No.1の従属官の日記 作:練習中
◯◯◯日目
暇すぎてすることがないので今日から日記をつけることにした。
……といってもとりわけ日記に書けるほどの出来事は何もないのだが、とりあえず今自分が置かれている状況を整理するために今までのことを少し書いていこうと思う。
まず最初に俺は一度死んで神様とやらにあった。
どうやら俺に力をくれて更には別の世界でもう一度生きる権利をくれるらしい。
なんとも都合の良いことで何か裏があるのではと疑ったが、それを口に出して神様のご機嫌を悪くする訳にもいかないし、俺は適当に頷きながら神様の話を聞いていた。
なんでも俺がこれから行くのはBLEACHという漫画の世界らしい。
BLEACH…元々漫画などあまり読んでこなかったのでふんわりとしか内容は覚えていなかった。せいぜいが仮面つけた怪物が出てくることくらいの記憶しかない。
なんだか物騒なイメージしかないし、折角ならもっと平和な世界に生まれ変わりたかったが、それを目の前の神様に言える勇気は俺にはなく、それに加えて神様のご機嫌をとろうと少ない知識であたかもBLEACHのファンであるかのように振る舞ってしまい、それに興奮したらしい神様のBLEACH談義を聞くはめになってしまった。
神様のBLEACH談義は専門用語が多くて話の1割も理解出来なかったが、あらんかるとかいうものが好きということは分かった。
そして神様の話にあわせて俺もあらんかるが好きだと話をあわせた結果、俺はあらんかるとして生まれ変わることになってしまった。
あらんかるとかいうよく分からない生き物に生まれ変わることは流石にまずいと思い、なんとか神様の機嫌を損ねないように遠回しに普通の人間が良いことを伝えようとしたが時すでに遅しで、すでにあらんかるの体を神様は作ってしまったらしかった。
我ながらその場の雰囲気でアホなことをしてしまったと思うが、あまりにも突飛な出来事で頭が上手く回らなかったためだと自分を正当化しておこうと思う。
…まぁそんなこんなで生まれ変わった俺だが、現在とてつもない問題に直面している。
これを解決しないことには俺の第二の人生はもうすぐ終わってしまうと言っても過言ではないほどの大問題…それは、
暇すぎる!!
そう!とにかくやることがなくて暇なのだ。
周りを見ても砂砂砂砂砂、そしてたまに枯れ木がちらほら。
どれだけ歩きまわっても人っこ1人いないし、景色が変化している感じが1ミリもない。
食べ物もなければオアシスとかもないから何かを口にすることも出来ない。何故だかお腹も空かないし喉も渇かないからそこは問題ないっちゃないのだが、お腹が空かないとしても何かを食べることに楽しみを感じていた身としては今の状況はなんともしがたい。
しかしこんな状況でも体は特に異常を感じることはないし、むしろ身体能力が上がっているのか調子自体はすごく良いのがなんともいえない気持ちにさせる。
もしかして生まれ変わらせてくれるというのは神様の嘘でここは地獄なのかもしれない。
…そうなると俺が会ったのは神様じゃなくて閻魔様になるのか…?
……気分転換に日記を書いているのにマイナスなことしか書いてないな。久しぶりに文字書いて疲れてきたし一旦ここで区切ることにする。
◯◯◯日目
今日は少し状況が進展した。
なんと真っ暗な砂漠だけしかない世界に俺以外の生物を見つけたのだ。
体の大きさは大体4メートルくらいで頭には大きな仮面を付けてる。全体的に少し牛っぽさを感じる見た目だった。
……うん。化け物だね。
明らかに主人公に敵として出てきそうなテンプレの化け物で、最早恐怖とか通り越して笑ってしまった。
そんな感じで何故だか変なテンションになってしまったので勢いで喋りかけて対話を試みた。
ここがどこなのか。
あなたはどこからきたのか。
他に生きてる奴がいないのか。
他にも色々捲し立てて聞いてみたが特に返答はなく、返ってきたのはどでかい拳だった。
偶然尻餅をついたことで当たらなかったが、怪物の拳の勢いは凄まじく余波だけで体が数メートル吹き飛んでしまった。
そこでようやく恐怖を感じた俺は、叫びながら怪物から逃げ出した。
後ろを振り返る余裕すらなく数時間走り回りなんとか怪物を撒くことができ一安心したが、また誰もいない砂漠を歩き回る生活を思うと溜め息が出てしまった。
しかし、自分以外の生き物がいると分かったことは進展だ。もしかしたら俺以外の人間……いや俺ももう人間じゃないのか…顔に仮面ついてるし…お腹にも変な穴空いてるし…そういえば背中にも変な甲羅みたいなのついてる…
いや…!でもそれ以外はほとんど人間だし!これくらいちょっとした個性の範囲だよね!
うん、きっとそうに違いない。
◯◯◯日目
あれから何体か同じような化け物にあったが、話が通じる奴はいなかった。
いや、厳密には言葉は通じるのだが、あいつら口を開けば人のこと喰うだの力がどうとか同じようなことしか言わないのだ。
こっちもなんとか会話しようとしているのだが、最後には必ず襲い掛かられる。
その度に全力ダッシュでなんとか逃げきれているが、その内逃げるのもキツくなるかもしれない。
まぁ襲い掛かられたくないなら近づかなければいいのだが、あいつら気がついたら近くにいたりするし砂ばっかりで見晴らしが良すぎるせいで隠れることも碌に出来ないからどうしようもないのだ。
まぁ、言葉自体は喋れるみたいだしそのうち会話出来るやつもいるだろ。
重く考えても辛くなるだけだから軽めに考えていこうと思う。
◯◯◯日目
とてつもないことがおきた。
なんと俺以外の人型を見つけたのだ!
