美少女アクゲーに転生しました!! 無力な男にどうしろと!?   作:伸縮大王

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※注意
主人公がいつも以上にヘタレます
いつもの事なので、我慢してやってください


五話 美少女で男勝りは女騎士の類 ってお話

 

門矢(カドヤ) 陽樹(ヒビキ)

 

このM県立月読高等学校の生徒会長であり、剣術の腕もある才色兼備。

彼女もまた、デザイアノーツで御子として戦う事になる少女だ。

ナギサとは、原作じゃ夢世界に来て初めての仲間となる人物である。

尤も、片や生徒会長、片や引き篭もりの二人にとっては初対面と言っても差し支えなく、同じ学園に通ってると分かるのはナギサシナリオにて、会長との絆を最大にし、個別エンディングを迎えてのことである。

 

この二人、原作序盤じゃ仲悪かったんだよなぁ……。そこから、徐々に絆を深め、相棒と呼べるくらいに息の合うコンビになったのは素直に凄いと思う。

 

 

原作ヒナタに追い込まれ精神が疲弊したナギサが、途方に暮れ、夢世界を救う役目を放棄しようとするイベントがある。

仲間から無断で離れ、宛も無いままモブ敵がうじゃうじゃいるエリアへと赴いてしまうシーンだ。

ただ敵にやられるよう棒立ちするナギサに化物達は情けなどなく、問答無用で襲いかかる。

それを助けるのは、それまで共に戦場を駆け抜けた会長。

 

『諦めるな!!』

 

その一言と共に、迫り来る敵を薙ぎ払う会長。

 

『君にとってあの娘がどういう存在かは分からん! その絶望に寄り添う器量も私には無い!』

 

『大切だったんだろう! 愛していたのだろう! そんな人間が狂った姿など、私にも耐えられん!』

 

『だが、ここで諦めるのは無いだろう!? 私達は何だ!? 君の仲間だ! 共に苦楽を乗り越えておいて、共に死線を潜り抜けさせて! いざ自分だけ苦しむなど死んでも許さん!!』

 

『頼れ! 縋れ! 君の仲間を侮るな!! 例え非力だとしても! 例え困難な道しか無くとも! 全力で君を支えるから! 君の側にいるから!!』

 

『だから立て!! ナギサ!!!』

 

その発破に奮起したナギサが、会長と背中合わせをするシーンでは『ナギサ、お前の後ろは私が守る。お前の背を押してやる! だから君は、前だけを向いて突き進め!』と会長は更に力強い言葉で激励する。

演出とか、それまでの展開も相まってかなり好きだ。

 

因みに。

このイベントシーン前に、会長がロストーー前に言ったと思うけど、残機切れの事ねーーしていると、どれだけナギサの残機が残っていようとそのまま特殊ロストのバッドエンドになり、引き継ぎ有りとはいえやり直しを余儀なくされる。

死にゲーなのにね、世知辛いね。

一応、会長がロストしててもイベントはフラグさえ踏まなければゲームオーバーはシーンごと回避可能である。オープンシナリオは伊達じゃないね。

 

戦闘スタイルとしては、ゴリゴリの剣士。居合いが得意で、攻撃も多段ヒットがデフォルトなので、彼女のシナリオは遊んでて特に楽しかった覚えがある。男の子ロマンが沢山だもの。

 

そんな男の子大好き要素たっぷりな会長は、この世界では原作開始前ながら、ナギサ達と普通に知り合いだ。

まぁ、学校通ってるしね、ナギサ。ちょくちょく皆で買い物デートしてるんだって。微笑ましいね。

 

じゃあ、俺はナギサ経由で会長と知り合いになったかというと、ちょっと違う。何ならナギサと会長が知り合ったのは俺経由だ。

偶然というか、何というか。世界もようこんな悪趣味な事考えるなぁって言える奴なのは確かだ。

 

 

 

 

 

それはともかく。

 

