※感想返信でも漏らしてしまいましたが、ここ数話の内容を読者の皆様に楽しんで頂けているのか大変に大変に不安というのが作者の本音です。
特にその日更新した話の内容に関する感想が……
ところで前話、妙に空白が多いですね?
「―――気付いていたそうね。私達が……ただの『休学』だったわけじゃなかったこと」
「聞きたいこと、疑問に思っていること、山程あるのも分かってる」
「でも今は……ひとまず今は、何も聞かずに協力してもらえないかしら」
「今の緑谷さんを、一人にしておくわけにはいかないでしょう?」
「……ええ、ごめんなさい。ずるい言い方なのも分かってるわ」
「あなたの気持ちに付け込むようなことをして、申し訳ないとも思ってるのよ?」
「……え、違う? あら、それじゃ未だに……ふふっ、ごめんなさい?」
「…………ええ、分かったわ」
「事が済んでからにはなるけど、それであなたが納得してくれるのなら……」
「何もかも、全部話すと約束するわ。……お茶子さん」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『―――あの、お茶子さん? 往生させちゃ駄目じゃない……?』
「あぁ?」
『あ、はい、なんでもないです』
唇を真一文字に引き締め、麗日は据わった瞳で半壊した廃ビルを見下ろす。
無線から届く
『……緑谷さん、生きてるわよね?』
「大丈夫や、デクくんやったら……っ」
その呟きに応えるかのように、麗日の眼前で瓦礫がガラリと音を立てる。
彼女が目を向けた先にあったのは、荒い呼吸でふらつきながら立ち上がる緑谷の姿。
閃光走る拳を握った彼が視線を上げると共に、泥に塗れ破れたフードがその頭から零れ落ちた。
『その手……さっき使ってた三代目の"個性"とやらかしら? 限定的なOFAの全力を可能にする。必要なのは溜め時間、といったところね』
「……っ」
「……デクくん」
聞こえた見立てにビクリと身体を震わせた緑谷は、微かな逡巡の後で腕を掲げる。
一撃を放つ寸前の彼の手を視界の正面に入れながら、麗日は一歩、彼に近付いた。
「来……ないで、よ……っ! 僕、は―――」
「置いてかれたんは、辛かったんよ?」
麗日の言葉に、緑谷の手が止まる。
そのままゆっくりと彼に近付きながら、彼女の吐露は続いた。
「やっとキミの……キミと同じ物を見えてると思っとったから」
「キミの隣に立ててるって、思っとったから」
「これからはキミと……すぐにどこかへ駆け抜けて行ってまうキミと、並んで走ってけるって」
一歩、また一歩。
距離が縮まる毎に、露わになった緑谷の頬が歪んでいく。
「私達は、キミに守られたいんやない」
「キミを、否定したいわけでもないんよ」
「ただ、私達は…………私は―――」
「僕、だって……」
構えた手に震わせながら、緑谷もまた乾き切った喉からその想いを絞り出す。
「皆が……大切だから」
「傷付いて欲しく、ないから……!」
「奪われたく、ないんだ……! 皆が…………キミが……ッ!」
己を罰するかのように、嗚咽を噛み殺した彼の手から緑の電光が迸る。
その様に麗日は一瞬、息を呑み―――けれど正面を見据えたまま走り出した。
「疑似……100%……ッ!」
『お茶子さん! 私を「信じるっ!」……ッ、そのまま飛び込んでっ!』
ぶれる視界の中、勢いを落とさず迫る麗日の姿に、緑谷の思考は高速で自問自答を繰り返す。
(吹き、飛ばすだけだ……! 直撃、しないように……! 怪我しない……させない……ッ!)
「デクく―――」
「
『…………さて、復習しましょうか、緑谷さん?』
どこか遠くから聞こえたそんな声が、緑谷の頭を通り過ぎて行った。
(なに、が……起こっ……た……?)
背中にも、四肢の先にも、何かにぶつかる感触は無く。
数秒以上の空白を経て、ようやく彼は自身が空を漂っていることに気付く。
『かつて、私と対峙した爆豪さんが何故、私の身体を掴むことに固執する必要があったか』
(……反、射……衝撃、波……!?)
