美少女アクゲーに転生しました!! 無力な男にどうしろと!?   作:伸縮大王

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散々アクゲーとタイトルに書いておいて、アクション要素ゼロの詐欺作品ですが、この先、更に詐欺要素があります

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主人公君がイキってたので、加筆を交えた下方修正。

あと見たことあるようなキャラが出ます
今更か


九話 ゲーム友達も大事にしましょう ってお話 

 

ハウントさん。

 

特撮の悪役、『ベノムハウント』から取ったそうで、その名前の由来からして、特撮ものが大好きな人である。

 

特に好きなキャラは軒並み悪役や怪獣らしく、由来であるベノムハウントは彼の一番の推しだ。

 

何でも、中々のキレ者で、策略家らしい。序盤から出てきたキャラで大抵その手のキャラは噛ませになりやすいらしいが、彼の推しは違う。

何処までも策を巡らせ、想定外の事態すら慌てる事なく、まるで織り込み済みのように柔軟に対応し、完全に場を掌握する、主人公達の強敵。

特撮でよくあるらしい強化形態とかもなく、序盤の頃からの格下の装備でありながら、最後の最後まで主人公達を苦しめたという、その底知れなさにハウントさんはゾッコンになったとか。

 

で、その肝心のハウントさんはというと。

端的に言うと、名前負けしてる人だ。

 

策巡らしてもあんまり上手くいった試し無いし、予想外の事態にはパニックになるのが定番。

フッフッフと悪巧みしておきながら、いざ物事が動いてイレギュラーが発生すると変顔晒して発狂してそうな人である。

悪い人じゃないどころか、滅茶苦茶良い人だけどね。

良い人だから、悪巧みも上手くいかないのかもしれない。

 

「そんで? 覚悟しろ言いましたけど、今日は何するんです?」

《格ゲーだよ、格ゲー。つってもパーティーゲーだけどな》

「と、言うと。あれですか」

《そう……、『スクパ』だ》

 

スクパ。

正式名称、超活劇 スクランブル・パーティー。

名前の時点で察した人もいるかもしれないが、某花札や株札から遊びを提供した超大手会社から出された、これまた世界を誇る最強ゲームの立ち位置に成り代わる存在。

数多のゲーム、アニメ、マンガをこれでもかとコラボさせ、大混戦させるパーティーゲームである。

因みに、この作品も根強い人気でシリーズ化されており、俺達がやるのは当然最新作のスクパだ。

 

……というか、前世にあったゲーム、軒並み無いんだよなぁ、この世界。

いや、似たようなゲームはあるんだけど、何かどれも名前が変わってたり、内容すら変わってる事も多い。

 

あれかな、創作の世界だから、著作権とか絡まないよう、名前を捩ってるのがそのまま反映されてるのかしら。

まぁ、どれも面白いゲームだし、寧ろ新鮮だから良いけどさ?

やっぱ前世でやってたゲームをしたくもなるって。

 

取り敢えず、ハウントさんの指示のまま、ゲームを起動。ローカル通信にして、通常戦を選ぶ。

 

ルールはシンプル。相手を吹っ飛ばし、先に相手の残機を削る。

 

《そして、オレが選ぶのは》

 

そう格好つけながら、ハウントさんが選んだのは。

 

《──コイツだぁ!!》

「なにぃ!!??」

 

見たことねぇ、怪人みたいなキャラ!!

 

白が基調の、差し色に青と黄のラインが入ったデザイン。

刺々しい見た目に生物感のあるグロテスクさ。

しかし、何処かヒロイック感もあるその姿は、さしずめ獣か昆虫だ。

 

え、何コイツ!?

DLCのやつ!? え、格好よ!?

 

「何スか、それ! 格好良すぎません!?」

《だろう? オレの新たな推し、『ゼロルナソル』だっ!》

「スゲー!! こんなん好きになるしかないじゃないですか!!」

《そうだろう、そうだろう! トッキーはやっぱ分かってるわー!》

「…………因みにっスけど、特撮のキャラっすか?」

《うん、怪人》

「ヒーローに倒される?」

《なんでそういう事言うの、お前ぇ》

 

あっ、やっぱし。

怪人、つってたもん。

 

《あのなぁ! 良いか? 怪人や怪獣はただのやられ役じゃない! ヒーローも格好いいがな! そのヒーローの格好良さを支えるのが悪役なんだよ! つまり!》

「物語を形作る基盤であり、彩る華でもある、ですよね」

《台詞取らないでよぅ》

 

だって。

似たような事、耳にタコが出来るくらい聞いたし。

ハウントさん以外からもだけど。

デザノーのキャラから。

同じ事考える人もいるんスね。

オタクに男も女も関係ねぇのだな。

 

《大体、コイツはただの怪人じゃねぇ!! デザインもさる事ながらコイツに関わるストーリーも格好良いんだよ!! やられ役ですらねぇぞ、実質もう一人の主人公だ!》

「ほうほう」

《コイツを語るにはな? まず怪人が当たり前にいて、差別されてる、って世界観から説明せねばならん!》

「どちゃくそ辛そうな内容っスね」

《そして、このゼロルナソルはそんな差別に抗う為、主人公とは別の道を、茨の道を進むんだ! ライバルキャラにして、ダークヒーローなんだよ!》

「一応、話すなら最後まで聞きますけど、今日のゲームはどうします? 辞めます?」

《……また今度、いっぱい喋っていい?》

「望むところです。ミルキャンさんもご一緒で?」

《……あの子もゼロルナソル好きだけど、やっぱり推しはヒーローの『ゼロラクス』だからなぁ》

「似たような名前なんスね」

《そう! 実はこの二人は幼少期に共に育てられた実質兄弟みたいな関係で! それがもう、超切なくて!》

「よし、まずは話聞いて、その後ゲームしますか!」

《ごめん、ホントごめん。今日はちゃんとゲームだけにしよう》

「えぇ……」

 

