おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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 ※前話にて歩ちゃん父親の名前を変更いたしました。
 あと作者は某国民的アニメがちょっぴり嫌いになりました。



C3-8 林間合宿開始

 

 ―――(ヴィラン)連合首魁とされる死柄木弔、木椰区ショッピングモールに出没。

 

 偶然に遭遇したデクさん、お茶子ちゃんの通報により、ショッピングモールは一時閉鎖。

 ショッピングに興じていたわたし達は、動揺冷めやらぬまま急遽解散の運びとなった。

 

 その翌日、登校したわたし達を待っていたのは、一昨日周知された合宿開催地の変更。

 更に情報が漏れる可能性を危ぶみ、実際の開催地は当日まで明かさないという通達だった。

 

 

「―――と、いうわけです。お母様」

『それは……そういうことなら仕方ないわね』

 

 その日の夜、わたしは先日伝えていた情報が変更されたことをお母様に電話していた。

 聞けばお茶子ちゃんも同様の連絡をご両親にしていたそうなので、どれだけの人間が開催地を知っていたか把握出来ないという学校側の理屈も頷くしかない。

 

「開催地に着いた後なら連絡出来ると思います。携帯を取り上げられるわけではないようなので」

《生徒と親が互いの声を聞くことまで禁止するとなるとPTAその他とも事を構えることになるし、幾ら何でも強制は出来ないでしょうね》

『……分かったわ。あなたが旅先から元気な声を聞かせてくれるのを待つことにするわね』

 

《雄英の方針を考えるに、元気が残るかは怪しいところだけど》

「……そのとき元気かどうかは分かりませんけど、頑張ります」

 

 まるで『彼女』の補足が聞こえていたかのように、お母様の小さな笑い声が電話越しに届く。

 ……補習地獄は免れたのだからマシだと思いたいけれど、かといって余裕を残してもらえるとも考えにくいからなあ。

 

 

「…………お母様。お父様のお加減は、その後お変わりありませんか?」

『……何かあったの、歩?』

 

「その……クラスメイトの八百万さんから、先日話題に出されたもので」

『八百万……成程ね』

 

 電話の向こうから伝わってくるのは、深い沈黙。

 その奇妙な間隙の中、わたしの脳裏にはベッドに横たわるお父様の姿が過っていた。

 

 ―――あの日、お父様がながい眠りに就かれたのは、敵の手から救い出された直後のこと。

 帰ってきたお父様は、わたしを見て小さく笑ったのを最後に糸が切れたように意識を手放して、それきり目を覚ましてくれていない。

 

 敵に誘拐、監禁されている間にお父様が何をされていたのか、当時幼かったわたしに詳しい事は誰も教えてはくれなかった。

 身体に目立った外傷は無く、心因性の昏睡状態なのだと、随分後になって知らされた限り。

 

『……寂しい?』

「……時折、少し」

 

 日々、お忙しくされていたお父様に、わたしが笑いかけてもらった記憶はあれが最初で最後。

 それを幸いと言っていいかはさておき、わたしの抱く喪失感は実のところそれほどではない。

 お母様からはその分の愛情を注がれてきたと思っているし、わたしには片時も傍を離れることのない『相棒』も居てくれるから。

 

『全くあの人ったら寝坊助さんなんだから……ああ、でも今日は微かに反応してくれたのよ?』

「本当ですか!?」

 

『ええ、私の"呼び掛け"で極僅かだけれど瞼が動いたの』

 

 ―――お母様の"個性"『伝心』。

 指定した相手に己の嘘偽りない心を伝えられる"個性"。

 意識の無いお父様にこの"個性"を使い、お母様は十年間毎日欠かさず"呼び掛け"を続けている。

 

 わたしの【面会(ディグアウト)】でも一切の反応が拾えないお父様に『心』を『伝え』られる唯一の手段。

 "個性"使用の為、眠るお父様の手を握り寄り添って微笑むお母様の姿に、それが素晴らしい光景なのだと幼心に刻み付けてわたしは生きてきた。

 

『諦めなければきっといつか、目を覚ましてくれると信じているわ』

「お母様……」

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 ―――時は過ぎて、前期終了、夏休み期間へと突入。

 そして訪れた林間合宿当日。

 

 

「え!? A組補習いるの? つまり赤点取った人がいるってこと!? ええ!? おかしくない!? おかしくない!? A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!? あれれれれぇ!?」

 

 

 雄英の校門前に二台のバスが、A組とB組それぞれの移動用に用意されていた。

 そのため同じヒーロー科であるB組の面々とも久し振りに顔を合わせることに。

 そしてB組の集団から一人こちらに向かってきた男子生徒が居たかと思えば、開口一番凄まじい勢いで煽り倒してきたのだった。

 

 しかもそんな彼にこちらが反応する間もなく、同じくB組の中から歩み出てきた女子生徒が彼の首筋に手刀一閃、手慣れた様子で回収して去っていく。

 何より問題なのは、この一連の流れを気にしている人間が極端に少なかったことだろう。

 

《…………わぁお》

「なんてキャラの濃い……」

「何気にこれまで物間くんと縁が無かったんだね、干河さん」

「初めて見るとビビるよな」

「A組のバスはこっちだ。席順に並びたまえ!」

 

 

 乗り込んだバスが動き出した方向は山間道。

 まだまだ行先の予想は出来ないなと思いつつ、一時間後に一度止まる、という相澤先生の言葉を耳に入れておく。

 

「音楽流そうぜ! 夏っぽいの! チューブだチューブ!」

「ポッキーちょうだい」

「しりとりの『り』!」

「りそな銀行!」

「席は立つべからず! べからずなんだ皆!」

 

