電子妖精のMasquerade!   作:はめるん用

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④整備士がパイロットにキレても許される戦い方がある。

 レンタルFDというのはなかなか面白い仕事だ。産みの親であるメーカー側の希望でパーツの変更は制限されているが、同じ武装でもマスターとなる人間次第で戦い方に違いが出るのでバトルも退屈しない。

 

 クロスレンジでの立ち回りがヘタなのに突撃したがるマスターもいたし、射撃の精度がお世辞にも巧いと言えないのに得意気にキャノンを使うマスターもいた。

 個性豊かなマスターが大勢いたが、どうしても……まぁ、なんだ。才能というか、バトルに向いてないマスターもそれなりにいた。いまのアタシのマスターである伊瀬天成も、初期適性検査の結果はヒドい有り様だったのを覚えている。

 

 年齢に似合わない精神の安定ぶりは見所ではあったが、如何せん肝心の魔力の質がよろしくなかった。例えるなら、そう……正直なところ、アタシもなにを言っているのかイマイチわからない例え方になるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としか言いようがなかった。

 純度は高いのにとにかく質が悪いという意味がわからない結果、だがマスターとして最低限のラインはしっかり超えている。これには検査を担当したTNSのスタッフもすっかり困っていたが、基準を満たしているのだからまずはライセンスを発行するべきだと判断し、その上でマスターに結果を知らせることにした。

 

 マスターの反応はなんともアッサリしたもので、別に最強を目指したいとかそういうのは考えてないので問題ないと気にした様子はなかった。

 だから、今回の仕事はのんびりしたものになると思ってたんだ。向上心がちょっとくらい足りなくても、アタシらFDと一緒にバトルを楽しんでくれるならそれでもいいって、レンタルで指名されたときも軽い気持ちで引き受けたんだが、ね。

 

 

 

 

『チィッ!? このガキッ!! オイ、リミッターすぐに切れッ! コイツ、ただの学生じゃねぇぞッ!』

 

『わかった! こっからはマジでやっかんね!』

 

 

 相手のGD、後退の動きが急によくなった。どうやら手加減がどうこうってのはマジだったみたいだね。そして判断も早い。マスターの仕掛けにここまで反応してみせるとは、なかなかやるじゃないか。

 

 相手のGDは現在ほぼノーダメージ。こっちの射撃はマシンガンもキャノンも全部外れている。しかもフィールドはローラーダッシュ型であるアタシら特攻天使シリーズとは相性が悪い自然系。これだけ条件が揃えば普通は距離をつめて勝負に出たくなるものだ。

 そうやって誘い出し、突っ込んできたところをカウンターってのがマスターの作戦だったんだが……このセイテン団リーダーはいい嗅覚してるみたいだね。なにで判断したのかはわからないが、こっちの思惑を見抜いたのは見事だと言っておこうじゃないか。

 

 

 ま、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 相手が退いたタイミングに合わせて、脚部アーマーのローラーをフルパワーで回転させ手頃な岩を思いっきり蹴り飛ばす。爆発音が響き岩が砕け、その反動で一気にセイテン団リーダーに接近する。

 もちろん相手もぼんやり棒立ちするほどバカじゃない。全力で後ろへとダッシュ移動するが──悪いね、コッチはその瞬間を待っていたのさ! 

 

 再び地形を蹴って跳ぶ。だが今度は正面じゃない、あえて“斜め前方”へ跳躍する。こうして稲妻のようにジクザクの軌道で移動することで、どんどん加速しながら相手に近づけるって寸法だ。

 さぁ、ここで楽しい楽しいクイズの時間だ! 地形を破壊するほどの爆発的な加速で突撃してくるFDが、しかも脚部のパワー出力が重装備系FD並みにある特攻天使シリーズのローラーダッシュ型最終モデルであるこのアタシを操るマスターが、急なダッシュ移動で体勢を崩した対戦相手を全力で蹴ったらどうなると思う?