別にええのに。

俺もハウントさんのお陰で、特撮結構好きになってるんスよ。

なんかカナデさんといい、色んな人に沼に入れられっぱなしだな、俺。

 

《いやだって、トッキーいつも朝早いんでしょ? 無理させたら駄目だよ。休日にまた話させて?》

「つったって、ハウントさんの話面白いですし、オススメされてたのも面白いのばっかですもん。そりゃ聞きたくもなりますよ。ほら、主人公が変身しないで防衛部隊もバリバリ武装の話がダークな奴、あれめっちゃハマりました」

《語りたくなるからやめろと言っている!》

「ぐぅ」

 

必死の声で怒られた。

なんでや。

 

《ごほん。……兎に角な? オレはこの相棒、ルナソルで、テメェのアホ面を徹底に叩き潰す!》

「ルナソルって略するんスね」

《そこ引っかからないで! アホ面って煽ってんだからそっち行けバカ!》

「いやアホ面は事実なんで」

《あーもう、埒が明かん! やろう! 早く!》

「あい」

 

取り敢えず、俺も準備をする。

選んだのは前世での国民的に愛される土管工のおじさんみたいなキャラ。

 

《フッフッフ。吠え面かかせてやるぜ!》

「……マジでかきそうだな」

 

この人、小物っぽいとこあるけど、普通に強いもんな。

しかも今回は初見キャラだ。

お手並み拝見、なんて軽口も言えねぇ。

 

俺は覚悟を決め、彼とその相棒、ゼロルナソルと対峙する。

 

 

 

 

──その結果は。

 

「いや、マジ強えな、おい!!」

《はい余裕ー! 超余裕ー! マジ余裕ー! まさにぃ? 完! 全! 勝、利! なんで負けたか、明日までに考えといて下さーい!》

「ぐぬぅう! ぐや゛じい゛!!」

 

……いやもう、ボロ負けでした。

言い訳も出来ん程に叩きのめされた。

悔しい。

 

《いやー気分良いわー! トッキー、最近調子乗ってたしー? やっぱ、天才(てぇんさい)無敵ゲーマーによるる? 天才(てぇんさい)的なプレイスキルによって? 天才(てぇんさい)的な実力の違いってのを見せつけてやらなきゃなー!》

「めっちゃ煽るやん……」

 

水を得た魚のように生き生きしてるハウントさん。

くそぅ、ボロクソ言いやがってぇ。

何回、天才言うねん。

 

《ま、これに懲りたら、ちゃんとオレを尊敬しろって事だな? ハウント様、って呼んでも良いんだぜー?》

「ハウント様!」

《素直なキミ、本当好きだよ》

「ではハウント様! もう一戦お願いします!」

《……だ、駄目》

「なんでぇ」

 

急に及び腰になるハウント様。

可愛く言っても、超低ボイスのせいで違和感バリバリですよ?

ギャップあってええけど。

可愛い。

 

《良いじゃないですか、ハウント様! リベンジさせて下さいよ!》

《やだぁー!! 良いじゃんトッキー! 一回くらい、気持ち良く勝たせたままにさせてよ、この野郎ぉー!!》

「そこを何とか!」

《やぁだぁー!!》

 

駄々捏ねはじめた。

変声越しでも分かるくらいの涙声で。

子供ですか、ハウント様。

 

「……ほーん。ハウント様は、一回勝っただけで満足する人なんですねぇ」

《あ、煽っても駄目だかんね。もう、そんな手には乗らないし》

「良いですよ? つまる話、もうルナソルは使わないって事ですもんねぇ? 推しなのに。好きなのに。強いのにねー?」

《う、うぅ》

「あーあ、ハウントさんに使われるルナソルが不憫だなー。折角の晴れ舞台が、たった一戦だけだなんて。こんな人に推しなんて言われるなんて、勿体無いなー。俺だったら、もっともっと使ってあげられるのになー」

《と、トッキー以外に使うし。ルナソル不憫じゃないし!》

「ははぁん。俺以外って事はつまり、俺にビビってるんよね?」

《な、なぁにがビビりだ!》

「だってそうじゃないですか。2回目したくないって事は、俺に負けちゃうと思ってる、って事でしょー? ルナソルの事信じてないんですよねー」

《な、なな、な》

「強いのになー、使い手が負ける事しか考えてない、駄目駄目のヘタレじゃあ、宝の持ち腐れですねぇ?」

《ぬわぁあああ!!》

 

はい、釣れた。

いつも通り、チョロいお方である。

こんな下手な煽りに乗るなぞ、三流も良いとこですぞ。

 

《もうアッタマきた! そんなに言うならやってやろうじゃねぇかぁ!! 後悔しても知らねぇかんなぁ!!!》

「望むところ!!」

 

お互いに啖呵を切り、再び再戦に挑む!

 

そしていざ、戦いが始まる所で、彼が一言。

 

《あ、で、でも手加減はして欲しいなって》

「はい本気で行きますねー」

《もうやだぁああ!!!》

 

 

 

 

そんで。

 

《──ぬわぁああ!! やっぱり負けたぁあー!! 対応早すぎだろぅがぁー!!》

「勝ったぜ!!」

 

勝ちましたー。

やったぜ。

今度は叩きのめしてやったぜ。

嬉しい。

 

《う、うぅ……。ズルじゃん、こんなんチートじゃん。絶対チート使ってるよ……チート転生かよ……おかしいよぉ……》

「死にゲーやりまくると授かりますぜ?」

《絶対トッキーだけだよ……》

 

いや、そうは言いますけども。

実際、死にゲーとかで培ったものだし。

 

《トッキー、癖見抜くの早すぎだろ……》

「ハウントさんの操作パターンを知ってますからね、対策は容易です」

《だからって一回戦っただけで見抜くなアホぉ……》

「そんな褒めないで下さいよ、天狗になりますよ」

《責めてんだよ、アホぉ……》

 

ふっふっふ。

そう。

無力だなんだのと吐かしてる俺だが。

実はある特技がある。

詐欺だぜ!

