参考にしたらなんだか詰め込み過ぎに感じる仕上がりになりましたが、この雰囲気と勢いで押しきる姿勢を崩すとホビーアニメっぽさが薄まるのがまた悩ましいところ。
この世界には魔力という概念があり、かつては本物の悪霊や鬼が分かりやすいカタチで存在していた。
さらに俺自身が転生者というオカルトの塊ということもあって、こういう“不思議な感覚”は無視しないようにしている。
好奇心と恐怖。前世ではそういうモノに憧れていたこともあったが、いざ自分が体験するとなれば話は変わってくる。余計なことに関われば当然トラブルなどのリスクが発生するかもしれないが、ならば知らぬ存ぜぬが正解かと問われればそうとは限らない。
もしかしたら、この『音』を辿った先で誰かが困っている可能性だってある。俺が駆けつけたからといって助けられるかはわからないが、もしかしたら俺が駆けつけたことで助けられる命もあるかもしれない。
まぁ、心の何処かでイベント感覚でワクワクしてるのも否定しないけど。残念ながら俺はそこまで聖人君子じゃないからな。これでもしも“特別な転生特典”とか持ってたら100パー興味本位でクビ突っ込んでたハズだ。
んで。
「蒼真、お前も聞こえたのか。いつもの日課か?」
「その言い方から察するに、お前にも聞こえたんだな天成。あぁ、海岸線をランニングしていたら急にな。しかし蔵人もこんな時間に一緒とは珍しい」
「なにを言うか。ついさっきまでカフェテリアで優雅な朝食タイムを過ごしてたトコだぜ?」
「俺のBPでね」
「はぁ……またか。いい加減エンジニアの知識だけでなくポイントの管理も身につけろ。貴様、その調子で高等部に進学したら生活難で苦しむことになるぞ?」
この生真面目さは賀茂蒼真という人間の性格によるものか、 はたまた中等部生徒会のメンバーとしての責任感からくるものか。
いや、前者だろうな。初対面のときからこんな感じだったし。大企業のご令息って俺たちみたいな庶民相手には基本高圧的な態度がデフォルトだと思ってたから驚いたっけ。先入観、いくない!
◇◇◇
友人ふたりと海岸線を走ることしばらく。岩場の隙間に挟まった立派な箱がポツンとひとつ。なんだろうな、豪華なお節料理とか入ってそうな綺麗な塗装がされている。漆塗り、で合ってるのかな? イマイチその辺の知識はノー知識なんだよな。
「ふーむ? フムフム。この表面、丁寧に刻印が彫られてるな。こりゃどっかの企業の『海送り』に間違いない。一応オレもそういう儀式系の勉強はしっかりやってるからな、ここは信じてくれていいぜ」
「あー、アレか。素体やパーツの新作を神社とかに奉納してたヤツを自然に還すって、たまにテレビとかでもやってたな。ってことは、コレ中にFD関係のモノ入っているのか。ルビア、スキャンとかできる?」
「んー、ちょいと待っておくれ。……うん、どうやらFDの素体が入ってるみたいだねぇ。シルエットからしてアーマーや武装のパーツは無しみたいだよ」
「なるほど。とりあえず中身は悪いモノではないワケだ。しかしコレ、どうしたもんかね? まさかここに放置するのもアレだし、やっぱりTNSセンターにでも持っていって──おろ?」
おおっと? 箱を手に持ったとたんに刻印が反応しているように見えるんだが目の錯覚かしら。違うね、どう見ても俺の魔力に反応してキラキラしてるね。オマケに箱が勝手にパカッと開いちゃったね! え、これ大丈夫?
