おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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 おまけの緑谷くんカウント。

 ・喫緊の極みにあった"個性"制御に尽力してくれた恩人である。 1Combo!
 ・体育祭にて抱えているものを打ち明けられ、救ける対象に片足突っ込んでいた。 2Combo!
 ・オタクが専門分野について意見を求められた。 3Combo!

 なお熱意が強すぎて怖がられた模様。



C3-3 職場体験・後編

 

「……何か言った方が良いんでしょうか、常闇さんに」

《やめときなさい。今あなたが何を言ったところで逆効果よ》

 

 ホークスさんのパトロールに食らいついていくことに終始した職場体験初日。

 日没後、彼に連れられ事務所に戻って来たわたしを迎えてくれたのはサイドキックの方々。

 その人達に揃って「ホークスについていける学生がいるなんてなぁ」と言われ、どうしても気になって尋ねてしまったのが事の始まり。

 

「まさか一日中ずっとホークスさんを追いかけていたなんて……」

《地面を走って追い付ける道理なんて無いと、直ぐに分かったでしょうにね》

 

 ずば抜けた機動力と対応力を持つホークスが矢継ぎ早に解決する事件を、後からサイドキックが事務処理の為に駆け付ける。それが常態化しているのがこの事務所の在り方とのこと。

 そんなホークスさんに同行出来るわたしは、プロの仕事を間近で見て、今日一日だけでも色々と参考になる話も聞けている。

 そんな中で常闇さんの現状を聞いて、何となく後ろめたい気持ちを拭えなくなっていた。

 

《……サイドキックの方々の仕事も十分得難い経験のはずなのだけど。かといって追い付けない、と早々に諦めてしまうのも、ヒーローを目指す人間として受け入れられない、か》

「……どうしたら良いんでしょう」

 

《……何も。どうなろうともそれが常闇さんの選択よ。あなたが口を出すことじゃないわ》

「で、でも……あ、ホークスさんはどういう考えでこんなことを?」

 

《そうねえ……どこかで折り合いをつけるか、はたまた何らかの手段で本当に追い付いてくるか。多分どちらになろうとも構わないと思っているんじゃないかしら。少なくとも常闇さんは今、何か自分に取れる手段が無いかと必死に考えているところでしょうし》

 

 向上心の高い人間に対してなら合理的、という結論を出して『干渉』はひとり納得していた。

 ……いつの間にか常闇さんに対して当たりが強くなった印象があるのは気のせいだろうか。

 

《……ともかく余計な事を言うんじゃないわよ? 歩の立場から妥協の進言でもした日には、彼の心を深く抉ることになりかねないんだから》

 

 

 

 

 ―――職場体験二日目。

 

「……あの、ホークスさん?」

「どうかしたかい? アクセラ」

 

「さっき、とこ……ツクヨミから凄い目で見られたんですけど、昨夜何かなさったんですか?」

 

 色々と気にはなりつつ『干渉』に言われた通りに非干渉を貫いたはずなのに、今朝になって顔を合わせたときに彼から見たこともないような眼光を向けられた。

 焦りと嫉妬とそれを向けてしまったことへの自己嫌悪、というのが『彼女』の見立て。

 

「昨夜? ……ああ、どうして自分を指名したのかって聞かれてね。昨日アクセラにも言った通り鳥仲間ってのと、後は今年の雄英1年A組の人間に聞きたいこともあったから、それもついでに」

「聞きたいこと、ですか?」

 

「ほら、年度初めに襲撃してきたチンピラの話とか。詳しい情報までは入って来なかったから」

《……扱いが伝書鳩》

 

「そしたら自分は主犯格には会ってない。詳しくはアクセラに聞けってさ」

「火に油ぁっ!?」

《そりゃ彼だってああもなるわね……》

 

 

 ―――三日目。

 

「……あれ?」

「どうかしたかい? アクセラ」

 

「携帯にクラスメイト向けの一括送信で連絡が……位置情報?」

「ちょっと見せて―――本土か。流石に遠過ぎるなぁ」

 

 これまで通りのパトロールの最中に届いた着信を検めれば、前置きも無しに一文だけの情報に、発信者にはデクさんの名前。

 真剣な顔に切り替わって画面を見たホークスさんは、直ぐに苦い表情で首を振った。

 

《何か危急の事態なんでしょうけど、私達にはどうしようもないわね》

「……どうにもなりませんよね?」

「ならないね。俺でも真っ直ぐ飛んで一日以上はかかる距離だ。要件も書けない程切羽詰まってるみたいだし……まあ事務所に居る面子に情報入ってないか確認してもらっとこうか」

 

 

 ……この連絡の意味をわたしが知ったのは翌日の朝。

 その日に報道された凶悪(ヴィラン)逮捕の知らせと、いち早く連絡したというお茶子ちゃんから現場に居たというデクさん達の話を聞く形でのこと。

 

 デクさん、飯田さん、轟さんの職場体験先事務所に近い場所で起きた事件らしく、今は三人とも重軽症を負って病院に居るのだとか。……お茶子ちゃんも昨日の今日で詳しい怪我の状態は聞いていないという。

 

「……ネットに上がってますね。『ヒーロー殺し』逮捕の瞬間」

「こういうのは消してもイタチごっこだからね……おエライさん方、今頃大わらわだろうなあ」

《何だか変な演出も付いて、いよいよ思想宣伝(プロパガンダ)動画みたいね》

 

 事務所の端末で話題になっているという動画を見ていたところ、ホークスさんが後ろから画面を覗いて茶化すようにそう口にした。

 けれど言葉とは裏腹に、その眼差しには冷たい光を湛えているように見える。

 

