シンソク 〜栄冠の軌跡〜   作:元灰オタク

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第16話です。これは神速2年目の秋大会の話。

視点かなり変わります。感じて下さい。


〜じゃ、いただきにいきますか〜

 

「ふー……よし」

 

「もうOK?まゆゆ」

 

「うん、おまたせ」

 

「大丈夫。監督、いつでもいけるよ〜」

 

「よーし。じゃあ全員注目。あんま時間ねえからパッと済ますぞ」

 

神宮大会。1年生にとって2度目の、神速高校としては通算4度目となる大会。

 

今は1回戦開始直前のミーティング。それぞれが準備を整え、最終確認を行う。

 

「1人で気負うな、1人で背負うな、チームだってことを忘れんな。攻撃も守備も、お前らの力を合わせればやれる」

 

静かな控え室に優しく響く監督の鼓舞に、私達も強く頷いた。

 

「大丈夫だな?そんじゃあ…行ってこい!!!」

 

「「はい!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

『県大会』

 

 

「また盗塁…!?今度は3盗だぞ!」

 

「速すぎて送球が間に合わない!少しでも意識から外したら盗塁される!」

 

「ハッ!こちとら毎日走り込みしてんだよ!走力野球舐めんな!」

 

 

豊後高校 評価C  0-5

 

 

 

 

「誰かが塁に出ればバンドとスクイズで着実に1点を積み上げられる。これが"走力野球"の機動破壊、監督が目指してきたスモールベースボールの理想系」

 

「それに加えて強打者のルカや星川から大量得点も可能。堅実な采配の裏には試合を決定付ける一撃必殺の剣が控えてる」

 

 

佐伯高校 評価C  0-6

 

 

 

 

『地区大会』

 

 

「ほぼライン沿いの打球だぞ…なんであれがアウトになる!?」

 

「外野のスピードがヤバい!長打でも上に飛んだら全部アウトになると思った方がいい!」

 

「鍛えた走力は攻撃だけじゃない、本当に輝くのは事実上の守備範囲の拡張」

 

「他のチームじゃ後一歩届かない打球だって黒井クン達なら追いつける。うちの外野の強いところだよねえ」

 

 

平戸高校 評価B  2-1

 

 

 

 

「だからっテ、内野が弱いわけじゃナイ」

 

「内野陣は全員1年だけどファーストとセカンドは中学で全国を経験してきた逸材。サードは経験こそ無いけどルカに次ぐ天性の才」

 

「そんで要のショートにはルカ。そう易々と突破できるもんじゃねえぞうちの布陣は!!!」

 

 

日向高校 評価C  4-1

 

 

 

 

 

 

 

神宮大会は県2回戦、地区2回戦を勝ち抜けて全国大会に出場できる。そしてこの全国の出場で、春の甲子園への出場権も手に入れることができた。

 

「⋯なんか、怖いくらい調子よく来ましたね」

 

「あまみゃ達も強くなったってことなのかな?ねえ監督」

 

「まあ実際悪くねえ。試合の展開も大体優勢、特に失点を抑えられてるのがデカいな」

 

ここまでの4戦、県大会でも地区大会でも失点は全試合1点以下。攻守盤石。今まで散々鍛えてきた走力の強みが遺憾無く発揮されていた。

 

「だがまあ、1番の要因は…」

 

「全国常連校と当たらなかったこと、でしょ」

 

監督が言いかけた言葉をまゆゆが遮って続ける。そう、ここまで当たってきた高校はどこも超格上ってわけじゃなかった。全国出場を果たせはしたけど積み上げられた勝利に運の要素は否定できない。

 

それでも…

 

 

「…それでも、全国か」

 

 

1年の頃は1度も来れなかったこの舞台にやっぱり頬が緩んでしまう。あまみゃの口から漏れ出た言葉を、監督も止めはしなかった。

 

「とりあえず、ここまでは最高って言える出来だ。だからってお前ら────」

 

「わかってる。油断も慢心もしない、でしょ?」

 

「普段から散々言われてるんですから、大丈夫ですよ」

 

「おう、しっかり勝ってこい」

 

 

 

 

 

 

 