こうして会長と知り合いになった俺は、これまた何でか会長の手伝いをさせられる事となっていた。

いやぁ、恋愛ゲーなら役得……いや、もう辞めよう。虚しさが押し寄せてくるだけだ。

なんでヘラヘラ出来るイベントで胃痛に悩まされなきゃならんねん。

せめて胃痛でもモテモテ過ぎて困るとかに、いや、やっぱいいや。俺にそんな度胸は無い。

 

「そういえば、結局部活動はしないのか。個人の自由だから強くは言えないが、やっても良かったんじゃないか?」

「そっすねー。俺、根性とかないっスから。体育部とかぜってー続けらんねーっス」

 

生徒会室に備えられた書斎に座りながら話しかけてきた会長。

俺はソファに座って書類を整理しながら、彼女の問いに答えていく。

 

この世界の運動部はアニメみたいに理想化された部活動だ。意気込みというか、熱血感が半端ないし、何より皆良い人過ぎる。多分俺が入ったら足引っ張るの確実で、良心の呵責で速攻辞めてる。

 

「別に運動部だけが部活じゃない。吹奏楽部やゲーム開発部、美術部などの文化部だってある。勿論、熱意や努力は必要にはなるが。趣味を講じた物や、存在理由が甚だ疑問な物でも構わん。文芸部、軽音部、キャンプ部やクトゥル部にサメ部。君の幼馴染のナギサとユイは、……感想部と、これまた訳分からん類いだな」

「部室でお菓子ばっか食べたり、皆でデートしたりする可愛い部活っスよね」

 

日常アニメみたいで可愛いね。なんか感想部とかふわっとした名前だし、しかも女の子だけの部活。本当にアニメじゃん。

幸せそうに部活動の内容を話してくれるナギサ達を見れば、こんな世界でも生きる気力が湧くというものだ。

陶芸部と合同で作ったというマグカップを貰った時は、感動で涙が出た。

 

会長は苦い顔をしながら、片手で頭を抱えてる。

どして?

 

「……全く違う筈だが否定は出来ん。が、結果を出している以上、文句は言えない」

「俺はその結果が出せそうに無いんで」

 

凄いよ。

娯楽だとか芸術だとか、何でもかんでもリサーチという名の遊びまくってその感想を纏める、っていう馬鹿みたいなコンセプトだ。前世なら同好会すら厳しいレベルじゃなかろうか。

これで時折、論文レベルの研究結果が出来るらしいのが、末恐ろしいよなぁ……。

 

「……ナギサ達は君にも入って欲しかったそうじゃないか。私にも相談が来るんだぞ?」

「女子だけの花園に入ったら死ぬ病なので」

「……まぁ。(かしま)しい場で男一人は、普通は肩身が狭くなるだろうがな」

 

肩身が狭くなるだけじゃないんですよ会長。前世で言うなら過激な人達からのバッシング不可避な案件です。

だから、ナギサ達は度々顔を出させようとする、正確には連行するのは勘弁して欲しい。男の存在なんてヘイトの塊なんやぞ。

いつ世界に「こいつ調子乗ってるしそろそろ消そうかな」されるか分かったもんじゃない。

 

何が世界にとって憎悪ポイントか未だに分かったもんじゃねぇのに、ヘイト調整なんて出来るか阿呆。

 

「私も彼女達の部活動を覗いた事が数多くある。……大抵巻き込まれてばかりだが。というか実質、部員扱いだが。ナギサ達は勿論、他の娘達も押しは強いが良い子ばかりだ。何度も交流した君なら、私に言われなくても分かるだろう? 今から正式に君が入っても、皆喜んで受け入れると思うぞ」

「気持ちだけ受け取っときます。そう思われて貰えるだけで俺は生きていけます」

 

いや実際、皆良い子達なのだ。マジで日常アニメに転生した気分で癒やされる。しかも、前世じゃ考えられないゆるーい活動。正直、最高だ。

 

