「お~、なかなかイメージ通りの仕上がりになってるじゃないの。やはり開幕はロマンだな……。結局一番活躍してるのがストライク・シールドなのは多人数戦だからしゃーないと考えよう」
「シールドと銘打っておきながらターゲットにぶつけるのはどうかと思うがな」
学園の屋上にて、タブレット端末で先日のサバイバル戦の動画を確認していたら相棒からごもっともなツッコミを受けてしまった。仕方ないじゃないか、原作でもそういう使い方してたんだもん。
こういう確認作業は大事である。製作したパーツがイメージ通りに機能しているかは、エンジョイ勢である俺にとって最も重要なことだ。もちろんバトルするからにはなるべく勝ちたいと思ってはいるが、そこを突き詰めようとすると“好きな装備”ではなく“使える装備”を吟味しなければならなくなる。
俺が求めているのは、相棒の零式がカッコよく戦っている姿なのだ。故に、勝ちのみに拘る必要はない。ロボット作品においては敗北もまた美しい一瞬である。
それはそれとしてBPは欲しいから真面目に戦うけどな。だって美味しいモノ食べたいし、なるべく出費は自分で賄いたいし。前世の記憶があるせいで、なかなか親の愛情に素直に甘えるのが恥ずかしいからね。しょうがないよね!
「そろそろ頃合いか。マスター」
「ん、ちょうどいい時間だ。動くとしよう」
◇◇◇
「おねーさん、かけ蕎麦ひとつ」
「あいよ」
この世界はFDバトルが社会的にかなりの地位を築いているためか、学園の授業は午前中で終わりである。昼休憩を終えた生徒は皆マスターとしての能力を高めるために、それぞれバトルの特訓をしたりパーツの研究に勤しんだりしている。
形式としては大学や専門学校の雰囲気に近いのかもしれない。なので、特に午後からの予定がない俺は時間をずらして悠々とお昼ごはんを楽しむことができる。
憧れの……学生食堂で、だ。
前世の高校では学生食堂がなく、進学してからは節約のために三食自炊が基本だったからなぁ~。バイト代は基本趣味に注ぎ込むこと優先してたからね。どうしようもないよね!
で、やっぱ学生食堂といえばかけ蕎麦じゃん? いや、BPには全然余裕があるんだけどさ、マンガとかアニメとかでも登場人物が安いかけ蕎麦食ってるシーンとかあるじゃん。異世界転生したんだもの、お気に入りのシーン再現したいじゃん。
ちなみに聞いた話だと、俺は“掛け蕎麦の人”で有名? らしい。相棒の零式の珍しさも込みで、それなりに目立っているのだろう。プラス評価でもマイナス評価でもない注目なら別に気にすることもあるめぇ。
◇◇◇
食事を済ませたらいよいよお楽しみの時間が始まる。学園全体がFDバトルのために存在しているだけあって、学園内にもTNS店舗が出店しておりパーツの購入が可能である。
そして、パーツの購入が可能ということは使わなくなったパーツが廃棄されるということでもある。購入してみたものの自分のスタイルには合わなかったり、世代交代で能力的に物足りなくなったパーツたちが山のように……というと大げさだが、とにかく大量にある。それは、装備を自作する俺にとっては宝の山も同然なワケで。
「おぉ……水菱ロボティクス製のFD『コーラルレイン』のパッケージ装備があるじゃないか。きっと奮発してまるごと買い換えたんだな、こいつはラッキーだ!」
「見ろマスター、こっちには第三世代のベーシック・ライフルがあるぞ。ほぼ新品同様だ、運がいいな!」
ちゃんとTNSのスタッフに許可を貰い、転売しないことの契約書にサインをして意気揚々と発掘作業を進める俺と零式。目の届く範囲で作業してくれたほうが都合がいいとのことで、店舗の隅っこを借りてダンボールを漁らせてもらっている。
たまにお客さんである学生たちがヒソヒソと何かを話しているが、正直そんなもん心底どうでもいい。これが1度目の人生だったら気になったり恥ずかしかったりしたかもしれないが、こちとら中身はお金の重みを知るオッサンの魂が入ってるんだ。
タダでッ!
合法的にッ!
使えるモノが手に入るッ!
ためらう理由なくない? だって無料だよ? 自分で自由にカスタムしてリサイクルし放題じゃん。魔術の概念がある世界だからパーツばらすのも簡単だし。
もちろん改造の手間も前世とはまるで比べ物にならないほど楽チンである。塗装の作業が10秒ほどで終わるとか、プラモデル好きには天国のような世界だ。換気も必要ないから冬でも快適に作業ができるとか反則かよ。
ま、直接嫌味を言われたこともあるけどね。生徒会長と友だちになったところ、副会長殿に無事目の敵にされてしまった。超弩級に生真面目な副会長にしてみれば、俺みたいなCランクマスターで旧式のFD使ってるようなヤツが会長と仲良しなのが気に入らないのだろう。
だからって大人しく従う理由ないけど。この学園ではFDバトルの結果が全て、実力主義の世界と言ってもいい。文句があるならバトルで俺に勝ってからにしろと言い返して終わりだ。学園内でのバトルはランクアップにそれほど影響しないので、俺も遠慮なく本気で戦えるからな。
日頃から伊達に多人数相手にボコられていないんだよコッチは。お行儀の良いバトルしかできない副会長さん相手にタイマンで負けるものかよ。
「どうしたマスター、手が止まっているぞ。もしかして明日の昼食を何にするか迷っているのか? なら、たまにかけ蕎麦以外の物を食べるのもいいと思うがな。かけうどんとか」
「なるほど、うどんね。普段と違うものを食べて気分を変えてみるワケか。言われてみればそれも悪くないかもしれん」
Cランクマスターらしく平凡な生徒として平凡な学生生活を楽しんでいる俺だが、たまにはいつもと違うことをして気分転換してもバチは当たらんべさ。
これでいい。これぐらいが面白いのだ。異世界の生活リズムに合わせつつ、前世の記憶を使って前世では出来なかったことに挑戦してみる。
最強なんか目指さなくってもいいじゃないか、本人が楽しけりゃそれで。ハーレムだのSランクだの求めなくてもこれだけ趣味に没頭できるんだ、人生に退屈することはないだろう。
さて、次はどんな装備を作って戦おうかな?
次回は作者の反省会的な内容を投稿して終わります。
言語化して出力しないと気付けないこともある不思議。何故か投稿ボタンを押してからじゃないとわからないこともあるんです。いや、ホントに。