美少女アクゲーに転生しました!! 無力な男にどうしろと!?   作:伸縮大王

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本当にありがとうございます
感想返せてないのは、単に陰キャだからです。
アスファルト眺めるのが好きな、人見知りの美少女が書いてると思ってお読み下さい。

※注意
主人公君が類を見ないほどグッダグダにヘタレます
お見苦しいとこをお見せしますが、頑張ってご視聴下さい


八話 フィクションあるあるな便利アイテムって現実だと、どうなん? ってお話

 

愛しの我が家がナギサ達に占拠され、共謀者の母さんに入るよう脅された後。

 

結局、俺は皆と一緒に夕食を取っていた。

 

うわーい。団欒だよー。女の子がいっぱいだー。

こんなに可愛い妹さんがいるなんて俺はなんて幸せものなんだー。

えー、姉妹じゃなくて幼馴染だってー?

なんだよー、モテモテじゃんかー。

死ねばいいのにー。

 

ふざけんじゃないわよクソが。

彼女達のご好意が百合世界のせいで無意識の刃物に変換されるんやぞボケが。

只でさえ女侍らせやがって、とヘイト稼いでんのやぞダボが。

 

マジでもう、ナギサさん達ったら大胆。

その行動力は頼むからもう少し抑えて欲しい。

 

俺なんで今まで生きてこれたんやろ。

期待させといて百合寝取らせで曇らせたいからかな?

泣くぞ。

 

そして母さんや、そこの「もー♪ 翔太郎ったらいつ見ても隅に置けないわねー♪」なんて地雷発言()かしやがる母を形どった災害や。

貴女は息子に無断で女の子を家に上げるでない。

今日び、恋愛ゲーでもやらんよ、そんな奇抜ムーヴ。

人の意表つくのも大概にしなさい?

 

父さんも母の凶行を止めてくれ。

こめかみ掻きながら「ウチの息子の将来が心配だな……」じゃありません。

貴方が危惧してるような男になる前に命の危機です。

 

「どう? 皆、今日の料理美味しい?」

「はい! とっても美味しいです、お義母様!」

「もう、ナギサちゃんったら、お上手ー!」

「ほ、本当です! お母さんの料理も美味しいけど、お義母様の料理も最高です!」

「あらやだもう! サスラさんと同じくらい美味しいだなんて、もう実質私の味はナギサちゃんの母の味じゃないー!」

「はい!」

 

違うが。

母の味は、その人の母君だけの味です。

ナギサも『はい』じゃないが。

 

「す、すいません、令子(レイコ)さん。後でレシピを教えて頂けますか? 私も作ってみたくて……」

「はい、喜んでー! これ以外もいっぱい教えてあげるわね? 頑張ってね? 翔太郎も腕は私に負けてないから!」

「あ、ありがとう御座います!」

 

一見マトモそうな会話だけど、仲睦まじい会話なんだけど、なんか不穏なんだけどユイさん? 

母と仲良しなのは良いけど、なんか共謀してない、貴女ら?

ナギサも「私も! 私もお願いします!」じゃないが?

 

「お義母さまー! 私ここに住むー!」

「嬉しいけど、駄目よー? ヒナタちゃんのお母さんとお父さんが悲しむよー?」

「じゃあ皆で住む!」

「良いわねぇ! 大所帯じゃない!」

 

良くない。

嬉しいで済ませなさい。

大人の常識を簡単に捨てるんじゃない。

ヒナタの可愛らしい妄想でも、現実になったら滅茶苦茶展開なんです。

 

「……翔太郎」

「なんすか、父さん」

 

皆に聞こえない程度の小声で父に話しかけられる。

席が隣なので、俺は耳打ちしやすいように父に顔を近づけた。

 

「ちゃんと、彼女達に誠意を見せるんだぞ。皆好きだなんて、どっちつかずで許してくれる女の子なんて、現実にはいないんだからな?」

「言われなくとも、全員選びませんが? 対象外にしますが?」

「極端が過ぎる」

 

そういう話ではなくてね……、と父さんは片手に頭を添えてるが、そういう話です。

 

告白なんて当然論外として、もし仮に、告白されるなんて宝くじ当たるよりも確率低いミラクル起きたとして。

俺も覚悟を決めて振る所存です。

嫌われたくはないが、それで四の五の言う内容じゃない。

こちとら生存に深く関わる案件なんじゃ。

皆仲良し! な関係は出来れば壊したくは無いが、それでヘタれる訳にもいかんのじゃ。

意を決して壊さねばならぬ関係もあるんじゃ。

 