『全国大会2回戦』

 

俺達はシードで1回戦はパス。噛み合うバッテリー、俊足を活かした攻撃と守備。全国の初戦も常に優勢に進んだ。

 

ただ…

 

「8-2か…まずいな…」

 

「え?すごく順調に見えますケド…何か良くないことガ?」

 

「まあなぁ…よし、ボン!伝令だ!」

 

 

 

 

 

「ま、黛センパイ!天宮センパイ!監督カラの伝令です!」

 

「え?私?うん」

 

「今結構点差あると思うけど…監督はなんだって?」

 

「えっと…それが…」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 

『神速高校、黛灰に代わって、ピッチャー、天宮こころ』

 

相手校の選手も監督も、観客も、そしてヴァンパイア達も。会場全体がどよめく。

 

 

 

「…なんで天宮クン?ピッチャーなんてやらせたこと無かったよね?」

 

「ん?ああ、7点以上差がつくと試合が終わっちまうからな」

 

「は?」

 

「やっぱ少しでも経験を積ませてぇからな、コールド勝ちだけは回避しなきゃなんねえ。あと絵面がおもしれえ」

 

「今やってるの神宮大会なんだけど?」

 

 

 

 

 

「無理無理無理無理無理無理無理無理」

 

当然天宮は震えている。野手に投手を任せるなんて普通ならまずありえないことだ。

 

しかもその指示がコールド回避のための四球。それも全国大会で。正気の沙汰ではない。

 

「あまみゃ野手だよ?神宮大会だよ?観客もいっぱいいるんだよ?」

 

「天宮〜頑張れよ〜」

 

わずかな期待を込めてベンチの方を向くが指示を出した当の本人は気楽そうにグーサイン。天宮の必死の訴えは聞こえていないのか聞く気がないのか、全く反応する素振りを見せない。

 

「天宮、諦めて。あの監督に作戦変更の意思はないよ」

 

「うう…おかしいよこんなこと…」

 

 

 

 

 

「こい!どんな球でも打ってやる!!!」

 

まだ負けてないと気合いを入れる相手の打者とは裏腹に、天宮の心は諦めの極地にいた。

 

天宮が投げた球はストライクゾーンをギリギリ通っ───

 

 

 

るなんてことはなく、誰が見ても確実にストライクにはならない敬遠球となった。

 

「…は?」

 

「まさかこいつら…コールド回避を…?」

 

「なめやがって…!!!」

 

当然といえば当然、対戦校の選手の顔が怒りに染まる。しかし向こうとしてもノーリスクで出塁どころか点が入るともなれば、わざわざボールになる球を打ちに来ることもない。

 

私は観客の冷めきった視線をグラウンドの中心で受けながらボールを投げ続けてコールドを回避し、その後は元の守備位置に戻りまゆゆが試合を締めた。

 

「監督…もう二度とこんなことやらせないで…」

 

「ははっ、わりーわりー」

 

結局、私の必死の訴えが監督に届くことはなかった。

 

 

国分寺義塾高校 評価C  8-3

 

 

 

 

 

『全国大会 準決勝』

 

 

 

「これが夏に1回戦負けしたチームか⋯!?」

 

あの夏の甲子園初戦は甲子園常連どころか評価Sの優勝候補。そんな最強レベルの高校を相手最終回で3-4というところまで善戦できていた。

 

「いつまで投げる気だ!?もう8回だぞ…!」

 

そしてこの大会に向けて練習してきた2ヶ月。黛が、チームが、更なる成長を遂げている。今更こいつらが評価C相手に苦戦なんてしねえ。

 

「黛、合宿の時に言ってたろ?「俺は他の人より何倍も努力する必要がある」って」

 

「言ってたねぇ。うん。ヴァンパイア達に言わせれば「何言ってんの?」って感じだったけど」

 

「あいつは自分を過小評価してる。こんな大舞台に立ってここまで抑えてんのに、ほんっとわかんねえやつだよなぁ」

 

「黛クンのことだから「星川クンがリードしてくれるから〜」とか「みんながカバーしてくれてるから〜」とか言うんじゃない?」

 

「うっわ、言いそ〜。言います、言ってましたこれ」

 

