多くのヒロアカ二次作者が悩むだろう箇所その……幾つ目ぐらいだろう?
《―――さあ、何が何でも補習を回避するべく勉強するわよ、歩》
「手のひらがえ……ってはいないけど、突然何が!?」
わたしが何とかして宥めすかそうとしていた『干渉』が突如意見を翻したのは翌日のこと。
《……一晩冷静に考えて気が付いたのよ。ヒーロー科に対して楽しむだけの合宿を企画するわけがない。敷地内では出来ない鍛錬をさせるつもりだとすれば……成績不振者をこそ置いていくはずがないってことに》
「な、成程?」
《とはいえ体育祭のレクリエーション然り、学生が楽しむ機会を何でも取り上げるわけじゃない。林間合宿にも自由時間の類はおそらく確保してある……補習として削られるとすればそこよ》
「……なるほど」
その分析内容は相変わらずわたしに疑問の余地を挟ませない見事な論法で。
《つまり歩が赤点を取ると……私がお茶子さんと合宿を楽しめる時間だけが減る》
「なーるほどぉ」
重々しい口調から話はすごいところに着地した。
……わたしが言うことじゃないですけど、『干渉』ったらお茶子ちゃんのこと好き過ぎません?
わたしが気絶していた間の体育祭に、いったい何があったんだろう?
《……と、いうわけでこの週末は勉強会よ。お茶子さんと一緒に》
「そろそろかな? 呼ばれて来ましたお茶子ですー」
「お茶子ちゃん!? 呼ばれたって……ええっ、いつの間に!?」
《昨日眠った歩の手を使ってちょいちょいとメールを》
「道理で昨夜寝苦しいと思ったら!」
「……何となく会話予想して言うけど、それは気付こうよ、歩ちゃん」
携帯を調べたら書いた覚えのないメールがしっかり送信されていた。
その文面だけでも『干渉』からだと分かった、というお茶子ちゃんの言葉にやたらと機嫌良くなった『彼女』に扱かれる形で休日は過ぎていくのだった。
「……なんか、ごめんなさい、お茶子ちゃん。付き合わせちゃって……」
「いやあ、私も下から数えた方が早いし……家におっても寝るだけやし。節約の為に」
「せつやく」
「起きとるからお金かかんねやで」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そうして迎えた筆記試験―――
(……どう、でした?)
《……私が途中で口出ししなかった時点で察しなさいな》
上鳴さんや芦戸さんなど、八百万さんの家で勉強会をしていたという面々が歓声を上げる中で、わたしは『干渉』の一言に強く拳を握った。
「……歩ちゃん、どないやった……あっ!」
「はい。少なくとも赤点はナイです!」
《以前の成績からガクっと落としてることに先生方は驚くでしょうけどね》
握った拳を顔の前まで持ってきて親指を立てる。
わたしに悲壮感が無かったからか、お茶子ちゃんもにっこり笑って拳を上げてくれた。
《今までどんなに無理に勉強させても振るわなかったのに……あなたも現金よねえ》
(今回に限っては『干渉』も人のこと言えないのでは?)
「―――後は実技の演習試験! ロボにブッパして終わりだ!」
笑顔で万歳する上鳴さんの言葉で、そういえばまだ試験は終わってなかったなと思い出す。
筆記の後に予定されているのは、詳細不明の演習試験。いつしか入試や体育祭で出てきたような対ロボットの実戦演習だという話が流れてきていたものだ。
話の元はデクさんを始めとした数人のクラスメイト……がB組のとある生徒から聞いたそうで。
ではそのB組生徒はどこから? の答えは現在二年生の先輩からとのこと。
それなら確かに信憑性は《今年からカリキュラムが変わってなければ》……高い、はず。
……余計な一言を挟まれたせいで急に不安になってきた。
折角どうにか筆記を乗り越えたんですから、これ以上の試練は勘弁してもらえません?