そして母上よ。

目を細めてニヤニヤしながらこっちを見るんじゃない。

何か面白そうな事してんな、って顔を向けるんじゃない。

 

「なになにー? 男二人で何の話ー?」

「ナギサ達は可愛くて素敵だね、って父さんが」

「あ、あぁ。本当に良い子達だなと」

「あらー! お父さんもそう思うー? ホント自慢の娘達よねー! 私もこの子達が娘で良かったわー!」

「記憶でも改竄したんか、アンタ」

 

貴女の子供は私一人です。

勝手に美少女三人を産んだ事にすんじゃねぇ。

 

「もう、駄目だよ、翔。お義母様に向かってアンタだなんて」

「ナギサはええんか。自分のお母さんの立場が我が母君に侵略されてるぞ」

「え? もう実質お母さんは二人だよ? 勿論お父さんも二人」

「手遅れやったか……」

 

すんません、誠司さん、サスラさん。

ウチの母の悪しき企みを止める事は出来ませんでした。

でも本当の両親の事も大事にしてるナギサの強い意思に乾杯。

 

「という事でユイさん」

「な、なに?」

「ツッコミお願いします」

「…………ごめん。よく分かんないけど、何も言う事ない」

「そんなぁ」

 

今、目の前で奇天烈ワールドが発生してるじゃないですか。

SOSが加速してるんです。

貴女が頼みなんです。

この阿鼻叫喚の流れをその常識パワーで壊して下され。

俺を胃痛から救いに来てくれ。

 

「頼むよユイさん。頼むって」

「何で椅子の上で器用に土下座してるの?」

「俺にツッコむんじゃなく」

「え、えぇぇ……」

 

いや、ツッコミ要素出しちゃった俺が悪いんだけどさ。

俺なんかより、もっとボケ展開かましてる空間があるじゃない、そこに。

 

「もー、お姉ちゃんはまだまだだなー」

「え? どういうこと、ヒナ?」

「お父さんとお母さんは二人だけじゃないよ? ユイ姉ぇのお父さんお母さんも入れて三人! これは忘れちゃ駄目だよ! すっごく大事な事だよ!」

「そ、そうだった……! ごめんね、ユイ!」

「はいユイさん宜しくぅ!!」

「え? え? え?」

 

ツッコミ! ツッコミ!

なんで私も巻き込むの!? 的な奴、お願いします!

 

「え、えっと、えと……わ、わーい! 私も皆と家族だー! 嬉しいなー!」

「そうじゃなく」

「私にどうしろって言うのっ……!?」

 

涙目の困り顔で睨まれた。

可愛いな、畜生。

じゃなくて。

 

ぐぅ、こんなん俺が悪いのは分かるけど、仕方ないじゃんか。ユイさんツッコミ枠の筈なんやぞ。

期待だってしたくもなる。

 

百合世界ってボケとツッコミのポジションがちょくちょくシフトチェンジすんの?

聞いたことねぇよ? そんなルール。

 

「ごめんね、ユイちゃん。ウチの馬鹿のせいで困らせちゃって」

「あ、いえ……。翔ちゃんはいつもこんな感じですから。慣れてるというか、寧ろ可愛いくらいです」

「ユイちゃん……! 本当、良い子ねぇ……! 翔太郎? こんな素敵な娘達捕まえておいて、アンタもちょっとしっかりなさい」

「娘発言で場を掻き回した母上が言う事で?」

「別に掻き回してないもの。ねー?」

「「はい!」」

「あ、はい!」

「ほら」

「なんで?」

 

なんで問題発言してた母さんが、まるでマトモみたいな雰囲気になってんの?

なんで三人共、脅されたとかでなく、心底そう思いますみたいに同意してんの?

 

おかしない? ユイが良い子なのは心底同意するけども?

娘云々は全く同意出来ませんよ? ねぇ。

 

あと、ユイさん。

男の子は格好よくいたいんです。可愛いはなんか違うというか惨めというか、可愛いの体現者たる美少女に言われても何の説得力ないんで辞めて頂きたく。

 

「翔太郎」

「なんすか、父さん」

 

またも父に耳打ちされた。

 

「お前にその覚悟があるのなら、……アフリカに行きなさい。そこなら、彼女達と「言わせねぇよ?」強く出たなぁ」

 

父さんや?

アンタまでボケるんか?

あの頃のダンディで紳士な父さんはどこ行ったんや?

 

アフリカってあれでしょ? 一夫多妻制が許可されてる国多いんだってね?

先程までの「半端にならず彼女達に誠意みせろ」的な常識溢れるマトモ発言はどこ行ったんや。

母さんの毒気に当てられたんか?

