩て。

 

挨拶の品を受け取りながら、べっぴん奥さんと談笑する母。流石陽キャは違う。俺ならあっという間に緊張でカチコチだ。

だから母さん、もう私達は友達! みたいなテンションで話すのやめて。奥さん困ってるから。

父は父でイケメン旦那さんと大人の風格を漂わせながら仲良く話してるみたいだ。

流石だぜ父さん。俺はこういう大人になりたい。

 

と、イケメン旦那さんと父さんに目をやってると、何やら旦那さんの方から別の視線を感じる。

そこに視線を移すと、銀色の長い髪を覗かせた小さな子が、旦那さんの足をきゅっと掴んで隠れているのが見えた。

あらぁ、人見知りなのねぇ。大丈夫、怖くないよー。同じ幼児ぞー。ワタシ無害よー。

 

 

……内なるキモいオッサンが出てきてしまった。俺は立派な大人になれそうにない。

 

「ほら、ナギサ。隠れてないで、ちゃんと挨拶しよう?」

 

旦那さんに優しく諭された隠れっ子さんは「うん…」と言って、おずおずと俺達の前に出る。

 

そして俺は、彼女の姿に目を奪われた。

 

母の血を色濃く受け継いだのだろう、艶のある絹糸のようなその銀髪は、光の反射で藍色にも藤色にも見える。

まるで御伽話から出てきたような生き人形。その白磁の肌は緊張からか、頬だけが仄かに桜色に染まっている。

細やかに震える蒼瞳は、吸い込まれるような水晶を思わせ、それがより一層、空想上の存在かと錯覚させる。

 

それは、芸術の粋を集めた幻想か。もしくは、人に福音を与えるべくして降り立った、天使か。

この世のものとは思えぬ程の、その美貌に。

 

俺は、

 

「――――」

 

一瞬で、心を奪われた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――のなら、どれほど良かっただろうか。

 

 

(おいおいおいおいざけんなよおい!?!?)

 

 

実際の俺は、心の底からパニくっていた。

めちゃんこ幻想的な銀髪?

色白たまご肌?

アニメみてぇな青い目?

天使、イズ、美少女?

知らんねん。そんな事どうでもええねん。

 

(むし)ろ、その時の俺の脳内は警告アラートが鳴り響いていた。やべーやべー! と喚きながら我が脳内の記憶部隊はフルスロットルでその原因たる目の前の少女を否定しようとしてる。

 

「あ、あの。えっと……」

 

少し怯えた様子で、伏目がちに言葉を紡ぐ美少女。体をモジモジとさせながら、伺うように上目遣いでこちらを見やる。

あー可愛いなぁ、畜生。何でだよ畜生。

 

いや、良いじゃん、もう。こんなマンガかアニメから出てきたくらいに可愛くて、しかも大人しくて優しそうな娘が幼馴染なんて、オタクの俺からすりゃ人生勝ち確よ? 春の訪れよ? アオハル走っちゃうよ?

二周目の特典にしちゃ破格過ぎるぜ、ホント。チートだわチート。ここで攻略放棄したら男が廃るね、ホント。

 

……脳内で現実逃避しているが、まぁ無駄だった。彼女のお父さんが言っていた名前。それが、俺の忘れていた前世の記憶の呼び覚ましに拍車をかける。

 

ナギサ。

 

俺は、その名を知っている。

特段、深く心に根付いていた訳じゃない。

じゃなきゃ、こんな後の祭りなタイミングで思い出す訳が無い。

ちゅーか、絶対忘れてても構わなかった筈の名前。

 

俺は、彼女を知っている。

別に、密かな想いを抱いていた訳でもない。

彼女は遠い存在だったし、そもそも惚れる惚れないの前提が成り立たない。

期待もしてない。なんなら、会いたいだなんて露一つも思ってなかった、そんな相手。

 

だからそれは、あり得ない事だった。

不可能の筈だった。

あってはならなかった。

何故なら、

 

「わ、わたし。ほうじょう(宝生) なぎさ(和紗)といいます。これから、よろしくおねがいします……」

 

彼女は、百合アクションゲーの登場人物。

しかも、主人公様だったのだから。

 

 

 

 

 

 

(……巫山戯(ふざけ)んな馬鹿ぁあああああ!!??)

 

 

 

 

 

 

 

……いやホント、()にどうしろと? 百合を咲かせる(踏み台)になれと?

泣くよ?

 

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