こんだけ作品作りに協力してもらっておきながら、いつまでも試作品と名乗るのもアレなので。
購入した飲み物やらお菓子やらをタブレット端末に収納してゲームセンターに向かう。こうした細かい買い物が魔法でシュッと吸い込まれる光景にもさすがに慣れたと思っていたが、バトル関連の物を収納して持ち歩いているとゲームのキャラクターになったようで新鮮な気分である。
そんな感じでちょっとウキウキしながらゲームセンターへたどり着いた俺だが、そこで起きていた出来事はテンションをガッツリ下げる光景であった。
「どけどけガキども! ここは今日からオレたち『ダークネスボンバーズ』のナワバリだ! 勝手にバトルするんじゃねぇ!」
「オマエたちみたいなのがバトルなんて1万光年早いんだよ! お家に帰ってアニメでも見てな!」
「どうしてもバトルをしたいってんなら、使用料としてオレたちにBPを支払ってもらおうか!」
うーん、これはなかなか。チームの名前も香ばしいけど、小学生相手に中学生がオラオラしてる姿はなんとも痛ましい。あと1万光年は確かに小学生には速すぎるな。せめて自転車で出せる速度で妥協して欲しいところだ。
さて、こんな場面に遭遇してしまったのでは黙っているワケにもいくめぇ。どんなジャンルの世界でもチビッ子たちが楽しめないようでは発展性が損なわれるというもの、ここはFDバトルの未来のためにも一肌脱ぐところだろう。
「キミたちッ! 恥ずかしいとは思わないのかッ! 小学生の子たちを相手になんてみっともないッ!!」
おっと、出遅れたか。しかしさすがは薫、こういうときの反応はニュータイプ並みに優れている。ついさっきドラッグストアで高笑いをしているところを店員FDに「またあの子なのね、人生楽しそうでなによりなのね……」と呆れられていたヤツと同一人物とは思えないのね。
「ゲェッ!? 銀条ッ!? て、テメェには関係ねぇだろうが! スッこんでやがれ!」
「関係ならあるさ。FDマスターの端くれとして、キミたちのようなマナーの悪いマスターを放置などできるワケがない。ゲームセンターは皆で利用するものだ、その程度の常識も持ち合わせていないのか?」
「うるせぇッ! 文句があんならバトルでオレたちに勝ってからにしろってんだ! テメェが勝ったら大人しくガキどもにフィールドを譲ってやるよ」
「ただし、オレたちが勝ったらBPを全部渡してもらうぜ? テメェが大会でタップリ稼いでンのは知ってるんだぞ」
「フッ……いいだろう。キミたちのようなマスターに負けるボクとミレディではないからね。ミレディ、予定変更だ。天成とのバトルの前にウォーミングアップといこう」
「かしこまりました~」
ふーむ。トントン拍子で話しが進んで口を挟むこともできんかったな。まぁ、ここは薫に任せても大丈夫だろう。マナーが悪くてもアイツらもFDマスターだ、負けたら素直にフィールドを譲ると言った以上、その約束はたぶん守られるだろう。
しかし……アイツら、自分で言ってて疑問というか、不思議に思わなかったんかね? 大会でタップリ稼いでいるのを知ってるって言ってたけど、そりゃつまりそれだけ勝ち続けることができるほど強いってことなんだがねぇ。
◇◇◇
何故か当たり前のように始まったハンデ戦、薫ひとりに対してなんたらボンバーズの3人が勝負を挑んで……いや、薫が挑んだ側か。一応。
選ばれたフィールドは地下空洞。ただし迷路のような構造をしているタイプではなく、複数の広々とした大部屋が通路で繋がっているヤツだ。強いて言うならフライトユニットで移動するタイプのFDが不利か? 加速するための充分な空間が無いからな。