現実世界でも実際やったらヤバい案件なのに、この世界じゃクソ男として処理されますよ?

踏み台になれ……ってコト?

 

そんな戯言吐かすより、ナギサ達はハワイに行かせません? ハワイ。

この世界でも同性婚が合法化されてるらしいですよ、あそこ。

一夫多妻制より現実的だね。

本人達の意思こそ最重要だが、俺の命の危機に関わるなら、強硬手段(押し付け)でいくぞ?

ちゅーか、もうこの際、彼女でも彼氏でもハワイで作ったらええねん。

 

「ナギサ、ハワイ行けハワイ。ヒナタとユイ連れて。そこでバカンスして来い、うん」

「急にどうしたの? ……うーん、翔も一緒なら行きたい、かも?」

「俺は良いから」

「あ、じゃ行かない」

 

即答されたよ。

声色も怖いよ。

目が「何かふざけた事考えてるよね?」みたいに冷たい感情で訴えてきやがります、ナギサ様。

俺、小心者だからやめて?

 

「……そっかぁ」

 

俺は、ハワイ計画を即座に破棄した。

ナギサ怖いもん。

 

 

「──で? 結局何しに来たの」

「よくぞ聞きました!」

 

ナギサに鎮圧されて、意気消沈した俺は結局彼女達と夕食を共にした。

皿洗いの手伝いも一緒にしてくれた後、まるで我が家のように寛いでいるナギサ達に疑問を向けると、待ってましたと言わんばかりにナギサが応える。

 

「ここに来た理由は他でもありません!」

「いや、ちょいちょい理由無しで来る時あるやん」

「確かにそうだけど! 今はご清聴お願いします!」

「あい」

 

ナギサの指示に従い、ソファに座って聞く体勢に入る。

何故か「隣、ごめんね?」とユイに横に座られた。

 

「まず、私とユイは感想部なる部活に所属しております」

「あい」

 

感想部。

何事も楽しもう! がモットーの、何にでもチャレンジしたりお菓子食ったりデートしたりして、その感想を纏める部活。

それがナギサ達の部活動だ。

 

「そして、感想部には感想以外にもやる事が沢山あります。その一つが──宣伝です!」

 

ピシッと。人差し指を立ててナギサがドヤ顔する。

 

宣伝。

感想部は、なにも部内だけで感想を言い合うだけの部活ではない。

そのレビューを、部外に発表する事も彼女達の活動である。

 

他の部活がどのような活動をしているか。

創作を見て、何処が面白い要素か。何が強みか。何処に魅力を感じたか。

お菓子の特徴。味。類似品との差異の説明。

 

様々な物事と、それに関する感想を他者へと発信し、広く知らしめ、布教する事。

それが、感想部の大きな存在意義と言っても良い。

 

「さて今回、翔やお義母様、お義父様に宣伝するのは!」

 

そう言って、ナギサはスマホを取り出した。

ユイも隣でスマホを手に取り、こちらに見せてくる。

因みにヒナタは、ナギサの横で同じくタブレットをこちらに掲げるが、当然、感想部ではない。小学生なので部外者だが、『特別部員』としてナギサ達は扱っている。

無茶があるって? フィクション世界だからノーカンなんです。

 

で。

三人が見せびらかす端末には、あるアプリの画面が表示されていた。

 

「それはぁ──」

 

 

「「「──『シャベルタ(しゃ、シャベルタ)』ー!」」」

 

 

『シャベルタ』

原作でも登場するこのスマホアプリは、前世じゃ隣国で開発され、日本で沢山の人が使っている有名なトークアプリのような立場に位置している。

描写の少ない現実世界ではキャラの交流描写を描くのに重要な要素を担っていた。

 

「あー、テレビでも言われてた奴ね!」

「ウチの職場でも話題になってたなぁ。トークアプリ、ってやつだっけ?」

「そうです! でも、これは文字を打つだけの唯のトークアプリではありません!」

「ほー」

 

父の問いに答えると、ナギサはスマホを持って一旦俺達から離れる。

 

「まずは実演です! では──『あいうえお』!」

 

スマホに向かってあ行を言うナギサ。

 

それに合わせて、ユイのスマホからナギサの声が聞こえてきた。

と、同時に、ユイはスマホを横にして、画面を俺達に見えるような位置に持つ。

 

そこには、nagisaと小さく書かれたチャットネームと可愛いらしいマスコットのようなアイコン、《あいうえお》と吹き出しの中に書かれた文章が表示されていた。

 

「おー、凄い」

「本当に文章化されるのねー」

 