恐る恐る中に入っていたFDの素体を取り出してみる。当たり前だが命の源としての役割である『コア』は入っていないようで、通常のアーマーの代わりに振り袖のような着物を身に付けているんだけど……なんつーか、感謝とか祈願とかそういう想いより生け贄的な儀式の雰囲気を感じてしまうんだぜ。
「ほぅ、赤城山製作所の空閃シリーズ『零式』か。これまた珍しいモノが入っていたな」
「知っているのか!? 蒼真!」
「……何故そこまで驚いているんだ? FDのカタログを見たときに話をしただろう」
「いや、つい」
「そ、そうか。相変わらずお前はときどき不思議な価値観を発揮するな……」
あらゆる武装を使いこなせるマルチロールタイプの空閃シリーズは、色んな武器を再現してみたいという目的に合致しているのでお迎えの第一候補として考えていた。
ついついお約束のノリを我慢できずに蒼真を困らせてしまったが、トライアルモデルである零式のことはもちろん知っている。だが、そんなことより……。
「海送りにしたFDが流れ着いたのはわかったけど、こんな完全なカタチで残るものなのか?」
「確かに。オレも何度かこうした儀式には立ち会ったが、数日としないうちに魔力に分解されて自然に還元されるものだと教えられていたのだが」
「流されてすぐ出雲学園に漂着した、って感じはしねーな。箱もボチボチ痛んでるし。うーん、わっかんね~な~。そもそも送り出したFDが戻ってくるってのが──」
「あるぞ。極めて希にだが、送り出したFDがこうして誰かの手元にたどり着くことは」
「貴方は……さっき、カフェテリアにいた」
「おう。スマンな、盗み聞きするつもりはなかったんだが、つい気になってな。こうして“渡ってきた”FDはワシでさえも滅多にお目にかかれんから、お前さんたちみたいな若モンは困るんじゃないかと思ってちょいとアドバイスに来たワケだ」
「ご老人、渡ってきたFDとは……」
「たまにな、こうして送り出したはずのFDが人の手元に戻ってくることがある。山でも海でも森でも、なんなら火送りで燃やした灰の中に完全なカタチでFDだけが残っていたこともある」
「マジか!? ……って、いやいやじーさん。そりゃ現物がこうしてあるんだからさ、じーさんの話がウソだとは言わねーけどさ。そんなん話あるんならもっと話題になってよくねぇ? だってコレかなりの神秘だぜ! 天成とかちょうどお迎えするFD探してたし、マジでコレ運命の出会いじゃん!」
「だからこそ、だ。付加価値を求めてFDの素体やパーツを粗末に扱うど阿呆が増えても困るだろ? ま、実際こうして巡りあったFDとマスターには“特別な繋がり”が生まれる、なんて考察もあるにはあるんだがな……」
あー、うん。なんとなくご老人の懸念してること理解してしまったわ。一般のご家庭はともかく、お金やBPに余裕のあるマスターたちは面白半分に試しそうだもの。
さすがにコアが宿ったままのFDを送り出す大バカはいないと信じたいが、前世でもなぁ……カードとか、いろいろあったからな。まして、この世界ではFDバトルの社会的地位はかなり上だ。問題発生しまくりな未来しか見えねぇンだわ。
「ハーッハッハッハッ! 話は聞かせてもらったぞッ!」
「クックックッ! そいつは面白い話じゃないかッ!」
はい。さっそく問題が発生したね。
「オマエたちはッ! ……えーと、センベイ団にコンブ茶団だっけ」
「違うッスよ蔵人どの。センブリ団にボンジリ団ッス」
「ちっがーうッ!! セイテン団だ! セ・イ・テ・ン・団ッ!! 怨霊たちの因子を宿した闇のFD『ゴーストドール』を使い世界征服を目指す最強の悪の組織だッ!!」
「ハッ! 笑わせてくれるじゃないか。我らゴウセツ団を差し置いて最強の悪の組織だなどと思い上がりも甚だしいな! まぁいい、キサマらのようなおちゃらけ軍団の相手をしているヒマなどない。その“特別なFD”とやら、素直にこちらに渡してもらおうか?」