《……やけに脇道を使うわね。B組のバスも見えなくなったし、これは……》

「っ、そういえば……同じ場所に向かうはずでは……?」

「……『干渉』さんやね? 何かあるん?」

 

 皆が思い思いの姿勢で過ごしている非常にやかましいバス内の様相に、一度振り向いた相澤先生が辟易したように溜息を吐いた。

 わたしはと言えば、何だか不穏な調子でブツブツ呟く『彼女』にテンションを引き戻されつつ、隣に座るお茶子ちゃんと声を潜めて話し合う。

 

《進む方角がやたら変わるように道を選んでいた事といい……なるほどねえ》

「……よく分かりませんけど、すんなり合宿場所に着くとは考えてないみたいですよ」

「……雄英っていっつもそんな感じやなあ」

 

 

 果たして一時間後にバスが止められたのはパーキングエリアでも何でもなく、広がる山岳地帯を一望できる以外に何の変哲もない高台の上。

 嫌な予感をひしひしと感じ始めたわたし達の前に現れたのは、見慣れない三人分の人影。

 

「よーーう、イレイザー!」

「ご無沙汰してます」

 

 手足や頭に猫を思わせる装飾をあしらったコスチュームに身を包む二人の女性、おそらくプロヒーローコンビと、その二人からやや離れて佇む一人の少年。

 声を掛けられた相澤先生の反応で、少なくとも予定外の人物でないことは分かる。

 

 

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

「連名事務所を構える四名一チームのヒーロー集団ワイプシ! 山岳救助等を得意とするベテランチームだよ! キャリアはもう12年にもなる―――」

 

「心は18!!」

「へぶ」

 

「デクさん!?」

《毎度分かり易い解説ありがたいのだけど、年齢は地雷だったようね》

 

 見事な口上ポーズを決めた二人組に、すかさずデクさんの解説が入って素性が判明した。

 途中で片方の女性の猫っぽいグローブに顔を掴まれて黙らされてしまったけれど。

 

 突然のプロヒーロー登場に呆然とするわたし達に向け、もう片方の女性が説明する。

 ここら一帯、眼下にある山岳地帯丸ごと彼女らの私有地であること。

 わたし達の合宿中の宿泊地が、遥か遠くに見える山のふもとにあるということ。

 

 今は午前9時半、早ければ12時前後……という意味深な台詞に続けて、12時半までに辿り着けなければ昼食抜き―――

 

「……やっぱりそういう感じなんですね」

「ジタバタしてもあかんやつやなあ、コレ」

 

 泡を食ってバスに戻ろうとするクラスメイト達を横目に、わたしはお茶子ちゃんと頷き合う。

 デクさんを掴んでいた女性が今度は地面に手を付けたかと思えば、それを中心に周辺の土が盛り上がり始めた。

 大体何をされるか理解して一緒に相澤先生を仰ぎ見れば、少しだけ感心の色が窺える『視線』がわたしに向いている。

 

《まあ、歩に飛ばれたら面倒よね》

「……逃げませんよ?」

「理解が早いようで何よりだ。……わるいね諸君、合宿はもう始まってる」

 

 直後、バスをも呑み込まん勢いで吹き上がったのは土石流。

 三々五々に悲鳴を上げて放り込まれるクラスメイト達の中、心なしか丁重に高台下に広がる森へ落とされるわたし達。

 セメントス先生を思わせるとんでもない規模の"操作系個性"だけど、詳細についてはデクさんに聞けば分かるだろうか。

 

「私有地につき"個性"の使用は自由だよ! 今から三時間! 自分の足で施設までおいでませ! この……『魔獣の森』を抜けて!!」

 

「『魔獣の森』……!?」

「なんだそのドラ○エめいた名称は……」

《自分達が所有する土地とはいえ何て名前を付けてるのよ》

 

 尤も、その名前の由来はすぐに判明した。

 四足歩行で牙を生やしたまさしく『魔獣』……のように成形された土くれの塊が現れたからだ。

 即座に飛び掛かったデクさん、轟さん、爆豪さんの三人によって四散したが、土石流を操る先のヒーローの"個性"なら何度でも、何体でも嗾けられることだろう。

 

《それらの妨害を受けながら目印の無い森の中を突き進んで宿泊地まで、しかも制限時間有りか。雄英もいよいよフルスロットルねえ》

「雄英こういうの多過ぎだろ……」

「文句言ってもしゃあねえよ。行くっきゃねえ」

「そうですね。育ち盛りの高校生(わたし達)に一食抜けなんてあり得ません」

「えっ」

 

「《えっ?》」

「えっ?」

 

「……お茶子ちゃん?」

「まあ、その……たまに?」

《普通に健康に悪いわよ? 発育にも……あっ》

 

「…………」

「あ、歩ちゃん? えっと、急にどこ見て……」

「干河に麗日? あんたら何して……あっ」

 

「なんで……なんでそれでこんな格差……っ! 何で……!?」

「え、あ、その……ご、ごめん?」

「落ち着け干河! その気持ちウチには分かる! 分かるから!」

 

 

 

 

「……あ、あの、干河さんには空から偵察と進行方向の確認をしてもらいたいんですけど……」

「……今取り込み中みてえだから後にしようぜ、緑谷」

 





 ※この後すぐ正気に戻りました。

 原作上鳴くんの台詞からして、ヒロアカ世界ってド○クエあるんですね。
 ○トの勇者とか"個性"持ちだったりするんだろうか。
 モンスターのデザインも迂闊に人型にすると"異形系"と被るだろうし相当変わってそう。
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