「―――残念! 諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」
《知ってた》
(……そんな気はしてました)
演習試験の場として集められたそこに、ずらりと集合していた教師陣を見て一度目の看取。
そしてその中で先頭に立つ相澤先生の捕縛布を巻いた首元から飛び出した、小柄な人間サイズの白ネズミ―――根津校長の宣言で確定。
笑顔のままピシリと固まった芦戸さん、上鳴さんほどではないけれど、人生ままならないなあと気持ちの上ではその二人に同調した。
そうして伝えられた試験内容は、クラスメイトの誰かと
「―――尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度……諸々を噛ませて独断で組ませてもらったから発表してくぞ」
(……う)
《敵だけじゃなく仲間についても、その場で偶然出会ったという想定なのね》
ちらっと横に向けた視線がお茶子ちゃんと重なった。
わたし達の"個性"
『彼女』に聞くまでもなくそう考えたわたしの考えは、それでもまだ甘かったようで。
目に見えた強"個性"を持つ轟さん、八百万さんの相手に、"個性"を『抹消』する相澤先生。
デクさん、爆豪さんというミスマッチ極まる組に、無慈悲にぶつけられるオールマイト先生。
音や声に関する"個性"を持つ耳郎さん、口田さんに対し、その全てを掻き消しかねない大音量を武器にするプレゼントマイク先生―――と、ここまでくれば傾向は分かってくる。
《弱みを突いてくる組み合わせ、か。さてさて歩の相手は誰かしら》
(そんな暢気なぁ……)
《試験である以上、勝ち筋を全く潰されはしないわ。頭回しなさい》
(うぅ……)
そんなわたし達だけのやり取りの中、発表されたペア相手はやはりこれまで授業その他で一度も組んだことのない人物、切島さん。
そして対戦相手は、明らかに"干渉"不能でありかつ空を行くわたしを捕えられるだろう"個性"の持ち主、13号先生だった。
「よろしくな、干河! ……けど、13号先生かぁ……」
《切島さんへの課題は、防御不能な"個性"への対応かしらね》
「どれだけ『硬く』ても『ブラックホール』は防げませんよね……が、頑張りましょう?」
ペアになった切島さんに挨拶しつつ、お茶子ちゃんに目を向ければ相方は常闇さんで対戦相手はエクトプラズム先生らしい。
多分あちらは近接戦闘への対応を課題に固められたんだろう。
二人が職場体験で近接対応の技、体術を学んできたことまでは先生方も詳しくないだろうし。
「……だよなあ、流石に漢らしく突貫ってわけにいかねーよな」
「でも試験なんですから、想定された勝ち筋はあるはずです。何とか考えましょう?」
「おっ、そうだよな! 頼りにしてるぜ、体育祭1位!」
「んぐっ……そ、そーですねぇ……」
……この前ようやく体育祭での『干渉』の活躍振りをお茶子ちゃんから聞いたけれど、わたしがとんでもない知将にされていることが判明した。
となれば自他共に認める脳筋思考の切島さんから、期待と信頼を向けられるのは当然なわけで。
…………いざとなれば『彼女』も力を貸してくれるだろう。今回もそうする理由はあるし。
けれどやっと、ようやく、筆記試験まではわたしの実力で乗り切れたんだ。
ここまで来たならこの期末試験、わたしだけの力で乗り越えたい。いや、乗り越えなくちゃ。
《…………ふぅん、まあ頑張りなさいな》
「試験の概要については各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間がもったいない速やかに乗れ」
その指示を受け、二人一組+対戦する教師の三人ずつ10台のバスに分かれて乗り込む。
わたし達を乗せたバスが着いた場所はドーム状の建物―――いつかの
「今回は極めて実戦に近い状況での試験。僕らを敵そのものだと考えて下さい」
そんな前置きを皮切りに、試験の詳しい内容が13号先生の口から語られる。
流石にというべきか本気の戦闘というわけではなく、体重の半分だという重りを両手足に嵌めて身体能力を落とした先生が相手となるそうだ。
また勝利条件は、相手の身体のどこかに確保証明のハンドカフスを装着する、もしくは割り当てられたステージに一つ設置された
試験時間は30分。戦闘か、逃走か。判断は受験者であるわたし達に委ねられているという。
「わたし達はステージ中央スタート。ゲートは舞台の端にあるわけですから、先生が居るのは当然その方向ですよね」
《そうじゃなければ横や後ろに逃げて即逃走成功だものね》
「絶対一回は戦わなきゃなんねえってことか……13号の『ブラックホール』って干河の"個性"で何とかならねえのか?」
「それそのものへは無理だと思いますし、引力も反射減速は可能ですけど、わたしに扱える以上の力で引かれたらアウトです。つまり一定距離未満にまで近付かなければ逃げられるでしょうけど、それではゲートにも本人にも決して近付けません」
《さながら『事象の地平線』ね。歩は光じゃないし、先生のそれも本物のブラックホールとは違うでしょうけど》
「……つまり真っ向勝負はムリ! ってことだよな?」
「そうですね……逃げるにも戦うにも、何とか気を逸らして接近しないことには何とも……」
「気を逸らしてか……漢らしくねえなあ」
《ブラックホールに生身で飛び込むのは漢らしい通り越して単なるバカよ?》
『―――皆、位置についたね。それじゃあ今から雄英高1年期末テストを始めるよ!』
「「えっ」」
《作戦タイムとか設けないのね……ああ、突発的な会敵仮定だっけ》
何とか突破口を見出そうと相談するわたし達を嘲笑わんと響いた声の主はリカバリーガール。
わたわたと慌てるわたし達など知らぬとばかりに、開始の合図は無情に伝えられる。
『
麗日さん式節約術、『寝る』『(暑さを)耐える』『食べない』。
いずれも単行本で確認出来る公式設定です。花の女子高生ぃ……