美少女アクゲーに転生しました!! 無力な男にどうしろと!?   作:伸縮大王

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自分より主人公君達への理解度の高い感想を書いて下さる方々、常々ありがとうございます
軽いノリと勢いで書いてて、プロットも柔軟に変えられない素人なので、いつも期待に添えられず、私も歯痒いばかりです
読者と作者で考察バトル出来る作品ってやっぱり凄いのだと再認識


十一話 フラグ管理も忘れずにね ってお話

 

「────たっか」

 

図書室で、ナギサに捕まり屋上へ同行。

 

空は快晴。風も気持ちが良い。

そんな開けた屋上のフェンス越しを歩きながら、外の光景を眺めて思わず呟いた。

 

高さ、15m。

 

文字にするとそこまで無いように思えるが、実際にその高さの頂点付近に立てば、中々の見晴らしだ。

気分は、ロボットに乗ったパイロットの視点。

人がゴミのようだー。わはははー。

その前に高くて怖いねん。

 

月読高等学校。

 

天御中町のすぐ隣の大都市、神産巣日(かみむすび)町に構えるこのキャンパスは、月読市が誇る県立の高校であり。

全日制、普通科の進学校だ。

 

一見、名前のトンチキさから、和風ファンタジーを思わせるような校舎の作りを連想させるだろうが、実際はそんな古風な感じではない。

広いけど。ぶっ飛んでるけど。

 

前世の何処の高校をモデルにしたのか、それともオリジナルかは詳しくないので定かではないが。

 

白色に深茶色を差した校舎に、

屋上は2メートルの返し付き金網フェンスで、

棟を繋ぐ通路には壁に強化ガラスが使われており、

教室のベランダにはこれまたガラス張りの柵が用意されてたりと、中々最新的で見栄えの良い学校だ。

オープンテラスみたいな所もあるよ。お洒落だね。

高校というより、デッカい空港とか製薬会社付きの病院とかを連想させそうだけど。

 

しかも、言い忘れてたけど、付属中学校のオマケ付きだったりする。

そんな訳でめっちゃデカい。

多分、元ネタの高校があったとしても、それよりデカいと思う。

確か……18万平方メートル? だったはず。

日本で有名なドームの四個分だって。バッカじゃねぇの。

グラウンドは二つあるし、プールも体育館も二つある。

何故か野球グラウンドも一つある。

先程いた、図書室あったじゃん。

あれもね、実は結構デカいのである。もう図書館である。2階もあるよ。一般の人も利用可能だよ。

広いから小声とはいえ、話してても怒られ無かった訳だね。

とんだ詐欺ネタバレである。

トリックものなら後出し設定言われてぶっ叩かれてる。

 

因みに、ツルギくん達がいたのは、3つある入り口の内の、校内から入れる入り口付近の読書スペースです。

木目調の、お洒落で大きい自動ドアの入り口だよ。

人を感知すると開きっぱなしになるよ。

その時点でナギサが隠れてると気付けって話だよね。

ついでに言うと、この図書室の蔵書数は八十万くらいなんだとか。盛過ぎ。

 

盛るな、普通の高校っぽくしろ。

せめてぶっ飛ぶなら手加減せずいけ。

中途半端に現実ぶるんじゃねぇ。

いっそ、ガラスで覆われた教室とか、英国式風な校舎とかにしろ。

前世でも普通に実在してるらしいけど。

何だったら、この学校よりデカい高校とかもあるらしいけど。

だからって、何を考えてこんな裏設定作った、制作スタッフ。

夢世界がメインなんだから要らんよ。どうせ碌な描写出来ねぇんだから。

暇だったの?

それとも、マジでこんな高校が前世にあったの?

それをモデルにしたの?

世界は広いなぁ。

 

「……あのー、翔? そんなにフェンスに近づいてると、危ないよ?」

 

と。

この学校のヘンテコ具合に思いを馳せていると、ナギサの心配げな声が聞こえた。

そちらの方を向くと、隣のユイもおろおろしながらこちらを見ている。

 

「そ、そうだよ。早くこっちに来よ? いっ、一体何してるの?」

「フェンスの損傷と抜け道がねぇかの点検と探検を」

「本当に何してるの?」

 

危ないよー! と二人に腕を掴まれ、引き戻される。

 

ちが、違うねん。

別に命断とうとかそんな事考えてないねん。

そもそも死にたくねぇし。

でも、気になるやん!