 

 その答えは──。

 

 

「そぉーい」

「うるァッ!!」

 

『がァッ!?』

『きゃんッ!?』

 

 

 答えは“ハデに吹き飛ぶ”だッ! 

 

 

 セイテン団リーダーのGDはいまの一撃でアーマーがどうやら中破判定までイッたみたいだね。ま、コッチも常識はずれのムチャなステップ移動と蹴りの代償としてアーマーが小破しちまったけど。

 

 アーマーに衝撃が発生すれば当然だけど耐久が減る。だから普通のマスターたちは殴る蹴るなんてことはまずやらないんだが、アタシのマスターは耐久が削れることなんてお構い無しに、こうしたムチャな動きをバトルで使いこなしている。

 ほかのマスターたちは真似しようとも思わないかもしれないが、そもそも真似をすることができないだろう。こうしてリンクしてバトルのサポートをしているアタシだからわかることだが、マスターは動きのイメージを構築する能力が桁違いに優れている。試行錯誤、なんて過程を全てすっ飛ばして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 バトルで得たデータはレンタルFDの仕事としてTNSとアトリエ夜桜に送信しているが、どっちのスタッフもそりゃあもう驚きに驚いていた。なにせマスターとしての才能とは魔力の質で決まるもの、なんて考えを容赦なくブチ壊したんだからね。

 

『このクソガキッ! いい度胸してやがるじゃねぇかッ! その根性気に入ったぞコラァッ!! こうなりゃコッチも小細工ナシだ、一気にブッ込んで畳み掛けンぞッ!!』

 

 迂闊に間合いを広げるのは危険だと判断したんだろう、セイテン団リーダーが突撃を仕掛けてきた。なるほど、強力な格闘武器で逆転狙いってトコか。

 

 相手のGDが振り下ろしてきた大剣を両手持ちのスレッジハンマーで受け止めると、その勢いに逆らうことなくマスターは後ろへと倒れる。同時に背中の武器をまとめて格納し、そのまま地面を背中の支えにして──またまたフルパワーでGDを空へ向けて蹴り跳ばした。いやはや、特攻天使シリーズの足腰の強さをここまで武器として扱えるのは後にも先にもマスターぐらいなものだろうさね。

 蹴り跳ばされたセイテン団リーダーはなんとか空中で姿勢を制御しようと試みているが、残念ながらそれは間に合わない。何故ならバランスを整えるよりも先に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『うむ、ナイスアシストじゃ少年。若者を差し置いてオイシイところをいただくのはジジイとしてどうかと思うが、まぁタッグバトルだし構わんだろ。──穿て! 仁王剣ッ! 急々如律令ッ!!』

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 いやぁ、セイテン団とゴウセツ団は強敵でしたね! おじいさんが助けてくれなかったらどうなっていたことやら。それにしてもテスタメントなるFDの最後の一撃はなんというか……中二病ハートをソワソワさせるものだった。

 手元で印のようなものを結んだあと、蒼い炎をまとった剣が何本も現れて二体のGDをまとめて貫いての勝利。あれにワクワクしないヤツおる? ロボット作品再現計画的にも追い風だし。龍虎王とか……イケるやん。コイツぁグレイトですよ。

 

 あ、悪の組織の皆さんはちゃんと撤収していきました。いうて倉人も蒼真もフツーに強いからね。レンタルFD使ってのんのんとバトル楽しんでるだけの俺と違って、ふたりはちゃんと学園ランキング戦とかでもバチクソやりあってるもの。

 学生相手でも負けは負け、バトルの結果に従い素直に逃げる。どうやら悪の組織の戦闘員というものはフェアプレーの精神を身に付けなければなれない仕事らしい。アイツらが世界征服に成功してもFDバトルは大人から子どもまで楽しめるコンテンツのままになりそうな気がするんだぜ。

 

 んで。

 

「少年、伊瀬くんといったな。キミさえよければその零式、迎え入れてみんかね?」

 