試合を応援しながらザレンさんと談笑。それほどまでに、この試合の展開に余裕があった。

 

「…前はあんなこと言ってたのになあ。あいつ」

 

 

 

 

 

『俺は…この世代の投手として、凡才以下だ』

 

 

 

 

 

…あれから1年と数ヶ月。本当に強くなった。

 

俺がエースとか向いてないとかやめた方がいいとか言ってたよな?黛ぃ。

 

かつてルカのワンマンなんて言われてたこのチームが今ここまで来れているのは…ルカのおかげだけじゃねえ。それはここまでの失点を見れば明らかだ。

 

もう下を向くな。お前はド真ん中で胸張って、堂々と前だけ向いてりゃいい。

 

 

『またも三振!神速、この回もしっかりと抑えます!』

 

 

「とっくにエースだよ、お前は」

 

 

根室高校 評価C  2-8

 

 

 

 

 

 

 

『神宮大会決勝』

 

対戦校は 評価はC。ついにここまで評価S、それどころか評価Aの高校にすら当たらずに来た。甲子園に住まう魔物の仕業か、神速を守護する神の御加護か。なんにせよ、ここが優勝する最大のチャンス。

 

「ようやくだ!てっぺん!取ってこい!!!」

 

「「はい!!!」」

 

 

 

 

 

相手だって並み居る強豪を倒して決勝まで勝ち上がってきた強豪…だけど、それでも試合は常に優勢だった。勝つ度に締める兜の緒が、みんなの力を強くした。ジャイアントキリングを起こす側だったはずの私達が、まさか全国の決勝で一方的な試合をするなんて想像もしてなかった。

 

9回表と試合も大詰め、相手チームとの点差は8-0まで広がった。決勝だからコールドにはならないけど、この点差が返されることなんてそうそうない。余程のことがなければこのまま優勝が決まるほどの点差。

 

神速は強くなったって、もう去年とは違うんだって、この大会を見ている全ての人に伝えられたんじゃないかな。なんて。

 

「さん…おい!ちーさん!」

 

 

「へ?」

 

ハッと横を向くと監督が私に呼びかけていた。

 

『さあ神速高校。ここで守備を変えてくるようです』

 

「しっかりしろよ。夢の神宮決勝だぞ」

 

「あはは、ごめんごめん。それで指示は?代打代走…はないか。ブルベン?伝令?なんでも任せてよ」

 

「ははっ、頼もしいな。じゃあ…」

 

 

 

 

『神速高校、星川サラに変わって、キャッチャー、勇気ちひろ』

 

 

 

 

「もうちょっとだけ、頑張ってもらおっかな」

 

「え?」

 

 

 

思わずアナウンスに振り返る。代打や代走ではなく、キャッチャーとしての交代。グラウンドを見るとサラちゃんがキャッチャーボックスを出てこっちに向かってきてる。

 

 

 

「どういうつもり?監督」

 

動揺を隠せない私に対して監督は少し笑いながら、でも真剣な声色で告げた。

 

 

 

 

 

「見せてくれよ。神速高校、始まりのバッテリーってやつを」

 

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

ほんと、この監督にはいっつも振り回される。

 

 

 

「…はあ〜、仕方ない監督だなあ」

 

おもむろに溜息を吐きながらそう言って、グラウンドに向かった。

 

「…」

 

 

***

 

 

「ちーさんをキャッチャーとして出してほしい?」

 

「はい。お願いします」

 

「…駄目だ。キャッチャーはこのまま、お前のままでいく」

 

「全部じゃなくてもいいんです!1回だけでも!お願いします!」

 

「…大体、そこまでちーさんをキャッチャーにしたい理由はなんだ?この大会でも代打、代走としてなら全然出てただろ」

 

「黛センパイとちひろセンパイのバッテリー、ちゃんと区切りがついてません」

 

「⋯!」

 

「星川が正捕手になってからもちひろセンパイはいつでもキャッチャーの代役ができるようにって練習していました。技術の心配はないはずです」

 

 

***

 

 

「…知ってるよ。ずっと見てきたからな」

 

 

