オリキャラ無双が精神に悪いなら補助に回して原作キャラに活躍させれば良いじゃない。
麗日さんの"個性"は強い相手には本当に強いですよね。
※とある理由から本日は12:00に次話を更新します。
「―――さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ……今回はゲームオーバーだ…………帰ろっか」
長くはないやり取りの後で、死柄木の口から溢されたのはそんな投げ遣りな言葉だった。
その傍らで、ふらつきながら立ち上がった黒霧が、未だ靄を散らされる己の腕に目を眇める。
「……それと死柄木、先程から何らかの……おそらく生徒の"個性"により『ゲート』の生成が阻害されています。今の私は直接触れている相手でなければ転移不能です」
「ああ!? ……『使える』ならイレイザーヘッドの下位互換か。面倒なだけの雑魚"個性"だな」
「そういえば、そのイレイザーヘッドはどちらに?」
「飛び込んできたあのガキの"個性"で安全圏行きだ。生徒に庇われるとは落ちたもんだぜ」
「っ、あの生徒は……! 敵は宙に拘束、味方は避難。加えて本人は空中移動自在とは……」
「触れられるだけで空中行きじゃ『力』も『耐久』も役に立たない。とんだクソゲーだぜ」
お茶子ちゃんが想像以上に警戒されているやりとりが、場違いながら少し嬉しく思えた。
……表に出ている『干渉』から、かなりきつい怒りの感情を伝えられ、慌てて引っ込む。
「……だがラスボスにも会えずに帰るんだ。ここは平和の象徴の矜持を少しでも―――」
「っ、干河!」
「言われずとも! 【
俄かに悪意を漲らせた死柄木が動く気配を見せた瞬間、相澤先生と『わたし』の声が重なった。
「―――へし折って帰ろう!」
ひたり、と。
蛙吹さんの頭を触れた腕に、一瞬遅れて相澤先生が肩に巻いた『捕縛布』が絡みつく。
落下しながら首の動きだけで放ったそれに、先生は死柄木を視界に収めたままに足を絡め、相手を引き倒しに掛かっていた。
「っ、はは……何だよかっこいいじゃないか……イレイザーヘッド!」
「くっ……」
「け、けろぉ……っ」
『干渉』が捕縛布を引く方向に相澤先生の身体を【加速】させ、死柄木はそれに抵抗するように蛙吹さんの頭を掴む。
引き合いの支点にされた蛙吹さんが、こめかみに食い込む死柄木の指から逃れようともがいて。
「手っ……離せえっ!」
「……脳無」
刹那、デクさんが振りかぶった右腕に緑色の電光が走った。
それを一瞥した死柄木が一言呟いた瞬間、『わたし』の視界の中で黒の巨体が動き出す。
「―――SMAASH!」
気合いの叫びと共に振り抜かれた拳が、飛び込んだ脳無の腕を捉え、砂埃が巻き起こる。
数秒、視界を埋めた煙が晴れたとき、そこにあった光景に『わたし』が目を見開いた。
「スマッシュって……オールマイトのフォロワーかい? 丁度いいや、君……」
(……えっ)
《……っ》
ビルを縦に貫く拳が、まるで何事もなかったかのように片腕で防がれている。
その信じ難い現実に呆然とするデクさんの前で、脳無の空いた腕がゆっくりと動き出して。
「―――デクくん!」
わたしが不味いと思ったそのとき、『彼女』は既に次の手を打っていた。
「後ろの女を潰せ! 脳無!」
デクさんを助ける為、お茶子ちゃんが後先考えず飛び掛かった―――ように見えたんだろう。
彼女がそうやって隙を晒すところを、敵は狙い澄ましたつもりだったんだろう。
死柄木の指示を聞いた脳無の、勢い良く捻った裏拳がお茶子ちゃんに迫る。
けれどお茶子ちゃんの軌道を操っているのは、それを上から俯瞰している『干渉』だ。
『彼女』を欺けない限り、その反撃がお茶子ちゃんを捉えることなど有り得ない。
「……は? ……がっ!?」
「……気を散らし過ぎだ」
速度そのままに【
その時間を巻き戻したかのような軌道に困惑を漏らした死柄木の顔を、捕縛布を巻き寄せるようにして接近した相澤先生が蹴り抜いて。
「合体、必殺! 【
「―――
一瞬前まで自分の頭があった位置に突き出された脳無の拳を、お茶子ちゃんが力一杯に叩く。
次の瞬間、絶望を振りまいてきた巨体が、虚空へと跳ね飛んだ。
「―――もう大丈夫。『私が来た』!」
オールマイトの姿が見えたそのとき、わたしは『勝った』と思った。
「……っ、今来るなよ、ラスボスが。クソゲーにも程があるぞ」
両腕を力無く垂らしながらもしっかりとデクさん達の前に立ち、眼光鋭く敵を見据える相澤先生から、逃げるように距離を取った死柄木の悪態がそれを助長した。
「死柄木!」
「分かってる! 早くゲート開け、黒霧!」
『干渉』の【
彼らを追う戦力がこの場にないことを、残念にすら思っていて。
《―――不味い……っ!?》
……だから、心の奥に聞こえたその一言を、わたしは聞き間違いだと思った。
「う、ぷっ……あっ……あか、ん……っ」
真っ青になった顔に、口元を抑えて倒れこむお茶子ちゃんを、呆然と見下ろしていて。
《"個性"の許容限界……オールマイトの姿に糸が切れた……っ!》
むくり、と。
いつの間にか大地を踏みしめ、立ち上がっていた脳無を幻覚か何かだと思った。
「お茶子さんっ!」
(お茶子ちゃんっ!?)
