作者としてはまだシステム部分のイメージを固めるためのテスト投稿なので、いまのところ天成くんの活躍にはそれほどこだわりはないのですが……ここで書かねば無作法というもの。
「勇者を気取るつもりはありませんが、これから俺と彼とで楽しくバトルを始めるところだったんですよ。フリーバトルならともかく、大会のタイマンに横槍を入れるってのは無粋じゃありませんかね?」
「ほう、キミは……。噂で聞いたことがある。Cランクマスターでありながら高い実力を持つ零式の使い手の話はな。実力に不相応の戦場にとどまるのは戦士の誇りに反するのではないか?」
「サバイバル戦で負け過ぎてランクアップに必要な勝率を満たせてないからですよ。TNSの公式サイトにありますよ? 俺の情報。勝率3割切ってるんです」
「む、それは失礼した。知らぬことだったとはいえ、無責任な発言をしてしまったことは謝罪させてほしい」
しっかり姿勢を正して幻斎なるGDコマンダーが俺に向かって頭を下げてきた。喋り方といい雰囲気といい、いわゆる武人タイプの悪役なんだろうか?
バトルに対して真摯なその姿は好感が持てるが、それと賞品のお肉を奪おうとした罪は別である。幸いにしてタブレット端末の中にパーツのデータは揃っているので、表向き用のガチ装備であればそれなりに戦えるはずだ。
「フッ……良い気迫だ。私の相手として不足はなさそうだな、零式の使い手よ」
「買い被り過ぎるとガッカリすることになるかもしれませんよ? ──稲村くん、ここはひとまず俺に任せてくれ。こんなんでも一応キミよりはランクは上だし、ウィルスバスターとしてアルバイトの経験もあるんでね」
「え? あ、その……が、頑張ってくださいッ!」
展開の目まぐるしさに処理が追い付いていないところに一方的に提案を押し付けて勢いで流す! 悪いな稲村くん、これが大人のやり方なんだ。汚いと罵るなら罵るがいいさ。
◇◇◇
「マスター、相手のGDが持っていた武器を見たか?」
「槍と錫杖の複合型。魔法武器を使ってくるのは確実だろうから、多角的な攻撃に警戒を。あとはまぁ、奥の手のひとつやふたつはあるだろうね。一撃でアーマーの深層までブチ抜いてくるようなヤツとか」
「経験が活きているようでなによりだ。もののついでだ、ゴウセツ団の幹部とはどの程度の差があるのか確かめてやるとしよう」
戦場は古びたビルが建ち並ぶ『オールドメトロポリス』が選ばれた。足場が豊富で空を飛びやすいこのフィールドは俺たちにとっては有利ではあるが、相手が魔法属性の武器を使ってくるなら話は別だ。ファンネルのように追跡能力のある攻撃が可能なので、空中で包囲されたら零式のアーマーでは耐えきれないだろう。
地上戦と空中戦の切り替えのタイミング。これを間違えれば一瞬で追い詰められるが……冷静に考えたらいつも似たようなもんだな。そもそも防御の刻印はギリギリまで減らしてるし。
遮蔽物を利用しつつ距離を保ち、両手のライフルで牽制を続ける。マガジン容量と連射力を高めた物理ライフルをばら蒔きつつ、そこにクールタイムを犠牲にして火力と燃費を両立させたレーザーライフルを忍ばせる。
こちらを旧型と侮ってくれる相手であればこれだけでアーマーの表層は簡単に破壊できる。が、こんな単純な仕掛けで釣られてくれるほど幻斎という男は甘くないらしい。回避行動を優先しつつ、切り返しの隙を背部装備のガトリングでカバーしている。
こりゃタフなバトルになる展開か? ……いや、どうやら相手のほうは持久戦は好みに合わないらしい。そりゃそうか、長々と戦ってたらセキュリティ来ちゃうもんな。
「マスター、相手のGDの魔力が急上昇している」