そしてなんとかボンバーズがこのフィールドを選んだのは自分たちの強み、数の有利を活かすためだろう。包囲して火力を集中、頭アオハルしてるわりに基本を守って丁寧に戦う姿勢は悪くない判断だ。
ただし、それは相手が薫でなければの話だがな。
『ハッーハッハッハッ! 震えろッ! ビビれッ! FDの性能を引き出せないまま『はぁッ!!』ぴゃおぉぉぉぉんッ!!』
『佐古ぉぉぉぉッ!』
『あの佐古が一撃で!? 気をつけろ釜瀬! コイツ、強いぞッ!』
不用意に近付いたひとりが特大剣のなぎ払いで一撃大破。接近を許したときに備えての格闘武器としてそれを選ぶのはどうなんだと思わなくもないが、本人が使いこなしているのだから口出しするのは野暮ってもんだろう。
ああいう大型武器をバランスを崩さず振り回せるのは重装備型FDの特権だが、その中でも薫の相棒であるミレディ……ベルンシュタインが属するEFシリーズの姿勢制御能力は格別だ。
ドレス調のアーマーのスカート部分にたっぷりと刻まれた重力属性の刻印により大型の射撃武器でさえも無反動で撃つことができる、まさに“正義とは力である”を形にした姿と言っていい。刻印の効果が発動している間、スカート部分に装飾された宝石っぽい部分がキレイに光ってるのもなかなかエレガントである。
『門部、回り込め! バカでかい武器振り回すだけの安定性があんなら、機動力は犠牲になってるハズだ!』
『フフッ……。その判断は間違いではないけれど、少なくともボクには通用しないよ』
『な、バカな!? なんでそんな動きが──ほげぇぇぇぇッ!?』
『か、釜瀬ぇぇぇぇッ!?』
安定性を優先すれば機動力は損なわれる。重力属性の刻印が発動している最中なんて、それこそ1歩踏み出すだけでも苦労するだろう。そういう意味ではなんちゃらボンバーズの動きは悪くない。
ただ、相手のFDの特性を知らなかったのは不味かったな。ベルンシュタインの脚部アーマーに仕込まれたキャタピラを使った移動は、ローラーダッシュほどの速度は出せないものの背部に装備したキャノン系武器を展開したまま移動が可能なのだ。
歩行が困難ならば、歩かない。機動力の低さは防御力と旋回能力で補う。そこに薫の天才的な射撃センスが加われば……相手の動きを先読みしてレールガンを直撃させることもご覧の通り、である。
『ちぃッ!? ここは仕切り直しの場面か……クソッ!』
『さすがに3人目ともなれば冷静だね。リロードの隙を上手に利用するじゃないか。だけど、重装備型FDのマスターがその程度のことを想定していないと……本気で思っているのかい?』
『レーザーライフルだと!? だが、チャージの時間さえ読み間違えなければ──バカな、なんでそんな連射ができるんだよッ!?』
『このパワーランチャーはボクの友人たちが、天成が設計し蔵人が開発してくれた特注品だ。ボクとミレディが抱えていた弱点を完璧にフォローしてくれる最高のパーツさ。残念だけど、キミたちの勝ち目は最初から無かったワケだよ。さぁ、これがラストシュートだ。アデュー……』
◇◇◇
薫の勝利にモニターを見守っていた子どもたちから歓声が上がる。正義のヒーロー的な格好よさはもちろんだが、俺としてはやはり最後のパワーランチャーの撃ち方が
フフフ、手に持つのではなくあえての腕に取り付けるタイプ、そこからコードが背部ユニットに繋がっているこのビジュアルの素晴らしさよ。やっぱり『重戦機エルガイム』のデザインを……最高やな!