本当に未来を見据えるなら、ここも星川さんに捕手をさせるべきだった。

 

投手だって黛に完投させずに、ザレンさんやファルガーに経験を積ませるべきだった。

 

それでもここでキャッチャーとしてちーさんを出すのは、リリーフを出さずに黛を完投させるのは、

 

 

 

「はー…やっぱ甘いな、俺」

 

 

 

 

 

 

 

「ちひろセンパイ!後はお願いします!」

 

「ありがとうサラちゃん。任せてよ」

 

サラちゃんと交代してグラウンドに出る。試合中になんてそうそうないキャッチャーの交代、それも全国決勝の最終回で。スタンドを見なくたって観客の視線がちひろに向いているのが分かる。

 

 

「おかえり、ちひろ」

 

「ただいま、まゆゆ。思ったより早いバッテリー復活だったね」

 

「ふふっ、確かに」

 

呼吸は絶え絶え、額も袖も見てわかるほど汗で濡れていて、パッと見ただけで伝わる疲労具合。それでもまゆゆは、私に柔らかい笑みを浮かべてくれる。

 

「まゆゆ、バッテリー交代の時に言ってくれた言葉、覚えてる?」

 

「うん」

 

 

 

 

 

『…わかった。俺は、星川とバッテリーを組む』

 

『ほんと!?よかっ『でも』

 

『ちひろは「もう」なんて言ったけど…俺はちひろとバッテリーを組んで弱かったなんて、足手まといだなんて思ったことは1度もないよ。ちひろさえよければ、いつだって2人でバッテリーを組みたいと思ってる』

 

『…うん。ありがとう、まゆゆ』

 

 

 

 

 

「あの時、ああ言ってくれて本当に嬉しかった」

 

「…うん」

 

「最後くらい、綺麗に締めくくろっか。私達のバッテリーをさ」

 

「うん。じゃあサインの前に…一応聞いておこうかな。作戦は?」

 

「そりゃあ勿論、このチームが1番活きるやつ」

 

 

 

「打たせてとる」でしょ。

 

 

 

 

 

 

 

扇状にあるグラウンドの1番端っこ、ホームベースより更に後ろにあるキャッチャーボックス。ここが私の出発点。

 

 

気づけばボロボロになっていたこの手に、もう何回紐を直したかも分からないミットをはめ直す。この手の傷も、壊れそうなミットも、全部がちひろの努力の証で、みんなと戦ってきた栄冠への軌跡。

 

 

 

改めて正面を向いてミットを構え、大きく大きく息を吸う。

 

 

 

久々に座ると、最初に監督に言われたことを思い出す。

 

 

 

 

 

『キャッチャーのメリット?』

 

『ああ、これからキャッチャーをやってもらうちーさんには最初にいっちばん大事なことを教えておく。キャッチャーってポジションにはなあ、他のポジションじゃ味わえない最高のメリットがあんだよ』

 

『へえ⋯まあめちゃめちゃ言いたそうだし一応聞いてあげるよ。どんなメリットがあるの?』

 

『そういう時は余計なこと言わねえで黙って聞くんだよ…まあいい。それのメリットってのはな⋯』

 

 

 

 

 

「みんな!ここもしっかり抑えて!勝つよ!!!」

 

 

 

「「おおっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

『よく見えるんだよ、仲間の顔が』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちひろセンパイのこと、出してくれたんですね」

 

ちひろセンパイと交代してベンチに戻ってきた星川。タオルで汗を拭きながら監督の横に座る。

 

「は?お前が頼んだんだろーが」

 

「だって監督、最後までちひろセンパイを出すって言ってくれなかったじゃないですか」

 

「当たり前だろ、ようやく来た全国の決勝だぞ?あんなお願いでホイホイ出すわけねえだろーが」

 

「準々決勝で天宮センパイに投球させといて何を…」

 

コールド回避したいなんて理由であの舞台に天宮センパイをマウンドに立たせた人から出る言葉じゃないでしょ。聞きたいことから離れないよう呆れて出そうになる溜息を消して監督に問う。

 

「じゃあ、今ちひろセンパイを出したのにはちゃんとした理由があるってことですよね?」

 

