シンソク 〜栄冠の軌跡〜   作:元灰オタク

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第17話です。これは秋の大会後の話。

天宮こころ視点。


〜テンションは低く。志は高く〜

 

『さあ春の甲子園決勝戦。現在の状況は9回裏2アウト。神速高校、追い詰められました』

 

「天宮センパイ!!!」

 

「こころん!お願い!!!」

 

「3点差で満塁…一打逆転もあるんだ…!頼む!天宮ぁ!!!」

 

「任せて!…みゃ!!!!!」

 

『天宮打ちました!打球は悠々とフェンスを超えて行き満塁ホームラーン!!』

 

 

 

『春の甲子園!優勝は─────』

 

 

 

 

 

「…はっ」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、起きたのこころ。おはよう」

 

「おはよぉ…うーん…何かすごい良い夢を見てた気がするんだけど…」

 

「あら、縁起がいいじゃない。どうせならもう少しだけ早く起きれたらよかったのに」

 

「なんで?早く起きていいことなんて…あっ」

 

「目は覚めた?それじゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

「あけましておめでとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は大晦日…じゃない、正月。昨日のあまみゃは年越しそばを食べて寝ちゃってたみたい。年明けの瞬間迎えることも初日の出を見ることもなく私の1年は始まった。まだ完全には開かない目を擦りながらのそのそと移動し、スマホへと手を伸ばす。

 

『あけおめ!』

 

『あけましておめでと〜』

 

『今年もよろしくお願いします!』

 

電源を付けると通知にはクラスメイトや中学の頃の友達、色んな人達からあけおめのメッセージが届いている。勿論そこには野球部のグループのアイコンもあった。

 

部員達のメッセージに混ざって絶対にそんな顔しないでしょって感じの元気なスタンプを送るまゆゆ。『あけお』しか打ってないから多分眠気が限界だったぷてち。なんでか『POG!』なルカ。

 

あまみゃも何か打っておこうかな。暖房の付いた床に転がりながらどんな文を送ろうか頭を動かす。

 

 

「…あっ!」

 

 

思い立ったがなんとやら。私は意気揚々とトークに打ち込んだ。

 

 

 

『あけましておめでと〜!急なんだけどさ、みんな今日空いてない?初詣行こうよ!』

 

 

 

 

 

 

 

「あけましておめでとうございます!」

 

「うん、おめでとう。今年もよろしく」

 

学校から2つほど離れた駅の神社にみんなで集まる。急なお誘いだったのに思ってたより人が来てくれた。

 

「有栖ちゃんは先約があって行けないって言ってましたね」

 

「ルカとアルバーンは家族ト過ごすらしいデス」

 

「キャプテンから悲しそうなスタンプ来てたけど…犬だからね…」

 

「ギルるんはパス。今日は家から出たくない気分なんだって」

 

「そっか。あとは…プティは?」

 

「一応電話したんですけど、多分まだ寝てます」

 

勿論色んな理由で来れなかった人もいる。先約があった人、家族と過ごしたい人、マイペースな人。…そもそも来れない犬。ごめんねキャプテン。来年は犬が入ってもいい神社探そうね。

 

「まあ大体集まったかな。じゃあとりあえず、御参りでも行こうか」

 

「そうですね」

 

 

 

 

 

「あっ。すみません」

 

「流石に人が多いですね。はぐれないようにしないと」

 

正月だけあってすごい人混みだ。右に行くにも左に行くにも人の壁ができあがっている。そこまで大きな神社ではなかったと思うけど、この辺りにここより大きい神社がないから初詣に行く人が集まってるのかな。

 

「見失ったら探すの大変だし気をつけてね。ちひろは特に」

 

「なにおう!そんな意地悪なこと言うならもうまゆゆの腕しがみついてるもんね!」

 

「近い近い」

 

まゆゆとちーちゃん、身長差が40cm近くあるこの2人が並ぶとまるで小学生と高校生の兄妹みたいに見える。高校生2人の距離感にしては近い気もするけど周りの人は全然気にしてないし、本当にそんな感じだと思われてるのかも。

