あーゆーキャラを書けるようになってみたいという気持ちはあるのです。気持ちは。出来るかどうかは別として。
(やれやれ。美味い物を食べるのが人間にとって有意義なのは知っているが、我がマスターは少々極端というかなんというか。これで私のような旧型FDで戦えるのだから、世の中というものはワカランものだな……)
とんかつの味付けを真剣な表情で悩んでいるマスターをしばらく眺めていた零式であったが、お楽しみの時間を邪魔することもないだろう……と、意識をオンラインに接続してネットサーフィンで時間を潰すことにした。
気になっている漫画の続きでも読むか、それともライブ配信されているバトルで面白そうなものがあるか覗いてみるか。もしくは新しく販売されるパーツのカタログを眺めるのも悪くない。そんなふうに適当にネットワークの世界をフラフラしていると──。
(おや、これは……ふむ、この前初心者マスターのチームと戦ったときの記録か。投稿されているコメントは概ね好意的だな。旧型相手に負けたことを貶すような書き込みもあるが、まぁいつものことだな)
使用しているFDや装備の事情に加え、マスターランクが『C』という可もなく不可もなくなポジションであることも相まって、ゲームセンターでもオンラインサービスでも駆け出しのマスターから勝負を挑まれる機会がなかなか多い。
華やかさはないが、丁寧で堅実な戦い方は初心者マスターの教官として最適。いつの間にかそんな評判が広まったこともあり、珍しさも相まって零式マスターのバトル関係の動画や配信はそれなりに人気であった。
が、こうしたプラス評価を面白くないと感じる者たちも少なくない。中には当て付けのように最新のパーツで武装してバトルを挑んできたり、チーム単位でサバイバル戦という名のハンディキャップ戦を一方的に展開してくる者すらいる。
本来ならば一方的に敗北するしかない状況なのだが、零式のマスターはこうした連中を悉く返り討ちにしてしまった。ギャラリーにしてみれば装備の性能に頼って調子にのっていたマスターの鼻っ柱が折られる光景は痛快であり、ある種のヒーロー的な魅力を感じるのだろう。
と。
こういった具合になにかと注目を集める機会があるのだが。
(知らないのだから仕方ないことなのだが……そろそろ正体がバレてもよさそうなものなのだがな。
自分のマスターの“表向きの評価”を見るたびに、もうひとつの顔を知っている零式はなんとも複雑な思いを抱いていた。
マスターランクが上がればそれだけ獲得BPの高い大会にも出場できるようになる。美味しい物をお腹いっぱい思う存分食べることがモチベーションであるマスターならば、当然上を目指してもよさそうなものだ。
しかし、ランクが高ければそれだけ期待される役目も増えてしまう。零式のマスターが通学している学園でもFDバトルにはかなり力を入れており、迂闊にランクを上げようものならスカウトの声が鬱陶しいことになるだろう。
BPは欲しい。
だが名声はものごっつ邪魔。
そんなマスターにとって非常に都合の良いサービスをTNSが提供していたのは幸運なのだろう。バトルの開始前にプライベートモードに切り替えることでFDは登録名ではなく素体の名前で表示され、マスターも『UNKNOWN』として顔はもちろん声すらもシャットアウトされるのだ。
その代償として獲得したBPや撃破数などランクアップに関わるデータが一切記録されなくなるのだが……零式のマスターにとってはデメリットどころか大喜びの特典でしかない。データが残らずとも手元にはちゃんと支払われたポイントが残るのだから大満足なのである。
それでも零式は「ほかに現役の零式はいないし、しばらくすればバレるだろうな」と、イタズラを楽しむ子どもを見守るように微笑ましい気持ちで出撃していた。
それから数年。未だに身内を含めUNKNOWNの正体が自分のマスターであることに気付いた者はいない。さすがに登録データを管理しているTNSの職員さんは知っているが。
そんなバカな。なんで誰も疑問に思わないんだ。そもそもアレだ、零式同士が1度も交戦していないこととか、考察するための材料はいくらでもあるだろ。それだけマスターの振る舞いが完璧……なのか? 私も当事者でなければ気付かなかったのだろうか。うーむ。
「どうした、そんなに深刻そうに考え込んで。なにか装備に気に入らないことでもあったか? リクエストがあるなら聞くぞ」
「ん? もう食事は終わったのか。別に装備に不満などないよ。マスターの製作する装備はなかなか個性的で退屈しないからな。それで、今日はこれからどうする?」
「TNS中央センターに顔出して装備のテスト。レギュレーションチェックは済ませてるけど、やっぱ実際に使ってみんとな。センターのマシン使わせてもらえば、なんか不備あったときにすぐ指摘してもらえるし」
「ならサバイバル戦か。腕がなるな。……ところでマスター、自作した装備の中にオールレンジ射撃が可能な『ファンネル』というものがあるだろう? 私がメインで制御している武器が」
「おう、あるな」
「何故“じょうご”なんだ? まさかバイクのパーツは関係あるまい」
「さぁ、なんでだろうな。形状かなぁ」
「何故他人事なんだ……」
「ちなみに言ってなかったが、いまからテストする武器は『虐殺の女神』って名前で登録する予定だ。開幕ブッパの使い捨て超火力魔導属性キャノンだな。リロード関係のルーンは刻んでないから、パージが遅れても安心だぞ」
「細かい気配りはありがたいが、そのネーミングセンスの触れ幅はもう少しなんとかならんのか? まったく、そもそもお前は──」
「いや、それはさぁ──」
文句を言いつつも、本来ならば鑑賞用にされるだけの旧型FDである自分をバトルに出してくれることに零式は素直に感謝していた。素体の魔力キャパシティが少ないせいで装備のカスタマイズも面倒なはずなのに、むしろそれを楽しんでくれているのも好ましかった。
それを思えば、たまにヘンテコな装備を使わされるのも退屈しないと前向きに受け止められるというものだ。なんだかんだ完成度は高いし、作って終わりではなくちゃんと運用方法も考えてあるのも評価できる。
あとは今日のバトルで強敵に出会えれば文句無し。どうせいつものように集中的に狙われるだろうから、最後まで生き残れる可能性は限りなく低い。せいぜい派手に暴れて派手に散ってやろうじゃないか。
(負け戦を予感しつつも楽しみで仕方ないとはな。まぁいい。せいぜいマスターが明日も美味い物が食えるよう頑張ってやるとするか)
拙者、序盤から中盤にかけて主人公サイドのキャラを鍛えてくれた中堅ポジのキャラが終盤で実はメチャクチャ強いことが発覚するパターン大好き侍で候。
王道シナリオを走る現地主人公をお助けする転生者、というのも悪くないかもしれませんね。学園を舞台にするなら、主人公は後輩の新入生で決まりでしょう。