流石にこの世界に来てから慣れたとはいえ、やっぱり屋上に足を運べるってのはワクワクするやん!

前世じゃ一度も体験できなかった奴やぞ!

アニメとかゲームの世界の人には当たり前かもしれんがな、俺にとっては身近なファンタジーみたいなもんなんじゃ!

フェンス越しに地上見たって何の咎もないやん!

 

だから、両腕をがっちりホールドしないで。

大丈夫ですから。

別に大丈夫ですから。

屋上立ち入り禁止の原因になるとか野暮な事しねぇから。

二人に腕組まれてるみたいで、逆に死ぬから。

殺されちゃうんだって、世界に。

 

「はーもう……。ほんと、ほんっと翔は危なっかしいんだから」

「すいません、だから離して」

「やです」

「即答やめい」

 

ナギサさん?

ジト目で見ないで?

腕もギューってしないで?

ユイさんもナギサの真似しないで?

可愛いのホント辞めて?

 

何なの、俺今日死ぬの?

何で生きてんの?

 

あれかしら、こんなに女の子侍らせといて、現を抜かしていたらパーフェクト女子に二人とも百合られちゃうオチですか?

今ならやられても精神的にノープロブレムやから、さっさとやって?

ナギサ達ラブ! になった途端に仕掛けてくるとかノーサンキューよ?

 

「翔ちゃん、なんか逃げそうだしなぁ……」

「うん。翔が逃げ隠れしないって言うなら、離してあげなくもない」

「逃げません隠れません戦いません」

「よーし、じゃあこのままレッツゴー!」

「お、おー!」

「ゴーでもオーでもねぇ」

 

宣誓したら、そのまま連行されました。

わーい、両手に花だー。

二人とも柔らかくていい匂いですっごくドキドキするー。

声も声優さんみたいで耳が幸せー。

もう、ぜってぇ殺される、マジで。

 

 

 

「──という訳で、着きました!」

「……いっつも思うけど、なして、学校の屋上に庭園とかあるんですかね」

「都上緑化の一環、だったよね?」

「高校がやるのはおかしない?」

「わ、私に言われても……」

 

ナギサの到着発言に水を差し、補足説明するユイにも噛みつきながら、目の前の緑溢れる空間を見やる。

 

屋上庭園。

一画のエリアに設けられたそこは、芝生を敷き、

様々な花と樹木が植えられた花壇が至る所にあり、

屋根付きのベンチやテーブルも複数完備、

極めつけには中央に座る為のスペースを設けた小さいながらもお洒落な噴水もある、ちょっとした植物公園だ。

月読高校の目玉スポットであり癒やしスポット。

まさに別空間とも言うべきここには、日々の疲れをリフレッシュする為に来る生徒や先生は数知れず、カップルや友達で来る学生も少なくない。

現に今でもチラホラ生徒や先生の姿が複数見え、それでも充分広く感じるのは中々の広さという他無い。

 

いや、本当に頭痛い。

何を作ってんの? 

ちゅーか何を作らせてんの? ねぇ。

学校側とか県とかじゃなくて、原作のスタッフさんよ。

こんな無駄な設定いる?

アニメとかでも見ねーよ、こんなシチュエーション。

お嬢様学校もビックリだよ。

裏設定作ってたら盛り上がっちゃったー、ってやつ?

設定厨かよ。

中二病のノートか何かかよ。

 

原作の現実描写でも公園っぽい所の描写くらいはあったけどさ?

数ある公園描写の中で、制服姿しか描かれない所があったけどさ?

それがここなのはちょっと予想外なんよ。

登場人物みーんな、不思議にも思ってないし、話題にも出して無かったけどさ?

触れろ? そんな設定あんなら触れろ?

当たり前みたいな顔で堂々としてんじゃない。

本編の内容もちゃんとしてたからそこは怒らんけど、実際その裏設定を体感する身にもなれ?