父さんと母さんの感嘆の声に、ナギサは満足そうに頷く。

 

「そうなんです! このアプリは高性能の音声認識が搭載されていて、文字による会話は勿論、通話も同時に出来ちゃう優れものです!」

 

ナギサの自慢げな売り文句がユイのスマホから声と一緒に、一文も変な文章になる事なく表示されていき、それを見て父さんは更に唸りを上げた。

 

「凄いな。リアルタイムでここまで聞き取れて、ちゃんと話した通りの文章になってる。どうなってるんだ、これ?」

「はい! 高性能AIが搭載されてるそうで、何も弄らなくても違和感無く会話が楽しめます! 更に翻訳機能もバッチリなので、外国人さんとも会話可能です!」

 

そう。

このトークアプリは、文章と音声認識を合わせたものだ。

作中でのコンセプトとして『誰とでも会話出来るアプリ』として開発された、という設定だ。

文字だけの交流や、ただの通話アプリとして使えたり、文字と通話を織り交ぜた会話が出来るのは勿論。

耳が聞こえない人や、目が見えない人、話す事が出来ない人とも、そして外国語しか話せない人とも、卒なく会話出来るアプリだそうな。

 

しかし、実態はメタ的要素として『プレイヤーが文字と会話によるキャラ同士の交流を見れるように』という部分の方が大きい。

 

原作のナギサ達もこのアプリで交流しているが、専ら音声認識を使っていた。

通話の描写だけではパンチが足りず、かと言って単なるトークアプリの描写だけでは、普通の会話のような文章だと違和感がどうしても出てしまうそうで。

それを同時に解決させたのがこのアプリという設定であり、CS版ではCVが付いた事もあって、更にこのアプリの強みは増した。

 

その設定もあって、声優さんの演技を聴けつつ、何故トークアプリなのに声が聞こえるのか、唯の通話描写にしか見えない、という疑問点も払拭させる事に成功している。

 

ラノベやマンガでよくある、現実だと有り得なさそうな便利アイテムだなーくらいに思っていたが、いざ実物を触れられるとなると、やはり中々の感動もんだ。

 

前世でもそういうアプリは有るにはあったそうだが、ここまで未来テクノロジーめいたもんは早々ないだろう。

探せば普通にあるんだろうけどね。前世に戻れないので、そういう事にしていて欲しい。

 

「──と、いう訳で、このアプリは誰とでも会話出来るように作られたものなのです!」

 

ナギサが『メタ部分』以外の、彼女達にとっては本当の、設定としてのシャベルタのコンセプトを語っていると、父はただもう、目を丸くさせるしか無かった。

 

「今の技術は凄く進歩してるもんだなぁ。職場で導入が検討されてる、って耳に挟んではいたけど、聞いた内容だけでも検討されてても可笑しくないぞ」

「実際、ベンチャー企業等では率先して取り入れてるらしく、グループチャットによる業務連絡や会社内での常識共有、文章による事後確認も可能なオフィス電話としても重宝されているそうです。更には──」

 

ユイはそう言いながら、彼女の今の説明も文章化されているアプリを操作しだす。

すると、ユイのスマホから、彼女の顔が映し出された画面が表示された。

 

「このようにビデオ通話としても使用可能で、複数人のライブチャットによるテレワーク、リモート会議も可能となっています。PC版も配信されているので、会議ではそちらが主なようです。勿論、スマホからでも大丈夫ですよ」

「……本当に凄いな、万能アプリじゃないか」

「それだけじゃありません! ヒナ、よろしく!」

「うん!」

 

ナギサに呼ばれたヒナが快く応えると、二人は同時に端末に向かって喋りだした。

直に聞いてもスマホからでも、二人の声が被ってしまい内容が聞き取れないものの、ユイのスマホからは姉妹の台詞が綺麗に別れて表示される。

 

nagisa.《このように同時に話してたり、声が被る事があっても文章ではちゃんと差別化されるので、誰が何を話してるのかもしっかり確認が出来ます》

 

ヒナタ.《ヒナタだよー! 好きな食べ物はチョコとクレープケーキだよー! 嫌いなものはレーズンでーす!》

 

nagisa.《これこそが、シャベルタの真の強みです! ……因みに私はパフェが好きです!》

 

ヒナタ.《レーズンパンが給食に出たら好きな子にあげてまーす!》

 

「句読点どころか、黙ってる所も勝手に作ってくれるのか……、どうなってんだ、これ」

「というか、一つ思ったけど、お父さんの声はユイちゃんの近くにいても認識してないのね?」

「はい、デフォルト(基本設定)ではそのスマホに登録した発言者──つまり、私ですね。その人しか認識しないようになっています。設定を変えれば発言者以外の声も別の声として認識しますし、ナギ達のように同時に喋っても大丈夫です」

「もう高性能どころじゃなくないか? 怖いが?」

 

ユイの補足に、もう父は感嘆を通り越して引いている。

プログラムとか音声認識の事とかはてんで駄目な俺でも、このアプリは無茶苦茶してると思う。

ちゅーか今更だけど、父さんも俺よりの感性してるんすね。

前世の父さんと同一人物みたいなもんだからかな?

