おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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 それは開演前の楽屋裏を無理矢理覗いたかのような。

 解釈違い激しく注意です。



C1-10 有識者会議

 

 ―――椅子に座るわたしと、隣に座る『干渉』。

 やけに大きな円卓の向こう、対面席に座っているデクさん。

 

 その席を挟むように展開された―――八脚の椅子。

 

 

「…………思ってたより多い!?」

「……もはや会議場ね」

 

 

 大量の―――主に好意的な―――視線を浴びて固まるデクさんの隣で、優し気な顔に強い意思を感じさせる男性が、柔らかな口調で口火を切る。

 

「まずはこの機会を一足飛びに与えてくれたことに感謝するよ。干河歩さん、『干渉』さん」

 

 居並ぶ八人の視線が、わたしと『彼女』へと注がれる。

 いずれも温度差はあれど、親しみの込もった視線であることに、心の底から安堵した。

 

 

「あらためて初めまして。僕が『ワン・フォー・オール』初代所有者だ」

 

 

 八木さんの願望に近かった推測は、概ね当たっていた。

 "個性"『OFA(ワン・フォー・オール)』はその歴代所有者の意識を宿してきていたというのだ。

 

 想定外だったのは、その意識がハッキリと輪郭を得るにはまだ遠いはずだったということで。

 漸く『兆し』が見えたかというところを、わたし達が一気に引っ張り上げてしまったらしく。

 

 

「―――そんじゃお先に……俺が『五代目』さぁ! 初めまして先輩方! よろしくな後輩達!」

「……そんな先輩から『譲渡』されました。『六代目』です。よろしく」

「ああ、そういう流れかい? どうも、『七代目』だ。先輩方」

「……『四代目』。奇矯な運命(さだめ)もあったものだ」

「…………」

「…………」

「…………そこの二人が、こちらから『二代目』と『三代目』だよ」

 

 

 最初に始まったのは、歴代所有者同士の自己紹介と情報共有だった。

 それぞれ自分より二代以上後の人物については半分一方的に知っていて、二代以上前の人物とは全くの初対面、というのが殆どだそう。

 

「……先輩、僕の記憶はあるんですか?」

「いやぁ、えらく断片的だな……『奴』に再戦を挑んだところは朧気にあるが……」

「……おそらくだが、強い意志を持って『OFA』を振るった瞬間ではないかな?」

「それにしては、ここ最近の記憶だけが随分と明瞭だが」

「それはやはり……『やり遂げた』ことが切っ掛けなんじゃないか?」

 

「それは……そうかもしれないね」

「思いっきりやってくれたからなぁ! 何度思い起こしても清々しくて堪らねえさぁ!」

「その話はそれくらいにしましょう。今はこの機会が用意された理由の方を優先しないと」

「それですけど……九代目についてみんな知ってることは同じなんですかね?」

「精神に身体が追いついていない子供という印象だが……この様子なら齟齬はないようだな」

 

 時折わたし達には理解できない話題があったものの、『九代目』こと現所有者であるデクさんに関する情報については、それぞれの間に差異はないということで一致したらしい。

 そこまで話を進めたところで、一同の視線が一瞬泳いだ後でとある席に向けられる。

 

「それで……『彼』はどういう状態なんだろうか?」

「……俊典、なんだよな?」

『……! ……!!』

 

 初代と七代目が困惑を滲ませて声を掛ける先は、『八代目』であるらしい八木さんの席。

 そこには他の七人とは明らかに毛色の違う、靄のように揺らぐシルエットが座っていた。

 

 七代目の声に反応して手振りと頷きを繰り返すものの、言葉を発することは出来ずにいる。

 しばらく無言のやり取りを続けた後、「何故……」という雰囲気で肩を落としてしまった。

 

「……八木くんは今も存命中だから、と思うしかなさそうだね」

「……後で、外で待ってる俊典への伝言を頼んでいいかい、お二人さん」

「は、はい、勿論です!」

「ええ、八木さんからも頼まれていますから」

 

