入学まで延々独り言垂れ流させるとかきついよな……
→原作クラスメイトと同中設定とか上手く調理できる気しねーな……
→オリ中学クラスメイトを序盤だけ作るのもなー……
→せや、"個性"と会話させたろ!
C1-1 入学試験・前編
(…………わあ)
《何を呆けてるの、こんな時に》
心の中の呟きに、声が返ってくる。
(だ、だって、周りの人達、これが全部受験生だと思うと……)
《そうね。倍率三百倍、たった四十枠弱を競い合うライバル達ね》
すし詰めと言っていい人口密度の中、檀上に立ったプロヒーロー『プレゼント・マイク』の試験説明を耳にしながら、わたしは前後左右から感じる熱気に圧倒されていた。
誰も彼もが不安と高揚の入り混じった呼気を放ち、己以外の何者も受け付けぬと言わんばかりの表情で壇上へと視線を飛ばす。
そんな空気に当てられてか、果ては周囲の集中を乱そうとする挙動をしていたと、ある受験生に別の受験生が怒号を飛ばす事態まで引き起こされていた。
《……まあ、ああいうのは無視するとして、方針は考えた?》
(えっと……つまりこれって、ポイントの取り合い、ですよね?)
諍いを宥めるプレゼント・マイクの声を遠くに聞きながら、試験について『干渉』と相談する。
―――試験会場である模擬市街地内に三種・多量に配置された仮想
それらを何らかの方法で行動不能にすれば、種類毎に設定された
また会場内には一体、所狭しと暴れ回る妨害用の0P敵が配置されている。
《一人の
(重視されているのは誰より早く駆け付けられる機動力、解決までの早さ、それに動き続けられる持久力でしょうか)
《機動力は大丈夫、持久力は鍛えてきた。後は仮想敵とやらがどの程度を想定しているのか》
(わたしの力で倒せるでしょうか?)
《戦闘には活かしにくい"個性"の受験生の存在を考えれば滅多矢鱈に頑丈にはしないでしょうよ。高ポイント個体ならともかく》
(……それもそうですね)
いつも通り頼りになる『干渉』の見解を元に、試験中に取るべき動きを頭の中で思い描く。
……そうするうちに、今まで『干渉』にやらされてきた訓練の多くが見事なまでに図に当たっていたことに気付いて、内心で溜息を吐いた。
《ヒーローに求められそうなことを先回りして考えてきただけよ》
(……分かってますよう)
わたしのそんな心の声も余さず拾い上げる『干渉』に、少しだけ棘を乗せた言葉を返す。
すっかり慣れたとはいえプライバシーを許してくれない『彼女』に思うところはあるんだぞと、わたしはもう何十度目かの空しい抗議の意を送る。
《……ふうん。じゃあ、実技試験こそ
「うっ……」
思わず出た呻きに、一瞬遅れて周囲を確認する。
……どうやら誰も聞いていなかったか、聞いても不審には思わなかったらしい。
《筆記試験。私の自己採点では甘めに見ても百位以内だったわ。カンニングを疑われても困るし、全部の誤答を直しはしなかったけどね》
「…………」
《実技試験でも本気の本気を出すっていうなら、
(……いい、え)
……『干渉』は、わたしよりずっと頭が良い。
試験だってきっと、始めから任せてしまった方が良い結果が出せる。
けれど『干渉』は、わたしの"個性"だ。
そんな"個性"も含めて、『
(……ごめん、なさい)
《……別に?
普段通りの、飄々とした声を『彼女』はわたしに返す。
任せきりにするわけにはいかない。
頼り切りになるわけにはいかない。
何よりもわたしが、わたしである為に。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「―――ハイ スタート!」
「…………えっ?」
《……スタート、したみたいよ?》
「え、わ、わあぁっ!?」
《やれやれ……》
会場となる模擬市街地についてなお引き摺っていたもやもやは、プレゼント・マイクの気の抜けた号令と、必死の形相で駆け出す同会場の受験生の姿とで、忽ち思考の彼方へと吹き飛ばされた。
視界の端々でぞわぞわと動く、説明された通りの姿をした仮想敵達。
先に駆け出した受験生の背を眼前にして、ついさっき頭に描いていた筈のシミュレーションが、ぐにゃぐにゃと脳裏から零れ落ちていく。
《……自分の脚で走る予定なんてあったかしら?》
「あっ……!?」
……馬鹿か。馬鹿なのか、わたしは。
『干渉』に指摘されてやっと回りだした頭と顔に血が集まる感覚を味わいながら、
「【
「「「うおおっ!?」」」
前方にあった受験生達の背中を一息に
顔に影が差したことで気付いたのだろう、わたしを見上げた数人の声が足の下から聞こえた。
わたし自身の身体を"個性"の対象にし、踏み込みで生まれた力を【加速】。
主に重力により加減速する力を、反射屈折を駆使して望む方向へ望む速度に!