 

……デザノー世界じゃ、何の役にも立ちませんが。

 

といっても。

前世から積み上げてきた、努力、というのも可笑しな話だが。

俺の数少ない、自慢出来るもの。

それを、この世界風にアレンジさせられたものだ。

 

元々、覚えゲーというものに関して、俺は相性が良かったのかもしれない。

興奮すると、脳に定着するのが早くなるのか、一度見たものは中々忘れず。

死にゲーでは、良くお世話になった特技。

上手くいかない時もあったし、特筆する程の事も無かったが。

 

それがこの世界では、中々嬉しい形に変わっていた。

 

一回知ってしまえば、そこからトントン拍子で攻略出来る。

神経衰弱なんて、お手の物だ。

ナギサ達ともやったが、前世の特技は衰える事を知らず、連戦連勝の負けなしだったりする。

あの天才キャラの会長にすら、負け知らずだったからね。

引かれたけど。

悲しいね。

 

勿論、この世界で最初から、こんな風に変化してた訳じゃない。

ゲームをやりまくってたら、いつの間にか身についてたものだ。

好きな事ほどより得意になる、というが、多分そういう部類だろう。

もっと言うなら、創作キャラらしくさせられた、とも言うが。

 

そして、この特技は対戦ゲーでも発揮される。

 

どのような立ち回りをするか。

どのような攻撃を通したいか。

何をブラフにするのか。

どのタイミングで、どのような動きを狙うか。

 

相手の癖を見抜く。

それが、俺が得意とする事だった。

 

対戦すればする程、その精度は跳ね上がる。

 

キャラ対策からの人読みが対戦の鉄板、と聞くが、俺の場合は逆だった。

 

人に対策する事の方が、キャラの動きを読むよりも、遥かに楽なのだ。

 

……なんて。

さも大層に言ってはいるが。

 

《つか、見抜くとか言うけど、それで完璧に対応すんのおかしくない?》

「RPGとかでどんな攻撃してくるとか耐性はどんなのとかあるじゃないですか。あれを覚えるようなもんです。人相手なら、どうしても癖は隠せないので連戦すれば比較的マシですよ」

《……もう、大会とか出なよ、トッキー。優勝総なめ出来そうじゃん?》

「そんな簡単に出来るなら、とっくの昔にプロゲーマーですよ」

 

この特技で無双出来るほど、世の中そんなに甘くない。

 

プロゲーマーの人達は、いや、対戦ゲーを好む人は、自身の動きが読まれる事を前提とした立ち回りを強いられる。

人読みとキャラ対策が当然の中で、その内の一つ、キャラ対策が一歩疎かになる俺では、太刀打ち出来ない。

 

そして俺の特技は、対戦相手に関しては、何度も動きを見る必要がある。

正確には、長時間動きが見られるかがポイントであるのだが、時に数秒で片をつける戦いだと、半分程度しか癖を見抜けない。

 

幾らプロだろうと、人である以上、どうしても動きには癖が存在する。

いくらひた隠しにしようと、応用して誤魔化そうと、どうしても滲み出てしまうものだ。

それを見抜く事自体は容易だ。

 

だが、正直そんなもの意味はない。

本当に必要なのは戦術、戦略。

いや、もっともっとあるだろう。

プレイスキル、運、環境。

ありったけを手にした人間こそが勝利出来るのであって、特技一つ秀でてるくらいでイージーゲームなら誰も苦労しない。

 

配信で自身のプレイスタイルを見せる人はまだいい。

配信もせず、大会でも初挑戦者となると、かなりの難敵だ。

そして、そういう無名の猛者というのはごまんといる。

プロというのは、人よりも更に努力し、高みを目指しているからプロなのだ。

如何なる正攻法で勝ちをもぎ取る。

勝利する事が前提のプロの覚悟に立ち向かえる程、俺の特技は万能ではない。

 

動きのパターンを複数用意出来る人など、天敵以外の何物でもない。

流石にそういう人は少ないが、AIならごまんといる。

癖をリセットし、全く別の動きをさせられたら、もう打つ手がない。

覚えるのに意識を持っていかれ、瞬く間に蹂躙される未来は容易に想像出来る。

 

相手の動きを把握する、というのは結局の所、受動的なのだ。

読み切る前に負けるなんて日常茶飯時。

現に、ハウント様が操るゼロルナソルには、一戦目にはボロクソに負けた。

そして、癖を把握出来るといっても、連戦連勝は夢のまた夢。

俺自身のプレイスキルを高めなければ、いつの間にか負けの数が増えてくる。

 

それが、俺の特技の限界(欠点)である。

 

《でもさ、パターンを見ただけで覚えたり、見れば見るほど覚えが良くなるとか、チートなのは変わりないじゃん? やっぱ学校とかでも猛威振るってんの?》

「それが、てんで駄目ですね。いくら相手の癖を把握しやすい、つっても結局現実じゃフィジカルが物を言いますし、そもそも現実じゃそこまで覚え良くないですし」

《トッキー、ゴミじゃん。そっちこそ宝の持ち腐れじゃん》

「知らなかったんですか? 俺はゴミで、恵まれた環境も腐らせる天才ですよ?」

《ホンット、煽りとか効かないよね、キミ》

「何言ってんですか、普通に効きますよ? 今のは事実ですから。正論とかなら耳が痛いだけで煽りに入りません」

《トッキーって何なの? 捻くれてんの?》

 

でも実際、持ち腐れに関しては本当の事なんだよなぁ。

この特技、折角強そうな性能してるのに、実態はそこまでなんだよ。

いくら相手のパターンや動きを見抜けたとして、それに対応出来る反射神経やスキルがないと、何をされるか分かった上でどうしようもなくやられる。

 

例えば、野球。

相手ピッチャーはどんな変化球を投げるか。

どのような戦法で行くのか。

対策された場合の予防策。

見抜かれる事を前提とした手加減やブラフなどからの逆算。

球のスピード、強さ、その他諸々。

それを把握する事だけは容易なのだ。

しかし、だから打てるかというと全くそうじゃない。

 

頭では分かっていても、身体が追いつかなければ意味が無い。

技術、知識、肉体面。

どれも俺より一枚上手の相手に、簡単に合わせられる程俺の身体は器用じゃない。

仮に俺が試合に参加させられる事になっても、お荷物。

 

じゃあアドバイザーなら?