しかも女の子(ここ重要)
彼女の名前はリリネットジンジャーバック。
誰がつけたのかは分からないがなんともオシャレな名前である。
そんな彼女との出会いはとても印象的だったので、今日は少しだけ彼女との出会いを書いていこうと思う。
それは俺がいつものように砂漠を歩き回り話が通じそうな奴を探していた時のことだ。
遠くで砂漠とは明らかに違う大きな山を見つけたのだ。
いつもと違う光景に興奮した俺は呑気に近づいていくと、それが山ではなく俺によく襲いかかってくる化け物達の死骸が積み上がった物だと気づいた。
その数は数十…いや数百はあるだろうか。
それを見て俺はピンときてしまったのだ。
これってもしかして主人公近くにいるんじゃね?
だって明らかに敵キャラの見た目をした奴らをこれだけ倒してるってことは、これはもう主人公側の存在ってことだよな?
そんな名推理を披露した俺はルンルン気分で周りを捜索していると、死骸の山の影になっている所に女の子を見つけた。
それこそが冒頭で書いたリリネットちゃんだ。
身長は俺よりも大分小さくて、頭に牛の頭蓋骨みたいなものをつけているが、今までこの世界で見てきた生き物の中では大分人型に近い、というか俺より見た目人っぽい。
そんな彼女を見つけた俺の気持ちはまさに地獄に天使を見つけたような感覚で、嬉しさで卒倒しそうであった。
すぐに話しかけようと近づく俺だが、そこで衝撃のものを見てしまった。
なんと彼女は凶器を自分の首元に突き立てていたのだ。
明らかに自◯する3秒前みたいな状況に、俺は大いに焦った。
折角出会えた話が通じそうな存在が今目の前で命を絶とうとしているのだ。これはなんとしても止めなければいけない。
全力ダッシュで近づいて、なんとか彼女を刺激しないように自分が出来る最大限に優しい声色で彼女に話かけた。
そうすると彼女は信じられないものを見たかのような顔をしてこちらを見てきた。
そこから色々と話しかけてなんとか彼女のことを止めることが出来た。
その時あまりに緊張して自分でも支離滅裂なことを言っていた気がするが、よく覚えていない。
恥ずかしいことを言っていなかったかリリネットちゃんに確認したいが、彼女は精神的に疲れていたようなのか今は俺の横ですやすやと寝てしまったのであまり話は出来ていない。
なんだか煮え切らない所も少しあるが、まぁ結果オーライということでよしとしよう。
俺はこの世界で話が出来る存在にようやく出会うことが出来た、それだけ今は十分だ。
この世界で生きることにようやく希望が見えてきたな。
これからは日記に書けることも増えていきそうだ。
⭐︎
力が全ての虚圏で、ただ仲間が欲しいと願うことは愚かなのだろうか。
積み重なった虚の死骸。
月夜に照らされ大きな影ができたその下でうずくまりながら、あたしは思った。
果てしない広さの虚圏の中でも数えるほどしかいない最大級大虚となり、他の追随を許さないほどの力を手に入れたという自負があった。
あたしから溢れる霊圧を浴びるだけで周りの生物は死んでしまう。
戦闘という概念はあたしにはない。あたしの前で立っていられる存在すらいないのだから。
そんな圧倒的な力も、あたしにとってはなんの意味もないものであった。
弱くなりたかった。そうすれば群れることが出来る。
弱くなりたかった。そうすれば争うことが出来る。
それは強者の傲慢なのだろうか。そんなことを聞ける相手すらいなくて、自分が何者なのか分からなくなりそうだった。
時間の間隔すらなくなり、自分という存在が曖昧になっていくような感覚が常にあった。
大勢なんて贅沢なことは言わない。
たった1人でいい、自分の隣に立ってくれる人が欲しかった。
そのためならばあたしの力の全てを渡したっていい。
並ぶものがいない強者よりも、守られる弱者の方が何倍もマシだと思うから。
自分の精神に限界が近いことは分かっていた。
今すぐにでも自らの身体を切り裂いて、二つに分けてしまいたかった。
あたしは自らの頭を覆う仮面に手をかける。
ヘルメットのような形をしたそれには、小さな体には不釣り合いな2本の大きな角が生えている。
その一本を掴み力を込める。
ゆっくりと、しかし着実に、様々な感情が入り乱れるのを感じながらあたしは力を込める。
ミシミシと嫌な音が聞こえてくるのも無視して、あたしは角をへし折った。
虚としての存在を形作るそれを折ったことで、少しだけあたしの力が失われるような感覚がある。
それに少しだけ喜びを感じた。
このままあたしを削っていけば願いが叶うという確信が何故だかあった。
あたしは角を両手で持ち、喉元へと突きたてる。
それがあたしの体を貫かずにいれたのは、彼が現れたからだ。
降って湧いたように突然現れた彼の声はとても優しくて、それだけで涙が出そうになった。
あぁ、だめだ。
他人と話してみたいことが山程あるのに、してみたいことがどんどんと溢れてくるのに、それに反比例するようにあたしの意識は沈んでいってしまう。
安心感のせいなのだろうか、今のあたしにはそれすら分からない。
僅かに残る意識の中で、あたしはこれが夢でないことを願うことしか出来なかった。