視点無し。
「…ねえ、あの人2年生だよね。なんで1年の階に?」
「え、ヤバ、目合っちゃった。どうしよ、カツアゲ?」
「いやよく見て、細身だし眼鏡かけてるし、多分そういう感じじゃ…」
「急にごめんね。ちょっといい?」
「うわ、声良」
「え?」
「すみません。なんですか?」
「あ、うん。ちょっと人を探してるんだけど…」
「あづ〜〜〜〜い」
「気持ちはわかるけどさ〜、はしたないよ星川。そんな足ガン開きにしてさ〜」
「山神、うるさい。窓側向いてるし、誰も見てないでしょ」
「もー…」
「星川ー、山神ー。あんたらにお客さんだよ」
「ん?やま達に?」
「何?今星川こうやって暑さを…って」
「どーも」
「黛センパイ!?」
「しばらく練習中止?」
「うん。もうすぐテストがあるから監督も少し忙しくなるらしくて、俺達もそれに備えて勉強しろだって」
「なるほど、やま達としても助かりますそれ」
「そういうことちゃんと言うんですね。あの監督のことだから「甲子園あんだからテスト休んで練習!」くらい言うと思ってたんですけど」
「俺も去年そう思ってたんだけどね…まあそんな感じ。これを他の1年生達にも伝えといてほしいんだけど、お願いできる?」
「はーい」
「分かりました!伝えときます!」
「ありがとう。…あと、星川」
「はい?」
「これは余計なお世話かもしれないんだけど…」
「え?黛センパイに限って余計なことなんて…」
「暑いのはわかるけど…あんまり人前でああいうことはしない方がいいよ」
「本っっっ当に余計なお世話ですね!!!!!」
「えー…ってことで、始まりました」
「期末試験勉強会」
「よかったの?ボク達も呼んでもらって」
「いいのいいの。勉強ついでに仲良くなれたらな、なんてね」
「そーだよー。クラスも違うし話す機会が部活くらいだからね。もっといっぱい話そー」
「てかアルバーン君日本語上手くない?ルカ先輩よりペラペラじゃん」
「ははっ、ありがとう。こっちで暮らすってなって困ることが多かったから、いっぱい勉強したんだ」
「ファルガー君とボンニ君は喋るの苦手っぽいけど、リスニングは全然いけてるよね。やっぱ発音って難しいのかな」
「ンー…発音もダケド、いい言葉を選ぶのが難しくテね…」
「オレも…」
「なんか困ったことがあったら言ってね?有栖達が教えられることだったら教えるし」
「助かるよ。そのカワリにじゃないケド、英語はオレたちに任せて」
「!助かる〜!!!」
「頼もしい教師が3人もいます」
「あー、先輩達も今勉強してるのかな〜」
「うち、ここちゃんから聞いたよ〜。2年生は黛さんのとこでやるって言ってた〜」
「そうなんだ、やま達も学校じゃなくて誰かの家に集まってやるのもよかったかもねー」
「確かに、星川とかプティとか寮生だしそれでも全然…てか待って?プティって天宮センパイのことここちゃんって呼んでんの?センパイだよ?」
「え?でもここちゃんでいいよって言ってもらったし」
「私達の部活全然上下関係厳しくないし、先輩が許してるならまあ…いいんじゃない?」
「…ま、確かに。センパイがいいならいいか…」
「先輩も監督も特に呼び方とか気にしてなさそうだよね」
「有栖、監督から物述さんとか物述氏とか呼ばれ方ころころ変わるんだけど…」
「あの人本当に適当だから気にしなくていいんじゃないかな…」
「サラちゃんもここちゃんとかちーちゃんって呼ぶ?」
「呼ばない」
「へー、有栖ちゃんとサラちゃんもスカウトされて来たんだ」
「そうだよー。むしろぷてちゃんがスカウトだったのは意外だったかも」
「えへへー。うち実は野球上手いんだよね」
「県大会でもいっぱい活躍してたもんね。スカウトされるのもわかるよ」
「みんなは?どうして神速に?」
「ボクはルカが絶賛してたから、「野球するならココがいい!」ってね」
「ファルガーとオレもルカがここにいるの知ってて、それならアルバーンも来ると思ってて勉強したんだ」
「ボボンは黛先輩の大ファンなんだ。ルカ経由でそれを伝えたら飛び上がっちゃって」
「おいアルバーン、恥ずかしいだろ…」