 

「あっ」

 

ちょっとまずいこれ。変なことを考えながら人の流れに身を任せていたら人と人に挟まれ押され、自分でも今どこに向かっているのか分からなくなるくらい流されてしまった。

 

みんなもそんなに遠くには離れてないだろうし、とりあえずこの人の波から出ないと。参拝客をかき分けてどうにか人が密集していない所に出る。

 

「ふぅ…あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

『ごめ〜ん、はぐれちゃった〜 (;;) 』

 

「…まあ、これでいっか」

 

安息の地を求めて人混みを脱し、気づけば周りに神速のみんなの姿はなかった。キョロキョロと辺りを見渡すも見つかるはずもなく、みんなに周りの情報とメッセージだけ送って大人しく誰かが来てくれるのを待つ。あまみゃもう高2なのに…

 

少し離れたベンチに座って参拝客の方を見る。家族連れや外国人、学生のカップルなんかもいる。

 

今は遊んでる時間なんて全然ないけど、もし他の部活に入ってたら、他の学校に行ってたらもっと毎日遊んだり、なんなら彼氏とかできてたのかな?なんて考えてみたり。

 

「あれ、天宮じゃん」

 

「ほんとじゃん。あけおめ〜」

 

「お、みんなも来てたんだ。あけおめ〜」

 

そんなことを考えていたらクラスの仲良しグループがあまみゃの方に歩いてきた。やっぱりうちの学校から初詣に行くならこの神社になるのかな。軽く手を振るみんなにあまみゃも振り返す。

 

「こんなとこで座って、どうした?」

 

「いやね?今日野球部のみんなと来てたんだけどさあ〜…」

 

「あーなるほど。はぐれちゃったのね」

 

「うっ」

 

それは事実なんだけど人に言われるとやっぱりちょっと恥ずかしい。

 

「今いる場所は伝えたの?なんなら一緒に探そっか?」

 

「いや、野球部ってことは黛とか勇気さんも来てるんだろ?あいつらが一緒なら…」

 

「天宮、ここにいたんだ」

 

「まゆゆ〜」

 

噂をすればなんとやら。まゆゆがはぐれた私のことを見つけてくれた。

 

「よっ、黛。あけおめ」

 

「まゆゆおけおめ〜」

 

「みんなも来てたんだ。あけましておめでとう」

 

「いや〜。何度見ても凄いよね。2人が全国制覇した野球部の一員だなんて」

 

「全然野球やってそうな体格じゃないのにな。黛なんてエースピッチャーだろ?」

 

「なんでかね。神速のエース、やらせてもらってるよ」

 

全国制覇から約1ヶ月。校内は勿論、この辺りに住んでる人なら知らない人はいないくらい神速野球部は有名になった。学校には『甲子園優勝!』なんて書いてある大きな垂れ幕が飾られてるし、優勝してから最近まで学校のヒーローくらいの扱いを受けてた。

 

「知ってるぞ、"魔術師"だろ?魔術よりメカニック系な感じなのになお前」

 

「それは俺が一番思ってるよ。呼ばれるのも…まあ、悪い気はしないけど小っ恥ずかしくはあるよね」

 

この前見た高校野球の記事にはまゆゆは"豊の国の魔術師"なんて大層な二つ名も付けられていた。優秀な選手には付けられるらしい称号みたいなもので、世界に飛び出たルカに続いてこの部活から2人目の快挙。あんまりパッとしない感じの見た目をしてるまゆゆだけど、この件から一躍有名人になっていた。

 

「あ、ちょっと。これカラオケの予約時間ギリギリじゃない?」

 

「マジ?じゃあそろそろ行くか。またな黛、天宮」

 

「うん。また学校で」

 

「…あ、お前らー!」

 

「何〜?」

 

「春も頑張れよー!応援してるー!」

 

「!ありがと〜!」

 

私達へのエールを残してそのグループは神社の出口に向かって行った。

 

「…まあ、春の甲子園は3月だからまだまだ先なんだけどね」

 