 疑問は残りつつも、彼らにもわたし達にもどうしようもないので先送りとなった。

 

 

「―――てなわけで経緯は把握してるぜ。難儀させちまったなぁ、九代目!」

「え、あ、その……」

「僅か十ヶ月の鍛錬で急造した器に詰め込んだのがそもそもの間違いだろう」

「まあまあ、その期間で想定した限界以上に仕上げてみせたじゃないか、彼は」

 

「毎度骨肉を爆散させる様を評価するのは難しいが」

「爆散できるって時点で並みの精神じゃないですよ。二回目以降は臆するでしょう普通」

「常軌を逸した想いの強さ。……八木くんが君を選んだ理由がよく分かるよ」

 

 一目でただ者ではないと分かる方々に囲まれ、自分について激しく意見が交わされる様に、泡を食うしかない状態のデクさん。

 何度かこちらに助けを求めるような目が飛んでくるものの、わたし達の役割はこの舞台の成立で終わっているので、正直なところ何ともしようがない。

 

「一つ、質問を良いかしら?」

「おや、何かな?」

 

「今現在"個性"『OFA』の『動き』を【加速】させているわけだけど、他の"個性"に比べてやけに抵抗を感じるのよ。そちらに何か心当たりはあるかしら?」

「うーん……『OFA』が所有者の意思によってしか動かない、という原則を持っているからかな。九代目は勿論、我々もなるべく抵抗しないようにしているつもりなんだけど」

 

 ……どうして『干渉』は普通に会話に加われるんでしょうか。

 わたしは黙って座っているだけでも、この場の空気に当てられて身が竦む思いをしているのに。

 

「"異能"の意識を呼び起こす"異能"……いよいよそんなものが現れたか」

『OFA』(この光景)の特異性に比べれば大したものではないわ。それに私達の"干渉"がなくとも、いずれはこのような機会が訪れる兆しがあったのでしょう?」

「……もう一年は先になると思っていた」

 

 特にこの二代目、三代目という二人の圧力が半端なものじゃない。

 デクさんよりわたしや『干渉』に興味を持っているのではと思うほど、席も距離も近い。

 

「―――しっかし八代目はもうちょっと説明のしようがあっただろ。何だよケツの穴グッと閉めて叫べって、分かるかよそんなもんで。お前さんの教育のせいじゃないのか、七代目よう?」

「そう言わんでください、先輩。俊典の奴は出会った頃から身体だけは出来上がってたんですよ。あれがアイツなりの感覚なんでしょう」

「問題なのは、その説明を受けた九代目が腕と足を粉砕させたことへの受け止め方だ。力加減などより根本的な問題があることに気付けていない」

「ですね。器の問題だとしても、あの壊れ方はおかしいと気付いてもらわないと」

「……おっと、後でその辺り八木さんに伝えるためにも議事録取っておくわ」

「はは……本当に会議になってきたなあ」

 

 主に話題を進めているのは、五代目、六代目、七代目。

 そこに厳しい意見を入れる四代目と、様子を見つつ時折会話に加わる初代。

 ……そして伝えるべき内容をまとめ、都度確認をとる『干渉』。

 

 ふと気付いて八木さんの影を見ると、シルエットでも分かるぐらいに肩を落としていた。

 

「あの、八木さん? 大丈夫ですか?」

『……っ』

「ああ……大丈夫だ、八木君。ほら君も言ったじゃないか、突如尻尾が生えた人間に芸を見せてと言っても操ることすらままならない、と。今まで"無個性"だった人間に"個性"の使い方を教えるというのも同じようなものさ。苦労するのは仕方のないことだよ」

 

『……っ? ……!』

「ああ、僕も僕の時点では同じようなものだったからね。指導の難しさもある程度は分かるよ」

 

 初代に慰められて、顔を上げる八木さんの影。

 

「―――そもそも後継者を育てるというなら、それだけの時間を確保するべきだろう。ただでさえ今の容体で活動できる時間は短いというのに、他に割いているから半端になるのだ」

