おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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さあ、ヒロアカ二次最初の山場だ。



C1-12 USJ襲撃・前編

 

「―――今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった」

 

《……『なった』》

 

 

 ある日の午後の授業前。

 相澤先生の言葉に『干渉』の含むような呟きが聞こえた。

 

(……詳しく聞いてみますか?)

《…………いいえ、必要ない……というより生徒に教える理由がないのでしょうね》

 

 不思議に思って『彼女』に投げた問いの返しはこの言葉。

 この場で説明しないなら教師側の事情であって、生徒が知る意味はないだろうとのこと。

 そう言われては仕方がないので、黙って授業説明に耳を傾ける。

 

 主な内容は人命救助(レスキュー)訓練。

 コスチュームの着用は各自の判断に任される。

 訓練場が校舎から離れているため、移動にはバスを使う。

 

「―――以上、準備開始」

 

 相変わらずさらりと告げられる合図に、そろそろ慣れたクラス一同、弾かれた様に動き出す。

 各自のコスチュームを持って更衣室へ向かう面子に加わりながら、わたしはどこか普段と様子が違うような気がする『彼女』に首を傾げていた。

 

 

 

 

「―――私、思ったことを何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」

「あ!? ハイ!? 蛙吹さん!!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで―――あなたの"個性"、オールマイトに似てる」

「!!!」

 

《……わぁお》

(んー……確かに?)

 

 訓練場へと向かうバスの中、デクさんの隣に座った蛙吹さんが無表情のままにそう言った。

 言われて気付いたけど、彼が"個性"を十全に扱える身体になったなら、その力はオールマイトのそれにかなり近くなるのではないだろうか。

 

(……まあ、実際にはデクさんの"個性"は八木さんから『譲り受け』た……あの八人が培ってきた『力』なんですけどね)

《そ、そうね……》

 

(そう考えると、合わせて九人分の力に匹敵するオールマイトってやっぱり凄いですね)

《…………そうね》

 

「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトはケガしねえぞ。似て非なるアレだぜ」

 

 何故だか慌てた様子のデクさんと、何だか反応の悪い『干渉』を不思議に思うわたしを余所に、『硬化』の"個性"を持つ切島さんが会話に加わる。

 そこから話題は"個性"の強さと大衆受けする派手さに関してへと流れていった。

 

「わたしの"個性"は……あれ、活躍してもわたしがやったと分からない可能性あるのでは?」

「そういえば戦闘訓練のときも、最後まで核の傍に居るまま戦ってたもんね」

「現場から離れたところから戦えるって、凄いメリットなんだけどね……」

 

 今のプロヒーローは人気商売でもあり、功績を競い合う職業でもある。

 人前に姿を出さず、一見誰がやったか分からない功績の上げ方をするのは、職業ヒーローとして結構不味いような気がしてきた。

 

(……か、『干渉』、どうしよう……)

《知らないわよ。飯の種としてのヒーローなんてそれこそどうでもいいわ》

 

 何やら遠くから聞こえる爆豪さんの怒声を意識の端に流しながら、わたしは初めて直面した微妙に笑えない問題に頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

「―――水難、土砂災害、火事……etc. あらゆる事故や災害を想定し僕がつくった演習場です。その名も……ウソ(U)災害(S)事故(J)ルーム!!」

 

(《あ、ここかあ》)

 

 バスが着いた先は、以前施設情報で確認した『USJ』だった。

 そこで待っていたのは、宇宙服のようなコスチュームに身を包んだ、初めて見る先生。

 

「スペースヒーロー『13号』だ! 災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

 ……らしい。デクさん曰く。

 (ヴィラン)退治からは一線離れて活躍するヒーローのようなので、わたしが知らないのも仕方ない。

 

「わーー! 私好きなの、13号!」

 

 お茶子ちゃんが好きなヒーローということなので、きっと凄いヒーローなんだろう。

 《熱い手のひら返し》うるさいです。……今度、活動の記録を調べておかないと。

 

「えー、始める前に小言を一つ二つ……三つ……四つ……」

(《増える……》)

 

 おそらくクラス全員に同じ思いを抱かせただろう言葉を前置きに、13号先生は語り始める。

 

 曰く、自分の"個性"は万物を吸い込みチリに変える『ブラックホール』。

 これは簡単に人を殺せてしまう"力"である。

 今の社会は"個性"使用を法にて制限することで成り立っているように見えるが、一歩間違えれば容易に人命を奪える"いきすぎた個性"を個々が持っている。

 この授業は、そんな"力"を如何に人命救助に活用するかを学ぶものである。

 その"力"は人を傷つける為ではなく、人を(たす)ける為にあるのだと学んで欲しい。

 

 

「―――以上! ご静聴ありがとうございました」

「ステキー!」

「ブラボー!! ブラーボー!!」

 

(……人を傷つける……)

 

 演説を聞き終えて、盛り上がるクラスメイト達の横で少し考える。

 

(……もしわたしが、"個性"で他人を不当に傷付けようとしたら、『干渉』はどうする?)

《……止める、努力はするかしら。私が干河歩(あなた)であるように、干河歩(あなた)も私なのだから》

 

 その答えに少しほっとしたわたしに、『彼女』は咎めるように続ける。

 

《けれど私達は、一本の腕を二つの意思で持っているようなものよ。両方が別々の意図でその腕を振るったなら、もたらされる結果は私達にすら分からない。そんな博打を打つ機会を持ちたいとは思わないわね》

(あはは……そうですね)

 

 それは例えるならピアノの曲を手一つで二曲同時に弾こうとするようなもの。

 どちらの曲もまともな旋律になるはずがない。

 昔も昔、思い付きを実行しようとしたときの惨状が頭をよぎる。

 あの時は一気にデタラメな軌道と速度になったボールが部屋中を飛び回って―――

 

 

「―――ひとかたまりになって動くな!!」

 

 

 …………え?

