キレコークの風の魔法がザナ・ホロワに直撃する。
まさか命中するとは思っていなかったので驚いたが、魔法の衝撃によってできた砂埃が晴れた時、なぜザナ・ホロワが攻撃を避けなかったのか、その理由がわかった。
無傷。
ザナ・ホロワにとって、キレコークの魔法など、避けるのにも値しないのだ。
しかし、時間は稼げた。
キレコークが先行して魔法をぶつけたことにより、足の遅いロックタートルが最前線に出ることができた。
防御力の高さが売りのロックタートル。
そのロックタートルを盾にして、他の3体で攻撃を仕掛ける。
キレコークの風魔法が上空から降り注ぎ、スイテンの水ブレスが炸裂する。
フェべルートがその2つの攻撃が着弾した直後に襲いかかる。
速さと物理攻撃力に優れたフェべルートが、白い恐竜目掛けて飛びかかる。
そのフェべルートに、四方からきた恐竜が襲って瞬殺される。
その直後、羽ばたいていたキレコークが地面に墜落する。
まるで、何かに叩きつけられたかのような勢いで。
そのまま地面に激しく衝突し、不快な音を立てながら、地面にめり込んでいく。
何が起きているというのか。
キレコークはそのまま見えぬ何かに押しつぶされてしまう。
その間にもスイテンは水ブレスを放ち続けている。
が、ザナ・ホロワはそれを全く意に介さない。
ゆっくりとスイテンに向き直り、風魔法を放った。
驚く私の視界に、風魔法でブレスを吹き飛ばされ、逆にやられてしまうスイテンの姿が写る。
残るはロックタートルのみ。
しかし、ロックトータルは四方からきた恐竜に殺される。
早くこの場から逃げたい。
しかし、部隊を率いるものとして、部下よりも先に逃げ出すことはできない。
部下たちは召喚獣がその身を犠牲にして稼いでくれたわずかな時間で、撤退を開始していた。
しかし、遅い。
正気を失いかけていたロナント様を一発殴って強引に正気に戻し、大規模転移魔法にて部隊ごと撤退する準備を進めてはいる。
それでも、部隊が全員転移の範囲内にまで下がるには、まだ時間がかかる。
その間わずか数秒。
その数秒で、悪夢は起きる。
土と風の魔法が乱れ飛ぶ。
適当に撃っているように見えるのに、それらは一撃ごとに兵士たちの命を散らしていく。
突如倒れる兵士もいる。
兵士たちは一瞬すら耐えることもできず、次々と倒れていく。
転移魔法の準備をするロナント様に向けて、魔法が飛んでくる。
私はMPが切れることも覚悟し、再び魔物を召喚し、ロナント様の身代わりにする。
何度も撃ち出される魔法。そして襲ってくる恐竜。
その度に私は魔物を召喚する。
MPを回復させる回復薬を飲む。
飲みながら召喚。
徐々に回復するMP。
しかし、回復量よりも、消費量の方が多い。
魔法が来る、召喚、恐竜が来る、召喚。
それを繰り返すうちに、ついに手持ちの召喚獣が尽きる。
それでも魔法は止まらない。
それどころか、最初よりも明らかに飛んでくる魔法と恐竜の数が多い。
何故だと周りを見回せば、この場で生き残っているのは私とロナント様だけだった。
「ロナント様」
「致し方ない。儂らだけでも帰還するぞ」
「はい」
ロナント様が転移魔法を発動させようとして、すぐ目の前まで小型の恐竜がせまってくる。
「ロナント様!」
「クッ!?」
小型の恐竜が襲ってくる。
そして私の腹を切り裂く。
痛い。ものすごく痛い。だがロナント様は守らなければ!!
ロナント様が苦悶の表情を浮かべながら、転移を発動させる。
視界が歪む。
思わず目を閉じ、開くと、そこはさっきまでいた迷宮の中ではなかった。
目の前の人が驚き、硬直する。
「誰か、回復の使えるものを」
ロナント様が苦痛に顔を歪めながら、その場にいた人に語りかける。
すぐさまあたりが騒がしくなる。
ロナント様が、私に対して回復魔法をかける。
「腹が切り裂かれておるが、これでよく生きているもんじゃ」
「ごふっ」
何か言おうと思ったが、口から出たのは血だった
肉体が少しずつ回復していく。
HPも危険域から脱出した。
自分の傷を放置して私の治療を施していたロナント様にも、回復魔法が使えるものが駆けつけ、治療を施していく。
ホッと息をつき、脱力する。
多大な犠牲が出たが、私たちは生き残った。
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(あーあ。逃がしちゃった)
(まあまあ。しかし人間経験値おいしいね)
(ねー。さてマイホームの修復でもしますか)
(うん。頑張ろう)