おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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 第一種目の結果の中で原作と異なる点は以下の通り。
 ・青山くん(42位)不在。
 ・歩ちゃんが青山くん(42位)の代わりに2位に入ったことで2~41位の順位が一つズレる。
 ・麗日さんが原作16位から10位に(第二関門を跳び越えられなさそうな生徒より上の順位に)変化したことで10~15位の順位が一つズレる。

 しかし塩崎さん(原作4位)や骨抜くん(原作5位)が飯田くん(原作6位)より早くゴールインしてるのは一体何があったんだろうか。



C2-3 第二種目・前編

 

 ―――第二種目、『騎馬戦』。

 それが予選通過者である第一種目の上位42名に提示された次なる種目。

 

 二~四人のチームを自由に組んで騎馬を作る。

 第一種目の結果に従い、各自にP(ポイント)が割り振られる。

 そのPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示されたハチマキを装着。

 制限時間15分の間にハチマキを奪い合い、最終的な保持Pを競う。

 取ったハチマキは首から上に巻く。なおハチマキの留め具はマジックテープ式。

 割り振られるPは第一種目42位が5P。そこから順位が上がるごとに5Pずつ上昇し―――

 

《1位は1000万Pって……やっぱり雄英ってバカしか居ないわよね》

(あ、あはは……)

 

 2位通過のわたしが205P……約五万分の一の価値と考えると、その異常性がより際立つ。

 『干渉』の呟きに何も返せないまま、一位になれなくて良かったなあと、少しだけ思った。

 

 チーム決めに用意された15分。一斉に動き始めた同級生の中に遠巻きにされる人影が一つ。

 予選1位通過、1000万の持ちPを投下されたデクさんだ。

 規定時間内逃げ切れれば必ず勝てるとはいえ、そう広くはないフィールド上で10以上の騎馬に付け狙われるとなれば、現実的でないと考えてしまうのも頷ける。

 

 けれど、それは―――

 

「……お茶子ちゃん」

「っ! 歩ちゃん」

 

 ほとんど同時にお互いを見付けて、どちらから言うでもなく頷き合う。

 向かう先は当然、人の流れの逆方向。

 

「デクくん!」

「デクさん!」

 

 わたし達が組んだなら、話は全く別物だ。

 

「組も……わっ!」

「【掌握(スフィア)】っ」

「麗日さん!! 干河さん!!」

 

 始まる前から追い詰められた顔をしていたデクさんに、二人揃って声を掛ければ、噴水のような感涙に迎えられた。

 咄嗟に除けたわたしの頭に《その水量どっから出てるのよ》と呆れの声が響く。

 

「い、良いの!? 多分僕1000万故に超狙われるけど……」

「ガン逃げされたらデクくん勝つじゃん」

「わたし達としてはむしろ組まない理由がないです」

 

「そ、それ過信してる気がするよ、麗日さん、干河さん……」

「過信でもありませんよ。それに何より……」

「仲良い人とやった方が良い!」

 

「…………!!」

《わぁお、多感少年凄い顔》

 

「うわあどうしたの!? 不細工だよ!?」

《そしてこの子も容赦無い》

 

「あ、いや、直視出来ないくらいうららかで……」

《うららかとは》

 

「……っ、いちいち合いの手入れるのやめて、『干渉』!」

「「合いの手入ってたの!?」」

 

 ()()()一頻り笑いあって、それから騎馬を組む最後の一人について話し合う。

 デクさんとしては機動力があり、これまでの交流もある飯田さんを加えた策があるとのこと。

 

「では勧誘はデクさんに任せるとして……知恵を貰えますよね、『干渉』?」

《……ええ、まあ、そう言ったのは私ね。分かったわよ》

 

 事がお茶子ちゃんの為となれば、『彼女』も惜しまず力を貸してくれる。

 溜め息の中に混じるまんざらでもない声音を聞きながら、わたしは既に勝った気分でいた。

 

 

 

 

『―――サァ上げてけ鬨の声!! 血で血を洗う雄英の合戦が今!! 狼煙を上げる!!!』

 

 