 

 

 

 

 ―――施設内中央の噴水付き広場に、突如現れ、広がった黒い靄。

 そこからまるで蟻のように、ゾロゾロと湧き出る大小の人影。

 

 先日は確かに働いたはずの、侵入者の存在を知らせる警報は沈黙を守る。

 それはこの事態が、周到に用意された(ヴィラン)の襲撃である何よりの証左で。

 

「―――13号! 任せたぞ」

 

 施設入り口に集まるわたし達生徒を守るため、諸々の指示を飛ばし終えた相澤先生―――プロヒーロー『イレイザーヘッド』は、敵の集まる広場へと突貫。

 その避難指示に従い、わたし達が背後の扉へ振り返ろうとしたそのとき、()()はやってきた。

 

 

「―――させませんよ」

 

 

 大量の敵を何処かから侵入させた、黒い靄。

 その正体は世にも珍しい"転移系個性"を持つ、顔と手足を靄で覆った一人の(ヴィラン)

 

「初めまして、我々は『(ヴィラン)連合』。せんえつながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは―――」

 

 飛び掛かった爆豪さんの『爆破』、切島さんの『硬化』させた腕刀を靄のような身体で透かし、嗤って、彼は言う。

 

 

 ―――平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。

 

 ―――まぁ……それとは関係なく……私の役目は、これ。

 

 

《靄を広げて……覆い尽くす気ね》

「お茶子ちゃん!!」

 

 

 ―――散らして

 

 

「歩ちゃん!?」

 

 

 ―――なぶり

 

 

「【掌握(スフィア)】!!」

 

 

 ―――殺す

 

 

 

 

 半径二メートル圏内。わたしの射程に入ったものほぼ全てを無差別に【反射】。

 物体なのか、身体の一部なのか、判定の分からない黒靄への賭けは、半分成功した。

 

「皆は!? 居るか!? 確認出来るか!?」

「……散り散りにはなっているが、この施設内に居る」

 

 クラスメイト二十人中、守りきれたのは()()

 偶々、わたしが優先して守ろうとしたお茶子ちゃんの傍に居た人間だけ。

 

「まさか私の『ゲート』を防げる生徒まで居るとは。まあ、最低限は送れたので構いませんが」

 

「物理攻撃無効でワープって……最悪の"個性"だぜ、おい!!」

「……音波も駄目。靄自体をどうにかできる"個性"じゃないとどっかに転移されるだけみたい」

「それでは安全圏はあの靄に対抗できる干河さんの周囲だけ……」

「無線も相変わらず通じねえし! これじゃ避難もできねえぞ!?」

 

 わたし達を囲う黒靄の中に、ぽっかりと開いた半径二メートルの球状空間。

 やがてその領域を侵せないと悟ったのか、敵は靄の先に光る眼を細めて黒靄を引っ込めた。

 

「……委員長! 君に託します。学校まで駆けてこの事を伝えて下さい」

「は!?」

 

 自分一人だけこの場を離れろと言われ、躊躇する飯田さんに、13号先生は言葉を重ねる。

 警報機を妨害する"個性"の持ち主が敵の中に紛れていること。

 敵もその"個性"の持ち主を要と捉え、どこかに隠しているだろうこと。

 故に、外にこの異常を伝えるには、それが最速最善の手段であること。

 

「そして干河さん。君はこれ以上散り散りにされないよう、皆を守ってあげてください」

「っ、はい!」

 

「救う為に、"個性"を使って下さい!!」

「食堂の時みたく……サポートなら私達超出来るから! する! から!!」

 

 恐怖の滲んだ激励と信頼。

 顔を歪めた飯田さんが、決断しようとしていたその直前。

 

「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか」

「バレても問題ないから、語ったんでしょうが!」

 

 身体を覆う靄を歪め身を乗り出した敵に、『ブラックホール』の制御用なのか、コスチュームの指先に着いたカバーを外し、挑みかかる13号先生。

 わたしの射程から僅かに外で、その一戦が幕を開け―――

 

 

「13号。災害救助で活躍するヒーロー……やはり戦闘経験は一般ヒーローに比べ半歩劣る」

 

 

「…………え?」

 

 一瞬で閉幕した。

 背後に転移された『ブラックホール』に、その背を削られるという結末で。

 

「自分で自分をチリにしてしまった」

「先生ー!!」

 

 悲鳴が聞こえた。

 憧れのヒーローが、目の前で崩れ落ちる姿を見せられたお茶子ちゃんの悲鳴が。

 

《…………》

 

 ゆっくりと、膝を突く13号の姿が見えた。

 絶望に顔を歪めるクラスメイト達の表情が見えた。

 靄の向こうで、愉悦に細められた敵の目が見えた。

 

(……『干……渉』……)

《…………》

 

 ()()()()()()()()()、どれも起こり得なかったはずだ。

 ここに立っているのが、高々二メートルの守りしか作れない、わたしじゃなければ。

 

 

《了解》

 





 原作では障子くん、飯田くんが近くのクラスメイトを抱えて逃げることで六人残っていました。
 歩ちゃんの存在による変化を出したかったので、麗日さん付近に居た上鳴くん他二名を救助。

 USJ出入口付近のやり取りは緑谷くんサイドの合間に挟まることもあって、そこだけまとめるとかなりのさっくり進行。
 原作ママの会話はなるべく省きたいのもあって、飯田くん早く行こうよ、とか思ってしまった。
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