評価赤バー……だと……? @2022/10/31/7:00
確実に賛否両論くらうだろう設定だと思っていたのでぶったまげました。
オリキャラ二人(?)も現時点では読者に好かれるキャラにはならないように仕上げたつもりでしたので尚更です。
これは更新を早めざるを得ない。
安易に別キャラ視点や三人称を使いたくない系作者なのですが、今話はちょっと無理したかも。
「―――あれ? デクくん怪我!? 治してもらえへんかったの!?」
「あ、いや、これは僕の体力のアレで……それよりも―――」
迎えた放課後、未だ戦闘訓練の興奮冷めやまぬ中で誰かが為した呼びかけに、我も我もと続いたクラスメイト達による反省会が教室を舞台に開かれていた。
先に下校した轟さんに爆豪さん、そしてまだ保健室に送られたままのデクさんを除いた十七名で行われていたそれが盛り上がりを見せる中、何故かデクさんは固定された左腕に身体中に巻かれた包帯と、痛々しい姿で教室に戻って来る。
何人かのクラスメイトに話しかけられ応対しながらも、焦るように教室を見回していた彼の視線が止まったのは、わたしを正面に見据えた瞬間だった。
「干河さん! 今朝の話の件で、その……今からちょっと時間を貰えないかな?」
「……ああ、決心がつきました?」
「あ、それなら私も一緒に―――」
「へ? あ、ま、待って!」
わたしを探していた理由が分かり、お茶子ちゃんと一緒に教室を出ようとしたところで、殊更に焦った様子のデクさんがわたし達を呼び止めた。
そこから飛び出した予想外の一言に、わたし達はおろか教室中が凍り付くことになる。
「で、できれば、干河さんだけでお願いしたいというか……その……」
「……え?」
《おお?》
「へっ?」
振り返ったお茶子ちゃんは、幾つもの感情を煮詰めたような形容しがたい顔になっていた。
『干渉』すら頭の中で《え……おおう……》とよく分からない呻きを漏らすだけになっている。
「だ、駄目かな?」
「え、いえ、そんなことは……そ、それじゃあ、行ってきます?」
「い、いってらっしゃい?」
ただ、やけに真剣な輝きを宿すデクさんの目に、勢いのままわたしの口から出たのは了承で。
周囲のクラスメイト同様、白黒させた目のお茶子ちゃんにも見送られ。
ほっと安堵した様子のデクさんの背を追うように、わたしは教室を後にした。
「―――オイ、今のはどういう了見だ、緑谷コラアアァッ!?」
「何今の!? 何!? そういうこと!? そういうことなの!?」
「落ち着けあんたら!? 麗日の気持ち考えろ馬鹿共!!」
「あなたも落ち着いた方がいいわ、耳郎ちゃん」
「……友情崩壊の危機か」
……背後から聞こえる阿鼻叫喚からは、耳を背けて。
「―――人から授かった"個性"なんだ」
張り詰めた表情でそう語ったデクさんに、わたし達は一瞬息を忘れた。
"個性"を『譲渡する』"個性"。
人から人へと聖火の如く受け継がれ、培われてきた力の結晶。それが彼の"個性"の正体。
その蓄えられた力があまりに大きいために、中学三年生から急遽鍛え上げたデクさんの身体には収まりきらず、その結果使用するたびに骨折、という事態を引き起こしていると思われる。
「……爆豪さんが"無個性"云々と言っていたのはそういうことでしたか」
「う、うん……かっちゃんにはずっと"無個性"のデクって言われていじめられてきたから……」
"個性"の『先代所有者』曰く、使う力に強弱は付けられるはずなので、"個性"の制御法さえ身に付ければその惨状を避けられるようになるとのことだが、そもそもつい先日まで"無個性"であったデクさんにとっては"個性"制御という感覚自体が全く未知のもの。
それは例えるなら、両足をどのように動かせば歩けるか、を転ぶ=重症を負うという条件の中、何度も『転び』ながら成功するまで碌な当てもなく繰り返すようなもので。
「正直に言えば、干河さんの提案にすぐ縋り付きたいぐらいだったけど、この"個性"がどんな姿で出てくるかも分からないし、すぐに返事をするわけにはいかなくて……」
《慌てて関係者と相談していたというわけね》
「……今朝と昼、ひどく焦った様子だったのはそういうことだったんですね」
そんな中で舞い込んできたわたしの提案は、まさに降って湧いたような、それでいて安易に飛び付くには問題のあり過ぎる希望だったそうだ。
何しろどんな形でその"個性"の異常性がわたしに伝わるかが全く予測できない。
下手をすれば重大な秘密をも、わたしが