「教師免許を取ったのは八代目の指導者を真似たんだろうけどね。思えば彼も凄かったなあ」

「ああ、そういえば空彦は雄英で俊典の指導をする為だけにヒーロー免許を取ったんだったか」

「……そんな理由でヒーローになった人物が?」

「ヒーロー制度もまだまだ泥縄式だったからなぁ……形から入るのは悪いことじゃねえんだが」

 

 上がった顔と肩がストンと落ちた。

 初代も「はは……」と苦笑いをするばかり。フォローにも限度はあるらしい。

 

 

「そ、そうか。培われる力ということは、初代が"個性"を発現した時点ではまだ何も無い"個性"だったわけで、そう考えると初代も僕と同じようにある程度の年齢までは自他共に"無個性"だと思っていたことになるのか。あれ、でもそうなると、どんな経緯で『譲渡する』力が判明したんだろう? ひょっとして他人の"個性"について調べられるような"個性"の持ち主が当時居たのかな? それに『OFA』が今のような腕の一振りで天候を変えるほどのパワーを蓄えるに至ったのはいつからなんだろう。オールマイト以前にそんなことが出来たヒーローの話は聞かないし、やっぱりオールマイトの代でここまでになったのか……あれ、そういえばこの人達を過去のヒーロー名鑑でも見た覚えがないぞ。それぞれがどのぐらい昔の人達かも分からないし、僕も僕が生まれる前に居た地方のヒーローまで全部知っているわけじゃないから仕方ないかもしれないけど、よし、家に帰ったらこの人達がどんなヒーローだったのか早速調べて―――」

 

 

 そしてこのデクさんである。

 今朝も見たけれど、この無呼吸でブツブツ考え事を呟くのは彼の癖なんだろうか。

 ……というかこの場の誰よりも当事者なんだから会議に集中してください。

 

 

 

 

「―――おお、戻ってきたのか! お二人さん!」

「……あ、オール、んぐっ、八木さん!」

「ええ、お待たせしました、八木さん。……伝言です」

 

 

「『よくやったな、俊典』」

「っ!? ……お、お師匠……っ!」

 

「『僕達兄弟の因縁に付き合わせてしまってすまなかった。兄を止めてくれて、ありがとう』」

「兄……っ!? まさ、か……初代……!?」

 

 

「…………他の伝言については、後日文書にまとめてお渡ししますね」

「……っ、ああ……! ありがとう、干河さん……っ」

「干河さん……」

 

 

 

 

「……あの流れからでは流石に伝えられないですよね」

《後は歴代からの怒涛のダメ出しだものね》

 





 書きたかったシーンその二。
 原作において、三月下旬の死柄木inAFO戦直後のOFA内会議にて、四ヶ月程前から継承者同士でコミュニケーションをとれるようになった、という台詞があります。
 なので本作現時点では中の人同士も自分の前後以外は基本初対面。
 また原作初代の発言通り、今の自分達は歴代の意識がOFAに宿ったものだ、と微妙に勘違い中。
 そのためOFA内にある『八代目の意識』がどういう存在なのか分かっていません。
 七代目は残した家族が大変なことになってるなんて知りません。
 四代目も自分の正確な死因を知りません。
 それぞれの"個性"が九代目に発現する未来など考えてもいません。
 緑谷くんにOFAのオリジンが説明されるのも、もう少し先の話なので……
 無理矢理時期を早めたせいでてんやわんやですね。

 緑谷くんと歩ちゃんが対面席になることもあり原作とは席順が違います。
 原作の並びが「四、七、一、八、六、五、三?、二?」。
 本作では「四、七、八、一、九、六、五、三、二、干渉、歩」。

 原作で台詞の少ない方々も色々捏造して喋らせてみたところなかなかにカオスな空間に。
 割と雰囲気がゆるゆるな理由は、既に因縁は断ち切れた、と思っているから。
 それぞれ程度差はあれど、少なからず余生をEnjoyモードなのです。
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