おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

21 / 81

 原作と変わらない組み合わせはなるべくカット多用していきたい。



C2-5 最終種目・開幕

 

 ―――雄英体育祭。

 それはかつてのスポーツの祭典に代わる行事でありながら、一高校の体育祭でもある。

 すなわち全員参加のレクリエーション種目も健在ということで。

 

 波乱の騎馬戦から昼休憩を挟み、最終種目発表の前にスタジアムへと集められたわたし達は。

 

 

『……ん? アリャ? どーしたA組!?』

 

 

 膝までのハイソックスにミニスカート、へそ部分を露出したノースリーブのチアコスチュームに加えて両手にはポンポン。

 A組の女子全員、八百万さんの"個性"で創ったチア衣装に身を包んだ姿で立ち尽くしていた。

 

 B組以下他クラスの女子が装いを新たにしている様子は無い。

 レクリエーション種目の間、女子は応援合戦に参加しなければならない―――そんな情報を与えられたことによる大惨事である。

 

「峰田さん! 上鳴さん! 騙しましたわね!?」

 

 昼食を終えた後のわたし達に「相澤先生からの言伝だからな」と言って、この姿になるよう誘導したのは八百万さんが名前を挙げたこの二人。

 頭の中でクスクス笑いを止めない『干渉』に恨みの感情をぶつけながら、彼らに歩き寄る。

 

「……上鳴、峰田。わたしの言いたいことは分かりますね?」

「干河からの呼び捨てだと……?」

「割と前から峰田くんにだけはそうやったよ?」

「フッ……大丈夫だ、干河。皆まで言うな―――」

 

 冷え切っている自覚のあるわたしの視線に見下ろされながら、峰田は無性に腹の立つ笑顔で指を立てた。

 

「―――オイラは『まな板』も守備範囲内だ!!」

「死ね」

「ゆるふわお嬢様キャラから出てはいけないセリフが!?」

「まあまあ、歩ちゃん……後で【無重旋転(ゼロ・スクリュー)】の刑にかけたったらええやん」

 

「……それもそうですね、お茶子ちゃん」

「……アレ、待って? それ確か(ヴィラン)にゲロ吐かせてた必殺技じゃ……み、峰田だけよな? 俺は余計なことまで言ってないもんな!?」

「オイ上鳴ィ!? オイラを見捨てる気か!?」

「まあ上鳴くんはホラ、最終種目があるし? 体育祭が終わった後にせんとな」

 

「「執行は確定!?」」

 

 

「アホだろアイツら……」

「まァ本戦まで時間空くし張りつめててもシンドイしさ……いいんじゃない!? やったろ!!」

「透ちゃん、好きね」

 

 青くなる二人に多少なり溜飲を下げながら、実況に耳を傾ける。

 最終種目はトーナメント形式。総勢16名からなる1対1のガチバトル。

 その組み合わせだけは今の時点で決定するそうだ。

 

 檀上のミッドナイト先生がその為のくじを取り出したところで、傍から挙がる手が一つ。

 

「あの……! すみません。俺、辞退します」

 

 挙がった手の主は『尻尾』の"個性"を持つ……《……尾白猿夫》尾白さん。

 彼が言うには、先の騎馬戦に関して誰かの"個性"の影響か、記憶が殆ど無いとのこと。

 こんなわけのわからないまま本戦には上がれない。自身のプライドの問題だ。あと何で君達女子はチアの恰好してるんだ―――といった理由《何か混じったわよ?》から辞退を希望するらしい。

 

 またB組の庄田さんという方も、それに呼応するように辞退を希望。

 放送席から決定を委ねられた主審ミッドナイト先生は「そういう青臭い話はさァ……好み!!」と素晴らしい笑顔でこれを了承。

 空いた2枠には繰り上がりとなったB組生徒同士の話し合いの結果、鉄哲さん、塩崎さんというお二方が代わりに本戦へと進むことになった。

 

《……潔いと見てくれる人間ばかりなら良いのだけどね》

 

 辞退した二人、鉄哲さん達に譲ったB組の生徒達に『干渉』が呟いた言葉が、妙に耳に残った。

 

 ……なお、尾白さん達と同じ境遇にあったサポート科の発目さんという方に関しては、「私は、やりますからね?」と辞退した二人に鬼気迫る表情で宣言していた。

 この空気の中で力強く宣言できる彼女もそれはそれで凄い人物だと思う。

 

 

 16名による1体1のトーナメント。くじ引きの時点で決定される組み合わせは8試合分。

 1~4試合目、5~8試合目がブロック分けされ、異なるブロックの相手と当たるのは決勝のみ。

 モニターに映されたそんな形式のトーナメント表に今、出場者全員の名前が書き加えられた。

 

 

 第一試合、緑谷 対 心操

 第二試合、轟  対 瀬呂

 第三試合、塩崎 対 上鳴

 第四試合、飯田 対 干河

 第五試合、芦戸 対 発目

 第六試合、常闇 対 八百万

 第七試合、鉄哲 対 切島

 第八試合、麗日 対 爆豪

 

 

「……第四試合。お茶子ちゃんと当たる可能性があるのは決勝戦、だけど……」

 

「麗日?」

「ヒィィー!」

《……厳しい戦いになりそうね》

 

「芦戸ってあなたですか!?」

「え? そうだけど?」

 

 周囲で起こる悲喜交々なやり取りを聞きながら、ちらと視線を向ける。

 そこにはモニターを見上げ、いつも通りの四角四面な表情を浮かべる飯田さんの姿があった。

 

「……他人の心配よりまずは自分、ですね」

《"個性"相性は良くはないわね。これはここまでかしら?》

 

「そこは振りでも良いから応援して下さいよ」

 

 

 そうして始まった、本戦開始前のレクリエーション。

 今だけはごく普通の高校の体育祭といった風情になっている。

 

 本戦出場者のわたし達はレクリエーションへの参加は自由ということだけれど、皆に―――主に芦戸さんと葉隠さんに―――に誘われて、チアだけは参加することにした。

 ……本音を言えば、本戦開始まで控室に籠っていても良かったのだけど―――

 

《……表情が硬い。うららかじゃないわねえ》

(うららかとは)

 

 明らかに無理をして気持ちを盛り上げているお茶子ちゃんを放っては置けないと言われ、一緒にポンポンを振ることに。

 ……結構良い笑顔を作っていたようにも見えたんですけどね?