自身の放った渾身の
それがもたらすはずの結果を、鈍く回る頭に注ぎ込んで、緑谷はようやく答えに辿り着く。
『……とはいえ私の全力でも、返せたのは凡そ四割程。本気の勝負だったら【反射】を
「あ……」
『けれどあなたは直撃を避ける為に向きを逸らした、これでおよそ三割減。残り七割の内から四割を私が貰って、相殺。残った一割があなたを吹き飛ばしたわけだけど』
ふう、と。
無線越しに彼の耳に届いた吐息は、呆れを多分に含んでいて。
『ほら見てみなさい、緑谷さん。……綺麗な茜色の空よ』
「……!!」
自らの意思と、彼女の"個性"。
二つの力で空へと向かった"力"は、暗雲に包まれた空を裂き、天候を変えていた。
見開いた彼の瞳を、地平線に沈まんとする夕日が朱く照らし出す。
『……さぁて! 復習が済んだなら、次は
「っ、ぁ……!」
遅れに遅れて再起動した頭で、緑谷は姿勢を取り戻すべく空をもがく。
視線の先、度重なる衝撃に崩れた廃ビルから、飛び出してくる影を彼は見た。
「デクくん!」
「っ、『
《……そうだね、出久君。この空間で彼女に抗えるのは『
頭の片隅から届いた七代目の声に微かに驚きを感じつつも、最早逃れられない距離にまで迫った麗日を前に、緑谷は縋るように己が身の内の"力"を探る。
(……『
《駄目だよ、九代目。『
(『
《無理だなぁ、小僧。今のお前さんの『
(『
《無駄だ。……アレは君の『危機』では決してない》
優しく響く否定の雨に、緑谷はそれでも、となけなしの気力で拳を握る。
再び四肢に弱々しく緑の閃光を走らせたその時、二つの声が彼の耳に届いた。
『……分かっている筈よ? 緑谷さん。私達が弱みを晒し続けていることが』
《……気付いているんだろう? 九代目。彼女達が弱点を隠していないことに》
(……初代……?)
入らない力を振り絞る緑谷に、二つの声はどこか示し合わせたように紡がれる。
『私達の弱みはどこまで行っても力押し。殊更不得手は"増強系"よ』
《
(……っ!)
聞こえた声はどちらも、頭の片隅には
『振り払えばいいのよ、力尽くで。あなたへ伸ばされる彼女の手を』
《振り払えばいいんだ、力尽くで。君に差し伸べられる彼女の手を》
(そんな、の……!)
「……っ、デクくん! 私は―――」
ただ茫然と開かれていく緑谷の瞳に、それを真っ直ぐに見上げる麗日の瞳が映る。
見開かれたそれを見つめ返した彼女は、喉よ裂けよと叫びを上げた。
「キミがっ! いなくなるんはっ! イヤやぁーーーーッ!!」
『《―――それを
(できる、わけ……っ)
振り絞った意志が、その身体から迸る緑光が。
徐々に、徐々に、薄れて―――消える。
―――二つの影が、重なった。
『……詰みよ、緑谷さん。そうしてお茶子さんに
耳のすぐ傍にまで来た無線から、溢される声が緑谷の思考に沁みていく。
(ふりほどかなきゃ、いけないのに……力が入らない……)
未だ燻る使命感と、敗北を理解する諦念とが、沈みゆく心の中で重なり合い。
四肢から力が抜けていく感覚の中、呼気を伴う囁きが彼の耳朶を叩く。
「帰ろうよ、デクくん? 私達の、雄英に」
「……麗日、さん……っ」
背中に回される手の平から、鼻腔をくすぐる香りから、伝わる温度に意思を溶かされて。
彼がようやく
「帰ろう?」
「…………出番無かったな、
「……緑谷ちゃん一人で
「完っ全にそういう映画のワンシーンよなあ、アレ」
「ほら見ろよ、こっちからみると丁度夕日に重なるぜ?」
「うわ、本当だ。すっごい綺麗……」
「……そういえば発狂しねえのな、峰田」
「だからオイラを何だと思ってんだ! 空気ぐらい読むっつってんだろ!?」
「「「じゃあその血涙止めろよ」」」
"個性"『干渉』が苦手とする最たるものは近距離肉弾戦。
ならば遠距離ならどうかと言えば、100%のデコピンに対し四割反射が限界。
要するに緑谷くんがその気なら近距離だろうが遠距離だろうがワンパンで決着でした。
繋げられた想いの結晶は伊達じゃないんよ。