もちろん性能的な部分でのメリットもちゃんとある。攻撃の回転率の問題は、ベルンシュタインのような重装備型FDにとって避けて通ることはできない。マシンガンなどを予備の武器として装備するパターンが多いのだが、半端な火力だと被弾覚悟で突撃されてしまう。
背部ユニットから直で魔力の流れを繋ぐことで攻撃力と連射性能を両立……俺の思い付きをバッチリ形にしてみせた蔵人は間違いなくエンジニアとしてなら超が付くほど優秀だ。エンジニアとしては。生活能力は犠牲になったのだ、たぶん。
んで。
「さてキミたち。約束通り子どもたちにフィールドは譲ってもらうよ。FDマスターとしての誇りがあるのなら、バトルに誓った約束は守りたまえよ」
「ち、くしょうがぁ……」
不満タラタラだが約束は破らない。FDマスターとしての矜持もあるのだろうが、きっと根っこの部分は悪いヤツらじゃないのだろう。
だからこそ気になることがある。わざわざ小学生マスターたちが遊び場にしているところを狙ってフィールドを独占しようとした理由が。俺と薫のように近場だからとフラッとやってきた感じはしないし、もともと溜まり場にしていたフィールドがトラブルで使えなくなって……みたいな“お約束の流れ”が事情としてあるかもしれない。
「それで、お前たちはなんでこんなことをした? 仮に薫がバトルを受けなかったとしても、フィールドの独占なんてできないってわかってるだろう? なんなら高等部の風紀委員あたりに捕まる可能性だってあるんだし」
「それは……」
「オレたちが普段使ってるゲームセンター跡地が使えなくなったんだよ」
「佐古、おい!」
「オレたちは負けたんだ。なら聞かれたことには答えなきゃ男が廃るってもんだろ? とにかく、いつもはそのゲームセンターに残されてるフィールドでバトルの練習をしてたんだが、その……出るようになったんだよ。幽霊が」
「幽霊? 動物が紛れ込んだのを見間違えた、とかじゃなくて?」
「さすがにそこまでアホじゃねぇよ。そもそも見たのはバトル中のフィールドでだ。オフラインのフィールドに乱入してきたFDがいて、最初はてっきり誰かが来て勝手にリンクを始めたかと思ったんだ。そしたら……」
「バトルが終わって周りを見たら、オレたち以外には誰もいなくてさ。最初はアイサツも無しに帰りやがったのかと思ってたけど」
「同じことが何度かあって、それで……その……ホラ、オマエたちだって知ってるだろ!? 夏休み前によ、ウワサ話あっただろ!」
「あー、うん。ウワサ話。アレねアレ。知ってる知ってる。なぁ薫、幽霊のウワサってなに?」
「キミは時々蔵人とは別ベクトルで残念さを発揮するよね。フィールドの設定がオフラインにも関わらず、突然バトルに見知らぬFDが乱入してくるって話だよ。ただ残念なことに幽霊とのバトルはログが残らないらしくてね」
「証拠が無いから誰かのイタズラとして処理されて、学園もTNSもまともに調査してくれないまま放置されている……か?」
「ご名答。自然と誰もウワサのことを話さなくなったから、てっきり幽霊FDの話は消えてしまったとばかり思っていたんだけど」
「ふーん。なぁ、お前さんたちよ。そのナワバリにしてたゲームセンター跡地とやらの場所、ちょいと俺にも教えてくれよ」
「あン? 別にいいけど……って、おい! まさかオマエ、幽霊FDに勝負を挑むつもりなのか!?」
「今日の俺はオカルトに興味津々な気分なんでね。本当に幽霊なのか、それとも別のナニかなのか、確かめてみるのも悪くない。お前さんたちだって気になるだろ? 幽霊FDの正体とやらが何者なのか、さ」
ゲームの世界で有名人の扱いって時々ナゾだよなーと思います。知ってるのか知らないのか、結局どっちなんだよ……みたいな。
活動報告に『妖精会議・アイデアロール』を追加しました。
今後は頂きましたアイディアを積極的にガンガン盛り込んで書き進めるつもりですが、十中八九どこかで「いや、そこはもう少しこんな感じにして欲しいんだけど……」みたいなことが起きると思います。
それを感想として書き込んでしまうとガイドライン的にたぶんアウトになってしまう(リクエスト行為や設定改変の要求とか)ので、なるべく活動報告のページにお願いします。