俺、本当に日本にいるのか疑わしくなる。

 

「……俺、とうとう、ここに入るのか……」

「ふっふっふー、遂に私達の仲間入りだねー、翔ー? いやー、思えば長かったなー」

「ほんとだよ。翔ちゃんったら、いつも誘っても『もうお昼食べたしー』とか、『用事あるしー』とか。仕舞いには『俺、屋上恐怖症だしー』とか嘘言って逃げてたもん」

「いや……ほんと、すいません……」

「いつもは振り回してばかりなのにねー」

「うんうん。こっちがこういう事しようとするとすぐ逃げちゃう」

「……すいません」

 

俺の両腕をホールドしたまま、染み染みと感慨に耽る幼馴染達。

 

いやー、周囲の視線が痛い。

生温い目と冷たい目と面白がってる目のフェスティバルである。

特に女子の冷たい目が、痛みが強い。

うわー……引くわー……、みたいな常識的な声が聞こえてきそう。

吐きそう。

 

「ささっ! 私達と一緒に定位置に行きましょー!」

「その前に腕を離して下さい。目が、周りの目が痛いんです」

「……うぅん。仕方ない」

 

ナギサ様……!

やっぱり君は、極力無理強いをしない子や……!

とってもええ子や……!

 

「では、手繋ぎで行きましょう」

「繋ぐのも辞めて頂きたく」

 

ナギサ様?

それ、あんま変わりませんよ、ナギサ様?

 

友達なら手を繋ぐのは当たり前だよー? じゃなく。

それはもう、ナギサさん達の激近距離感は百歩譲って受け入れますが、それはあくまで同性同士の友達、という話であってですね?

俺が混ざるのは、マジで世間体的にも、百合世界的にもヤバいからね?

実質挟まる男でしょ、これ。

今更?

 

「翔は我儘です」

「常識言ってる筈なんだわ、こっちは」

「我儘言ってばかりだと、お昼休み終わっちゃうよ?」

「もう終わり間近なんだわ、俺の人生の」

「そっかぁ……じゃあ尚更、私達が側で支えないといけないねぇ……」

「話聞いて欲しいんだわ?」

 

……そのまま連行されました。一応手繋ぎで。

 

定位置とやらにドナドナされると、そこは人気の少ない、しかし位置も見晴らしも素晴らしい、テーブルに向かい合ったベンチが特徴の、所謂、穴場スポットと言うべき所であった。

……高校の屋上に穴場スポットとか、言ってて脳が可笑しくなりそう。

 

「屋上来る時はいつもここで食べるんだー。たまに感想部の皆と食べたりするんだよー」

 

との事である。

仲良き事は良いことである。

日常アニメ補正でも受けてそうである。

 

「これからは翔も一緒だねー」

 

嫌である。

拒否するである。

俺が混ざったらアニメの炎上不可避である。

 

「お断りしとうございます」

「駄目でーす。はい、それじゃあ早速食べよーねー」

 

準備をされながら却下された。

悲しい。

 

悲しみにくれながら、指示された場所に座る。

向かい側には、ナギサとヒナタ。

彼女達の元には、ナギサ達に似つかわしくない、大きな弁当がある。

俺のとこには何も無い。

惣菜パン買おうとしたら止められた。

 

「よ、よし……や、やるぞぉ……」

「一度やってみたかったんだよねー」

 

ユイさんはなんか、握り拳を両手で作って胸の前に持っていって気合入れてる。

ナギサ様は、ほくほく顔でいらっしゃる。

そして、何故か各々、もう一つの箸を取り出し。

 

あ、嫌な予感。

 

そして、二人同時に弁当に箸をつけ、互いに頷くと。

片手を添えつつ、こちらに向けて、

 

「「では……、あーん」」

 

屈託のない笑顔で、そんな言葉を言い放ちやがりました。

 

そうきたかぁ。

男にとっての夢イベントきたかぁ。

どっちかなんて選べないよー、的なやつ?

なんで俺?

もう、青筋立ててませんか、百合世界さん?

 

「……」

 

なんか、もう面倒になったので。

ナギサの腕を優しく動かし、ユイの方へ。

ユイの腕も優しく動かし、ナギサの方へ。

クロスカウンターならぬ、クロスあーんの完成です。

百合世界さんもこれなら満足するんじゃなかろうか。

 

「………」

「え、え、うん?」

 

ナギサは笑顔でこちらに顔を向けたまま。

ユイは困惑した様子で俺とナギサを交互に見やる。

仕方ないので、俺は促すように片手を出した。

 

「どうぞ?」

 

好きにあーんしあって下さい?

そういう事である。

 

二人は互いに向き合うと、またもこちらに顔を向けてきた。

今度は、ユイも笑顔のまま。

 

ぐ、ちょっとやり過ぎたか?