感覚的なものなので上手く説明も出来ず、駄目。

マジで役立たずである。。

 

ゲームこそ反射神経? 知識と技術が必要?

いやあれ、結構タイミングとか構造覚えればどうとでもなるよ?

音ゲーとか、ノーツなんて一回覚えれば、どんなに反射神経必要そうな譜面でもロジック通りの動きをすれば楽勝だ。最悪、音楽聞かなくても別に問題無し。

でも、身体を動かすタイプは難しい。

足とか腕をフルに使う奴は、普段より特技が発揮されるのに時間がかかってしまう。

 

やっぱ手だよ、手。

手しか勝たん。

身体を動かすタイプが得意な人は心底尊敬する。

多分彼等、俺の上位互換です。

 

対戦ゲーだって、どんなに反応出来なさそうな早技でも、なす術無しのハメ状態なら兎も角、それ以外なら合わせる事自体は意外と簡単だ。

そもそも、そこまで癖を見抜けばハメ技も封殺出来る。

 

しかし裏を返せば、見抜いてない相手、初見の相手に早技を出されたら、何にも出来ずタコ殴りされるとも言うけど。

 

結局、人より脳味噌面の場数の要求回数が減ってるだけで、肉体面の場数の要求は人並みなのだ。

人より、予想精度や柔軟な対応力が高いだけである。

 

なんか、こうして見直してみると、一見凄い能力っぽく言っておいて、誰でも要求される事にちょっと得意なだけなんだよな。

特技に胡座をかいてると責められても、何も言えねぇ。

 

やっぱ人間、努力する奴が正義なのである。

努力なんて、誰でもやってる事なのだから。

努力を引け散らかす人間なぞ、才能に慢心する者なぞ、大した器ではないのだ。

俺みたいな奴なんてね。

悲しいなぁ。

 

「あと日常生活だと全く機能しないのも問題ですよね。めっちゃ忘れ物多いんすよ、俺」

《興奮すると物覚え良くなるんだっけ? でも配信とかは即効で覚えるじゃん》

「そりゃゲームですし、プロの御技ですから。興奮だってしますよ」

《ふーん。楽しい時とか、そんな感じなんだ》

「あと嫌な時でも結構覚えやすいっすね。思い出す時には同じ事やらかしてるから本末転倒ですけど」

《……そこだけ聞くと、単にトッキーがネガティブだからじゃない? って言いたくなるよね》

「まぁ嫌な事覚えやすい人って普通にいますもんね」

 

そういう人って危機管理能力が高い、と聞いた事がある。

野生の猫とかのようなもんらしい。

想定外の事態に対応するため、嫌な事から身を守る防衛本能だとか何とか。

 

自分の場合は、やっぱちょっと違うのかもしれないが。

ていうか絶対違うな。

俺やらかしてばっかりだもん。

 

興奮と感情。

なんか脳科学的(に)(な面から)見れば、大して人と変わらぬ、何て事ない特技なのだろう。

 

だからこそ、厄介なんだよ。

この特技、百合世界を生き延びるのに何も貢献しねぇ。マジで普段は冬眠してるようなモンだ。

ゲームとかじゃないと『あ、俺の出番っスね』と動いてくれねぇ。

 

ちょっとは働いてくれ、俺の特技。

日常生活こそ活躍の場だろうが。

対応力の腕の見せ所だろうが。

少しはチートスキルみたいな事になってくれ。

 

それに、癖を見抜く、というだけで、相手の考えている事を予見出来る訳ではない。

動きには対応出来たとして、何故それをしようとしたのかは全く分からない。

表面上の事しか見抜けないこの特技では、地雷を察知など到底不可能なのである。

 

相手の好みとか何処が急所とか、そういう細々したのは分かるけどさぁ。

そんなん誰だって出来るじゃん。

それより、百合世界で生き抜く為の適正ムーヴが知りたいねん。

表面的より内面的なのに特化させてくれへん?

人の心を読ませて下さい。

 

何より。

最初に言ったが、こんな特技を持っていても、このデザイアノーツという世界では、何の意味も為さない。

現実世界で、という訳ではない。

メイン舞台となる、夢世界。

そもそも、そこに行けない俺が、特技の一つや2つ有していた所で、無駄の極み。

無力という言葉がお似合い、ということである。

 

ままならねぇ。

もうちょっと恩赦を下さいよ、世界さん。

ヒロイン死ぬのが嫌なのはそっちもでしょうが。

それとも女の子苦しんでる姿見て愉悦してぇのか。

ふざけんのもいい加減にしろ。

 

せめて俺の上位互換の女の子転生させろ。

世界さんだって、寧ろそっちの方が願ったり叶ったりじゃねぇの?

俺の特技で何させたいんじゃ、おのれは。

 

「なんか、こう。突然、都合良いスキル降ってきて、無双出来る展開とかになりませんかね」

《そういう待ってばかりで努力を怠る人ほど成功しないんだよ、トッキー》

「痛い事言いますね」

《そもそも、生きるって事は痛いんだよ?》

「重い事言いますね」

 

どうしたんです、ハウント様。

ストレスでも溜まってるんです?

俺でよければ愚痴相手になりましょうか?

