今回からこの世界の『企業』についてイメージを構築する作業を進めていこうと思います。
その他、頂きましたアドバイスに関するアレコレは第二回連載会議にて。
「兄さん、大会に出ましょう! ホラこれ、赤城山製作所が主催の大会ですよ! 空閃シリーズの使い手として参加しないワケにはいきませんよね! というか兄さんが設計してた『プラズマステーク改』が完成したので派手にブチかますためにも是非出ましょうッ!!」
「朝から元気だなマイシスターよ。まだ五時半だぞキサマ。いや、いいけどね、早起きは三文の徳って言うからね。とりあえず着替えるから出ていきなさい」
あと妹よ、兄の黒歴史ノートを勝手に見るんじゃないよ。というか作ったのか。
◇◇◇
「……で、大会だっけ。え~となになに、タッグマッチ式のトーナメント戦ね。なに、俺とお前で組んで出るの? いつものクラスの友だちはどうしたよ。ホラあの子、狩場さんだっけ」
「千夜ちゃんは銀星くんと一緒に出るからダメですよ。銀星くんは女の子にモテモテですから、こういうときにライバルに差をつけないといけません。せめて小学生の恋から中学生の恋ぐらいにランクアップしてくれないと」
「友だち思いなんだろうけど微妙に手厳しいな。まぁいいや。そういうことなら俺も参加するよ。赤城山製作所の青木所長からは頂き物たくさんあるし」
登録の準備は全て終わっていて、あとは俺の了解を得るだけの状態だったのだろう。超スピードでタブレット端末を操作している我が妹はわかりやすくご満悦である。
赤城山製作所はFD関連企業のひとつで、俺の相棒である零式から始まる『空閃シリーズ』を開発している企業だ。
俺が零式をパートナーにしている影響なのか妹も空閃シリーズを好んで使用しており、いまは『陸式・桜花』というFDと一緒にバトルを楽しんでいる。
空閃シリーズはある程度バランスを大切にしつつ、防御力よりも機動性にやや偏った調整がされているFDだ。あくまで機動性であって速度ではない、ってのが赤城山製作所のこだわりなんだそうな。
最高速度に優れたFD同士のバトルはなかなか見ごたえがあるし盛り上がるが、それはバトルに慣れたマスター同士だから成り立つもの。初心者が速度や加速力の強すぎるFDを迂闊に使おうものなら、たとえ魔力に余裕があっても1戦しただけで目を回すことになるだろう。
バランスよく適度にスピーディーな素体は駆け出しマスターにも制御しやすく、あらゆる方向への切り返しに優れ空中戦を得意とすることから回避型の戦闘スタイルを好むベテランマスターからも愛されている。いわゆる“とりあえず迷ったらコレ選んどけばいいよ”と言われるタイプのFD、それが空閃シリーズなワケだ。
そう、バランスの良さである。
バランスが良いのである。
そんなバランスの良さに定評のある空閃シリーズのFDを格闘武器だけで装備を固めるおバカが目の前にいる我が妹なのである。
ソード系を中心に、キャパシティの許す限り格闘武器を満載するのが妹の戦闘スタイルだ。せめて投擲カテゴリーの武器くらい使えよと思うのだが、妹的にはリロードできるシステムが気に入らないらしい。投げた武器が勝手に手元に戻ってくるのは美学に反すると真顔で言われたらお兄ちゃん黙るしかないじゃない。
どうしてそうなった? 頭エクシアかよ。いや、エクシアは一応ビームライフル装備してるからせっちゃんに失礼だったな。なに、相棒の名前が桜花だから接近戦闘大好きっ子になっちゃたの? いきなり「これが私の命の色ォォォォッ!!」なんて叫び出す妹とか怖いんだけど。
俺の妹がリアル系パイロットなのに使える精神コマンドが鉄壁と不屈とド根性な件について。プレイヤー困っちゃうよ、敵の命中率が27%とか残って「なんで集中覚えねーんだよコイツ……」てなるヤツだよ。
「はぁ……いったいなんの影響を受けてこんな偏った戦闘スタイルになっちまったんだ……。ん? 零式に桜花、どうかしたのか?」
「なに、兄妹が仲睦まじいのは良いことだと思ってな。実に微笑ましいことだ。なぁ?」
「うんうん、このアニキにしてこの妹あり、って感じ? アタシ的には楽しくバトルできりゃ装備なんてマスターの好みでかまわないし」
「お、おう?」
◇◇◇
清楚系鎌倉武士の妹をサポートするなら、俺はいつも通りカスタムしたパッケージ装備でいいだろう。タッグマッチだし敵に止めを刺す役目は妹に任せて、いかに戦場をコントロールするかを考えて立ち回ればいい。多人数を相手にする機会は多いからそこは問題ない。
気になるのは妹の友人たち、特に銀星くんの相棒であるFDがなかなかの曲者らしいということだ。最新型FDの試作素体で、妹が言うには基礎性能はもちろんパッケージ装備も優秀なんだとか。
ひとりのマスターとしては純粋に戦ってみたいという気持ちはある。だが、今回ばかりは初手から本気で勝ちを狙わせてもらうつもりだ。何故なら──。
今回の大会、優勝商品がなんと『味付けジンギスカン10キロセット』だからだッ!!
そう、男には……絶対に負けられない戦いがある。北海道エリアの名店とコラボしたこの大会、ほかの参加者には悪いが──存分に蹂躙させてもらうぞ。
妹を格闘スタイル沼に沈めてみたものの、こうなるともうひとり妹を追加して射撃スタイル沼に沈めてみたくなるでござる。もちろんキメ台詞は「狙い撃つぜ!」にて候。
細かい設定を後回しにしているのは意図的なものです。新しいアイディアや頂いたアドバイスを組み込むための遊びがなくなってしまうので。
だから、あえて無視する必要があったんですね。
虐殺の女神、誤字報告されたらどうしようと思ってたのはナイショの話。