「過大評価もいいところだな。向こうがその気なら付き合ってやらにゃあなるめぇ。零式、
「ほぅ? 珍しく攻め気だな」
「たぶん残しておいても意味ないでしょ。どうせここから先は一撃も食らえない戦いになるんだし」
「ふむ。言われてみればそれもそうか」
《良い動きをするな零式の使い手よ! 噂以上だ! 本音を言えば、いま暫くこの至福の時を堪能したいところなのだが、そうも言っておれんのでな。我が全身全霊にてお相手いたそう!》
《大兄ッ! 用意はできていますッ!》
《応ッ!!》
さて、この戦いを見ているギャラリーはどんな気分になっているだろうか? セイテン団の名前は知っているだろうし、彼らが扱う素体がFDではなくGDと呼ばれていることも知っているだろう。
しかし、GDに変形能力があることまでは知らないはずだ。TNSの職員さん曰く、彼らに憧れて違法改造に手を出すマスターが増えたら困るので情報統制をしているらしいが……実際どうなんだろ? 逆効果になってる気がしなくもないけど。だって興味出ちゃうでしょこんなん。
《岩砕き骸崩す大地に潜む炎たちよ、集いて紅き牙となれッ!!》
《岩砕き骸崩す大地に潜む炎たちよ、集いて紅き牙となれッ!!》
猛々しく燃え盛る炎の中から、下半身がネコ科の動物を思わせる四脚に変化して現れる姿を見ちゃったらさ。
《ついてこれるかッ! 我が半身、焔虎の動きにッ!!》
「ご心配なくッ! 俺の零式は、充分速いんでねッ!!」
蹴る。蹴る。ビルの壁をどんどん蹴っ飛ばして推進力に変えて飛ぶ。両肩に装備している浮遊機雷を適当に配置しながら高速移動を絶え間なく続ける。炎を宿した薙刀で簡単に切り払われているが、ほんの一瞬の失速でも稼ぐことができれば上等だ。
加えて、獣を模した四脚はしなやかで瞬発力に優れている反面、必ずどこかのタイミングで速度がゼロになる。幻斎がどれほど優れたコマンダーだとしても、踏み込む瞬間だけは誤魔化せない。
《チィッ!? 良き眼をしているッ! この戦闘速度でも狙いが正確とは、大した度胸だな零式使いッ!!》
「これでも、負け続ける戦いは得意なんでねッ! 俺にとって綱渡りはいつものことなんですよッ!!」
《そういう強さもあるのかッ! 是非とも参考にさせてもらおうッ! だが攻め手を緩める気はないぞッ! 来たれ、
「マスターッ! 召喚だ! 炎の虎、多数ッ!!」
「そう来たか! まとめて振り切るぞッ! 眼を回すなよッ!」
「愚問だなッ! 私はお前の相棒だぞッ!!」
FDバトルの武器は大雑把に分類すると『物理で殴る』か『エネルギーで殴る』か『よくわからない不思議で殴る』の3つがある。おかげでスーパーロボットたちの半分魔法みたいなトンデモ武器も、諦めなければ気合いと根性で再現できるワケだ。
ファンネルに組み込んでいる刻印も、こうした召喚タイプの魔法武器を参考にしている。もちろん簡単に組み上げることはできなかったが、おかげでこの手の魔法武器の対応手段も色々と学ぶことができたのだから面白いもんだ。
どこまでも追跡してくるのなら、それを利用すればいい。障害物に向かってギリギリまで加速し、一気に切り返すことで召喚された虎たちをまとめてビルの壁面に衝突させて処理完了でござる。
もともと空閃シリーズは空中戦に強く、零式は旧型故にスピードはほどほどだが反応の良さは次世代型のハイマニューバーカスタムにも匹敵する。壁が高速で顔面に迫ってくる恐怖さえ乗り越えてしまえば、こういう戦い方もできるのだ!
ちなみに成功率はいまのところ6割ほどだ! 失敗して激突したときの動画は有志の手により『疲れたときに見る零式の大活躍シリーズ』としてまとめ動画が投稿されているからよろしくね!
