定番のシチュエーションでもバックグラウンドがわからないと人間性に問題があるように見える、というのはなかなか面白い発見でした。情報を絞り過ぎることによる問題点に早目に気付くことができたのは大きな収穫ですね。
ただ、銀星くん側のストーリー組み立ての難易度は悩ましいところです。未熟過ぎると行動が乱雑になりますし、完熟していると成長の余地がない。正統派主人公、侮りがたし……ッ!
健康志向。それそのものを否定するほど俺の精神は若くない。ラーメンのスープは美味しいが、それを飲み干すことで生涯に食べられるラーメンの数が減ってしまうのは皆が知っていることだろう。
だが、疲れたときに食べる味の濃い料理の美味さは理屈じゃない。安っぽいソースの甘味と、水っぽくて申し訳低度にしか丸みが残っていないたこ焼きの組み合わせだとしても、これに風情を感じる寛容な心の余裕を忘れずに生きていけたら素晴らしいと思わないか?
それにしても、ソースの味って本当に“男の子”って感じがするよな。でもきっと、オシャレなランチに喜んでいる女の人たちだって本当はこの喜びを知ってるんだろう。
「味のグラデーションは、人生の彩りだ」
「いつまでもトリップしてないで戻ってこいマスター。そろそろ戦況が動くぞ」
戦いは稲村くんのリズムで進んでいるが、それは幻斎が真向勝負に付き合っているだけでしかない。俺もたまにやるからわかる、相手の戦闘スタイルを確認するための動きだ。
なんなら初めてリンクしたばかりのマスターが相手のときなんて、一緒にマップの中で追いかけっこをしているうちに時間切れで引き分けになることもある。あのときの空気に近いものを感じるな。新型の性能を試すというよりは、稲村くんの青さと荒々しさを楽しんでいるんだろう。
《ギンッ!》
《そこだッ!!》
《ほぅ、当ててきたか! やるではないか。拙いなりに基本を疎かにしていない、これもまた正道の戦い方よ。猪突猛進もまた可愛げのうちだな》
《なんだと!?》
《真向勝負大いに結構! だがFDの性能に頼りきりではこの私を倒すことなど永久に叶わぬぞ!》
《大兄、頃合いかと》
《うむ。せっかくの機会だ、私が直々にキミの新たな可能性を引き摺りだしてやろう。──敗北という名の試練によってなッ!!》
《ギン、気をつけて。相手のGDの魔力が一気に上昇してる》
《魔力を? いったいなにをするつもりなんだ……?》
《おん、いつ、こう、ばく──ざんッ!》
《オン、イツ、コウ、バク──ザンッ!》
《んな──ッ!?》
驚いたのは戦闘中の稲村くんだけではない。会場でバトルを見守っていた人々はもちろん、情報がほとんど出回っていないことからか、パートナーであるFDたちでさえも驚いている。
俺のようにTNSと特殊な繋がりがあるなら別だろうが、そうでなければGDの変身など見る機会はないだろう。
詠唱と共に巨大な業火に包み込まれ、そこから再び姿を現した幻斎のGD『焔虎』は下半身のアーマーが四足歩行の物に変化していた。
これこそがGDの最大の特徴だ。表層のアーマーが破壊され、中層が剥き出しになったとき、そこに予め刻まれていた刻印が発動して変身する。実際はそんなに単純な仕組みではないだろうけど。もしそうなら表の企業で何処かが開発しているはずだ。
《覚悟はいいか少年! 我が天輪偃月刀の威力、その身で味わうがいいッ!!》
《──がぁッ!?》
《ギンッ!!》
《大丈夫、だ……この、程度でぇ……ッ!!》
《我が一撃を“この程度”と強がるか。その意気や良し! ならば新たな手札を切るとしよう! 来たれ、
《炎の虎を召喚した!?》
《ギンッ! 間合いをッ!》
《わかった! オレだって射撃はたくさん練習したんだ、1匹残らず撃ち落としてやるッ!》
焔虎が炎を宿した──あれは『槍』と『錫杖』の複合武器か。それを勢いよく回転させると周囲に呪符が出現し、そこから炎の虎が何匹も現れてアスクレピオスに襲いかかった。
変形前の時点でずいぶん軽装だなとは思っていたが、どうやらあの焔虎というGDは魔法系の武器がメインウェポンのようだ。突進攻撃でアスクレピオスが吹き飛ばされていたが、格闘戦のパワー不足は四脚による踏み込みの強さで補っているのだろう。巧いな、幹部会で食べるお肉のために乱入してきた残念さとは結び付かない強さだ。
それにしても。
「意外だな。稲村銀星の射撃スキルはCランクでも通用するレベルで練度が高いように見える。あれならばアスクレピオスの性能をもっと引き出せるだろうに」