「あははは…でも応援してるって言ってくれるのが嬉しいよね」

 

「うん。…俺もちょっと休憩しようかな、横いい?」

 

「うん」

 

あまみゃが座っているベンチの隣にまゆゆが腰を下ろす。

 

「ふぅ…そういえば、俺達が参拝した時にはもう天宮のこと確認できなかったけど…参拝はできた?」

 

「ううん。人の流れから出たら列から外れちゃって、まだできてないよ」

 

「なら後で並び直すか。天宮だけやってないっていうのもね」

 

「ごめんね、ありがとお。まゆゆはどんなことお祈りしたの?」

 

「健康祈願」

 

「それはまたなんて言うか…まゆゆらしいね?」

 

「そういう天宮はどんなお祈りするつもりなの?」

 

「うーん…じゃあ、"春の甲子園も優勝できますように"とか?」

 

「いいんじゃない?」

 

まゆゆと出会ってからもうすぐ2年。無言でも気まずくないくらいには仲良くなれたと思う。無理に会話をするでもなく、まるで話さないわけでもなく、お互いのペースでゆっくりと。みんなと楽しくお喋りするのも好きだけどこういう穏やかな時間の過ごし方も悪くない。

 

「今更だし、変な捉え方はしないでほしいんだけど」

 

「うん?」

 

まゆゆの言葉に耳を傾ける。

 

「俺、正直天宮は途中で辞めちゃうんじゃないかって思ってた」

 

「あはははっ、やっぱり?それあまみゃが1番思ってたしね」

 

「なんでか天宮にキツかったよなー、あの人」

 

監督に本当に倒れるまで走らされて、散々無茶なこと言われて。入部したての頃はもしかして私虐められてる…?って思ったことだってあった。

 

「実際辞めようって思ってたよ。それも1度や2度じゃない、数え切れないくらいいーっぱい」

 

辛い練習に、飛んでくる檄に、自分の磨り減った靴を見る度に、何度も足を止めたくなった。

 

「でも今こうやって野球を続けてるのは、まゆゆのおかげかもね」

 

「俺?」

 

「1年目の夏の大会さ、準優勝だったじゃん」

 

正直県大会の決勝で負けた時、私の中では上出来だと思える結果だった。始動からたった3ヶ月で甲子園に手が届きそうなレベルのチームなんだって。

 

みんなにも少なからず、喜びの表情が出てた。まだ始まったばっかりだし、神速はここからだって顔。実際私もそうだと思った。

 

でも、試合が終わった後のまゆゆの顔は、そういう感情がまるで見えなかった。

 

 

 

あの時まゆゆの顔から読み取れたのは、負けたっていう事実に対する悔しさと熱だけだった。

 

 

 

「妥協しない、今に満足しないまゆゆの姿勢を見てさ、あまみゃももっと頑張らないとって思ったんだよ」

 

「そっか…ごめん」

 

「なんでそこでごめんかなぁ…」

 

おかげって言ったのに…自分の都合の悪いとこしか聞いてないんじゃないかなまゆゆ。全国優勝したら少しくらい自分を肯定してくれると思ってたけど全然そんなことなかった。

 

「天宮はさ、完全試合って見たことある?」

 

「…?ううん、見たことないよ」

 

完全試合。先発で出たピッチャーが最後まで四球も死球もしないでノーヒットノーランで投げ切って勝つこと。長い野球の歴史の中でも数える程しか達成されていない偉業の中の偉業。

 

「俺も動画で見ただけなんだけど…それを見てからずっと思ってたことがある」

 

 

 

 

 

「野球は、究極的に言えば"ピッチャーが最強なら勝てるゲーム"なんだって」

 

 

 

 

 

「本当に俺に才能があったなら、今みたいにみんなに頼らずに、もっと苦労をかけない野球ができたはずなんだ」

 

「…」

 

「だから、ごめん。俺が弱いせいで、沢山苦労をかけた」

 

そう言って頭を下げるまゆゆを見ると、夏の合宿を思い出させる。ここで「卑下するの止めてって言ったでしょ!」って言ってもいいけど、多分そんなことを言ったってまゆゆの心の中は変わらず自分を否定し続ける。