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 スタジアムの中央に特設された正方形のステージ。

 セメントス先生のコンクリートを操る"個性"により、瞬く間に建設されたフィールドだ。

 

 説明されたルールは単純。相手を場外に落とす、行動不能にする、降参を口にさせる。いずれかを達成すれば勝利。……勿論、命に関わるような攻撃は禁止。

 ジョークを飛ばしながらの実況の中、最初の試合の対戦者二人がステージに上がる。

 

『一回戦!! 第一第二種目共に一位通過! しかし成績の割に何だその顔! ヒーロー科、緑谷出久! (バーサス) ごめんまだ目立つ活躍なし! 普通科、心操人使!』

 

《……活躍なし、ねえ?》

「尾白さん達が言っていたのって、彼の"個性"ですよね?」

 

 騎馬戦の開始前から終盤まで、凡そニ十分程度の記憶を失わせる"個性"。

 おまけに傍から見れば何の異常もなく騎馬を組んでいたように見えたことからして、自由意志を奪い操ることが出来ると考えて間違いない。

 特に『干渉』は、彼のチームが時間ギリギリで上位チームからPを奪う瞬間を確認している。

 即ち試合中、警戒して対峙しているはずの相手も対象に出来る"個性"だということ。

 

《目に見えた行動ではなかっただけで、活躍という意味では十分に力を振るってきているわよ》

「……偶々目に付かなかっただけで、十分に活躍しています」

「そう、なん? ……デクくん大丈夫やろか」

 

 

『レディィィィィ―――STRAT(スタァート)!!』

 

 

 お茶子ちゃんと一緒に観客席で見守る中、実況席から開始の合図が響き渡り。

 即座にデクさんが何事か叫びながら動き出して―――ピタリと立ち止まった。

 

「デクくん……?」

「もう相手の"個性"に……? 一体どうやって……」

《……開始の合図に紛れて何事か呼び掛けていたわ》

 

 クルリと振り返り、自ら場外へと歩き出してしまうデクさんを見ながら、『彼女』は考察する。

 

《条件は会話……いえ、『応答』かしらね。呼び掛けに答えさせることで思考と身体を分離させ、命令することすら可能……効果については予想通りとはいえ、とんでもない"個性"ね》

「呼び掛けに答える……口を閉じてさえいれば防げそうですけど」

 

《緑谷さんも実直だからね……動揺か、義憤に駆られるような事でも言われたんでしょう》

「彼の言葉に思わず返答してしまって……ですか」

 

《とはいえこんな舞台の上で、しかも盛大に披露していい"個性"じゃないわ。彼のような"個性"が『知られる』ことにどれだけの損失があるか。この学校は考えたことがあるのかしら……っ》

「で、でもヒーローになるからには『知られない』わけに行かないですし……」

 

「……ね、ねぇ、歩ちゃん? コッソリ納得してないで私にも……」

「あ、ごめん、お茶子ちゃん。えっと―――」

 

 ひそひそとお茶子ちゃんに『彼女』の見解を説明している内に、デクさんの身体はゆっくりと、しかし真っ直ぐに場外へと近付いていく。

 これはもう決まったかと、実況、観衆、おそらくステージ上の心操さんも確信しただろう瞬間、試合はまさかの方向に動き出した。

 

「え? わっ……風圧……?」

「これって……まさか!?」

 

 デクさんを中心に突如発生した風圧と土煙。

 それに覚えがあったわたし達は、一瞬顔を見合わせてデクさんの四肢を注視する。

 やはりと言うべきか、いつかのように赤黒く腫れた指を抱え、歯を食いしばる彼の姿があった。

 

「制御出来ていたのを敢えて外して……? あ、でも足が止まってる!」

《解除条件の一つは痛み、か。それにしたって自ら指を粉砕……相変わらずぶっとんだ度胸ね》

 

 必殺の"個性"を解かれたと知った心操さんが、動揺しつつもデクさんに荒々しく声を掛ける。

 どうにか返答させようと手を変え品を変え様々な話題を口にする辺り、やはり『彼女』の応答が鍵という見立ては正しかったんだろう。

 

 けれどデクさんも二度は喰らわないと頑なに口を塞いだまま、彼の"個性"使用の証である緑色の稲妻を全身に走らせる。

 そのまま一足飛びに心操さんの懐へ飛び込むと、場外まで押し出すように彼を突き飛ばした。

 

 

『心操くん、場外!! 緑谷くん、二回戦進出!!』

 





 第二種目を『干渉』さんが引っ掻き回しましたが最終結果は大体原作と同じ。
 残り五分の時点で仕掛けたのは、実力のある騎馬に堅実にやれば勝てると判断させるためというのもあります。徹底して1000万狙いの博打を考えさせないスタイル。

 最終種目も展開の都合で発目さんにポジションを代わってもらいました。
 肉弾戦は反射できない歩ちゃん VS 誰かさんの計略のせいで切り札(レシプロ)が割れてない飯田くん。
 ヤバイですね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。