元来"個性"とは天から一人一人に与えられた"才能"にして"力"。
齢四歳にして、全ての人間に突き付けられる、己の価値。
それを後から手に入れる方法があるなど、噂になるだけでも社会の混乱を招きかねない。
《……確かに好んで知りたい秘密ではなかったし、無関係な一生徒が知っていい秘密でもないわ。それをつい今しがた、曲げて見せたのはどういう了見なのかしら?》
「えっと……それならどうして、わたしに?」
「それが―――」
続いてデクさんが話してくれたのは、先の『ヒーロー基礎学』で保健室へと搬送された後の事。
校医のリカバリーガールは件の"個性"や彼の状況についても把握していた人物の一人だそうで、ある程度は仕方ないと医者として苦々しく思いつつも黙認していたそうだが、二日連続三度目の、そして一度には治癒しきれない程の大怪我を見てついに大爆発。
その場にはデクさんの容体を案じて訪れた『先代』も居合わせたらしく、解決策が無いなら無いなりに"力"を渡した人間として考えることがあるだろうと、激しく叱責したそうだ。
恩人が自分のせいで責められている姿に、これまで以上の焦りを味わっていたデクさん。
そんな中、リカバリーガールの『解決策』という言葉に、彼の頭の中で響く声があったという。
『―――それで私も"個性"の欠点改善の糸口が見えてきたんよ』
『デクくんも頑張っとるんや! 私だってここで限界超えたるっ!』
『いうてもかなり難しいんやけど……方法が見つかったからには頑張らへんとな』
(滅茶苦茶お茶子ちゃんの言葉をリフレインしてる!?)
《私達どういう感情で聞いたらいいのよ、これ……》
「それでオール……『先代』には昼にも電話で伝えてたんだけど、今朝の話をリカバリーガールの前なのに口に出しちゃって……ごめん、秘密だって言われてたのに」
「え、ああ、それはまあ、良いですけど」
《…………もっととんでもない秘密を知っていたようだし、今更よね》
『干渉』から《隠し事に向いてなさすぎる……》と頭を抱えているような声が聞こえてきた。
どういう意味だろうと思いつつ、デクさんに「気にしていないから」と伝えて話の続きを促す。
「『先代』は昼に話した時と変わらず慎重に考えて……ていう意見だったんだけど、それを聞いたリカバリーガールが……大噴火したんだ」
「……大噴火」
《……先の大爆発以上だったと》
「今すぐ頭下げてでも協力してもらえって、凄い剣幕で……フォローしようにも僕の身体を第一に考えてくれてることに起因する怒りだったから……」
「……それはデクさんの立場じゃ何も言えませんね」
《採れる手段が無いからと渋々黙っていたところにそれは、まあそうなるわよ》
先を歩いていたデクさんが、一つの部屋の前で立ち止まる。
教室のそれほど大きくない扉に対してノックを一つ、部屋の中から小さな声が返ってきた。
「話の流れからして、『先代』の方ですか?」
「う、うん。雄英に職員として勤めている人なんだ」
《……職員》
部屋の中にあったのは、ソファーが二脚に机が一つ。
簡易な応接室らしきそこに、先の声の主だろう痩身の男性が一人、ソファーに腰掛けていた。
「やあ、初めましてだっ……じゃない、初めまして、干河さん。ここ雄英で職員をしてい……しております。八木俊典……デス!」
「は、はい、初めまして。干河歩です」
《…………》
細身、を越えて骸骨を想起しそうなほどの体型で、自己紹介と同時に口の端から血を垂らす姿に圧倒されながら、わたしは初対面の挨拶を返す。
『彼女』も流石に動揺しているのか、さっきから頭の中が妙に静かだ。
勧められるままわたしは対面に座り、デクさんは八木さんの隣に腰を下ろす。
僅かの沈黙を経て、後ろめたさを多分に含んだ様子で八木さんが口を開いた。
「……こちらの一方的な都合で、君には大変な秘密と、それを守る義務と責任までもを押し付けることになる。一生徒でしかない君に対してこれはあまりにも不誠実な行いだ」
「…………」
「だからこそ、伏してお願いしたい。……力を貸してくれ、干河歩さん」
「オ……八木、さん!?」
「っ……!」
ギリ、と歯を食いしばった八木さんが、机に両手を付けて頭を下げた。
どうしていいか分からず泳いだ視線が、同じような顔をしているのだろうデクさんと重なる。
その後、ようやく再起動した『干渉』に促され、「分かりましたから顔を上げてくださいっ!」とわたしが叫ぶまで、八木さんは微動だにせず頭を下げ続けていた。