 

「ハウント様、嫌な事あったんなら、俺が相談に乗りますよ? 気兼ねなく言って下さいね」

《ねぇ、傷つけてきた元凶が何か言ってくるんだけど? ウザいんだけど?》

「ひっどい言われよう」

 

何をしたって言うねん。

リベンジの事か。

そうか。

 

《うぅ……運命的な出会いだったのに……滅茶苦茶操作しやすかったのに……いっぱい練習したのに……もう敵無しだって思ったのにぃ……!》

「いっぱい謝るので許して下さい」

《人の純情バチバチに壊しといて、そういうの狡くない!? 怒るよ!》

「もう怒ってるじゃあん……」

 

俺にどうしろと?

土下座する事しか出来ませんよ?

 

「えっと、馬のマスク持ってるんでそれ付けて、カメラ通話で土下座しますので、それで手を打っては貰えませんか?」

『煽りって言うんだよ? それ》

「何しても怒るやん」

《一々、発想が奇天烈なんだよお前は!》

「嘘やろ?」

《自覚無しなの? やば》

 

そんな。

顔バレは幾ら仲良くても、ネット友達でも駄目やん。

リア友とかじゃないと許されないと思ってるのに。

いや、ネット友達でも顔見せしてる勇気ある人もおるけど。

俺、意外とそういう所はしっかりしてると思ってたのに。

 

そりゃ、ケンタとかに「お前する事なす事、全部馬鹿になる呪いでもかかってんの?」とか言われたけどさ。

そういうのって、発想は兎も角行動が駄目とか、そういう話だと思ってたのに。

 

「……俺って、もしかして変人なんスか」

《今更?》

「いまさらぁ……」

 

そんな即答しないで欲しい。

凹む。

俺ヘタレだけど、マトモではないかもしれんけど、そこそこ凡百な人間の筈ですよ?

つまらない人間とも言うけど。

寒い悪ノリで困らせるしね。

陽キャのフリしたキョロ充ならお任せあれ。

 

……悪い意味で変人だな、言われてみたら。

 

「……変人なのは受け入れるとして。さっき操作しやすいって言ってたっスけど、マジですか? 何か、滅茶苦茶ピーキーそうな動きだったんですけど」

《お、おう。ネットじゃゼロラクスと違って扱い辛いって賛否両論だが、俺からすれば手に吸い付くように馴染むね。……いや、本当に馴染み過ぎて運命感じてたのにさぁ、本当トッキーはさぁ、人の希望へし折るのが上手いというかさぁ》

「ホントすいませんって、ごめんなさいって。……ちゅーか、ゼロラクスも出てるんスね」

《そりゃ、ルナソルが出るならラクスも出ないと可笑しいし、セット売りだし》

「へー、そりゃ益々気になりますね……。ちゅーか、俺も買っちゃおうかな」

《ホント!? 買おう、今すぐ買おう!! 絶対気に入るよ! あ、でもルナソルは、ッ、オレのだかんな! そこんとこ、履き違えんなよ!》

「それは良いですけど、今なんで『ルナソルは』ってとこで溜めたんすか」

《気にするな!》

「無茶言うな」

 

めっちゃ違和感あったぞ?

噛んだ?

そんなに愛で溢れてんの?

オタクって凄い。

 

《兎に角! 先ずは買おう! そして特訓だ! 俺も付き合ってやるぜ!》

「おっす! お願いしやす!」

 

……ま、いっか。

取り敢えず、先ずはDLCを買って、ハウント様との組手だ。

 

 

それから一時間、みっちり稽古をつけてもらったところで。

 

《──あ、おかえりぃ》

 

ぶっ続け対戦したせいでバテてるハウント様が唐突に、疲れ気味の声で、遠くに向かってそう呼びかけた。

 

ハウント様が、そんな言葉を投げかけるのは。

 

「聞こえるかな……おかえりなさーい。結構遅かったっすね、ミルキャンさん」

 

ミルキャンさん。

ハウント様とルームシェアしてる人で、ハウント様の友人。

そして、もう一人の、俺のネット友達である。

 

因みに、ミルキャンさんの声が聞こえないのは、ハウント様のシャベルタの設定によるもの。

基本設定で他人の声は音声も文字も出力されないが、ハウントさんは念入りにしてる。

 

シャベルタは変声機能も有るので便利だが、便利過ぎて登録者の声しか加工しない、って事も出来る。

もっと言うなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()

一応、登録者だけに絞らずに、出力される音声自体の加工も出来なくもないが、精度が落ちるため、ハウントさんはやらない。

で、万が一の事故でミルキャンさんが身バレするのを防ぐ為にも、その声が出力されないようにするのは当然の事だった。

ネットって何が起こるか分からんからね。

用心に越した事ねぇ。

 

《ただいま、だって。……うん? そっか、……ミルキャンも繋ぐから、トッキー待ってて》

 

ハウント様がミルキャンさんの挨拶を代弁したかと思ったら、今度は待たされる事になった。

繋ぐ、というのは、ミルキャンさんのシャベルタの事だろう。

 

暫くして、グループチャット内に文字が書かれ、同時にハウント様とは違う声が聞こえた。

こちらは少し萌え声に加工された、しかし落ち着きのある声。

 

《……あー、あー。これで良かったよね。トキくん、おひさ》

「お久っス、お仕事お疲れ様です」

《ありがとう。ハウントのお金事情はボクが管理しないとだからね》

「ハウント様さいてー、穀潰しー、ヒモー」

《違うし! ヒモじゃないし! オレは家事担当だし!》

《いっつもトキくんにアドバイス貰ってる癖に》

《トッキー最高! マジ神! チュートリアルキャラの才能あるよキミ!》

「雑に褒められて思い出したんスけど、今日はちゃんとゴミ出ししました? そっちの地域は燃える日ですよね、確か」

《出しました! ちゃんと言われてた通り分別もしました! 変なタイミングで思い出さないで!》

《本当、見違えるようにしっかり者になって、ボクも嬉しいよ。料理も美味しくなったし》

 