「は?そりゃあお前⋯はぁ…」

 

星川の問いにいつもみたいに流れで返ってくるかと思いきや途中から言葉に詰まり、しまいには大きく溜息をついた。

 

 

 

「…俺だ、俺が見たかった。あいつらのバッテリーを。ちーさんに黛を胴上げしてほしかった。そんだけだ」

 

「⋯ふっ」

 

「ふざけた笑い方すんな、言いたいことがあんならハッキリ言え」

 

「いやいやいや、全然文句とかありませんよ。ただ⋯」

 

 

 

 

 

「星川も大概だと思うんですけど、監督も黛センパイとちひろセンパイのこと大好きですよね」

 

「うるせえぞ」

 

 

 

 

 

監督がグラウンドに向き直したのを見て、星川も横でグラウンドを見る。

 

 

マウンドの上に立っているのはチームのエースで、色んなところで星川を支えてくれた大好きなセンパイ。

 

 

そしてそのバッテリーの相手は神速に来る理由をくれた、私が初めて憧れた人。誰よりも尊敬してて、誰よりも大好きな、私の輝く一番星。

 

 

それはまるで宝石のような、輝かしい碧をその瞳に宿すセンパイ達。この甲子園決勝っていう晴れ舞台で、バッターすら霞むほどの視線を集める最高のバッテリー。

 

 

 

 

 

…ああ。

 

 

 

 

 

 

 

星川は、星川はこれが見たかったんです。

 

 

 

 

 

 

 

「⋯っ⋯私⋯神速に来てよかったなぁ⋯!」

 

「⋯なーに下向いてんだ!まだ終わってねえぞ!しっかり前見とけ!」

 

「⋯はい!」

 

 

 

 

 

 

 

サラちゃんにはもう劣るけど、それでもちひろにだって意地がある。9回と2アウト。監督にも後輩にもここまでお膳立てしてもらって、かっこ悪いとこは見せられない。

 

まずはサークルチェンジ。ここまで散々ストライクとスライダーを脳裏に植え付けてきた。まずは振らせずにストライク。

 

 

まゆゆの投球はストレートとスライダーの二本柱だけど、別に球種がないわけじゃない。お次はカーブを空振らせて2球で追い込む。

 

 

2アウトになった相手へ空振りを狙った低めのストレート、しかしこれは見切られたのかボールになる。

 

 

再度低めのストレート、バッターの渾身の振りが当たるも打ちどころは悪い。ショートゴロとなったそのボールをルカが捕って有栖ちゃんに投げ、しっかりとアウトを取った。

 

そして…

 

 

 

 

 

『この瞬間!王者が決定しました!!!』

 

 

 

 

 

 

 

『秋の神宮全国大会!優勝は!!!神速高校です!!!!!』

 

 

 

 

 

会場のアナウンスから流されるのは私達の高校の名。大音量で響くその音が一層。私達の心を昂らせた。

 

「やったあああぁぁぁ!!!」

 

「うおおおおおお!!!」

 

「POOOOOG!!!」

 

みんなが声を上げ、勝利の喜びを噛み締める。

 

「まゆゆ!」

 

「ちひろ、ナイスリー…っと」

 

呼吸を整えながらマウンドを降りたまゆゆにマスクを外して抱きつく。

 

 

 

「ほんと、ありがとね」

 

 

 

 

内野も外野も、ベンチからも、部員達全員がまゆゆを中心に集まって来た。

 

「やったねまゆゆ!優勝だよ優勝!」

 

「ほらまゆ先輩!胴上げ胴上げ!」

 

「ほら、カイ!いくよ!」

 

「え?ちょっと、まっ」

 

 

 

 

「っっ〜〜〜!!!よっっっしゃあぁぁぁぁ!!!!!」

 

監督が立ち上がり、拳を上に突き上げて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「全国!優勝だあぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年目、秋。予選から決勝まで終始安定した試合を見せての全国優勝。

 

 

 

いくつもの挫折を超えた先で、ようやく手にした栄光の冠。神速はこの年を通し公式戦13戦12勝という輝かしい成績を残して─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後に語り継がれる、神速高校無敗伝説の幕開けとなる。

 

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