いや、でも、あーんは駄目やん。

男の理想ですけど、そこがヘイトポイントまっしぐらなんやぞ?

 

ビクビクしながらも、怒りの声に耐えられるよう心の壁を作る俺に、彼女達は一言。

 

 

「「──泣いちゃうぞ?」」

「はーい嘘でーすすいませーん食べまーす」

 

即効で折れた。

笑うがいい。

女の涙に、男は勝てねぇのさ。

 

 

 

「……どっと、どっと疲れたぁ……」

 

そんで、結局ナギサ達に餌付けさせて頂きました。

飯食べて疲れるとかなんやねん。

気分はまさに雛鳥よ。

何かもう、死神に側にいられつつ、介護されてる気分。

はは、いっつも介護されてるようなもんか。

 

「な、なんだかやってみると、凄く恥ずかしかったね……」

「う、うん。これだけで、今日は限界かも……」

「ち、ちょっと段階踏もっか。慣れてから、感想部の皆と一緒に、だね」

 

顔を赤らめて、そんな談笑をしてるナギサ達。

恥ずかしいならやめよう。

慣れるとかせず、すぐ辞めよう。

こんなん誰も得せんねん。

見てる人いたら「何これ?」って引くわ。

感想部の子達も引くわ。

 

って、え? 感想部?

 

「ちょっと待って? そういや感想部って、まさか放課後とかも、巻き込んだりしない、よな……?」

「……するつもりだったけど、今日は良いや」

「おおぅ」

 

っぶねぇー!!

次は日常アニメ空間に本格乱入とか死ぬぞ!?

今だけでも胃痛ポイントが過去最大なのに、イベントの過剰負荷はヤバいって!

 

クソぅ、百合とか無かったらデレデレ顔で喜んだりするのに。

 

「ナギサ、ユイよ……、君達は俺をどうしたいんや……」

「え、遠慮しないと決めたので」

「そ、そういう事です」

「どういう事ですか……」

「会長との約束です!」

「そういう事ですか……」

 

マジかよ、ちょっと舐めてた。

交流増やすっつっても、言うてやる事あんまないやろーとか思ってた。

馬鹿である。

幼馴染のアドとしては異例だって、こんなん。

君達、幼馴染を神聖な何かと勘違いしてやいないかい?

 

「大体、君達ね、幼馴染だからってここまでする?」

 

もう、この際だから聞いた。

答えはどうせ決まってるけど、流石に聞かなきゃこっちの脳がバグる。

 

「するよ? ねー」

「うん」

 

だそうです。

予想通りだね。

 

「じゃあ君達だけでしなさい。俺はどっかで飯食うから」

「だからー!」

「な、何でそうなるの!?」

 

二人に怒られた。

なんなんだよぅ。

毎度毎度思うけど、何で君達は俺に危ない橋を渡らせようとするの。

 

一応さ、ラブじゃなくてライクなのは分かるよ?

そこまで自惚れる程、身の程知らずではない。

でもさ、勘違いするんだよ。

こんなにも、非現実的なライクをぶつけられてご覧なさい。

マトモな人は、『これ、いくら何でも都合良すぎじゃない?』って考えてもおかしくないわよ?

 

ていうか、全部俺の妄想でもおかしくない。

え、百合世界ってそういうパターンで分からせにも来るの?

実は俺が都合良く解釈してたオチ?

実は百合百合してたナギサ達にハブられてた俺が寂しさの余り脳改変してたオチ?

精神病エンドかよ、キッツ。

ありそうで怖すぎる。

今ならそういうオチでも耐えられるので、恋慕した瞬間に現実教えてくるのだけは勘弁してほしい。

確実に死ねる。そりゃ無惨に。

 

「何でそうなる、はこっちの台詞だって。正直、こういう幸せは、俺の身の丈にはあいません」

「幸せなら良いじゃん」

 

そう言って、ジト目で見てくるナギサ様。

うーん、何て言うべきかなぁ。

どうせ俺は踏み台候補なんだから、尊厳死が待ってるだけなんだよ、って言うか?

気が触れたと思われるな、うん。

 

「幸せ過ぎて、何か現実味薄いってこと。俺がここまでして貰う理由ある?」

「……こういう風に言うのは、ちょっとズルいかもしれないけど。私達は、翔に感謝の気持ちもあるんです」

「何に?」

 

何もやってねぇし、寧ろ感謝するなら俺の方じゃない?