でもリサーチという名のデートとかに巻き込もうとするのはやめてくれ。集団は百歩譲って、二人だけのタイプは地雷やん。

片方が誘ってもう片方さんが怒るのなら分かるが、一緒に誘おうとするのは意味不明なんよ。荷物持ちならやったげているから、それで許しておくれ。

主にナギサ、お前は俺の家に部員皆を呼ぶんじゃない。自分の家で、自分達だけでやりなさい。

部員の子達もニコニコしてついて来るんじゃない。最初は困惑してたのに、二回目からさも当然みたいな顔をしない。

俺の為に皆でお菓子作ってくるのも心底嬉しいけどやめなさい。皆で互いにやってる事だと知ってても、俺にとっちゃそれ以上に勘違いするから。

君達はもう少し男に対して色々危機感を持ちなさい。俺は世界に危機感持っとるというに。

下手して嫉妬とかされてみろ。確実に踏み台コースまっしぐらやぞ。

 

百合って、百合世界って本当にこんなに女の子のパーソナルスペース狭いん? どっちかというと陽キャとかそういう分類じゃね、これ? 百合は幅広く多様な描写があるとかネットで見たけど、これもそういう類? 

 

どっちにしろ、色んな意味で生存難易度が跳ね上がってるのは変わらない訳だけど。

 

……ちゅーかだ。何でここまで部活の話が長引いてる?

 

「というか、妙に部活動推しますね、会長」

「……個人の自由と言ったのは訂正させて欲しい。日に日に切実な表情で相談されて、暴走するのが定番な彼女達の被害に合う私の身にもなってくれ。先程言ったが、私は彼女達の部員扱い、そして君はこの生徒会の手伝いをしてくれている身だ。繋がりとしては分かるだろう」

「それは、……すいません」

「いや、君が謝る必要は……、すまん、やはりある。謎の着せ替え大会にまで発展して、当然私も巻き添えを食らった。あんな恥ずかしい目にあっておいて、骨折り損は御免だ」

 

忌々しげに呟く会長に思わず目を見張る。え、本当何してんのあの子ら。可愛いけど。

というか、着せ替え? 何をどうしてそうなった? 愛らしいけど。

 

「な、何故そげな事に?」

「勧誘計画だとさ。勿論、君のな。メイド擬きや顔が見える着ぐるみ、応援団のような学ラン、モエ、アニメ? とかの衣装とか散々だ」

「え、何それ超見たい」

「じゃあ入部するか? 私もそれならやる甲斐があるが」

「お気持ちだけで結構です」

「……着替え損だと、あの子達には伝えておこう」

「いやまぁ、本音は入りたくて山々ですけどね。こればっかりは仕方ないっス」

「…………」

 

ハァー、と。すっごい長い溜息を吐かれる会長。本当すいません、マジすいません。生徒会の手伝い頑張りますんで許して下さい。

 

あとその、ナギサ達のコスプレパーティは見るだけじゃ駄目ですか。

駄目ですね、ハイ。高望みは身を滅ぼすのだ。これ、百合世界の男の鉄則。

 

マジで世界に消されない為の不毛なチキンレースだよ。

俺だって小難しい事考えずにあんなにも良い子達が俺の事良く思ってて、ウッヒャー!! ハーレムだぁーー!! って勘違いしたい。そんで結局、身の丈にあった普通の人生を送りたい。

でも事実は違うんス。虎視眈々と世界から消されるチャンスを狙われてるんス。無自覚ハニートラップを何とか防いで生き延びてる俺は多分偉いはず。

 

偉くはねぇな。防げてもねぇし。

 

 

作業の手を止め、暫く考えるように目を瞑っていた会長は、少し息を吐き、ゆっくりと瞼を開くと、俺を強く見つめてきた。

 

いや、これは。睨みつけてると言っていい。

 

「翔太郎」

「はい」

 

少し怒気の混ざった声。

思わず身が縮こまる。

え、何で急に空気変えたの会長。

 

「先ず、見当違いな説教をしたくないから先に確認する。彼女達の事は、本当は嫌いか?」

「大好きです、もう死ぬほど好きです」

「あの子達と交流する事は?」

「めっちゃ嬉しいです」

「あの部にいる事への感想は?」

「正直、滅茶苦茶夢心地です、パラダイスです」

「あの部に入れるなら入りたいか?」

「ぶっちゃけ、そうです」

「ならば何故入らない?」

「……黙秘します」

「黙秘の理由を聞いても?」

「……それも、黙秘です」

「そうか、ならば理由は聞かん。しかし、入る気が無いのは変わらないと」

「はい」

「自分の気持ちに逆らってる行為だというのに?」

「はい」

「…………宜しい。ならば勝手に想像して話すが許せ。もしや、自分は彼女達と共にいる資格は無い、などと考えてはいないか?」

「……異論は、ないです」

 

こ、怖い。

なんか急にすんげぇ尋問されてる。

嘘が言えねぇ。口が面白ぇくらいベラベラ動く。

お陰で勘違い、いや勘違いじゃないけど、余計にキレさせてしまった……!