 

「他にも、通話を続けたまま写真や動画をアップロードによる共有、そのままダウンロード出来たり、PCなら外部カメラ、スマホならそのままで外の映像をストリーミング配信出来るので、ライブチャットしつつ今自分が何処にいるかをより詳細に伝えたりと色んな事が出来ちゃいます!」

「旅行してる際、遠方にいる友達と旅行風景を一緒に見ながら会話出来たり、と様々ですね」

「あと、相手の声が聞こえないようにする事も出来るよー! 声が出せない時とかに使えるねー!」

「……授業中とかに使ってないよね? ヒナ」

「使ってないもん! タブレット使う授業と休み時間以外は使っちゃ駄目なんだよ!」

「なら良し! ヒナは良い子だー!」

「えへへー!」

「……おじさん、いつの間に未来の世界に来ちゃったのかなぁ」

「現実ですよ? (ゴウ)さん」

 

ユイの補足もありながらの、ナギサとヒナタによるほのぼの漫才混じりの説明に、ついには遠い目をしだした父さん。

そんな彼に、ユイは優しく笑いかける。

 

いやまぁ、父さんの気持ちはわかる。痛いほど分かる。

ここまで好き放題してるアプリ、前世じゃ聞いた事ねぇもん。

一つ一つなら出来ない事も無いだろうが、それをごった煮にしたのは幾ら何でもやり過ぎである。

 

アップロード共有と、ストリーミング配信の下りを詳しく説明する為、ナギサが自分の顔と俺達が映った映像を同時に写しつつ、ナギサの家で飼ってる猫の画像も上げてたりとシャベルタの機能を実践する。

 

それをユイのスマホから眺めながら、俺は物思いに耽っていた。

 

 

 

シャベルタ。

このアプリは、原作じゃ、元々交流があるキャラ同士は兎も角、現実世界では接点の薄いヒロイン達を関係づけられる、ただ一つの代物だ。

 

このアプリを使ってのイベントは、個別キャラとの好感度を上げる為のものが主となっている。

少しずつ互いの事を知り、更に踏み込んだ関係になればトラウマや願いを共有し、スマホ越しでも互いに掛け替えの無い存在へと昇華させていく。

原作にとって、このアプリは少女たる御子達の、心を繋ぐ架け橋でもあるのだ。

 

そして、原作のナギサの、生命線ですらある。

 

幼馴染同士のナギサとユイは元々交流はあるが、原作のトラウマの数々により引き篭もりになったナギサにとっては、外の世界との繋がりはこのアプリしかなかった。

 

懸命にナギサとの交流に努め、外の世界の事を話し、少しでも現世に繋げ止めようとするユイと。

もはや、現世に留まる意味をユイとの繋がりにしか見い出せなくなってしまったナギサ。

 

 

それを思うと、原作からは懸け離れた、今のナギサ達の顔を見て、自然と顔が綻んだ。

 

ナギサの両親は存命し、ヒナタも狂わず、優しく愛らしい少女のまま、元気よく笑い。

 

ナギサもまた、引き篭もりではなく朗らかに、健やかに、親友のユイと青春の日々を送っている。

 

ユイも、親友の生きる屍と化した姿に傷心する日々を送らず、姉妹に振り回されながらも、元気に、楽しそうに過ごしている。

 

ヒビキ会長とも知り合い、原作時点とは見違える程に親睦を深められた。

 

会長の願いの根幹たるカナデさんとも知り合い、仲を深める事で、より会長との繋がりも大きくなった。

 

上々ではないだろうか。

原作開始前から、原作とは良い意味で乖離しているこの展開は。

原作ブレイクとしてはありきたりながら、やはりナギサ達の暗く沈む顔なぞ見たくは無い。

別に救ったとか大層な事も出来ずここまで来たが、こんなにも上手くいったのなら、俺も転生した意味を見い出せそうな気がする。

 

だからこそ、原作に追いつかれるのが、怖い。

 

まず、俺が介入出来る余地は無い。

男である俺は御子にはなれない。

これは予想ではなく、実際に作中で語られている事だ。

 