こんな世界でも生きてて良かったとは思うくらいに、皆良い人達に囲まれてますよ。

 

本当、俺に都合良すぎない?

人間関係に関してだけは。

百合世界様からの温情ですか?

それに関しては本当にありがとう御座います。

足を向けて眠れません、マジで。

 

ちゅーかカナデさんも感謝してる、とか言ってたけどさ。

何もしてねぇって。

迷惑とやらかしはしまくったけど。

 

「……言うと思った。……じゃあこの際だから言いますけど、……その、小学生の頃、私が虐められてた時、あったじゃない?」

「あい」

 

一応、この世界でもあったね、ナギサへのイジメ。

あん時はビックリしたね、本当に銀髪ってだけで虐める輩いるやなって。

小学生って怖い。引いたもん。

チヤホヤしないか、普通。いや、後から普通に皆仲良くなったけども。

 

 

「それをいつも助けてくれたのは、何処の誰ですか?」

「ユイ」

「何で即答で、自分を抜くのかな……」

「……翔ちゃんには敵わないよ?」

 

いや、引き気味に言われても。

本当に何もしてねぇし。

いっつもナギサを守ってたのはユイさんでしたし。

仮に助けてたとして、そんな在り来たりなテンプレで今までこんな好意とか向けて来てたの?

チョロ過ぎない? 君達。

現実じゃそこまで都合良くありませんぞ?

そんな些細な事一つで救われる程、人間単純じゃないと思う。

 

「ちゅーか、今まで虐め云々とかどーでもいい事で俺の事良くしてくれたの? 天使かよ、君達」

「…………」

「……薄々思ってたけど、翔ちゃんってさ、もしかして、自分の事、嫌い?」

「大好きぞ?」

 

何故このタイミングで聞くの、ユイさん?

そんなん、当たり前やんか。

自分の事嫌いな奴が、やらかしばっかりするかよ。

俺は自分の事しか考えてない自己中野郎である。

百合の踏み台にはもってこいだね。

いっぱい謝るから許して。

 

ナギサも絶句した顔でこっち見ないで。

信じられないみたいな表情しないで。

ちゅーか、泣きそうな顔しないで。

え、何した俺?

何かやったなら謝りますから本当に許して。

ナギサ達に泣かれたら、百合云々関係なく死ぬ。

 

「もー! やっぱり翔は何を言っても分からない子です! やっぱり行動が一番だ!」

「いきなり雑過ぎない?」

「知らない! お馬鹿!」

 

今度はめっちゃ怒られた。

どないせぇっちゅうねん。

俺なんかやっちゃました? なんて今日び流行んねぇぞ?

俺の場合、悪い意味だけど。

なんなんこれ?

皆、俺に対して根気強過ぎない?

嬉しさで前が見えなくなりそう。

 

「想像以上だよぉ……そうだろうなと前々から思ってたけど、いくら何でもおかしいよぉ……」

「翔ちゃんらしいよね……」

 

今度は頭を抱えるナギサ様。

ユイさんはそんな彼女の頭を撫でてらっしゃいます。

 

えーと。

これ、マジで俺が悪い流れよね。

どうしよう?

自覚無しの悪行ほど、償うのに難しいものは無いよ?

百合世界さんから「お前さぁ、マジでやったな……?」って圧かけられてるのが見える見える。

 

「えー、すいません。あのー、何かまた重大なやらかしとかしたのなら、本当に謝りますから、その、出来れば教えて頂きたく」

「謝るとかの話じゃないもん……」

「まぁ、確かに許してくれるかはナギサさんの意思に委ねられるので、そりゃそうなんですが、だからといってケジメくらいはつけたいなと」

「もう黙っててぇ……」

 

お口チャックを命じられた。

解せねえ。

仕方ないので、スマホを出してっと。

 

「ホント、翔の将来が心配だよ……」

「悪い人に騙されそう……」

《意味分からんけど、そこまで能天気ではありません》

 

とりあえず、シャベルタの音声機能で返答する。

機械音声ではあるが、中々流暢に喋ってくれる優れものだ。

 