「本人が言っていた通り、たくさん練習したんだろうさ。しかしそうなると……接近戦を好む、接近戦に頼るってのは……なにか、強烈な成功体験でも有ったのかもしれないな」
「成功体験?」
「たぶんな。公式戦とかの大会か、それとも友だちやライバルとの大事な戦いとか、そういう場面でな。苦戦してるところを格闘武器で逆転してみたりして、自分は格闘戦が得意だ、あるいは射撃は向いてないと思い込んでいたとかね」
ロボゲーあるある。勝てるパターンがあるとそれに頼りたくなる。俺もそうだったなー、前世でも今世でも。
試行錯誤、というよりは色んな武器を使ってバトルを楽しんでいるうちに自然と視野は広がったが、いまでも勝ち慣れた状況に雰囲気が近くなると迷いそうになるときがある。
「自信と引き換えに可能性を自ら閉ざしていたのか。それはまた……なんと言うべきか……」
「だが積み重ねた練習は裏切らない。焔虎の一撃を受け止めてパワー勝負は不利だと感覚的に理解したんだろう。本人はたぶん無自覚だろうが、それで咄嗟に射撃戦の頭に切り替えたのは……才能かもなぁ」
だが、まぁ。まだまだ視野が狭いな。
《これでラストォッ! ──どうだ、全部キッチリ倒してやったぜ!》
《ギンッ!! 後ろッ!!》
《こうも易々と私の動きを失念するとはなッ!》
《しまったッ!? いつの間にッ!? ──クソぉッ!!》
《焔虎の脚から逃げれると思うな! 吼えよッ!
《うぁぁぁぁッ!!??》
あちゃー、ありゃ決まったな。ただの爆発じゃない、槍を叩き込んだところに直接発生させている。それも指向性を持たせ、破壊力を集中させた一撃だ。アレをまともに食らって耐えられるFDなんて限られているだろう。
大破と判定された稲村くんのリンクが切断され、アスクレピオスと女の子たちがすぐさま駆け寄って彼を支えている。本人はかなり悔しそうだけど、幹部クラスの強さを知っている俺に言わせれば大健闘だと褒めてやりたいぐらいだ。それで喜ぶ男の子はおらんだろうから黙ってるが。
「勝負は私の勝ちだな少年。だが、私の『紅牙陣』を全て倒してみせたことは評価しよう。ひとりの武人として、成長したキミと再戦する日を楽しみにしているぞ」
あ~、いいッスね~こういうノリ。コイツは稲村くんアレですよ。悔しさをバネにレベルアップしちゃうヤツですよ。
主人公を成長させるカッコいい悪役って感じがよく出てる。後ろにジンギスカンのパックを丁寧にクーラーボックスに詰め込んでるセイテン団員の皆さんがいなければ絵になってたね!
「幻斎さま、撤収準備が完了しました」
「うむ。ご苦労」
「幻斎さま、別動隊より特売品のモヤシ、キャベツ、ピーマンの確保に成功したと連絡がありました。大量購入のオマケでお店の人からカボチャも頂いたとのこと」
「ほう! それは僥倖なり! 緑黄色野菜は意識して摂取しなければ簡単に不足してしまうからな。よし、速やかに撤退して……いや」
おや。幻斎がジンギスカンのパックを手に取ったぞ? いったいなにをするつもり──あれ、俺のこと見てる。
「受け取るがいい、零式使いッ!!」
「うおッ!?」
「約束手形代わりだ。キミの実力がCランクマスターのそれを超えていることは知っている。故に是非とも手合わせを願いたいところだが、そろそろ携帯型認識阻害結界発生装置『拒むんですΣ』の稼働限界なのでな」
「その希代の発明品の名付けには幹部会を開かなかったんですか?」
「焦らずとも、キミがマスターとして活躍し続ける限り、いずれ刃を交えることになるだろう。その日まで壮健であれ。──さらばだッ!!」
「……人類史にて。決闘の約束として手袋の代わりにラム肉を投げつけられたのは、俺で何人目だろうな」
「マスター、帰りに雑貨屋であの膨らんだ鉄板を購入しよう。上に肉を並べる作業をやってみたい」
銀星くんの心情などのフォローは書きません。現段階はあくまでシステム的な設定のイメージを固める作業としての投稿なので。
ただ、もっと早いタイミングで天成くんと顔合わせしてもいいかなとは思いました。例えば、初めてのランク公式戦の前の特訓中とか。
でも勝ち続けて調子に乗っているときに悪役に負けて立ち直るパターンも定番なんですよ。実に悩ましい。
悪の組織に興味のある方のために『ロボチー設定会議・悪の組織』を追加しました。清く正しく悪を貫き、一致団結して世界征服を目指しましょう!
次回は設定の整理について投稿する予定ですので、興味の無い方はスルーしていただいて問題ありません。