『御子は、選ばれた女性にしかなれない』

 

つまり、俺は外野のまま。

彼女達が生きて、本当の現実に帰って来られることを祈るしか無い。

 

偶然の積み重ねとはいえ、ナギサ、ヒナタ、ユイ、ヒビキ会長。この四人を巡り合わせる事には、結果的に成功した。

この四人なら、夢世界という死が蔓延る魔境でも、手を取り合う事が出来るだろう。

 

ヒナタが生きてる事は大きな利点だ。

原作ではナギサを苦しめる難敵だったヒナタが、この世界なら力強い仲間となるだろう。

原作ヒナタ程のチートでは無いだろうが、敵ではなく仲間としてなら、それだけで彼女達の生存率も上がる。

 

では、他の御子は?

彼女達の生存の確率はどうやって上げられる?

 

身の程を弁えずに調子に乗って介入しようにも、何処にいるかも分からないヒロイン達に、どうやって接触を図る?

 

夢世界でナギサ達が接触し、交流を深められるかもしれない。

しかし、その前にロストしてしまう危険性もある。

死に覚えゲーの癖に残機有りという大問題を抱えた作品。

それがデザイアノーツだ。

しかも残機が残ってようと、実質死亡な展開(嫌がらせ)までご丁寧に配置してやがる。

そんな理不尽に、何も知らない彼女達は対峙せねばならないのだ。

 

この世界はゲームの世界だが、神の手たるプレイヤーは居ない。

彼女達は、自分達の実力で攻略していくしかない。

この世界は、彼女達にとって紛れもないリアルの世界なのだ。

ゲームのように、上手くいく保証など、どこにもない。

 

原作知識がある俺が、助言をすれば良い。

それが出来るなら、どれだけ楽か。

 

夢世界に行ったヒロイン達の現実世界は繰り返される。

御子だけが進まぬ一日と化した現実の中で、御子だけがループした一日に介入出来る。

そして、ロストした御子は、現実にすらも居ない事にされてしまう。

現実世界からも、消滅する。

 

そして。

一般人たる俺は、単なる一日としてしか認識出来ない。

何処まで攻略出来たかも、誰がロストしたかも分からず仕舞いのまま、ありふれた日常を過ごすしかない。

 

俺にとってはたった24時間、御子しか繰り返す事が出来ない一日。

消えたヒロインの事も分からない、最悪ロストしたナギサ達の事すら、居なかった事にされた認識を、強制的に植え付けられる。

 

どうすりゃ良い。

百合世界に殺されたくないのは本音だ。

本心だ。

いつだってそれは変わらない。

 

でも、彼女達が死ぬのは、居なかった事にされるのはそれ以上に嫌だ。

そんなふざけた結末は死んででも変えたい。

 

彼女達は、皆良い人達だ。フィクションの世界だから、主役側だから当たり前かもしれないが、その世界に来てしまった自分にとっては現実の人間だ。

好きになるしかないだろ。

懇意にして貰えて、嫌いになる訳ないだろ。

そんな人達が消えていくかもしれない恐怖が待ち受けているんだ。

 

俺が、彼女達と離れ離れにされるなら、まだ耐えられる。

彼女を作ろうが彼氏を作ろうが、本心から祝福出来る。

そうなるよう、俺なりに頑張ってきた。

好意以上の何かを抱かぬよう、抗ってきた。

やらかしてばかりだし、本当に百合世界とやらで今後も生きていけるかも不安だが、嫌われるなら兎も角、疎遠になるだけなら御の字だ。

 

だけど。

彼女達が死ぬ事だけは。

消えてしまう事だけは、駄目だ。

無理だ。

そんな事、耐えられない。

例え、嫌われようが愛想を尽かされようが、そんな目に合わせる事に比べたら。

そんなの、頭がおかしくなる。

 

でもどうすれば?

今デサノーの内容を語って予防に努めるか。

そんなもん、とっくの昔にやった。

四人になるだけ、不自然の無いよう伝えた。

面白そうなゲーム設定だなとか言われた。

それだけだ。

 

じゃあ、原作が始まる運命の日、その前日に行動に移すか?

出来るか。日にちが分からねぇんだ。

作中で語られねぇんだ。

どういう日に発生するかまでは分かってる。

御子全員が休日の日。それが御子達が夢世界に行く日だ。

それをどうやって特定出来る? 四人が偶々、休日である日に縋るか? そんな日なんて腐る程あるのに?

 

いっそ四人にだけでも、本当の事なんだよ、とでも強く言うべきか?

