一話3000~4000文字目安、二日に一本ペースで更新……出来ればいいなあ。
初日は3話目まで投稿予定。
C0-1 わたしの"個性"
《―――ねえ》
声が、聞こえた。
《―――ねえったら》
気のせいだと、思った。
《―――そうじゃないよ》
あの時は、夢中だったから。
《―――そうじゃないったら》
目の前に浮かぶボールに。それを浮かばせられる"力"に。
《―――使うなら、ちゃんと使いなさいよ》
使えるようになったばかりの"個性"に、目を輝かせていて。
《―――仕方ないから、教えてあげる》
これで自分もヒーローになれると、喜んでいた幼いわたしは。
《―――"私"はこうやって使うのよ》
突然
わたしには、最高の相棒が居る。
《はい、もう一本。ダッシュダッシュ》
四歳になったあの日から、ずっと傍に居てくれて。
《はいはい、へばってないで動きなさい。そんなんでヒーローになれると思うの?》
誰よりも先頭で、わたしの夢を応援してくれていて。
《じゃ、次の問題。7373×1507。……おっそい。頭と体、同時に動かしなさい》
応援、して……
《ほら、足が上がらなくなってきたわよ》
応、援……
《ただでさえ小さいのに、駆けつけてゼエゼエ言ってるようなヒーローが頼りになると思うの?》
…………
《その程度の根性しかないなら諦めなさい。大人しく普通科受験するのね》
最高の、相棒です。
……本当だよ?
《……ねえ、本当に雄英受けるつもりなの? これで?》
……え、えーと……
《定員分かってるわよね? 推薦枠含め二クラス合わせて四十人。上位四十人よ?》
……は、はい。
《へえ? 筆記で百位以内も怪しいこの成績で? つまり実技一本でどうにかする気なのね?》
あ、いや、そういうわけじゃ……
《じゃあまさか
…………
《……ヒーローになりたいって言ったのは、誰だった?》
……わたし、です。
《涙が流れるより早く、
わたし、です!
あの日、お母様が流していた涙を。
あの時、ヴィランに奪われた笑顔を。
取り戻してくれた、あのヒーローのように!
《―――じゃ、やりましょうか。勉強》
あ、はい。
―――これはわたしが、おしゃべりな、ちょっと、かなり、だいぶ、耳に痛い"個性"と一緒に、最高のヒーローを目指す物語だ。
《ヒーローになりたいのは、あなたであって私じゃあないからね》
《まあ、応援だけは、してあげるわよ?》
《私は、あなたの……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
《―――もっと派手な"個性"の場合、どうするのかしら》
「……えっ? あっ!?」
不意に頭に響いた声に、乱れた集中力が結果となってゴトリと音を立てる。
《あらあら、もっと集中しなさいよ》
「ずっと黙ってたのに急に話しかけるからですよ!」
憤慨しながら、足元に転がったボールに右手を向けて。
軽く、軽く意識を向ければ、ボールはふわりと元の位置へ舞い戻る。
「……それで、急に何の話だったんですか?」
《ほら、公道で許可なく"個性"を使えば犯罪でしょ? 殆ど有名無実だけど》
「……そうですね」
《"私"みたいに地味な"個性"ならこうして自宅で訓練できるけど、火とか音とか出るような"個性"だと練習場所の確保も大変だろうなって》
返事を求めてるのか否かもふわふわした話題に、わたしの意識をさければ何でもよかったんだなと気付き、溜息を吐く。
今やっている"個性"の制御訓練には有効だと分かるから文句も言えない。
実際、予想外に話しかけられた程度で"個性"の制御を手放していたんじゃ冗談にもならないし。
「……っ」
気を取り直して、周囲に浮かべている
それぞれを異なる高さで、異なる方向に、異なる速度に振り幅で揺り動かす。
―――加速。
―――減速。
―――反転。
―――角度変更。
―――半周期ずらす。
―――ボール同士をぶつけて、軌道を修正……っ
「う、あっ……くぅ」
ズキンと刺す様な頭痛が始まったところで"個性"を解除。
ぼとぼととボールが床に落ちる音を聞きながら、頭をさする。
《んー……だいぶ許容量は上がってきたけどねえ》
「精密動作はもう十分じゃないですか? これ以上は
ズキズキと痛む頭を押さえながら、ここ数日続けていた鍛錬を思い起こす。
細かな、本当に細かな切り換えを矢継ぎ早に繰り返す個性操作は、練習としてはともかく
《物体を操る系"個性"のヒーローはもっと細かな動きを幾らでもやってるけど?》
「……それでも、もっと大雑把な操作を前提にしないとわたしの頭が保ちません」
わたしの主張に、頭の中で《うーん、そうねえ……》と悩む声が続く。
それを聞きつつ、偶然近くに転がってきたボールを一つ、手慰みに掴み上げた。
掴んだ手を開けば、ボールは万有引力の法則により床へと向かう。
その寸前のボールに向けて"個性"を使った。
(……【減速】)
ほんの僅か、床に向けて始まった加速が、鈍化、減速、そして宙に静止した。
伸ばしていた手をボールの下へと迂回させ、掬い上げるようにして放り投げる。
(【反射】)
壁に当たり、跳ね返ってきたボールに向けて、再び"個性"を使う。
わたしの腕の先、数センチのところでボールはその進行方向を変え、巻き戻しの如く描いてきた放物線を遡っていく。
(【加速】)
部屋の壁と、わたしの眼前。
二つの壁を往復し、徐々に高度と速度を落としていたボールが、再び加速した。
《……確かに、こういう使い方ならボールが百個になっても問題ないのよね》
「ええ、だからやっぱりこっちがわたしの本領だと思うんですよ、『干渉』」
減速、加速を時々切り替えて、リズミカルなボールのシャトルランを維持する。
諦めたように苦笑する声に向けて、わたしはにっこり笑って胸を張った。
《でもうるさいからそろそろ解除してね》
「あ、はい」
名前:
苗字の第一案は「干川」でしたが、主に群馬の辺りに実在する苗字らしく、「歩」も人名として普通にあり得るため同姓同名の読者の存在を危ぶみ改名。
「干河」性は軽く調べた範囲では非実在でした。
"個性"『干渉』
・範囲内にある物体、非物体を対象に選び、それらに働く力に干渉できる!
・基本操作は進行方向に正負の力を加える加減速と、力の向きを変化させる反射屈折の二種類!
・対象化の可能範囲は本人の周囲(現状で)半径二メートル圏内まで!
・解除条件は当人の意思、操作範囲(半径三十メートル)を越える、大きな状態変化のいずれか!
・生物か非生物、物体か非物体によって干渉できる力の絶対値が変化する!
絶対値が大きい順に、本人>非物体>物体(非生物)>生物となっているぞ!
・「加速度=力÷重さ」の物理法則に従うため、重過ぎるor速過ぎる対象物は動かせなかったり、止めきれなかったり、反射・屈折しきれなかったりするぞ!
・干渉対象に"個性"そのものを選ぶと……?
※アンケートは終了しました。(2022/12/16)