「俺、ですか? いや、でも、特別なFDっていうのであれば、もう一度ちゃんと海送りの儀式をしたほうが……」

 

「送り出した結果、こうして人間の手元へと渡ってきたのだ。ならばこの出会いは偶然ではなく必然というもの。その証拠にホレ、零式のほうはキミをマスターとして認めているようだぞ?」

 

「へ? ──わぉ」

 

「ほぅ……」

 

「はぇ~」

 

 いつの間に足元にいたのか、俺の魔力に反応したらしい零式が俺を見上げている。コアが無いからだろう、瞳には意思の光が宿っていない。空っぽのはずの零式がなにを考えているのかはわからないが、俺を見ているのだということだけはハッキリと理解できた。

 そして……特別なつながり、という言葉の意味もなんとなく実感というか、こういうものかと納得してしまっている。たぶん、この零式と魔力のつながり『エーテルリンク』が可能なのは俺しかいないのだろう。理由や理屈を説明することはできないが、何故かそうだという確信だけが胸の中にあるのだ。

 

 うーむ。素体としてはかなりの旧型だけど、俺の目的を考えればバランスのいいマルチロールFDだからちょうどいいのかな? 

 たしかに俺は転生者だが、別に最強は目指してないしSランクの称号にも興味はないしハーレムも欲しくないし名声も求めてないしざまぁをする相手もいない。ただ前世で楽しませてもらったロボット作品をこの世界に持ち込んで趣味としてヒャッハーしたいだけだし。

 

「うむ、どうやら決まりのようだな!」

 

「俺まだなにも言ってませんが」

 

「なぁに、その顔を見ればわかるとも。これもいわゆる人生経験というヤツだな! よければコアのほうはワシがなるべく安く仕上がるように取り計らおう。なに、赤城山製作所の先々代とは同期の桜でな? 一緒に女子更衣室を覗こうとしてグラウンドに埋められて晒し首にされた仲だ、安心して任せてくれていい」

 

「いまの説明を聞かされていったい俺はなにに安心すればいいんですかね」

 

「あー、マスター。このじいさんについては不本意ながらアタシが保証するよ。業務上詳しいことは説明できないけど、TNS側で身分というか……立場的な事情はちゃんと把握してるから」

 

「まぁ……ルビアがそう言うなら信じるけど。えーと、おじいさん。これもなにかの縁ですし、零式のマスターとしてFDバトル、やってみようと思います。コアの件、どうかよろしくお願いします」

 

「おう、任された。とはいえ、今日の明日でホイよッ! というワケにはいかん。零式をバトルで見かけないようになってから長いからな、さすがにノウハウを棄てるようなマネはしないだろうが、在庫を抱えているとは限らんからの~」

 

「必要経費含めて詳しいことはあとでアタイがボウヤのFDに連絡してやるから、どんなパーツ装備させるか考えながら楽しみに待ってな!」

 

 と、いうワケで。なんか流れで相棒となるFDが決定しました。いまではもう誰もバトルに連れ出していない旧型のFD・零式。空閃シリーズは元々興味があったが、これまたある意味レアリティの高い素体が手元にやってきたもんだ。

 目の錯覚か、それとも本当にそういうものなのか。心の中でこれからよろしくと挨拶をしたら、虚ろな瞳はそのままに零式の口元がわずかに微笑んだような気がした。




悪の組織、幹部クラスは変形できるものとして、一般団員やリーダー格はどうしたものか考え中です。一部分だけ変形できるとかも悪くない。
ちなみに設定会議で頂いたアイディアを参考に、FDは基本的に機械的な変形を、GDが動物などをモチーフとした変形にしようかなと思ってます。例えば空を飛ぶときに、FDはドラグナー的な感じにして、GDは翼が生える……みたいな。

あと、現在は赤城山製作所の空閃シリーズとアトリエ夜桜の特攻天使シリーズぐらいしか確定している企業はありませんので、その辺りも自由に書き込んでいただけると助かります。切実に。
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