宜しい、の所とか言外から「お前マジでふざけんなよお前」みたいな感情が駄々漏れしていらっしゃる。

 

いや、分かるよ会長! 怒るのは分かる!

端から見りゃ、やりたい事なのにつまんない事でウジウジ悩んで諦めてるとかそういう感じだもんね、俺!

「うるせぇ!!! やろう!!!」って言いたくなるのは分かる!

けど待ってください! これそういう話じゃ無いんで! 

よしやろう! ってなったら死ぬ確率上がるんス! 俺の!!

 

「……相分かった。予想が大方外れなくて何よりだ。もっとも、君には大きく失望したがな」

「死ぬほどヘコみますね、それは」

「…………」

 

すいません、ふざけました。そういうノリじゃないですよね、ハイ。だからせめて、冷たい目とか嫌悪とか心底侮蔑してる目で見てください。

感情が伴ってない死んだ目なのは逆に怖さが跳ね上がるんで。

 

どういう感情してる眼なの、それ?

 

……胃が、胃が痛ぇ………!!

一体全体すべてが自業自得とは言え、こういう展開、心がキツいって……!! ヤバいって……!!

なんで、なんでこうなった……!? いや、分かるけどね? 会長マジ良い人だけど、俺の為に怒ってるんだろうけど、今だけは愚かな俺を許して!

 

眉間に皺を寄せ、またも目を瞑る会長。暫く、こめかみを軽く叩きながらも、その口はゆっくりと言葉を紡ぎだす。

 

「……生徒会の長として、他者に故意的な被害が掛からぬ限りは、生徒の意思は尊重せねばならん、と考えている。例え私からすれば不愉快な結論だとしてもな」

「はい……」

「そも、ナギサ達の部活に入って欲しいのは私、そして彼女達の我儘だ。決定権は君にあり、それにとやかく言える資格は、私達にはない。ましてや、強要なぞ言語道断だ」

「はい……」

「その上で生徒会長ではなく、個人としての私の意見を言う。気分を悪くさせるものかもしれないが、良いかな?」

「はい……、お願いしまス……」

「すまない、そして有り難う。では……」

 

そう言って、会長は瞳を再度、俺に向けた。

その表情は、怒りではなく、呆れでもなく。

深く、哀しげに染まった顔。

 

「君がどういう理由で、その結論に達したかは分からん。私には計り知れぬ深い事情があるのだろう。だが、その結論は、君自身の幸せの否定にしか私には見えん」

「……はい」

「学生の本分は勉学だが、青春も等しく尊いと私は考えている。君の姿は、私の持論の否定でもある。誠に勝手で恐縮だが、私はそんな君の結論が嫌いだ。忌々しい。吐き気がする。そんな下らない結論は今すぐ捨てろ」

「……」

「幸福を求めて何が悪い? 青春を謳歌して何が悪い? 誰かにお前は幸せになるなとでも言われたか? ならばそんな戯言は切り捨てろ。そんな外道は跳ね除けろ。蹴り飛ばせ。君の幸せは君だけのものだ。誰かに否定させるなぞ、君が許しても私が許さん」

「……」

「勿論、誰かを故意に傷つけようとするのなら話は変わる。だが、私は君がそんな人間ではないと心の底から信じている。だから、……もしも、もしもどうしようも無くなったら、頼むから、相談してくれ。絶対に助けるから。無力だとしても、絶対に側にいるから。ナギサ達もきっと、私と同じ結論を出す。君の為なら、彼女達は率先して、君を助ける事に尽力するだろう。これは確信ではない、事実だ」