「……一定のラインを越えたカリスマ。これは感化される有象無象が出てくるなあ、ポコポコと」

《そんな雨後のタケノコみたいに》

 

 

 ―――五日目。

 

「……きばるねえ、ツクヨミ君」

「え?」

《わぁお》

 

 ホークスさんに言われて振り向いてみれば、植木や街灯を伝って駆け付ける常闇さんの姿。

 まだ事件解決の場に追い付く程ではないにしろ、わたし達が次の現場に向かう前に見える範囲にまで来たのはこれが初めてだった。

 

《手に『黒影』を纏うことで、彼を伸ばして自分を引っ張らせる、という遅延時間(ラグ)が減っている。まだ付け焼刃だけあって安定はしていないようだれど、面白いことを始めたじゃない》

(わたしが『全身を覆う』という案を出したおかげでしょうか)

 

《そのままの採用とは行かなかったようだけどね。彼の『黒影』には足が無いから》

(……ああ、言われてみれば)

 

 『黒影』の鉤爪を自らの腕で振るいながら、猛禽類のような瞳でわたし達を見上げている。

 そんな彼を少しだけ感嘆したように見ていたホークスさんは、けれど次の瞬間今まで通りの軽い調子で指示を出した。

 

「……じゃ、次の現場行こっか、アクセラ」

「えっ……その、待ってあげたりとか……」

 

「足並み揃えて被害拡大させてたんじゃしょうがないからね」

 

 それだけ言って飛び去ってしまう彼に、わたしも慌ててついて行く。

 ……背中に感じた常闇さんの視線が、威力マシマシで突き刺さっていた。

 

 

 ―――職場体験、最終日。

 

「―――【深淵闇駆(しんえんあんく)】!」

(遂に技名が付いたっ!?)

《技と呼べるだけの完成度に仕上がったのね。……ものの一週間でよくやるわ》

 

 後でサイドキックの方々に聞いてみたところ、日々のパトロールで駆け回った後にも事務所内のトレーニングスペースを借りて遅くまで自主訓練を繰り返していたのだそう。

 「若いって良いよねぇ」「男の子だねぇ」などと口々に話す面々に、《……あぁ、それも有ったのかしら?》と呟いた『彼女』にわたしは首を傾げた。

 

「……残りの三割、話してあげても良いかな」

「ホークスさん?」

 

「いや、何でも。さて折角最終日だし、アクセラもちょっと仕事やってみるかい?」

「え……わ、は、はいっ!」

 

 

 ……その日のわたしに回されたのは、子供の手から飛んでいった風船の回収や、転んだ人が宙にぶちまけた荷物の回収など。

 どちらも『剛翼』でやるより楽だし無駄がない、と言われたけれど、それを相手が視界に映るかどうかという距離から予期して駆け付ける彼は何者なんだろうかと、本気で疑問に思った。

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「―――すまんな、干河。この一週間、一方的に悪感情を抱いてしまった」

「い、いえいえそんな……」

 

 一週間の職場体験を終え、本土へと帰る新幹線の中。

 久し振りにしっかりと顔を合わせた常闇さんから開口一番に謝られて、わたしは慌てて気にしていないと答える。

 

「その、それで……最後の日に何かありました?」

「ああ……少し、話を聞かせてもらった」

 

 最終日のパトロールの後、ホークスさんは徐に常闇さんを鷹に捕獲された獲物のように掴んだかと思うと、すっかり暗くなった夜空へと飛び去って行ってしまった。

 サイドキックの方々に「心配要らないよ」と言われて事務所へ戻ったわたしが、再び常闇さんを見たのがつい今しがた。

 どこか憑き物が落ちたように目を細める彼に、わたしは少なからず安心した。

 

「ところで物は相談なのだが、俺の"個性"で空を飛べると思うか?」

「……えっ?」

 

「あの技でも課題だった近接戦や機動力の向上には繋がったのだが、ホークスには『勿体ない』と言われてしまってな……」

《……彼からは他にも何か見えるものがあったということかしら。はてさて……》

 

 その後、どうせ移動時間は暇だからと互いの"個性"を交えた懇談をすること数時間。

 前回『干渉』が楽しんでいた『黒影』の手触り等々を堪能させてもらいつつ、わたしと常闇さんの職場体験はそれぞれ得るもの多く幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

「―――なぁ、常闇。九州どうだった?」

「…………特に何も」

「その行間、絶対何かあっただろオイィ……!」

「だから落ち着けって」

 

 

「―――お茶子ちゃんはどうだったの? この一週間」

「とても、有意義だったよ」

「お茶子ちゃん!? 何があったの!?」

《な、何て綺麗な正拳突き……》

 

 

「―――笑うな! クセついちまって洗っても直んねえんだ……おい笑うなブッ殺すぞ」

「「やってみろよ8:2(ハチニィ)坊や!! アッハハハハハハ!!」」

「うわぁ、爆豪さん……」

《……わぁお》

 

「こっち見んじゃねぇ! 腹黒女!!」

「腹黒はやめてください!? 青髪で良いですから!」

 





 原作では職場体験の一週間では特に進捗はなく、その後のインターンにてあったという常闇くんとホークスのやり取り(回想シーン)を一足早く展開。
 しかしホークスの巡航速度や継続飛行距離って具体的にはどれぐらいなんだろうか。
 現実の鷹から推測しようにもタカ目タカ科の中だけでも結構幅がありますし、モデルになった種が分からないんですよね。翼が真っ赤な鷹なんていないんよ。

 ステイン関連には特に変更なし。
 ただし画面外ではグラントリノおよびエンデヴァーが複数個性持ち脳無に目を剥いています。
 USJ脳無のDNA検査結果がオールマイトに伝えられたのもこの時期ですね。
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