行先が九州ということで予想された方もおられたでしょうが、ヒーロー殺し関連に歩ちゃんが関わることはありません。
OFAを知っている人間としてグラントリノに指名される展開も考えはしましたが納得出来る理由付けを思いつかなかったのでボツに。
「―――いやあ今年の雄英は凄い子が多かった。けど一つの事務所に指名権は二つ。上位の成績を残した生徒ほど指名が殺到するだろうし正直不安だったけど、まさか二人とも来てくれるとはね」
わたしと常闇さんがお互い同じ事務所に向かっていると気が付いたのは、そこに向かう途中。
事務所に到着して早々、事務員であろう人達に案内された部屋でその人は待っていた。
ヒーローを人気と実績からランキング化する、ビルボードチャートにて現順位はNo.3。
史上最年少でのトップ10位入りを果たした、通称『速過ぎる男』こと『ウイングヒーロー ホークス』が、開いた窓を背に人当たりの良い笑顔を浮かべて。
背中に生えた鷹のような大きな羽『剛翼』で空を翔け、事件発生の発覚から解決までを規格外の速度でこなす活動スタイル。
"飛行系"に加えて羽を操る"操作系"と、わたしにとって両方で参考になる"個性"の持ち主。
トップもトップのプロヒーローについて行けるかと言う不安を除けば、わたしにとって一番実りの見込める事務所であるはずだ。
《……主に緑谷さん情報だけれどね》
(……まあ、そうなんですけど)
呆れ混じりの《彼、ヒーロー関連喋らせると凄かったわね……》という呟きに内心全力で頷く。
千件を優に超えていた指名の中からここまでわたしに合いそうな事務所を探すなんて到底出来る事ではなかった。『干渉』もヒーローの情報にだけは割と疎いし。
わたしがそんな悩みを口にした途端、協力を申し出てくれたのがデクさんだった。……後ろの席から、ちょっと引くぐらいの勢いで。
自分やクラスメイト達だけじゃなく、プロヒーロー達の"個性"についてまで事細かく分析されたノートが出てきたのを始まりに、わたしの指名事務所の表から類似する"個性"主のリストアップが始まったのは普通に怖かったです。
「―――と、いうわけで今日から一週間よろしくね、
「「こちらこそよろしくお願いします!」」
初めてヒーロー名で……ヒーローとして呼ばれたことに少し高揚感を覚えつつ。
頭を下げて返した挨拶は、常闇さんと声を揃える形になった。
「それじゃ早速始めよっか……なんて、あんまり細かい事は言わないよ、職場『体験』だし。君達はひとまず俺の仕事について回ってれば良いだけ」
「……ついて回る」
「そ、そういうことなら……」
《……へえ?》
微笑みを絶やさずに言われたホークスさんの言葉に、安心しそうになったその瞬間。
頭から聞こえた剣呑な響きに反応する暇もなく、彼の身体がふわりと浮かぶ。
「―――ついてこれるなら、ね」
「えっ……」
「なっ……」
開けっ放しの窓から、こちらを向いたままに飛び出したホークスさん。
事務所の中で呆けるわたし達に、一度にやりと悪戯のように笑ったかと思うと、あっという間にその姿は遠ざかっていった。
《……ほら、ついて来いって言われたわよ?》
「え、あ、わ、わたし行ってきますね! 【
「干河っ!?」
常闇さんの叫びと、事務員さん達の暖かい目を背中に、ホークスさんを追って窓から飛び出す。
広げた翼を視界の先に見付け、そこを目指してとにかく【加速】を重ねた。
「……っ、ホークスさん!」
「おお、やっぱついて来れるか、アクセラ。本当に将来有望だね」
「と、とこや……ツクヨミさんがまだ―――」
「俺も待ってあげたい。でも事件は待っちゃくれないさ。さあ、行くよ?」
そう言って眼下の街並みに向かって滑空していくホークスさん。
急制動の利く速度では追い付ける気がしなくて、ぶつからないことだけ考えながらの【加速】。
そうしているうちに、追っていた背中から急に何枚もの羽根が飛び散る様が見えた。
「え……」
《はー……これがトッププロ……》
デクさんに聞いていたホークスさんは、羽根一枚一枚を精緻に操作して敵退治から災害救助までマルチに活躍するヒーローとのこと。
その予備知識があってもなお、わたしは目の前の光景を信じられない気持ちで見つめていた。
コンビニの入り口、羽根に押されて地面に転がっている男性は、多分万引き犯。
沢山の羽根がまとわりついた車は、歩道に乗り上げるところを止められたんだろう。