《……彼らにとってそれだけのことなのよ》と呟いた『干渉』ほどには、わたしは彼の気持ちを理解しきれていないのだろうと思う。
「―――さて、事の前に確認したいのだが、君の"個性"による"個性"との対談というのは、外から聞けるようなものではないのだったね?」
「はい。わたしともう一人とが、手を繋いだまま眠っているように見えるそうです」
「すると、夢の中で会話しているようなものなのか……ふむ」
目をつぶって「では、やはりあれは……」と、八木さんが口の中で呟く。
傍らのデクさんに二言三言確認した後で、彼は自分の記憶を確かめるように言葉を紡いだ。
「……私もまた『譲渡』された者であり、突然得た"力"を使いこなすべく努力を重ねていた時期があるわけだが、そんな中で見たことがあるんだ……"個性"の中に佇む幾つかの人影を」
「っ、それは……!」
「"個性"に染み付いた面影のようなもの。互いに干渉できるようなものじゃない……今まではそう認識していたよ。だが、君の話を聞いて違う可能性が頭に浮かんでね」
「……会話できるほどの『強さ』には届いていない『意志』」
"個性"そのものへの『干渉』により、"個性"それぞれが持つ微弱な『意志』を呼び起こす。
わたし達の考えた理屈が正しければにはなるけれど、【
人から人へと、幾つもの旅をしてきた特別な"個性"。
そんな『彼』あるいは『彼女』ならば、【加速】されるまでもなく人型を作る……そんなことも有り得るのかもしれない。
《……いや、待ちなさい。『幾つかの』人影ということは……》
「……あれ、ひょっとしてデクさんの中……何人も居らっしゃる?」
「えっ」
「ああ、うん。私が想像したのもそういう光景だよ」
『四者面談』どころではない光景を想像して、思わずデクさんと顔を見合わせる。
ただし、八木さんが気にしている点は他にもあるようで。
「他の例を聞くに、その人影は"個性"の『意思』のはず。だとすればこれまでの継承者の"個性"がこの身にあってもおかしくないことになるが、そのような経験はしていないんだ」
「……そう、なんですね」
「ああ、だから……そうだな。願望になるようだが、彼らは"個性"に宿った継承者達それぞれの、培ってきた"想い"が"力"として記憶されている……そう、思わずにはいられないんだ」
「あ……」
《ああ、気にしているのは、そういう……》
デクさんにとって八木さんが恩人であるように、彼にとっての『先代』もまた大恩ある人だったのだろう。
この様子と、五、六十代に見える彼の年齢からして、既に故人である可能性にも行き当たる。
「だからもし……もしこの予想が正しかったのなら、私に対して何と言っていたか、事が済んだ後で教えてもらえないだろうか」
「そのぐらいならお安い御用ですよ。ね、デクさん」
「う、うん。勿論です!」
では、と差し出したわたしの手に、デクさんが緊張の面持ちで火傷の残る右手を伸ばす。
心の中で『干渉』に合図しようかという直前、不意にわたしはあることが気になった。
「……そういえばこの『譲渡する』"個性"、名前は何と?」
「ああ…………そうだね。君には話しておこう」
これも無暗には口にしないでおくれ、と念押しして、八木さんはそれを教えてくれた。
「繋げられた想いの結晶。冠された名は―――『
この時点では追い詰められてるのはオールマイトだけで、他の事情知ってる勢はゆっくり後継育てたらいいんじゃ? という感覚だったと思います。
犯罪発生率を見れば『平和の象徴』を重要視するのは理解できるけど、人間である以上は永遠に立ち続けるのはそりゃ不可能だろう、と。
原作リカバリーガールも内心はともかく「あーはいはい、平和の象徴様」と流していますし。
何よりこの時点では『魔王』を倒した後だと思ってます。これが大きい。
実情はともかく「OFAを知る→AFOに目を付けられる」の構図を危惧する必要がないのです。
緑谷くんの憧れ追いかけて破滅まっしぐらな姿勢、及びそれを助長するオールマイトにブチギレ状態のリカバリーガールなら不義理を呑み込んででも協力を仰ぐよう叱責することでしょう。
OFAについても、変に喧伝でもしない限りは知ったところでほぼ無問題という認識。
オールマイトは滅茶苦茶問題だと思ってますし、ほんの少し未来には同意見になるんですが。
爆豪くんの察しフラグが一つ潰れましたが、彼ならきっと大丈夫でしょう。
代わりに『干渉』さんが色々察して内心修羅場。師弟揃って大根役者なのが悪い。