おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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※とある感想への返信について、十数分で撤回したとはいえ読者の皆様に責任転嫁するような最低の失言をしてしまいました。ただいま猛省中であります。
 この責任は作者として読者を楽しませることで取るべし、ということで過去に感想で軽く要望のありました、ifルートを本編完結後に一話投稿しようかと思います。
 ……リアル? そんなモノより大事なモノがここにある。


 ちょっと過去の魔王さま「怪我をおして通し続けたその矜持を奪わせてもらうよ」
 前話の腹黒女さん「今の彼に足を止めさせるには、その矜持を折るのが早道よね」

 そういうとこやぞ。



C5-2 デク vs ウラビティ's

 

「―――デクくんの気持ち、分からへんわけじゃないんよ?」

 

「一緒に居る私達が危険やから……キミがそういう人なんやって、私達も分かっとる」

 

「いつも一生懸命で、いっぱいいっぱいで……一度決めたら、絶対に止まらへん」

 

「私はそんなキミが……ううん、何でもない」

 

 

「でも今のキミに、言葉じゃ届かへんみたいやから」

 

「大丈夫だよって言葉だけじゃ、キミも止まれへんやろうから」

 

「だから―――」

 

 

 

 

「いっっっっぺん、ブン殴って分からせたるから! 歯ぁ食いしばれェッ!!」

 

「ええぇっ!? う、麗日さんっ!?」

『……【無重自在(ゼロ・マニピュレイト)】』

 

 

 空を滑るようにして迫りくる麗日から、その耳元の無線から聞こえた『干渉』の声から、緑谷は必死の想いで距離を取る。

 『浮遊(7th)』にエアフォース(OFA15%)の推進力を重ね、正面に見えたビルの壁へと『黒鞭(5th)』を伸ばして。

 

『……"私"の【掌握】下だと言ったはずよ? 緑谷さん』

「あっ……!?」

 

 しかし彼が伸ばした『黒鞭』は、目標に絡まる寸前で僅かに向きをずらされる。

 いつか、彼女と相対した級友(飯田)の蹴撃が、相手に触れる直前で逸らされたときのように。

 

(不、味い……軌道が……!)

《……不味ぃなあ、小僧。お前さんの練度じゃ今の引っ張り合いにゃまだ対抗出来ねぇさぁ》

 

 驚く緑谷の身体は着地点のズレた『黒鞭』に引かれ、当人の意図しない空間へと投げ出される。

 

《驚いている場合じゃないぞ、出久君。周りを見るんだ》

(……これ、は……!)

 

 緑谷の視界に広がっていたのは、自身を囲うように浮かぶ大小の瓦礫群。

 それを成したと思われる相手は、やはり相方(麗日)の無線を通して彼に声を届ける。

 

『市街地だというのにこんなに瓦礫が……世も末よね』

「っ……で、も……幾ら『干渉』さんでもこんな質量は減速させるのが限度の筈じゃ……」

 

『何を言ってるの、緑谷さん? 私が今、誰と組んでいるか忘れたのかしら?』

「……!」

 

 空を舞う瓦礫の流れは二つ。

 緑谷を囲うように浮かび、進行ルートを塞いでいく流れ。

 そしてもう一つは、彼の正面に浮かぶ麗日の手に()()()()()順番を待つ流れ。

 

 彼が気付いたまさにその時、麗日のコスチューム両手首から射出されたワイヤーが、一際大きな瓦礫へと巻き付けられていた。

 

(あれは……『無重力』にした物体をワイヤーで振り回す、麗日さんの必殺技……)

 

「……準備完了や、『干渉』さん」

『了解。それじゃいくわよ、お茶子さん』

 

 ワイヤーの繋がった瓦礫。

 空に浮かぶ瓦礫。

 二人それぞれの意思に繋げられた、無数の大質量。

 

 

「【ゼロ・サテライツ】!!」

『ならびに【無重流星群(ゼロ・スターズ)】!』

「ッ! 45%セント(ST.)ルイス(LOUIS)スマッシュ(SMAAASH)!!」

 

 

 空中で身体を捻り繰り出された蹴撃と、巻き起こる衝撃波が、襲い掛かる瓦礫の多くを砕く。

 穿ち開けた視界に一瞬意識を抜いた緑谷は、しかし周囲で進行する事態に背筋を凍らせた。

 