「……」

「……以上だ。聞き苦しい長口になっただろうが、どうか許してくれ。アドリブのスピーチは(すこぶ)る苦手なんだ」

 

静かに、厳粛に。ただ淡々と。

会長は諌めるように、戒めるように、懇願するように、最後は少し苦笑いをしながら。

ただ、彼女の思いの丈を伝えてくれた。

 

 

会長の言葉は、本当に嬉しかった。

こんなに俺の為を思ってくれてるのは、正直、ちょっと目の奥が熱くなる。

幸せものだ、俺は。

 

……その上で、俺は返答として、酷く最低な言葉で返す。

 

「……本当に、すいません、会長。ここまで、俺の事よく思って貰っていたのに、気付かないどころか、失礼な事してました」

「うん」

 

会長の静かな返答に、口が乾く。

どう返すかは決めてるが、ちゃんと言葉に出来るかは分からない。

何故なら、彼女の思い遣りを、好意を、否定する事になるから。

 

 

 

何度も言うが。

 

俺だって、出来る事なら、浮ついた顔で、ナギサ達と共にいたい。

好かれている事を、恋だとか愛だとか勘違いしたい。

発展させたい下心も無い訳じゃない。

 

でも、情けなく、心底嫌悪されても可笑しくない話だが。

 

結局俺は自分が可愛いのだ。

この世界は、デザノーというゲームは男に厳しい。

百合に関しての知識に乏しい馬鹿な俺だが、ゲームをやってる以上、それは分かってる。

美少女だけを売りにするなら、極力排除すべきノイズだから仕方ない。

もし出るとしても、それは彼女達の為の敵。踏み台。少女達が真の自由になる為の、一歩を踏み出す為に蹴り上げる地面止まり。

 

僕の方が先に好きだったのに、って奴か。そういうのも、きっと味わうんだろう。

前世なら、それこそが良いって人もいるかもしれない。

女の子同士の感情こそが尊いとか言う人も前世じゃネットでちらほら見たし。

そういうものなら、仕方ない。

 

 

……俺は、自分がそんな目に合うのは嫌だ。

死ぬのは当然嫌だ。そして、尊厳を破壊されるなんて死んでも嫌だ。まっぴら御免だ。

 

本当は、彼女達に関わりたくなかった。

関わったのなら、どうしても大切に思ってしまうから。好きになってしまうから。

今のままなら、まだなんとかなる。

例えナギサ達に彼女が出来ようが彼氏が出来ようが、寂しさこそあれ喜んで祝福出来る。勇んで恋人の仲を取り持てる。

この世界では彼氏を作る方が世間体は兎も角、百合世界的にハードル高いだろうが、その人がナギサ達が選んだ人なら、俺だって覚悟を決めて守らねばならん。俺が危惧する百合世界の男の不幸を、ナギサ達の大切な人に味合わせるなど、そんなものは断固として許さん。

彼女達同士が付き合う事になっても気持ちは変わらない。収まる所に収まったと思うだけだ。

 

だが、俺が彼女達をこれ以上大切に思ったら、俺が恋慕を抱いてしまったら、その時点で終わり。

その先に待つ「真実の愛」とやらに打ちのめされるのが、どうしても怖いから。

 

だったら、これ以上関わるのは辞めるべきだ。関わったとしても、距離を離すべきだ。最悪、嫌悪を抱かれる人間となって疎遠になるべきだ。

それが、賢いやり方だ。

なのに、それが出来ない。

理由は簡単。嫌われたくないから。

好かれていたいのだ。よく思われていたいのだ。

惚れられるのは御法度でも、悪い人では無いなと見られたいのだ。

流石にナギサ達みたいな距離感は心臓に悪いし、出来る事なら抑えて欲しいが、それでも好意を持たれている事自体は嬉しくて堪らないのだ。

俺が一緒にいても良いのだと、どうしようもなく糠喜びしたいのだ。

 

くっだらねぇ。

 