ただまぁ。
さすがにこれだけの動きをロス無しで実行するのは難しいワケでして。
《見事だな零式使いッ! こうも簡単に我が『紅牙陣』を封じられるとは、どうやら私も基礎から鍛え直さねばならないようだなッ!》
そりゃ追い付かれるよねって話だよ。
《キミほどのマスター相手に出し惜しむのは愚の骨頂ッ! 我が乾坤一擲の技はこのときのためにあるッ! 吼えよ天輪偃月刀ッ!!
んー、こりゃあかん。回避運動するにしても距離が近すぎる。四脚の踏み込みの初速は見てから直撃余裕です。
こういうの、らしくないんだけど……まぁいいか。
「マスターッ!!」
「やるかぁ~。あんまり『虎徹』は使いたくなかったんだがな。 ──斬ッ!!」
◇◇◇
戻って参りました現実世界。そして相手の──幻斎と焔虎のリンクは継続中。つまり最後の一撃は俺が押し負けたということだ。
「……ふぅ。見事な動きだな零式使い。どうだ、キミさえよければセイテン団に遊びにこないか? 給料条件はあまり誇れるものではないが、趣味を楽しむ時間だけは必ず保証しよう。食堂で提供している山菜定食も絶品だぞ」
「どう考えても勧誘するのに向いてないでしょ山菜定食。ヘルシー通り越してカロリー足りないって」
せめてそこは焼き魚定食とか、もっとボリュームあるメニューで勝負しようよ。そういうこと言われると後ろのほうで丁寧にジンギスカンのパックをクーラーボックスにしまっている下っぱ団員たちの姿が余計に悲しく見えてくるわ。
「幻斎さま、撤収準備が完了しました」
「うむ。ご苦労」
「幻斎さま、別動隊より特売品のモヤシ、キャベツ、ピーマンの確保に成功したと連絡がありました。大量購入のオマケでお店の人からカボチャも頂いたとのこと」
「ほう! それは僥倖なり! 緑黄色野菜は意識して摂取しなければ簡単に不足してしまうからな。よし、速やかに撤退して……いや」
おや。幻斎がジンギスカンのパックを手に取ったぞ? いったいなにをするつもり──あれ、俺のこと見てる。
「受け取るがいい、零式使いッ!!」
「うおッ!?」
「約束手形代わりだ。実際に刃を交えてみてわかった、キミにはまだまだ多くの手札が残されているのだろう。変幻自在の戦いぶりに興味は尽きないが、そろそろ携帯型認識阻害結界発生装置『拒むんですΣ』の稼働限界なのでな」
「その希代の発明品の名付けには幹部会を開かなかったんですか?」
「焦らずとも、キミがマスターとして活躍し続ける限り、再び刃を交えることになるだろう。その日まで壮健であれ。──さらばだッ!!」
「……人類史にて。決闘の約束として手袋の代わりにラム肉を投げつけられたのは、俺で何人目だろうな」
「マスター、帰りに雑貨屋であの膨らんだ鉄板を購入しよう。上に肉を並べる作業をやってみたい」
帰るまえにとりあえず、台無しになってしまった大会の後始末をどうするかと……呆然として固まってしまっている稲村くんへのフォローを考えないとダメなんだろうなぁ。
いらん面倒だけ残していきおって、許さんぞセイテン団。UNKNOWNとしてTNSからウィルスバスターの依頼がきたら新作のターミナスキャノンでまとめて吹き飛ばしちゃる。
書いてみて初めてわかる、主人公とライバルが盛り上がっているときに蚊帳の外にされるモブの気持ち。
話のボリュームが増えてバトル関係の設定を考えるという目的から逸れると思いタイマン勝負にしましたが、ふたりで協力して悪の幹部に立ち向かうパターンもわりと定番でしょう。
でもそれをするなら現地主人公と現地ライバルの組み合わせのほうが、勝っても負けても美味しいかもしれません。ゲームだと大抵の場合メッセージ送り7ページぐらいで終わるイベントなので、そこもリスペクトしたいところ。会話文7つで終わる決勝戦があってもいいじゃない。