視界の端では、荷物を階段の上へと運ぶ羽根を足腰の弱そうな老人が有り難そうに見つめながら歩道橋を上っている。
一つ一つは、理解出来る。
どれか一つをやれと言われたら、わたしの"個性"なら出来なくはないと思う。
そういう意味ではデクさんの見立ては、本当に正確だった。
「ほら、事件も
「―――ここだけの話、始めは轟くん……エンデヴァーの息子さんを指名する気でいたんだけど。まあ流石に父親のところに行くだろうし、何より彼と君の直接対決を見て気になっちゃってね」
「は、はあ……」
「飛行能力といい、物体の操作といい、君の"個性"は俺のに似てる。あ、ちなみにツクヨミも俺に似て鳥っぽいから指名したんだよ。二割ぐらいは」
「えぇ……」
《残りの配分が気になる》
ホークスさんの
鉄塔の上で小休止しながら、ホークスさんはそんな話をしてくれた。
……途中捕まえた犯罪者に関しては、事務所に所属する
すると常闇さんは今頃、そちらの仕事を体験しているんじゃないだろうか。
「実際にはどこまで出来る? 俺が羽根でやるみたいにして他人を運んだりとかさ」
「えっと……軽くて大きな人を乗せられる強度の板があれば、でしょうか。ホークスさんの翼って小さいものでも凄く頑丈ですよね……」
「あー……それは中々自然にあるものじゃないね。サポートアイテムとして持ち歩いたりは?」
「重量が上がると自身の移動に制限が掛かるんです。今のコスチュームで現状のギリギリですね」
「んー……これからの"個性"伸ばし込みでもそう上手くはいかないか」
「ホークスさんの敵退治を見ていて、攻撃に使える投射物も欲しくなりましたし……」
わたしの"個性"のネックになるのは、武器になる物の持ち込みが難しいことだ。
あまりコスチュームに色々仕込むと肝心の機動力が落ちることもあって、ホークスさんの羽根のような様々な用途に使える武器、というのを予め用意するのが難しい。
「俺の羽根にも弱点はあるよ。特に火は駄目。焼けると威力も強度も半減以下。俺の場合それ系の敵は出す前に仕留めるに限るけど、アクセラの場合燃えない物を急遽武器にして戦ったりも出来るだろうし、準備が出来れば対応力は高いはず……あ、そうだ、俺の羽根は操れる?」
「えっ……あ、はい、やってみます」
ホークスさんの翼から羽根を一枚出してもらって―――身体の一部判定になるらしく、引き抜くのは無理だった―――"個性"の対象にする。
【加速】【反射】を繰り返して宙を舞わせた後、足元に転がっていた螺子を乗せて運んでみる。
……異様に強靭なことを除けば、鳩やカラスの羽根を操作するのと変わらなかった。
暫くそうして操作していた羽根が不意に意図しない動きをして、驚いてホークスさんを見る。
「この状態で俺の操作も差し込めるのか……次、俺の操作に合わせて加速してみてくれる?」
「あ、はい」
真っ直ぐ速度を上げた羽根を【加速】させて、更に高速化させる。
そこからホークスさんの要望に合わせて、【反射】を織り交ぜた直角軌道に。
次に操作する羽根を増やして同じ事を―――とするうちに、いつの間にかホークスさんが口元に手を当てて考え込んでいた。
「…………出せる速度を上げられれば威力も上がる。力押しに対抗できる公算も上がるし、何枚か羽根貸し出しとけば二方面で働くのも出来るな……まだぎこちないとはいえ今の時点で俺に同行は出来てるし……やばいなあ、本気でサイドキックに欲しくなってきたかも」
「ええっ!?」
《あらまあ》
思わずといった調子で漏れ聞こえた呟きに、嬉しさ混じりに仰天した。
興味を持ってもらうのが職場体験の目的とはいえ、そこまで関心を寄せられるのは予想外だ。
「……ありゃ、枚数はこの辺りが限界? 体育祭じゃもっと大量の氷を扱ってたはずだけど」
「ああ、えっと……あの時は上限突破のいわゆる『超必』状態で……使うと後で反動が……」
「ああ、そういえば表彰台欠席してたっけね、一位だったのに。そこまで反動キツイ感じ?」
「…………乙女の尊厳(婉曲表現)出ます。口から」
「オーケィ、職場体験に来た学生にキラキラ(婉曲表現)出させたら俺がエライ人達に怒られる。この一週間はよっぽどじゃない限り禁止ね」
というわけで職場体験先はホークスでした。
事務所が九州方面であること以外ほぼオリジナルになるので書きにくいことこの上ない。
原作ホークスの"個性"制御って完全に人外の域ですよね。
倒壊するビルから要救助者を羽根の振動で感知して救助とかちょっと何言ってるか分からない。