「アァッ!? テメェ、あとから出てきて横取りしようってのかッ! セイテン団ナメてんのかコラァッ! ガキどもの代わりにテメェをブチのめしてやってもいいんだぞッ! セイテン団はガキには手加減しても大人相手は上等だぞコラァッ!!」
「チッ! 相変わらず品性の足りない連中だな。だいたいキサマらは──」
「これ、いまのうちに逃げたらダメかね?」
「それはちと厳しいみたいだよマスター。ほら、ほかの団員がなんだかんだでしっかり包囲してきてるし」
「──えぇいゴチャゴチャとラチが開かねぇ! こうなりゃ実力勝負だッ! あのガキから先に“特別なFD”をブン取ったほうが真の最強の悪の組織だ! 言っとくが、マスターのガキにガチ怪我させんのはナシだからなッ!」
「フッ、言われずともその程度は承知の上だ。GDコマンダーとして堂々とバトルに勝利しなければ、GDの優秀さと素晴らしさを示すことができんからなッ!」
「そうはさせっかよッ! ようやくダチの相棒が決まりそうだってんだ、邪魔させっかッ! いくぞジライヤッ!」
「合点承知ッ!!」
「ちょうどいい、日頃のトレーニングの成果を試す相手としては申し分ないッ! ナージェンダ、準備はいいなッ!」
「いつでもご命令を、蒼真様ッ!」
「おぉっと、お前たちの相手はオレたちだぜ?」
「隊長の邪魔はさせんぞ!」
うーん、頼もしい友人たちだこと。冷静に判断するなら大声でセキュリティ的な人たちに助けを求めるべきなんだろうが、セイテン団もゴウセツ団もあくまでバトルをした上での悪事だからな。たぶん負けても零式以外はノータッチで帰ってくれるんじゃないかな。
なにせ、わざわざ携帯式のフィールドを用意して展開してくれるぐらいだし。一応、禁止されているだけでフィールドの外でもFDは武器の使用が可能である。マスター自身にダメージが発生するので、通常はFD側のセーフティー機能により使えないが……悪の組織ならなんとかしてそうなものだけど。やっぱりバトルに関しては何故か真摯なんだよね。
「オレたちセイテン団に逆らうとは、バカなヤツめ!」
「ジライヤの摩訶不思議、たっぷり味わいやがれ!」
「我らゴウセツ団の恐ろしさを教えてやろう!」
「ナージェンダの蒼き刃、その身に刻め!」
「向こうは盛り上がってるな。で、俺の相手は結局自動的にリーダー格がふたりになるのね。いや、ベリーハードすぎるでしょ。せめてハンデのひとつやふたつは欲しいところなんだけどなぁ」
「案ずることはないぞ少年よ、この老骨が微力ながら手助けするとしよう。なに、これでもFDバトルはそれなりに嗜んでいるからな。少しは期待してくれてかまわんぞい。ほれ、この子がワシの相棒、FD『テスタメント』のひじりちゃんだ!」
「おぅ、アタイがひじりだ! よろしくな、ボウヤ!」
「テスタメント……知らない子だな。ルビアはこのFDのモデルのことは知って──ルビア?」
「なんか見覚えあると思ったら……アンタこんなところでなにやってんだい……」
「ヘッ! 老いぼれがガキの前で見栄はりやがって! オイ、ここはひとまず協力するぞ。まずはジジイをさっさと片付けて、そこから改めて勝負だ」
「いいだろう、キサマの提案に乗せられるのは癪だが、準備運動ぐらいにはなるだろう。年寄りの冷や水にならなければいいがな?」
「ほっほ~? 威勢がいいのぉ~♪ 結構、結構! ──よかろうッ! 我がテスタメントの裁きの一撃、抗えるものなら抗ってみせいッ!!」
一般には出回っていない知識。
ピンチで助っ人。
知らない素体。
そしてルビアの意味深な反応。
──このおじいさん、FD関係の偉い人でメチャクチャ強いマスターのパターンだコレ!?
カスタムロボという作品に登場していた『ポータブルホロセウム』という持ち運びできるバトルフィールド的な物もアリですが、現代風にするならタブレット端末のアプリでそういうものがあってもいいような気もしますね。オカルトありの世界観だし、なんぼでも融通ききそう。
ちなみにこのおじいさんの正体は考えてません。