俺もね、悪人かどうかの区別くらいはつきます。

騙されそうなのは、まぁ仕方ないにしても。

何で、引かれた次は騙されそうな奴判定出されるのか、さっぱり分かりません。

寧ろ、その心配はナギサ達の方が向けられるべきではなかろうか。

ちょっと君達は、人の事を買い被り過ぎです。

 

「……はぁ。開口禁止令を破棄いたします」

「有り難き幸せ」

「翔は変わりものだよねぇ」

「ゲーム友達にも言われました」

「皆言うと思うよ……」

 

そんな染み染み言われても。

俺は普通に生きてるだけなのに。

 

 

「本当、もう。……って、シャベルタで思い出した。翔にプレゼントがあったんだ」

「え、急になに。嬉しいんだけど」

「あー、昨日渡しそびれたやつ?」

「そ。スマホカバーだよ。つけてみて?」

「へー」

 

軽く驚きながら、ナギサが取り出したものを見やる。

藍色の無地でありながら、中々スタイリッシュな手帳式。

 

つけてみて、と言われ、指示通りにスマホに取り付ける事にした。

手帳を開くと、ゴム状のカバーと、その横に機械的な棒がピッタリとくっついている。

何だこれ? と思いつつもスマホを取り付けると、これまたピッタリに嵌まった。

 

「スゲー。このカバー、このスマホのメーカーのやつ?」

「ううん。シャベルタを作ったとこ。色んな機種に対応出来るよう、サイズとか作りが違うのもあるって」

「何でもやってんな、あそこ」

「それで、横の棒みたいなの、あるでしょ? それ、カメラ」

「カメラ!?」

 

え!? と思い、すぐに凝視すると、なるほど。

確かに中央にレンズが見える。

 

「な、なんで?」

「えっと、とりあえず。連動アプリをダウンロードしてから、スマホ貸して?」

 

そう言われながら、QRコードがついた小さな紙を渡された。

言われた通りに、コードからアプリをダウンロードして、設定画面を進めた後、ナギサ達に渡す。

 

ナギサは受け取ると、手帳を変形させ、スタンドのように立てる。

 

スタンドにもなるのね、このカバー。

棒状のやつは露出するような形だ。

そんで、手帳の端から、スポッと薄い板状の小さい何かを取り出した。

え、何これ?

 

「これは、コントローラーです。小さいけど、優れものだよ」

「なんにもボタンとかないけど」

「タッチ式のだから。とりあえず、どんな感じか見せるね」

 

ナギサはそう言うと、スマホ画面をこちらに向ける。

そのまま、おもむろに立ち上がり、板状の小さいリモコンを弄る。

 

すると、俺の顔を写していた映像が、回転しだした。

そして、ナギサの方を写していく。

 

「こんな風に、コントローラーでカメラを横に360度、上に90度回転させることが可能で、更に追跡機能もあります」

 

ナギサがリモコンを2回タップし、フラフラと動きだす。

すると、映像はナギサをピッタリ中央に置くように調整され、更には彼女を追うように右や左へと動いていく。

中々の追尾性能だ。

ナギサが走っても、ブレる事もラグもなく、ぴったり中央に写していく。

 

「おー」

 

思わず拍手してしまう俺に、満足そうにナギサは頷いた。

……ちょっとテンション低めだけど。

さっきのやつ、まだ引き摺ってます?

ホントすいません。

 

「画面の解像度が高いとか他にも色々あるけど、もう一つの売りはバーチャルキーボードだね」

「めっちゃハイテクやん」

 

赤外線レーザーのやつよね?

あれも使えるとか。

全然使いこなせる自信無いんだけど。

 

「な、何でこれを俺に?」

「言ったじゃない。翔へのプレゼントだって。シャベルタ作った会社の日本支社の方から、宣伝も兼ねて貰ったの」

「色んな種類を貰ってね。その時、翔ちゃんにもあげたいって事で、支社の方にお願いしたの」

「本当何でもありだな感想部」

 

どういうコネ?

いつの間にそんな繋がり作ったのナギサさん達。

あ、動画サイトでチャンネル持ってるから、そこからなの?