結局俺は、

踏み込むのが嫌で、

嫌われるのも嫌、

心も身体も死ぬのが嫌な、

嫌々尽くしのクッソ情けねぇ、自分勝手な屑男なのである。

 

いつ消されても可笑しくないってのは、結局そういうことだ。

こんな覚悟も何も無い奴、何もかも中途半端で何かを犠牲にする決心もないヘタレ、さっさと踏み台になるのが彼女達の為だ。

 

分かってる。

そんなの分かってる。

分かっちゃあ、いるんだけども。

 

それでも。俺は諦められない。

諦める事が出来ない。

頑固と言えばそれまでの、しかし何事もどっちつかずの半端者の、半端なりの生存戦略。

 

「……ただ、それでも。いやだからこそ、俺はまだ、この考えを変える気は無いです。俺にとっても、不本意ですけど」

 

このデザノーとか言う世界が、男の存在がゴミに等しいものだとしても。

百合ヒロインに関わらないモブとしての救いすら失われても。

これからの人生が、例え断頭台への道だとしても。

 

それでも。

何が何でも生き延びてやる。

 

 

「……期待に応えられない奴で、本当に、すいません」

「そうか」

「はい」

 

はい……。

 

 

…………。

 

 

え?

 

「え? 終わり?」

「あぁ」

 

……即答だった。何なら顔は涼しいままだ。

まだそんな事言うのかテメェ! って怒られるかと思ってたのに。つーか俺が会長で似たような事言う奴いたなら怒ってる。幸せにならなきゃ嘘だろ舐めてんのかテメェ! って。事情が俺みたいのだったら話は別だけど。

 

いや、怒られたかった訳じゃないんだけど、構えていた分、何か宙に浮いた気分だ。

 

「あ、え? い、良いんですか?」

「仕方ない。腸は煮え繰り返っているし、泣き縋りたいのを死ぬ気で我慢しているが、お前がそう言うのなら、一先ずは受け入れるしかない」

 

あ、やっぱ怒ってるんすね。当然だけど。

あと、泣き縋るのも辞めてくれて有り難うございます。それされてたら、多分俺の軽い決意が簡単に崩れてました。

 

「それでも敢えて言うなら、そうだな。君がそのつもりなら、私にも考えがある」

「はい?」

 

き、急に怖いこと言わないで下さい、会長? なんか妖しげな笑みを浮かべてますけど、童顔なのに滅茶苦茶魅力的でゾクゾクしますがそれはそれとして辞めて下さい会長?

なんか、黒幕みたく頬杖までついて、すっごい悪役みたいで格好良すぎですよ会長。惚れそうになるからやめて?

 

「なに、そう身構えなくとも、大した事じゃないさ。所詮、君を困らせると決意したまでだ」

「何それ怖い」

「もっと言うなら、そうだな──」

 

そして、

 

「──これまで以上に、君との交流を、触れ合いを増やしていこうじゃないか。勿論、ナギサ達に協力も仰いでな。それこそ、男にとって『期待』出来そうなくらいにだぞ? 精々狼になるのを抗ってみろ、この魯鈍(ろどん)者が」

 

ニイ、と。

口の端釣り上げながら、そんな爆弾発言ぶちかましやがりました。

 

……いや、だから。

そういうのをやめてって話、あ、全部俺が悪かったですね、ハイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、あと。済まないがまだ説教が残ってた」

「まだぁ!?」

「手短だ、許せ。それでだが……、君はあれだな。もう少し自己を好きになりなさい。卑下も過ぎるとそれは他者への加害だ。私が良い例だと思うぞ?」

「それに関しては土下座でも何でもしますしナギサ達にも申し訳無いと思いますが、それはそれとして断固としてこれは卑下とか自分嫌いとかそういう話でないです」

「……強情者め、早口で捲し立てる程の事か」

「諦めが悪いという意味なら、それは褒め言葉として受け取っときます。あと今のはビビって(ども)ってるのを誤魔化したいだけっス」

「分かった、言い方を変えよう。偏屈という言葉がお似合いだ、このお馬鹿者」

 

 

うっす。オラ、常磐 翔太郎。

百合ゲーワールドに殺されないよう頑張るゾ。

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