「あ…………」
死柄木から与えられた最後の命令を果たそうと飛び掛かる脳無。
猛然と迫るその姿を、動かない身体に見開いた目で見上げるお茶子ちゃん。
必死に、最高速で流れていく『わたし』の視界。
そこへ割り込んだのは、迸る緑色の閃光。
「―――
バキ、ブシュ、と音を立てて、砕けた骨肉から血を吹き出すデクさんの右腕。
そこまで捧げた彼の一撃すら、僅かにたたらを踏むに留めてみせた脳無。
稼げた時間はごくごく僅かで―――
「よく頑張った、緑谷少年! 麗日少女!」
けれど金銀よりもなお貴重な数秒。
「後は私に、任せな……っさい!」
駆け付けたオールマイトが、脳無を二人から遠ざけるべく放り投げる様が視界の端に映った。
『わたし』が地面に足を着ける頃、デクさんがだらりと下がった右腕を抱えて振り返る。
「……っ、う、麗日さんっ! 大丈夫? 怪我はない?」
「…………っ」
『わたし』の視界が、急に上を向いた。
《それは反則じゃないかしらぁ……》という、何だか投げ遣りな呟きも聞こえる。
「……緑谷さん」
「あっ、干河……さん?」
デクさんを呼び止め、お茶子ちゃんに寄り添うように膝をついた『彼女』。
ちら、とその赤みが差した―――ミックスされて紫色になった顔を見て、溜息を吐いた。
「お茶子さんの為を想うなら、今すぐ回れ右しなさい」
「…………へ?」
「それから……なるべく聞かないように。良いわね?」
「え? あ、あの―――」
「返事は?」
「はい!」
勢いに押されてコクコクと頷き、首を傾げながら背中を向けるデクさん。
それから『彼女』は一転して優し気な声を作り、口元を抑えるお茶子ちゃんに話しかける。
「……大丈夫よ、お茶子さん」
「……?」
「ちゃんと道連れは置いていくから」
「…………?」
(…………え?)
……何故か、嫌な予感がした。
ついさっきまでの命が掛かったソレよりは遥かにマシな、けれど背筋を凍らせる予感が。
(あ、あの、『干渉』? まさか―――)
《あら、お茶子さんを一人にする気?》
(い、いや、でもまだ敵が居なくなったわけじゃ―――)
《他の先生方も、もう施設内まで来ているわ》
(い、今倒れたら、その先生方にも迷惑に―――)
《手は足りてるわよ。はい、返したわ》
「え…………おぶっ!!?」
突如戻って来た手足の感覚、襲い来る頭痛、ひっくり返る腹の奥。
咄嗟に手で塞いだ口の奥で、せり上がってくるモノを感じながら、わたしは視線を横に向ける。
(……なんか、ごめんな。歩ちゃん)
(……いえ、良いんですよ。お茶子ちゃん)
紫の顔で目尻を下げるお茶子ちゃんと目を合わせたとき。
これはこれでいいかなあと、わたしはどこか投げ遣りな気分で、そう思った。
「「……おぇ
※しばらくお待ちください
「けろ……『魂で通じ合った』ってこういうことだったのね」
「緑谷のヤロゥ……カッケェことばっかしやがって……」
友達の乙女心へのダメージを軽減する為、歩ちゃんに(強制的に)一肌脱がせる『干渉』さん。
本当は色々と聞かれない距離まで遠ざけたかったですが、状況が状況なので妥協しました。
実は緑谷くん、原作と違って左手の指は骨折していなかったり。
件の会議からUSJまで少なくとも週末は跨いでますので、制御訓練がしっかり進んでいます。
歩ちゃんが見る機会が無いので描写外にならざるを得ないですが。
爆豪、切島、轟の三名は、バックドロップで脳無を埋めるオールマイトを見たことでしょう。
一方で『超再生』がお目見えせず、死柄木も脳無が無力化されている+出入口(黒霧)に制限掛かってる状態でのオールマイト襲来に対して流石に様子見は選ばなかったため『ショック無効』についても解説することなくさっさと撤退。
結果として死柄木の負傷も無ければ「脳無=複数個性」も割れませんでした。ヤバイですね。