やがてわたしの身体は万有の法則を逃れ、自在な三次元移動を可能にする。
これがわたしが(『干渉』に言われるまま)何年もかけて練り上げた移動技だ。
「あの女子、飛んでる!?」
「しかもどんどん加速してるぞ!」
「クッソ、追いつけねえ!」
そんな声を背中に、一番近かった仮想敵に向けて、【加速】、【加速】。
制御出来るギリギリの速度を維持し、首元を狙って右足を突き出す。
「加速―――キックっ!」
《だっさ》
ぐしゃり、と最大得点である3P敵の頭部が潰れる音に紛れた、痛烈な声。
……仕方ないじゃないですか。直前で技名考えてないって気付いたんですから。
頭の中ではそんな考えを抱きつつ、勢いが削がれないように再度跳躍。
わたしの"個性"はその性質上、停止してるものを動かすときに一番時間が掛かるので、なるべく速度を失わないように気を付ける必要がある。
(右前方三十度、【反射】っ!)
「また飛ん……えぇっ!?」
「あれほど機敏に方向を変えられるのか!?」
「同じ会場にあんなの居たらポイント稼げねーよ!?」
加速・減速だけでは難しくても、反射を活用すれば複雑な軌道も可能になる。
わたし自身が対象なら、"個性"の制限が非常に緩くなるからこそ成立している技だ。
あまり速度を上げ過ぎると、急激な視界の切り替わりに対応できなくて混乱するけれど。
《……で、脚の状態は?》
(……とっても痛いです)
《そりゃ普通の靴で金属の塊を蹴り飛ばせばそうなるわよね》
(うう……っ)
驚愕する
話が違うと抗議しようとした声は、《逆に戦闘に適した"個性"の想定もするでしょうよ》という正論を以て無残に叩き潰された。
(……どうしたら良いでしょう)
《いや色々あるでしょう。ほら、あっちの……左前方の女の子みたいに》
(え……わっ!?)
言われて、向けた視線の先に広がっていた光景に、思わず目を見開く。
そこには幾台もの仮想敵がまるで宙にピン留めされたかの如く浮かび、その金属の多脚で虚しく空を掻いている光景が広がっていた。
わたしが見たのは、駆け回っていた仮想敵が一人の女の子にぺしっと平手で張られる瞬間。
途端、吊り上げられるかのようにふわりと浮き上がった仮想敵は、これまた脚をもがかせながら空中標本の列に加わった。
《ポイント獲得の条件は撃破ではなく行動不能。だからあれでも加算されるでしょうね》
(な、成程、あれなら……)
《ただし"私"の場合、浮かせておく物体の重さで負担が変わるから、見た目以上に軽量な1P敵はともかく、2P以上には別の方法を探しなさい》
(あ、はい)
その見立て通り、速くて軽いというわたしに都合の良い性能を持つ1P敵は、射程に入り次第、その進行方向を垂直方向へと反射、それから減速して滞空させるだけで無力化できた。
いつの間にこんな観察をしていたのかと思いつつ、見つけた1P敵に近寄っては、先の女の子に倣って宙に放逐していく。
一応、2P以上の仮想敵にも試してみたけれど、重量が災いしてかたたらを踏ませるに留まったところを他の受験生に倒されてしまった。
……協力して倒した扱いになりそうだし、これはこれでという呟きが聞こえる。
《―――ペースは十分。体力もまだまだ余裕。これなら……っ、七時方向!》
(え、は、はいっ!)
他の受験生と分けたポイントがあるとしても、それなりに稼げたかと考えていたところに、鋭い声の指示を受けて振り返る。
視界に入る1P敵に一瞬疑問に思った直後、明らかに身を竦ませた様子で立ち尽くす男の子が、その進行方向に見えた。
(っ、射程、届かな―――)
《―――いや、いけるわ。反射を!》
わたしから半径二メートル内。射程範囲を僅かに出てしまった仮想敵。それでもと飛んだ指示がわたしを反射的に動かし、【反射】が機能する。
対象に出来たのか否か、中途半端な感覚の中で、
「対象捕捉!! ぶっk―――」
「……えっ」
「……あっ」
ミチッ、ブチッ
そんな音と共に、1P敵がまるで裁断されたかのように真っ二つに裂けた。
「……あ」
「え、えっと……」
助ける形になった緑髪の男の子と、何だか気まずい空気で見つめ合う。
《……一台の仮想敵、ではなくそれを構成する部品の一部を対象にして【反射】させれば、対象にされていない部分と引っ張り合い、結果自ら生んだ加速度で己を引き裂くことになる、と。まあ、ヒーローらしいやり方じゃないし、使いどころには気を付けなさいよ?》
(そういう問題かなあ!?)
「い、良いチームプレイが出来ましたね! それではまた会いましょう!」
「えっ、あ―――」
目の前で起きた凄惨な事象、凄い眼差しを向けてくる男の子への対応、加えて不穏なことを言う『彼女』への反論でごちゃごちゃになった頭を内心抱えながら、わたしは適当な台詞を口にその場から【反射】するのだった。
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麗日、飯田に続いて緑谷くんに絡んだクラスメイトって彼だったんだと読み返して気付くアレ。