「麗日さん!」

「っ、はい!」

 

「干河さん!」

「はいっ」

《はぁい》

 

「常闇くん!」

「ああ……」

 

「よろしく!!」

 

 実況に呼応するように、騎馬を務めるわたし達三人に点呼を取るデクさん。

 彼が連れてきた最後のチームメンバーは、ある意味わたしと似た"個性"を持つ常闇さんだった。

 

《……こういう"個性"の形もあるのね》

(こう立て込んだ状況でなければ、一度お話したいですね)

 

 実況のカウントダウンを耳にしながら、目の前でキョロキョロと首を動かす『黒影』を見遣る。

 本人と独立した意志で動ける"個性"『黒影(ダークシャドウ)』。

 実体を持つ影、という防御にも攻撃にも動ける、近距離全方位においての万能"個性"。

 

《まあ、終わった後なら幾らでも。……それよりちゃんと作戦は頭に入ってるかしら?》

(それは勿論……ですけど、わたしの提案になってるんですよね、常闇さんの中では)

 

 お茶子ちゃんに目配せし、手に伝わる重さが消えていく様を感じる。

 開始の合図のほんの数瞬前、わたしを含む四人を"個性"の対象に!

 

 

『―――START(スターート)!』

 

「「【無重自在(ゼロ・マニピュレイト)】!」」

 

 

 開始の瞬間、1000万P(わたしたち)に集約されていた視線の全てをちぎり切って横滑りに跳躍する。

 襲い掛かろうとしていた幾つもの騎馬が、呆気に取られたように動きを止めるのが見えた。

 

「だあァ!? そんなのアリか!?」

「麗日干河が騎馬組んだらそうなるよねえっ! 耳郎ちゃん!」

「わってる」

 

 目を剥いたのはB組の生徒の騎馬、驚きながらも目で追ってきたのはA組、騎手をしている葉隠さんの呼び掛けを受けた耳郎さん。

 "個性"『イヤホンジャック』による伸ばした耳を、こちらも常闇さんの『黒影』が弾き落とす。

 

「まだまだ行きますよ、【加速】、【反射】、【加速】!」

「き、機動性バッチリ! すごいや干河さん! 麗日さん!」

「流星……否、隼の如し……!」

「私と歩ちゃんが組めばこんなもんや!」

 

 他の騎馬の頭の上の高度を維持し、直角軌道を織り交ぜながらフィールドを縦断、横断。

 『干渉』の与えた作戦(オーダー)は、なるべく多くの騎馬にこの機動力を見せつけること。

 

『何だァ!? 1位緑谷チーム、凄まじい空中機動でフィールド上を飛び回る! ってか騎馬戦でやっていい動きじゃねーぞオイ!?』

『これだけこれ見よがしに動けば狙ってくれと言っているようなものだが……何を狙ってる?』

 

「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」

「かっちゃん……っ! 常闇くん!」

 

 空を行くわたし達を迎撃に来た爆豪さんの前に、『黒影』が割り込み射線を塞ぐ。

 手を『黒影』に向けた姿勢でピクリと目を吊り上げた彼は、小さな舌打ちから腕を横へ動かし、爆破の勢いで自分の騎馬へと戻っていった。

 

「あ、あれ……?」

「……わたしに跳ね返されるのを嫌ったんだと思いますよ?」

 

 爆豪さんは先の種目で一度、わたしに爆破を反射されている。

 その為、おそらくはわたし達の騎馬の誰かを直接掴もうとして『黒影』に防がれた形のはずだ。

 

『騎馬から離れたぞ!? 良いのかアレ!?』

『テクニカルなのでオッケー! 地面に足ついてたらダメだったけど!』

 

 騎手の単騎駆けに関する実況と主審の裁定が周知される中、わたしはわたしで作戦に集中。

 進行方向に居た見覚えの無い生徒―――B組の騎馬へと接近する。

 

「近付いて来た!? なら固めてしまえば―――ぬあっ!?」

「ちょ、凡戸っ!?」

 