ミルキャンさん。

由来は好きな特撮キャラの好物がミルクキャンディーだから、それにあやかってらしい。

俺のハンドルネームを『トキくん』と略すこの人は、ハウント様のご親友で、ルームシェアして長年の付き合いだそうな。

一人称は『ボク』を通してるが、時折『私』になる。

ハウント様とミルキャンさんからはそういうキャラ付けだとか熱弁された。

特にハウント様に。

俗に言う、バ美肉ってやつでしょうか。

女装の文化も色々で奥深いね。

性癖は一括り出来ぬ程に膨大なのだな。

 

二人の馴れ初めは特撮の話で意気投合して、そこから一緒に過ごすくらいにまで発展したとか。

凄いね、陽キャのムーヴじゃん。

そこまで仲良くなれるとか、羨ましいにも程がある。

もう人生の友だよ。運命感じちゃう友情だよ。

BL愛好家さんが見たら、尊み浮かべるんじゃなかろうか。

……あれ、リアルは対象外なんだっけ。いける人もいるっけ。

クソぅ、百合とBL(同性愛コンテンツ)は詳しくないから分からん。

そういうのに詳しい妖精さんが心底欲しい。

俺の存命(地雷回避)の為にも是非。

何が起爆剤か分かったもんじゃないので。

 

《それで二人は……スクパやってたんね。あ、うわー、ルナソルとラクスじゃん! もう配信されてんだー》

《おう……、で、二人で特訓してた訳だけどさ。マジ疲れた……トッキーとやる前とは比べ物にならないくらい、上手くなったけどさぁ……》

《良いなぁ。わ、ボクはそういうの苦手だから。ラクス使えるの羨ましいかも》

「滅茶苦茶扱いやすいっスし強いっスよ。初心者とかでもいけそうです」

《んー、……やっぱり見てるだけで良いわ。トキくんがラクスの事褒めてくれるだけで嬉しいし》

「そっすか……、じゃあ一戦だけ見せて、後はキャンプしましょ、キャンプ」

《良いの? 二人に悪くない?》

《いや、もう一戦くらいが限界だわ……。流石にまだやるとなったら、脳と身体がバテる》

《そ、そっか。……じゃ、見せて貰おうじゃん。二人の腕前》

《ふー、……十五戦中、六勝、九敗。確実に良い線いってる……今度こそ、勝つ》

「はいだらー」

 

そんな訳で。

ミルキャンさんを実況席に置いた、もう一度の試合を始める事となった。

わー、すごー。本当に二人(ルナソルとラクス)が動いてるー。とか、頑張れハウント! とか、やっちゃえトキくん! とか聞きながら対戦するのは、正直すっごく楽しかった。

 

その後。

キャンプ──前世でいう、マインでクラフトみたいなゲームで、キャンプ・ライフというやつなのだが。

それをマルチで遊ぶ為、ハウント様が作ったワールドに入る為の準備とかをする中で、俺はふと思いに耽っていた。

 

二人って同性なのに、いや同性だからなのか。

かなり親密だよなぁ、と。

男同士で同棲、俺だったら幾ら気兼ねする必要ないと言っても、プライバシーとかでやっぱり、ちょっと恥ずかしい。

それに対し苦も見せる事なく、今でもルームシェアを続ける辺り、本当に仲が良いのだろう。

前世でも、男女問わず、異性同士ですら普通にやってる事らしいのは知っているが、いざ実物を見せられると、最近の若者達は本当に進んでるなと内なるオッサンが染み染みしてしまう。

その行動力は、素晴らしく尊いものだ。

仲が良い事自体は素晴らしい事だもん、うん。

枠に囚われぬ関係、幸せの形は人それぞれだもんね。

 

だからなのか。

そういう、同性で深い友情を育む二人に対して、助言を伺いたくなった。

百合に関してどう思うのか。

というよりも、挟まる男判定されない為のアドバイスを、それとなく濁して。

同性で強い繋がりを持つ彼等なら、そういう女性同士の関係に関しても俺より遥かに理解がありそうだ、と。

 

「……ハウント様、ミルキャンさん。ちょっと相談があるんですけど」

《ん? どうしたトッキー? あと、もう様はつけなくていいから》

《トキくんが相談なんて珍しいね。何でも言って?》

「……あの、ネットスラングでいう、その。百合に挟ま《死ねば良いと思うよ?》はっや」

 

めっちゃ早すぎませんかハウントさん。

声もマジトーンやし。

怖いですって。

言い切ってすらなかったですよ、俺。

言い淀んでた俺が馬鹿みたいじゃん。

馬鹿か。

 

《良い? トッキー。ネタとかじゃなくてね? トッキーはそんな奴じゃないって信じてるけど一応言うね? 結局、そんな事言って本当は男が良いんだろ? みたいな不理解で決めつけて、見下すような奴ってのを、忌み嫌う人も少なくないんだよ?』

「ガチ説教じゃないスか」

 

御指導頂いた。

ハウントさんも百合の愛好家さんだったらしい。

オタクとしてのハウントさんが受けた屈辱らしいのも関係あるのかもしれない。

熱の入り方が尋常じゃない。

 

そんなハウントさんが今の俺の状況知ったら、なんて言うかな?

ちゅーか、何させるのかな?

