電子妖精のMasquerade!   作:はめるん用

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前回の銀星くんの反応については、転生者と現地人との視点や感覚の違いも含まれています。観客はともかく、会場にいたCランク以下のマスターたちには天成くんの戦い方は『わざと追い詰めるのを楽しんでいるように見えた』ことでしょう。

FDたちは『これは参考になるなー』と思って見てたかもしれませんが。


⑩有給の価値は学生には理解らない。

 すくなくとも俺の知る限り、日本には『セイテン団』と『ゴウセツ団』というふたつの悪の組織が存在する。

 ガードレールやコンクリ壁にエンブレムを描いて縄張りを主張するような微笑ましい悪事から、企業にハッキングしてパーツや素体のデータを強奪するガチの犯罪まで手広くやっている連中だ。

 

 この世界のハッキングはFDとGDの戦争と言ってもいい。前世とは違いこの世界ではファイアウォールやウィルスバスターというのは職業であり、ネットワーク世界で彼らのような犯罪者と日々戦いを続けているのだ。

 俺もアルバイトで浅い領域の警備に参加したことがあるが、長時間のリンクは体力と精神に大きな負担がかかる大変な仕事だった。

 

 バトル自体は問題なかったけどね。前回はゴウセツ団の下っぱ6人と同時に戦うことになったが、多勢に無勢はUNKNOWNで慣れてるし。

 

 

 ……あ。稲村くんが前に出て幻斎なるGDコマンダーを睨み付けたな。いい度胸してるじゃないの。

 

 

「幹部会だか昆布会だか知らないが、そんなことのために大会を台無しにしたのか!?」

 

「なにを言うか少年。組織の健全な運営のためには、まずは幹部同士の連携を強固にせねばならんのだ。上からの指示がバラバラでは部下が困るだろう? それに、次の幹部会の議題は『団員の有給休暇消化率の向上』という決して蔑ろにできん内容なのでな。末端の人間が安心して有給を楽しめないようでは世界征服など泡沫の夢でしかない。たとえ我ら幹部クラスのボーナスが霧散することになったとしてもッ! 部下たちの有給休暇は守護らねばならんのだッ!!」

 

 

 

 

「大変だマスター。会場にいる大人たちが流れ弾で致命傷だ。皆しばらく立ち直れそうにない」

 

「経済大国日本が抱える闇を容赦なく抉ってくるとは、なんて悪逆非道な連中なんだセイテン団。ぜひ世界中の経営者の皆さんにも見習ってほしい」

 

 

 

 

「そもそも! 賞品はお前たちの物じゃないだろ! それは大会の優勝者が手にする物で、そのための決勝戦をこれから始めるところだったのに!」

 

「なるほど、道理だな。ならば少年! 私とキミとでこれから決勝戦を執り行おうではないか! 口先だけでなく、その気迫に見合う意気地を見せてみよッ!」

 

「望むところだッ! オレとリムステラの力、思い知らせてやるぞセイテン団ッ!」

 

「ん。ギンと私ならきっと勝てる」

 

 

 

 

「大変だマスター。ごく自然な流れで私たちはいないことにされてしまったぞ」

 

「まぁ、盛り上がりに水差すのもアレだし。いいんじゃない? ここまで勝ち抜いたぶんのBPは振り込まれてるから」

 

 しかし稲村くん、なかなかロマンチックなネーミングセンスしてるじゃない。たしかステラってラテン語かなにかで『星』って意味だったはず。ゾディアックシリーズの新型、そこに自分の名前とも関連してるパーソナルネームをつけるとは。きっといいコンビになるぞ、あのふたり。

 

 さて、こうなったら俺たちは静かに舞台袖にはけるとしよう。フードコートは営業どころではないだろうが、自動販売機は問題なく稼働している。たこ焼きか、焼きおにぎりか、あえてラーメン辺りを試してみてフードコートの味と比較してみるのも面白いだろう。

 前世でも遠出が必要なとき、夜のパーキングエリアで食べたこういうチープなグルメは美味しかった記憶がある。ちょっと時間がかかるけど、温かいご飯が食べられる幸せを思えばどうということはない。

 

「しかしマスター、本当によかったのか? 稲村銀星に任せてしまって。あんなのでも連中のバトルの技術は本物だ。そうでなくともGDのクセはFDとは違うし、幹部クラスが相手では新型の優位など無に等しいぞ」

 

「これはただの予感だけどな、負けたとしても悪い結果にはならないはずだよ。セイテン団もゴウセツ団もバトルの勝敗にだけはどういうワケか誠実だからな。違法改造したパーツは普通に使ってくるけど」

 

 

 ◇◇◇

 

 

《ステラ、準備はいいか?》

 

《問題ない。ギンのこと、全力でサポートするから。だからギンも頑張って》

 

《もちろんだぜ!》

 

 

《獅子搏兎。焔虎、相手のランクに惑わされるな。常に敗北が首に手を掛けていると心得よ》

 

《承知しました。我が全身全霊にて、大兄に必ずや勝利を献上してみせます》

 

《そう気負うな。我らは如何なるときも表裏一体ぞ》

 

 

 選択されたフィールドは『オールドメトロポリス』か。古びたビルが建ち並び、それらを足場とした立体的なバトルが可能なエリアが多い。

 準決勝で俺が戦った廃工場よりも建物の耐久力は高く設定されているため、相手の射撃武器をやりすごす盾として利用することもできる。

 

 ふむ。どうやら稲村くんは女の子にはモテモテでも、幸運の女神の好感度はそれほど高くないらしい。まだまだ直線的な動きが多い彼にとっては戦いにくいマップでしかない。遮蔽物に身を隠して奇襲、とか絶対やらなさそうだもん。

 だがセイテン団はそうではない。ハッキング中のネットワーク世界は様々なフィールドがパッチワークのように入り交じった混沌そのもの。そんな場所で戦いを繰り返している連中にとって、立体的にエリアを動くなど朝飯前の昨日の晩飯ぐらいに手慣れているはずだ。

 

 あとは幻斎なるGDコマンダーの相棒『焔虎』の性能次第か。幹部クラスを名乗ったということは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()になるはず。銀星くんはそのことを知っているのか、知らなかったとして対応できるのか……どちらにせよ、苦い敗北を噛み締めて成長してくれることを願おう。




パーソナルネームの概念を追加。

次回からは、天成くんも相棒の零式のことを名前で呼ぶ予定です。候補はいまのところ『ストレイド』か『メビウス』のどちらかですね。
逆に、作品としてあえて彼らだけ『マスター』『零式』と呼びあうのもアリな気もしますが……悩ましいところ。


もしも読者の皆様の中に『ロボチー設定会議・悪()の組織』をご希望の方がいらっしゃいましたら、次回投稿までしばらくお待ちくださいますようお願いいたします。
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