 噴射された粘性の白い液体のような"個性"を反射、当人達の頭に被せる。

 ……どうやら接着剤のような性質の物体だったらしい。固まって動けなくなっていた。

 

「わたしの半径二メートル以内には、何者も近付くことはできませんよ!」

「不可侵領域……!」

「や、やっぱり干河さんの"個性"は防御に関する万能性が凄いな……何かを放射する系の"個性"が忽ちこちらの攻め手に早変わりだなんて、やられる方は堪ったもんじゃないぞ……」

「今のB組の人達みたいに知らん相手にはぶっ刺さるねえ」

 

 身体の一部を伸ばしたりする"個性"には通じにくいので、そこまで万能でもないんですけどね。

 そんなことを考えながら、()()()()()()()()ことをお茶子ちゃんに目配せで伝える。

 

「着地するよ!」

《……! 足元に気を付けなさい。峰田さんの"個性"がバラ撒かれてるわ》

「っ、峰田の"個性"を踏まないように気を付けて下さい!」

「むっ……!」

 

 幾らお茶子ちゃんが『超必』をものにしたと言っても、自分含めた三人に『無重力』を掛けたまま15分維持し続けるのは無理がある。

 競技開始から初めて地面に着地しようとしたところで、『干渉』から飛んだ警告を皆に伝えた。

 

 地面に張り付いた峰田の"個性"『もぎもぎ』は、わたしの"個性"でも動かせなかった。

 投げ付けられたそれなら跳ね返すことも出来るだろうけど、貼り付いたものを剥がす力はない。

 気付かずに踏んでいたらかなり厄介なことになっただろう。

 

「……あれ、でもその峰田くんはどこに……」

《消去法で障子さんの背中ね》

「障子さんの背中に潜んでいるみたいです」

 

「え……な、成程……あの体格差ならそういうことも出来るのか」

「よう見とるねえ、歩ちゃん」

「チーム名で騎手をしていることは分かりましたから」

 

 目を遣る余裕さえあれば、スタジアムのモニターで全チームの名前と保持Pを確認出来る。

 そして一瞬でもわたしの視界に映せば、状況分析は『干渉』がやってくれるのだ。

 

《……B組の騎馬にPが集まってるわね。ちょっと予想外だけど好都合だわ》

「え……PがB組に集まっていました」

「えっ!?」

 

《どうやら2~4位狙い……というより1000万狙いの騎馬からハチマキを掠め取るのがB組の主な戦略のようね。私達を狙った直後に爆豪さんもPを取られているわ》

「……爆豪さんを含め、B組の漁夫の利狙いに引っ掛かったみたいです」

「ほ、本当だ。道理でかっちゃんがあれから襲い掛かってこないと……」

 

 何やらよく似た"個性"の持ち主らしい騎手を相手に、爆破し合っている姿が遠目に見える。

 1000万(わたしたち)を視野に入れているかはともかく、今は目の前の相手に集中しているだろう。

 

「お茶子ちゃん、許容量(キャパ)は大丈夫?」

「ん、このまま予定通り休めれば大丈夫!」

「B組の動きは予想外だけど、この分なら逃げ切れ―――」

 

 デクさんがそう口にしたのが契機になったのか、目の前に立ちふさがる騎馬が一騎。

 飯田さん、八百万さん、上鳴さんの作る騎馬に乗り、こちらをギラリと睨み付ける轟さん。

 

 

「そう上手くは……いかないか」

「そろそろ……()るぞ」

 

『―――B組隆盛の中、果たして1000万Pは誰に頭を垂れるのか!!』

 

 

 残り時間は、あと半分。

 





 原作騎馬戦の不思議その1。
 B組の鱗(第一種目32位)は頭に70Pのハチマキを巻いているが、共に騎馬を組んでいる宍田(29位)と合わせると所持Pは125のはずである。
 消去法でメンバーが特定出来る角取チームの合計ポイントが角取(37位)と鎌切(35位)で70Pなので、こちらのハチマキを貰っていたとすれば一応辻褄は合う。
 ただしその場合、何故この四人で騎馬を組まなかったかという疑問が残る。全員B組なのに。
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