ハウントさん優しいから、ナギサ達はくっつけて、俺には温情で薔薇(BL)の人生送らせそう。

温情かしら? それ。

温情かもね。

でも押し付けはしないで欲しい。

 

俺もナギサ達に幸せの定義押し付けてるようなもんだから、駄目か。

彼氏彼女とか、独り身でも幸せになって欲しいだけなんだがなぁ。

それがアカンのか。

自業自得なのか。

そうか。

 

《てか、トッキーそういう趣味だったの? ……人の趣味は人それぞれだから否定はしないけど、あんまり、オレ達以外に言うのは気をつけようね? 嫌われちゃうかもしれないよ?》

「いや、別にちが……あぁ、もうそれで良いです、あい……」

 

ハウントさんの言葉に、諦めてそう流した。

投槍である。

もうポーンッと放り投げちゃう。

もう知らん。勝手にして。

 

や、だって。

こんな状態で、実は俺、百合世界に転生しちゃった人間なんですー。なんてぶっちゃけてみろよ。

挟まる男判定されそうなんで助けて下さいって。

頭可笑しいだろ。

どういう需要の妄想だよ。

アルフレッド(需要供給云々で有名な人)さんもびっくり案件だよ。

 

ハウントさんに至っては、実は百合愛好家さんだったし。

多分「へー、トッキーって百合に挟まりたいからってそんな事考えてたんだー……クズじゃん」とか言われそう。

言われても仕方ないね。

 

なので貴方が代わりになって彼女達の百合を手助けしてやって下さい。

というかもう、俺の役目を引き継いで下さい。

百合愛好家の貴方なら出来ますって。

百合を愛する貴方なら上手くいきますって。

勿論、押し付けずにナギサ達の意思こそ重要にすべきだが、ハウントさんならそこも器用にやれますって。

幸せを決めつけずに、真にナギサ達の事を考えてくれる筈だ。

もし、ナギサ達に惚れられても、彼なら過激派の世界に殺される事なく、丁寧に立ち回れそうだ。

 

最強じゃん。

天職じゃん。

もう代わりに無双してやって下さい。

俺は関係ない所で青春ライフ満喫しますから。

バーカバーカ、ざまぁみろ世界、二度と巻き込むんじゃねーぞバーカ。

百合の何たるかも知らねぇ俺を転生させやがってよぉ。

やらかす事しか出来ない俺じゃ、胃痛と戦うのに精一杯なのによぉ。

百合愛好家のハウントさん舐めんじゃねぇぞ。

百合大好きマンの天下じゃゴルァ。

 

「ハーハッハッハッハッハァ! …………ハァ」

《……大丈夫? トキくん》

「いえ、ハウントさんの無双してる様を空想して現実逃避してたけど、虚しくなっただけなんで」

《おいこら、どういうことじゃコラ》

《急過ぎて訳分かんないけど、確かにハウントは何に対しても無双出来なさそー》

《ねぇ、二人共。オレ、イジメて楽しい?》

「いや、別に苛めてというか。ハウントさんは素敵だし良い人だし、最強な事には変わりないし、俺は無双出来るって信じてるんで、悪い風に考えないで下さい。虚しいってのも俺に対してでハウントさんは無関係なんで」

《……めっちゃ長々と喋るじゃん》

《オレ、どういう感情でいれば良いの、コレ?》

 

喜ぶべきなの? 怒るべきなの? 慰めた方が良い? とかブツブツ言ってるハウントさん。

 

マジで良い人達だよなぁ。

世界はこんなに男に厳しいのに、そんな世界で腐らず逞しく生きてる人達が優しいとか脳がバグるよ。

この人達もマジで幸せになれ。

 

《まぁ、取り敢えず! トッキーの性癖暴露は水に流すとして! さっさとキャンプやろうか!》

《うーん、私は本人達が幸せなら別に良いと思うけど……》

「本人達が、っスかぁ……」

《あぁ、もう! ミルキャン掘り返さない! トッキーも暗い声で応えない!》

《聞かれたから答えただけじゃん》

《こういう話はデリケートなの! トッキーも勉強だけしときなさい!》

「いや、勉強はしてます。役に立たないだけで」

《どういうこと!?》

 

一応、この世界に来てから、百合の話とか触れるようになった。

生き抜く為の参考書である。

まだまだ触れてる作品は少ないが、その結果としては、なんも参考にならんという事が分かった。

 

先ずは、日常作品。

百合っぽい話らしいのはあるだけ触れてみた。

仲睦まじくて素敵だねで終わった。

何も対策にならん。

 

百合だけの作品も見てみた。

正直、恋愛なんて人それぞれだしね、で終わった。

応援とかもしたが、そんなもんどんな関係ですらそんなもんだ。

俺はハーレム作品だってハーレム応援するぞ、この野郎。

一人選ばないといけないのは同情もするけどね。頑張って誠意を見せるんだ主人公。

外野だから言える事である。

 

男性が不憫な扱いの作品も見てみた。

踏み台として、当て馬としての男性の立場とか、そもそもそうならないように心掛けてる。

恋慕も告白もするか阿呆。

百合すんなら勝手にしてろ。

こっちも関係なく生きていきますから。

傷つけも雑な扱いもするか馬鹿タレ。

そんな踏み台ありきのキャラは創作だけなんです。

俺の間近の男性見てみろよ。紳士で良い奴らばっかりやぞ。

舐めとんのか、殴るぞ。

 

挟まる男で許される奴はまるで見ない。

いや、見たことはあるが、どれも俺なんかより素晴らしい魅力的な人物ばかりで天と地の差だし、何ならそういうのは百合がメインじゃなさそうだった。

やっぱり、百合が主食の作品だと詐欺扱いになるからだろうか。

 

女体化する作品もあった。

そんなんアリなん!? とビビったが、アリらしい。

百合愛好家さんは寛容なのね。

でも、正直、そういう趣味はない。

一度、予行練習としてナギサ達に頼んで女装させて貰った。

化粧も頑張ってして貰って、何とかギリギリ中性よりの男の娘で無理矢理通せそうな感じにして貰ったが、自身の女装にときめく男の娘のような感情は湧かなかった。

折角、完全に男顔の俺を女の子っぽくして貰えたのにね。

反応も三者三様だったし。

俺も、化粧大変そう過ぎて無理ってなった。

洗顔とかは気をつけるようにはなった。

俺は脳味噌まで男のままでいたいらしい。

生き残る気あんのか、この野郎。

 