鬼気迫る表情で、取り繕わずに必死に説得するか?

一度やって、怖がられてみろ。

引かれてみろ。

怯えられてみろ。

心配されてみろよ。

もう二度と、俺は出来なくなってしまった。

 

笑えば良い。(さげす)めば良い。

彼女達の心配をしてるフリして。

偉そうに言って、結局、自分の事しか考えてねぇじゃねぇかと失望すれば良い。

全部事実だから。

言い返す言葉も無いよ。

 

分かってる。

結局の所、ウダウダ言い訳してるだけだ。

勝手に詰んだ気になってるだけだ。

探せば、きっと方法がある。

何か手掛かりがある筈だ。

本当に彼女達を救いたいなら。

狂人と言われようが。

彼女達に心の底から侮蔑されようが。

恐怖されようが。

敵として見られようが。

例え四人にしか伝えれないとしても、行動に移すべきだ。

 

なのに、出来ない。

 

何で俺なんだよ。

物語の主役みたいな度胸も無い。

狂っている程の強靭な精神なんて欠片もない。

言い訳並べて、足竦みしてるだけの三下。

自分がひたすら可愛くて、口では大切だ、守りたいだの言いながら、結局自分の事しか優先出来ない。

百合世界がどうのこうのと、自分の命や尊厳の事しか考えて無い。

自分も他人も犠牲にする事が出来ない、堂々巡りの思考停止。

何か特別な力を指咥えて待ち続けてるような、今もこうして勝手に悲劇に酔った気になって、自分を慰めてるだけの凡俗。

 

何で、そんな俺が転生してんだよ。

俺は何をすりゃ良いんだよ。

彼女達に何が出来るって言うんだよ。

 

 

こんな無力な()にどうしろと?

 

 

「────翔、ちゃん?」

「っ!」

 

 

……しまった。

彼女達がいるのに、深く自分の世界に入りすぎた。

原作云々に関してだけは、せめて彼女達の前ではこうならないようにしてたのに。

百合で殺される云々なら、まだ言い訳出来るような振る舞いが出来たのに。

失態だ。

 

ユイが、今まで見たことないくらい心配そうに。

いや、今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ている。

ナギサも、ヒナタも。

朝の時とは比較にもならない程の表情をさせてしまっている。

 

昔、デザイアノーツの事を深刻ぶって話して、結局怖がらせてしまった、思い出すのも忌々しい、あの日のように。

 

 

……クソッ、吐き気がする。

構ってちゃんもいい加減にしろよ、クソ野郎()

自分の立場、分かってんのか。

 

「……ワリィー。このアプリのヤバさにビビっちゃってさー。いやマジで、バケモン過ぎだろ」

 

兎に角、取り繕わなければならない。

ナギサ達の幸せな空気を壊してはならない。

そんな奴なぞ、百合関係なく、死んで当然のクソ野郎だ。

 

「…………そっか。分かった」

 

……本当は、納得なんてしていないのだろう。

責めるような強い瞳で、苦しそうな表情で、気持ちを押し殺すように、ユイは言葉を絞りだしてくれた。

 

本当に、ごめん。

 

「父さんも母さんも、そんな心配そうにすんなって。ちょっと過剰に反応し過ぎ」

「あ、あぁ……」

「し、翔太郎が、そう言うなら、ね……」

 

父さんにも母さんにも、何でもないように振る舞う。

二人も心配そうにこちらを見てたが、俺の言葉に納得の台詞を紡ぐ。

その顔は、未だに不安そうな色を浮かべたまま。

 

あぁ、もう。

ナギサ達が作ってきたいつもの(幸せな)日常が。

俺のせいで、全部台無しだ。

何でこう、いつも肝心な時にやらかすんだよ。

死ねよ、俺。

 

 

「でさ。滅茶苦茶凄いアプリってのは分かったけど、これってやっぱ金取るん?」

 

早く変えろ。

俺が、この空気を変えろ。

いつもみたいに、百合に殺されたくないよー、とか吐かしながら、ヘラヘラしてるような死にたがりの環境に整えろ。

顔も、声も、雰囲気も、さっさといつもみたいな馬鹿に戻しやがれ。

ナギサ達に二度とこんな表情させるな、殺すぞ。

 

「……え? あ、う、うん! 実はね、こんなに凄いのに無料なんだよ?」

「マジかよ、スゲぇな。大盤振る舞いじゃん」

 

ナギサが困惑しながらも、また普段のような口調で喋りだす。

先程までの元気一杯なものでないにしても、その振る舞いには感謝しかない。

 