「ボンニ君マジ?星川も黛センパイのこと好きだよ!」
「ホント!?マユズミセンパイは中学のトキからフワさんとサエグサさんの二遊間コンビとで「メッシャーズ」って呼ばれてて」
「ごめんごめんごめんちょっと熱量の差あるかもしんない」
「やまは特に理由とかなくて…あ、制服可愛かったから」
「え?神速って結構偏差値高かったはずなんだけど…」
「昔からなんでもソツなくこなす子って言われてきたんだよね。ほら、やま顔も可愛いでしょ?」
「何がほらなのかわかんないけどうるさい」
「でもよくそこから野球部選んだよね…」
「うーん、確かに。なんで野球部選んだんだっけ…」
「え?理由ないから辞めるとかないよね?」
「サード居なくなっちゃうから辞められると神速的にはめちゃめちゃ困るんだけど…」
「理由とか細かいことはいいよ〜。楽しくできるならなんでもよくない?」
「いっつも緩いなあぷてちゃんは」
「うちは楽しめればそれでいいからね〜」
「あははは。やまも辞める気ないよ。野球するの楽しいからね」
「ちょっと勉強から離れるんだけど、ルカ先輩がよく言ってる「POG!」って何?たまに監督も使ってるけど」
「あーそれ、うちも気になってた」
「有栖それ気になって調べたよ。POGは「Play of the Game」の略称で、「今のはすごいプレイだ!」みたいな時に使うって書いてあった」
「あー…まあ、それもあるんたけど⋯」
「あれ?もしかして違う感じ?」
「うーん…元は"PogChamp"って絵文字で、PogChampはメンコのチャンピオンを指す言葉だったんだよ」
「えなんかめっちゃ日本語っぽいワード出てきた、メンコって面子?」
「うん。それでそのチャンピオンが驚いた顔をしてる絵文字がネットのミームとしてバズって、PogChampが驚きを表す言葉になって、最終的にその意味を持ったままPOGだけが残ったんだ」
「そうなんだ⋯え?じゃあ有栖ちゃんが調べて出てきたのは?そっちは風説ってこと?」
「ううん、FPSの大会とかだとそっちのスラングもあるんだ。今だとPlay of the Gameの方を使う人が多いから、調べたらそっちで出てきちゃったんだと思う。意味もそんなに変わらないし」
「へえ〜、そうだったんだ。語源は違うけどどっちもポジティブな意味なんだね。ありがとねアルバーン君」
「まあルカのはそこから更に派生して…もう「すごい!」とか「ホントに!?」くらいの感覚で使ってるよ」
「もしルカが「POG!」って言ってタラ、喜んデるか褒めてるんダって思えばイイよ」
「なるほど…ってラトナプティ寝てるって!」
「!なんだなんだぁ〜?」
「ぷてちゃん、今寝てたの?」
「うち?寝てないよ。聞いてた聞いてた」
「サラちゃん、ぷてちゃん寝てないって言ってるよ」
「いや今全然目瞑って…いいや、勉強しよ」
「テスト開けたら甲子園だよ、甲子園」
「ソウだね。マサカこんな早く行けるなんて思ってなかったヨ」
「でも先輩達におんぶにだっこだよ。有栖達がもっと頑張らないと」
「準決勝とかやばかったよね、うちら最後まで苦しい試合だったもん」
「いいなあ、星川とボンニ君は出番ないもん。私達もセンパイの役に立ちたいよねー」
「そうだね…キャッチャーにはチヒロセンパイがいて、内野外野にもミンナがいるから、オレは代打とか代走として頑張ろうカナって思ってるよ」
「ええ〜!?「チームのために」ってこと!?その自己犠牲の精神は偉すぎるよボボン君〜」
「ははっ、せめて献身的って言ってくれよ。それにそんな大層なモノじゃないサ。オレも試合に出たいだけダヨ」
「もしかしてやま、ボボン君より日本語知らない?」
「…うん。結構いい時間だし、そろそろ切り上げよっか」
「はー、疲れた〜!部活以外でこんなに残ったの初めてかも!」
「今日はありがとう。色々教えてもらえて助かったよ」
「いやいやいや!星川達も超助かったから!またやろ!」
「とりあえずテスト!それで8月になったら甲子園!」
「先輩達に任せっきりにならないためにも、頑張らないと」
「テストも頑張って!練習も甲子園も気合い入れてこ〜!」
「「おー!」」