 

だから…私がここでかける言葉は、そうじゃないよね。

 

 

 

「…じゃあ、まゆゆが完璧じゃなくてよかったかもね」

 

「…なんで?」

 

さっぱり意味が分からなそうな顔をしてこっちを見るまゆゆ。だってさあ。

 

 

 

「もしまゆゆが本当に完璧だったら、あまみゃ達要らなくなっちゃうよ」

 

 

 

「…!」

 

監督は合理的な人だから、きっと完全試合ができるような投手がいたら残りのメンバーには全員打力を鍛えさせると思う。

 

守備を鍛える必要がないのなら、多分スカウトするならもっと打撃に自信のある人。今の1年生達をスカウトしに行くこともなかった。

 

あまみゃだってモチベーションが上がるのが1つ減っちゃうし、本当にどこかで野球部を辞めてたかもしれない。

 

 

 

今このチームがある理由の1つには、完璧じゃないまゆゆがいたからっていうのもあるんじゃないかな。

 

 

 

「打たれたっていいんだよ。その代わりにさ、勝った時にはどれだけあまみゃ達が打ててなくても「私達も頑張ったよね!」って言わせてよ」

 

「…ありがとう、天宮」

 

「うん。…それにみんなが横にいてくれたからね!監督も褒めてくれたし!」

 

あまみゃが野球を続けてる理由はまゆゆだけじゃない。苦しい時にみんなが一緒に頑張ってくれてたのが、結果を出した時に監督がこれでもかってくらい褒めてくれたのが嬉しかった。これも私が野球を続けられてる理由の一つ。多分あまみゃは褒められて伸びるタイプ。

 

「嬉しいことがある度に、悔しいことがある度に、もうちょっとだけ続けよう。もうちょっとだけ頑張ろう。なんて、自分に言って奮い立たせて────」

 

 

 

 

 

「⋯気がついたら、こんなとこまで来ちゃったなぁ」

 

 

 

 

 

がむしゃらに走って、走って、走り続けて。ようやく顔を上げた時に視界に映ったのは頂上の景色。あれは私の人生で一番って胸を張って言えるような、本当に最高の光景だった。

 

「まだ、辞めたいって思ってる?」

 

「ううん。せっかくここまで来たんだし、このまま最後まで続けようかなって」

 

「そっか」

 

そういうまゆゆはちょっとだけ柔らかい笑みを浮かべてた。普段は無愛想だけどときたま見せるその優しい顔から、多分喜んでくれてるんだろうなって分かって少し嬉しい。

 

 

 

「⋯夏にさ、ちひろが部活辞めるか悩んでたのは知ってる?」

 

「え?あー...うん。多分、甲子園の後からだよね」

 

「うん。俺も確信はなかったんだけど、辞めるって言ってたことを監督が教えてくれたんだよね」

 

まゆゆも気づいてたらしい。誰もなんにも言わないけど、合宿の練習試合の時に流してた涙はそれが関係してるんじゃないかって思ってる。

 

「ちひろが悩んでるのを感じてて、何も言えなかった。どんな言葉をかけても、ちひろを追い詰めちゃうんじゃないかって思って」

 

「ちーちゃんは色々抱えこんじゃうからねー。悪いクセだよ」

 

慰めも、励ましも、直接伝えたってちーちゃんは「こころん達は優しいから」なんて言って真っ直ぐに受け取ってくれないと思う。

 

 

「まゆゆのこと言えないよねえ、ちーちゃんも」

 

 

やれやれ言いながらわざとらしく溜息を付く。

 

初めての大会の時には1番まゆゆのこと励ましてたのに、自分のことになったら全然おざなりになるんだから。自己犠牲...とは違うだろうけど、自分のことをまるで評価していない。

 

うちの部員はどうも、そんなタイプの人が多いっぽい。

 

「何で俺も?抱え込んだり思い詰めたりした覚えは無いけど」

 

「えー?嘘ばっかり。まゆゆはこのチームの抱え癖筆頭でしょ」

 