百合寝取られは見たけど。

純愛が好きな俺からしたら、寝取られは男女問わず心苦しい。男が百合を寝取ったりするのも。女が百合の片方寝取るのもそうだ。

そういうのを真の愛みたい扱いにする、ドロドロした奴もあったが、正直、苦手だった。

そういうのは、新たな恋をさせる時にして欲しい。

人から無理矢理掻っ攫うのは、幾ら恋愛がゼロサムゲームとはいえ、キツイ。

小心者なので。

 

策謀巡らして他の男とか女とか寄り付かせないようにする作品とかもあった。

怖かった。

俺の身近にいなくて何よりだった。

……イノリ先輩はやりそうで怖い。

これからも無害アピールを心掛けなければ。

 

まぁ、まだまだ勉強不足ではあるが、思った事と言えば。

自分では理解出来ない事でも、他の人には大切な事。

色んな事に対して好きな人もいる辺り、やはり性癖の世界は奥深い。

ジャンルで区分されてるとはいえ、一人一人の性癖が完全に共通するのは有り得ないのだろう。

表現の自由ってのは素晴らしいね。

そんだけであった。

 

そもそも、ハウントさんも言った通りの事。

 

理解が乏しく。

決めつけにかかり。

見下すような奴。

そういう奴は、死んで良い。

 

これはきっと、どの性癖にも言える事なのだろう。

過激過ぎひん? とも思うが、それくらい怒っても当然という事だろう。

どれもこれも、中途半端な俺が口を出す権利は無い。

無いので、さっさとナギサ達を百合にさせて、俺をフリーにさせてくれませんか、世界さん。

勿論、俺を養分にせず。

人食い花なんかにならず。

さっさと綺麗に咲かせて、俺を眺めるだけの外野にさせて下さいよ。

 

……こういうとこなんかなぁ。

ハウントさんの言った『死んで良い奴』というのは、俺にも当て嵌まるのかもしれない。

自覚が出来ないのが、マジで最悪だが。

本当に、同性愛大好きな妖精さん来て下さい。

アドバイスして下さい。

自己分析も碌に出来ない俺を助けて下さい。

心も身体も死にたくありません。

 

 

でも、本人達が幸せなら、かぁ。

それは、確かにナギサ達が幸せなら。

俺は兎も角、ナギサ達がそう思えるなら、とても素晴らしい事だが。

 

過激派であろう世界が許してくれる事は。

ないんだろうなぁ。

 

 

 

 

──そんでもって。

 

《じゃ、そろそろお開きにしようか》

《うん、また遊ぼうね、トキくん》

「あい、お疲れっした」

 

キャンプ作って駄弁ったり、変な建築物作って笑われたり、色んなとこに冒険とかしながら、就寝時間近くまで三人で遊び倒し。

その後は、また遊ぶ約束をして解散し、俺は寝る前の準備に取り掛かった。

 

 

先ずは三十分程、筋力トレーニングして、プロテイン飲んで更に三十分軽く体操したりネットを見ながらしてから、眠りにつく。

 

寝る前に運動すると睡眠の質が上がるとの事で、徹夜後のダルい時でも欠かさなかった、前世の頃からやってる習慣だ。

 

プロテインも三十分から一時間前に飲むと良いというのは、この世界に来て初めて知ったけど。

筋肉痛とかの予防にもなるらしいよ。

飲んでから直ぐ寝たら逆に負担かかるらしいけど。

前世でも適用される情報かも定かじゃねぇけど。

 

「……変な所でリアルにすんなよな」

 

暗くなった部屋で一人愚痴る。

この世界、フィクションの世界だからトンチキな所も見せるが、急に真面目な部分も見せるから質が悪い。

 

百合世界と言う割に、そういう同性の友情を超えた関係もモブらしき人達の中にはいるが、普通の異性愛を謳歌してる人もいるし。

 

生徒会とかマンガみてぇな設定してる癖に、感想部とか日常アニメみてぇな部活ある癖に、体操着とか水着は普通に前世の指定着と同じだし。

 

屋上とか立入禁止じゃねぇ癖に、いやその前にしろよ。危険やろうが。

前世じゃ立入禁止は基本やぞ。

 

兎も角、購買とかの争奪戦とかはねぇし皆並ぶか朝の内に予約するし。

 

フィクションならフィクションらしくぶっ飛んどけ。

こっちは、虚構と現実味の行ったり来たりで忙しいんじゃ。

 

視線を窓に、ナギサ達がお泊り会をしているらしい、ナギサの家の方に移す。

いつの間にか三人とも眠りについたのか、和気あいあいな声は聞こえず、カーテンからは明かりも見えず、消灯しているのが分かった。

 

「……明日は、ちゃんとしないと」

 

今日は、困らせてばかりだった。

泣きそうな顔すらさせた。

後者に関しては、完全に迂闊どころか最低だった。

これからは、もっと気をつけないと。

……百合云々は、もう、どうやったって無理だけど。

 

もう、正直しんどくて嫌になる。

 

百合世界の事もそう。

夢世界での彼女達の命の危機もそう。

一人で抱えるには面倒この上ないし、相談しようにも打ち明けられるような代物ではない。

俺が、元々女だったら。

ここまで悩む事も無かったのだろうか。

 

「……寝よう」

 

さっさと、眠りにつこう。

何を悩もうが、踏み台予備軍な事実は変わりないんだ。

こっちは、予備軍のまま、何事もなく一生を無事に終えてやる。

こちとら偏屈のレッテル貼られた翔太郎くんやぞ。

今までも、これからも。

やることは変わらないんだから。

 

せめて、明日も生きる事を許されますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──おい、そこの。俺の部屋に入ろうとしてる美少女共よ、止まりなさい」

「「「うぐっ……」」」

 

──そして、朝。

時刻は六時前。

 

珍しく目覚まし無しで早起きした俺が目にしたのは。

 

俺の部屋のリビングから、内部に侵入しようと窓を開けてた、可愛い可愛い幼馴染達でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

うん。

ホント、何してんの?

 

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