大丈夫だ。

ナギサ達は切り替えようとしてくれている。

ここで俺がまだ引き摺ってる素振りなど見せるなんて論外だ。

筋違いだ。

俺も、とっとと切り替えろ。

こんな『常磐 翔太郎(不幸に酔ってる『だけ』の俺)』は彼女達に邪魔なんだよ。

 

「でね? 私達は考えた訳です。翔にもこのシャベルタを使って貰って、更に親睦を深めようじゃないかと!」

「え、やだ」

「即答!?」

 

「や、だって。俺、ナギサ達以外にシャベルタ使えそうにないし」

「それでも良いよ! というかケンタ君達は!? 友達だよね!?」

「友達してくれてるだけだし、友達料払わなきゃ」

「そんなの友達じゃないよ! ケンタ君達、怒るよ!」

「マジ良い奴等だよなぁ」

「本当にそうだねぇ、じゃなくて! 一緒にやろうよ、シャベルタ!」

 

「そ、そうだよ。すっごく楽しいよ?」

「駄目ですユイさん。俺はそのアプリ入れないって決めてますので」

「その拘り悲しくならない?」

「俺はシャベルタ禁止教に帰依したのです」

「早くやめた方が良いよ? そんな宗教」

 

「お兄ちゃんのケチー!」

「ケチ!」

「あ、え、け、け、ケチ!」

「ユイさん? 言い慣れてないなら無理して言わなくてええよ?」

「ケチ!」

「ユイさん?」

 

「あれ? でも翔太郎、ケンタ君達や、ネット友達と普通に」

「ちょっと待って母上! それ以上はいけない!」

「しゃ「あーあーあーあーあー!」シャベルタ使ってるじゃない」

「被せたのに全然意味ねぇ!!」

 

「「「…………………………へー」」」

「あ、いや違うんすよー実は俺、美少女と連絡すると死ぬ病でしてー、だからすっごいスマイルで寄ってこないでお三方? 怖いよ?」

「うん、そっか。取り敢えずスマホ出して?」

「いや、だから、ナギサさん? 俺は美少女と」

「良いから出して?」

「あの、ヒナタさん。だから」

「「出して?」」

「助けてユイ!」

「……早く……スマホ出そうか……?」

「…………………………あい」

 

「……後生ですから、後生ですからスマホ画面は見ないで下さい……せめてフォルダアプリを開くのだけは勘弁して下さい……」

「そんなことしません。ちゃんとアプリ開いてから渡して、ね?」

「あい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……俺は。

上手く振る舞えただろうか。

 

 

《──なるほどぉ。それで、オレ達とシャベルタ使ってるのがバレて、女の子達に激詰されちゃったと》

『そっすね……』

《ヒャハハハ……。いや、マジで死んだ方が良いんじゃない? トッキー》

『やめて! 殺さないで!』

 

あの後。

結局、ナギサ達のグループに入れられ、会話を楽しんだ。

その後、三人でお泊り会をするらしく、ナギサの家に行く彼女達を玄関で見送った。

 

……勿論、「翔もお泊り会、しよう!」の言葉は丁重にお断りさせて頂きました。

やっぱね、なんだかんだ百合に挟まる男判定されたらヤバイですから、うん。

 

《まぁ、乙女の純情を弄ぶ悪い男には? 痛い目見て貰わねぇとなぁ?》

「男の貴方が乙女とか言います?」

《うん、今日は覚悟して? 徹底に踏み潰す》

「何でキレてんの?」

 

ナギサ達が帰った後。

俺はネットで知り合った友人とシャベルタで会話しながらゲームをしていた。

先程の『トッキー』というのは、俺のハンドルネームだ。

名字とお菓子の名前を掛け合せた、即興のものであり、お気に入りである。

 

《うるさいなぁ。一々小言が多いんだよ、お前は》

「それでも俺と遊んでくれるから、ハウントさん、めっちゃ良い人ですよね。友達になれて、俺ホント良かったっス」

《お前ホンットお前、悪い奴だよねぇ》

「何でそうなんの?」

 

そして、彼。

デザノーでは出演していないモブの一人。

機械で普段より声を低くさせてるらしく、更にくぐもらせているのが特徴の、顔出しNGのゲーム友達。

 

《……まぁ? 紳士のオレとしては? 悪い男をやっつけるのは必須事項というか? 決められた運命というか? やっぱ、いつだって正義は勝つんだよねー?》

「怪人とか怪獣とか好きな癖によく言いますね」

《お前マジで、ホントマジで覚悟しろよ?》

「はいだらー!!」

 

ハンドルネーム、ハウント。

 

彼もまた、俺の大切な友人である。

 

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