「ああ筆頭なんだ。俺」

 

あまみゃから見たらめちゃめちゃ抱え込むタイプだよ。まゆゆ自身はなんでか不服そうだけど。私がその意見を変えそうにないのを感じたのか諦めたような顔になる。

 

 

 

「…だから、監督がちひろを引き止めてくれて本当によかった」

 

 

 

「うん」

 

まゆゆはきっと、ちーちゃんの口から辞めるって聞いても引き止めはしない。悲しんだりはすると思うけど「ちひろの人生だから」とか言うんじゃないかな。ちーちゃんが悩んで考えた末に出した答えに口を挟むことは無いと思う。

 

 

監督はまゆゆとは全然違うタイプ。頭の中で色々と考えるけど自分の思ってることはしっかり伝える。多分その心の内をそのまま伝えて、それがちーちゃんの心に響いたんだと思う。

 

 

 

 

 

「みんな大切な仲間。誰も欠けないで、最後まで一緒にいたいね」

 

神速野球部が始まってからみんなで頑張ってきた2年生も、覚悟を決めて入部してくれて一緒に優勝を掴んだ1年生のみんなも。一生モノの関係になれるかはまだ分からないけど、少なくともあまみゃ達が卒業するまでは誰にも辞めてほしくない。ここのみんなで、1つのチームでいたい。

 

「…そう、だね。本当に…」

 

 

 

 

 

 

 

「…まゆゆ?」

 

 

 

 

 

 

 

「…天宮、俺は───」

 

 

 

 

 

 

 

「あー!こんな所にいた!見つけましたよ天宮センパイ!」

 

横から大きな声を上げてサラちゃんがすっ飛んできた。

 

「黛センパイも!見つけてたなら電話でもメールでも何かして下さいよ!」

 

「いやーごめん。俺もちょっと疲れちゃって」

 

ぷくーっと顔を膨らませるサラちゃん。そういえばスマホ出してないし連絡してなかったねまゆゆ。

 

「もー。みんなで探してたんですから、早く行きましょ」

 

「うん。じゃあ行こうか」

 

まゆゆから差し出された手を掴んで、ベンチからグッと立ち上がる。

 

「まゆゆ、何か言いかけなかった?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

「そっか」

 

短い問答を繰り返して、サラちゃんの後を追う。

 

 

 

まゆゆがなんでもないって言うときは、きっとなんでもなくなんかない。

 

でもまゆゆが今じゃないって思ったのなら、それはきっと今じゃない。

 

 

 

「まゆゆ」

 

「なに?」

 

「私達、仲間だからね」

 

「勿論」

 

 

 

本当に大事なことは、いつか言ってくれるって信じてるから。

 

 

 

 

 

 

 

「みんなお待たせ〜」

 

「まゆゆ!こころん!見て見て!大吉!」

 

「いいじゃん。とりあえず出だしは好調だね」

 

サラちゃんに連れられてみんなと合流する。

 

「天宮がまだ御参りしてないから、もう1回行ってもいい?」

 

「ごめんね〜みんな〜」

 

「全然大丈夫ですよ。先輩はどんなことお祈りするんですか?」

 

「うん?"甲子園で優勝できますように"って!」

 

「え、神頼みなの???」

 

「…確かに」

 

ちーちゃんの恐ろしく鋭い指摘にまゆゆがクスッと笑った。ねえさっきは「いいんじゃない?」って言ってくれたじゃん!笑わないでよ!

 

「俺達、秋は運が良かったよね。それこそ、神様が手助けしてくれたんじゃないかってくらいには」

 

まゆゆの言葉にみんなも頷く。当時も思ってたけど、県大会から全国決勝までのどの対戦校も甲子園常連や優勝候補の学校じゃなかったのは、本当に奇跡に近かったと思う。

 

 

 

だから私達の本当の強さは、まだ世間に認められていない気がしてる。

 

 

 

「勝とう、春も。俺達の優勝がまぐれなんかじゃないって、次の大会で証明してやろう」

 

「「おー!」」

 

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