(砕いた欠片が、集まって……)

《……荒く割った程度では武器を増やすだけだな》

 

「うらあぁぁーーーッ!!」

「!? う、わ……っ!」

 

 慄く緑谷が気を取り直すより先に、雄叫びを上げて突進する麗日。

 その行動の意味を彼が理解出来たのは、向かってくる彼女の手の平を見た瞬間。

 

(ま…………ずい!? そうか僕の敗北条件……二人の勝利条件は―――)

『お茶子さんに触れられたら最後、あなた自身の身体も【掌握】下、よ』

 

 半径三十メートル空間に存在するあらゆる物体、非物体を操作する"個性"『干渉』。

 その最大の弱点にして制限は、生物に対する機能上限。

 そして無体にもその制限を取り払う手段こそ、相方(麗日)の"個性"『無重力(ゼログラビティ)』。

 クラスメイト達の中でも取り分け噛み合いを見せる二つの"個性"が今、緑谷に対し牙を剥く。

 

「え、エアフォース……うあっ!」

『そんな速度で逃げられるとでも?』

「逃がさへんよ、デクくん!」

 

 麗日の手を回避すべく、空中で放った力の反作用で飛んだ先へと、遮るように横滑りした瓦礫に緑谷の身体は背中から激突した。

 痛みに白んだ彼の視界に、支える物も無い空中から直角軌道で切り返してくる麗日の姿が映る。

 

「っ、『煙幕(6th)』!」

「えっ、わぶっ!?」

『おっと?』

《ヘイヘイヘイそりゃ不味いよ九代目!? 今までも言ってきたけど今回は特に!》

 

 苦し紛れにも見える表情で、緑谷の身体から放たれた白煙が麗日達の視界を埋める。

 得られる間隙を利用しようと、身を翻した彼に届いたのは呆れたような『干渉』の声。

 

《そりゃ『煙幕(ソレ)』は雨風では飛ばないよ? けれど『彼女』に対しては―――》

『それじゃ時間稼ぎにもならないわよ?』

「ぐあっ!?」

 

 自身の視界すら塞がれる白煙の中で、突き進んだ先には壁の如き瓦礫。

 起きた事象の認識すら待たずして、彼を包む煙が吸い込まれるように晴れていく。

 

『"私"と特に相性が悪いのが六代目(これ)かしらねえ』

《逆手にとられたら元も子もないってこれ何度目かな? 回避一回の釣りとしては大き過ぎるよ》

「……く……っ」

 

 球状に纏められ、瓦礫と共に浮かぶ『煙幕』を眼前に、フードの下で眉根を下げる緑谷。

 そんな彼の眼前に、視界を取り戻した麗日が浮かび、憮然とした表情で見下ろした。

 

「……デクくん、私達は―――」

「もう……かまわなくていいから……僕から、っ……離れてよ!」

 

 背中と四方を瓦礫に、正面を麗日に塞がれた中で、緑谷は諦念を振り払うように拳を握る。

 血を吐くように絞り出された彼の言葉に、彼女が返すのは簡潔なる一言。

 

「嫌や」

「っ! 頼むから……!」

 

「嫌やッ!」

「……ッ! だから……離れてよ!」

 

「……! 私達……私は―――」

「僕はっ! 大丈夫だから!!」

 

 

「うぁっ!?」

『なっ!?』

《うおっ、小僧!?》

 

 悲痛に満ちた叫びと共に、緑谷の全身から黒い光が迸る。

 急ぎ麗日を退避させた『干渉』の目に映ったのは、その光が周囲の物体に()()()()()()()姿。

 

『っ、五代目の"個性"!? まさか、意図的に制御を……ああもう相変わらずねえ、彼は!』

「『干渉』さん! デクくんは!?」

 

『……噴き出したアレの中心に……え、ちょ、まさか……?』

 

 【掌握】空間内の物体を知覚する彼女へ向けた麗日の問いに、返る答えが動揺に濁される。

 信じられないものを見たとばかりの声色に彼女が首を傾げる中、二人の視線の先で屹立していた『黒鞭』の柱が不意に弾けた。

 

「……え、今……」

『……弾性でカッ飛んでいったわ、二時方向の廃ビルの中よ。……生きていればね!』

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「う……あ……」

 