 

「あ、思い出した! 踊ってみたとかあげてたけど、そのカメラか!」

「うん、綺麗に撮れてたでしょ?」

「撮れてたっつーか、カメラが感想部の子を追っててスゲェーカメラマンだなってなったら」

「最後に、実はこんなスマホカバー使ってます! って宣伝するやつだね」

「そうそう! あー、これかぁ」

 

はえー、と驚きながら、スマホを手に取る。

動かしたというのに、カメラ映像はナギサからブレる事はない。

 

「いやーすげぇ。……でも、動画投稿とかせんよ、俺」

「耐衝撃にも優れてるらしいから、そっち方面を目的に使ってくれたら嬉しいかな」

「へー……いや、本当、何から何まですいません」

 

思わず畏まってしまう。

こんなハイテクスマホカバーを頂けるとは。

もうSF映画とかの便利アイテムじゃん、これ。

宝の持ち腐れ感半端ないけど。

ナギサ達も支社の方も太っ腹である。

 

「喜んでくれて何よりだよ。……昨日みたいな事にならなくて、ホント良かった」

「うっ……マジで、すいませんでした」

「な、ナギぃ……」

「……ごめん」

 

ユイに呼ばれ、落ち込むようにナギサは謝罪の言葉を口にした。

 

昨日って、あの空気ぶち壊した奴だよな。

あー、また胃が痛む。

黒歴史がまた増えた。

 

ごめんとか、俺の台詞だって。

ホント、もう。

俺、殴られても文句言えねぇわ。

 

「……まぁ、兎に角! 私達は翔にこんなプレゼントを喜んでする程、君の事も大切に思ってると言う訳です! 分かりましたか!」

「……あい、分かりました。すいません」

「むー……、すいません、かぁ」

「違いました。ありがとうでした。有難う御座いました」

「宜しい」

 

ナギサ様から許しの言葉を得て。

 

そこからは、カバーの充電器とか、説明書も貰い。

ある程度、カメラやキーボードに慣れる為に弄ってた所で。

 

〜〜♪ 〜〜♪

 

俺のスマホに、シャベルタの着信音と共に、着信画面が表示された。

 

相手は、ヒナタ。

 

どうしたのかと、すぐさま電話を取る。

すると、早くもヒナタの声が聞こえてきた。

 

《あ、お兄ちゃん!》

「おーヒナタ」

「大丈夫? ヒナ。電話とかかけて」

《大丈夫だよ! それより聞いて!》

 

ヒナタの慌てた様子に、顔を見合わせる俺達。

何事? と不思議がっていると、

 

《あのね、お兄ちゃん! 『工場』には、絶対近づかないで!!》

「……こ、工場?」

 

突然。

これまた、奇妙な忠告を受けた。

 

……何で工場?

 

「近づくも何も、行く予定無いけど……なんで?」

《えっとね、なんて言えば良いんだろ……あ、リナ。……うん、お願い!》

 

言い淀むヒナタは、唐突に電話越しの誰かと会話をしだす。

リナ……と、言えば。

 

《あー、あー、聞こえますか、常磐さん》

 

ヒナタが設定を変えたのであろう、リナと呼ばれた少女の声が聞こえてきた。

 

リナちゃん。

ヒナタの友達の一人。

色々あったが、今では仲の良い友人の声だ。

そして、ヒナタの『力』を知ってる人間の一人。

 

「おう、聞こえる。どうしたの?」

《また、ヒナタのお家芸、『お昼寝未来予知』です。いつもはどうでもいいのばかりだけど、今回のはヤバくて》

《お、お昼寝って……お家芸って……》

《邪魔すんな。それで……常磐さん。近々、機械やコンクリートで囲まれた所に行く予定はありますか?》

「いや、無いけど……」

《そうですか。なら、今後その予定が出来たら、気を付けて下さい》

 

え、な、何を?

めっちゃ深刻そうだけど。

何かすんの、俺?

 

ナギサとユイも不安そうに俺と画面を交互に見ている。

俺、遂に粛清されちゃうの?

 

《ヒナタ、良いよね?》

《う、うん。私からだと、ちょっと》

《おっけ。じゃあ、常磐さん。ヒナタが見た奴だけど……》

「お、おう」

 

固唾を呑んで答える。

何か、すっげぇ嫌な予感する。

 

《ヒナタが見た奴は、その》

 

そして。

 

《コンクリートと機械で囲まれた所、》

 

ヒナタの友人、リナちゃんは。

 

 

 

 

《…………そこで、常磐さん。貴方が、血塗れになった姿です》

 

そんな、爆弾発言を、口にした。

 

 

……本当に粛清のお時間やん。

 

 

 

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