 自らの身体で砕いた廃材の中に埋もれ、緑谷は全身に走る痛みに呻いていた。

 

 包囲網を強引に破る為、払った代償は軽くなく。

 常の数十倍の出力で噴き出した『黒鞭』の反動、及びピンボールの如く飛ばされ叩きつけられた衝撃に、全身の骨と筋肉がけたたましい悲鳴を上げる事態を引き起こしていた。

 

《……ンな使い方考えもしなかったぞ。思い切ったことするなぁ、九代目よう》

《結果だけ見れば凶悪な"個性"の使い手から視界を切れたことにはなるか》

(縛りの無い三次元空間であの二人を相手にするのは……それに麗日さんには四代目までの"個性"を知られてる。当然情報共有もしてるはず……)

 

 廃材散らばる薄暗い廃ビルの一室で、彼は彼の武器たる分析力をもって必死に思考を回す。

 

(知られてないのは『発勁(3rd)』……あの脳無には見せたけど、詳細までは分からないはず。レディ・ナガンとの戦いの時のように、視界から逃れられた今の内に溜めておいて―――)

 

 しかし、そんな彼を遮る音が一つ。

 

「……いっ!? な……んだ、天井から……」

 

 コツン、と小さな音を立てて、緑谷の頭に命中したのはありふれた小さな螺子。

 おそらくは先の衝撃で崩れた天井に引っかかっていたそれが落ちてきたのだと、それ以上気にも留めずに彼は思索に戻る。

 

「……うあっ!? と……立てかけてあった板、か」

 

 次の衝撃は、肩に倒れてきた薄いベニヤ板。

 見れば何かの目的で積まれていたらしい同型のそれが、すぐ傍の壁に並んでいる。

 そんなこともあるかと、緑谷が視線を前方に戻したその瞬間。

 

「ぎっ!? こ、れは、まさか……嘘だろ……!?」

 

 全身に走る痛みを助長したのは、勢い良く脛にぶち当たった鉄パイプ。

 事ここに至れば、続けざまにその身を襲った事象を『不幸』などでは片付けられず。

 しかし同時に、頭に浮かんだ答えから目を逸らしたい想いが、彼の内から沸き上がる。

 

《……視界外まで射程範囲なのかい、彼女?》

《……冗談きついなあ》

《……こりゃ不味いぞ、小僧》

「まさか……とっ、とにかく部屋の外へ……!」

 

 危機感に煽られた緑谷が動き出せば、それを感じ取ったとばかりに一斉に動き出す廃材達。

 錆びた扉を蹴破り廊下に出た彼の背後を、大小雑多な物体が思い思いの軌道で追いかける。

 

「うっ……づ……あ……ッ!?」

 

 そのまま走れば床板が、天井のパイプが、壁の装飾が、彼の行く手を阻むように動き出す。

 態勢を崩され、視界を遮られ、鈍った彼の背を無数の廃材が小突き回した。

 

《オイオイオイまるでビル自体に牙剥かれてる気分だなぁ!》

《容赦が無さ過ぎやしないかい!? ちょっと四ノ森さん、これ本当に―――》

《間違いない。それよりも九代目、気付いているか?》

「う、ぐ……?」

 

 不意に、緑谷の視界が何かに光源を遮られたかのように影が差す。

 不思議に思った彼は、ビルの外へと通じる窓に目を向け……そして、硬直した。

 

《彼女がこちらの位置を、視界の外にあっても感知しているならば―――》

(そ、っか……そう、だよな。『干渉』さんから僕の位置が……麗日さんにも……!)

 

 

「デクくん」

 

 

 空に仁王立ちする麗日の背後には、瓦礫というより最早崩れかけた家屋とでも呼ぶべきモノ。

 戦慄に竦む緑谷の前で、両手首から伸ばした十数のワイヤーを雑多に巻き付けたソレを、彼女はゆっくりと背負い投げの如く振りかぶる。

 

 

「―――往生せぃやぁ! 『【無重隕石(ゼロ・ミーティア)】!!』」

 





 Q. ……往年の暴力系ヒロイン?
 A. デクくんが悪いんよ。

 歴代"個性"発現が調整され、『黒鞭』の暴走も回避された……と思っていましたか?
 必要と思えば意図的暴走も辞さない。それが緑谷くんです。
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