※皆様沢山のご意見感想誠にありがとうございます。
作者の中で答えは出せました。お騒がせして申し訳ありません。
※書き忘れていましたが、前々話の仕掛けは他では一度も使っていません。またこの先使う予定もありません。念のため。
Q. ディクテイターは?
A. 画面外でA組面子+エンデヴァーが対処しました。
オリキャラ名注意報。
それから今話は考察関係で後書きがちょっと長いです。
「…………ハッ! おい、腹黒女」
夕日を背景にゆるゆると回る影を眺めながら、集まっていたのはA組生徒十七名。
その中から一人、小さな悪態と共に抜け出した爆豪が、やや距離を離して佇む『彼女』達の元へと歩み寄る。
「何を言ったか知らねえが……1stプランで七割いけるんじゃなかったのか?」
「……私が知ってる緑谷さんなら、ね」
問われた干河……否、『干渉』は、僅かに目を逸らしながらそう呟いた。
「男子、三日会わざれば……とさえ言うのに、半年だものねえ」
言いながら、向けられた彼女の視線に、クラスメイト達も気付いて各々振り返る。
一同の姿を改めて視界に収めた上で、彼女はどこか寂し気に口を開いた。
「……すっかり置いて行かれちゃったわ」
「…………」
「干河……」
「い、いや、でも……これでまたA組二十人揃うんだよね!?」
「え、それは無理よ?」
「「「え」」」
沈んだ空気を入れ替えようと、喜色を滲ませて声を上げた芦戸に対し、バッサリと返されたのは『干渉』による否定の一言。
硬直する面々に一転、呆れ混じりの表情を作った彼女は手近にいた上鳴を指差して問いかける。
「あのねえ……
「え、俺!? あ、えっと確か、社会情勢が落ち着くまで、だったよな?」
「……落ち着いてる?」
「いやぁ……ははは……」
背後の廃墟じみた住宅街に目線を向けつつ尋ねる彼女に、したくは無い納得を浮かべる一同。
再度、溜息を吐いて見せた『干渉』は、傍らの『少女』に目配せしつつ言葉を続けた。
「こうなったどさくさに紛れて抜け出したのよ。この子の力を借りて、ね」
「え、あ、そういえばその子は?」
「親戚の子よ。……通子ちゃん、十歳。見ての通り液体の"異形系"よ」
「通子でス、初めマシて! オ兄ちゃん、お姉チャん達!」
紹介され、液体状の片手を上げて元気よく挨拶する『少女』。
異形由来と思しき舌足らずな声に、A組の面々の頬が緩む。
「お、おう……初めまして!」
「親戚……」
「カワイイ……」
「スライムボディ
「……なあ、
「教育に悪いし隔離しておきたいけど……」
「……抜け出していると知れたら私もこの子も連れ戻されちゃうわ。無暗に誰かに話さないようにお願いね? ……ああ、先生方には話を通してあるからそこは心配無用よ」
そういうことならと―――特に付け加えられた一言で―――納得した彼らは各々了承を示した。
「……そうだ、折角だしヒーロー科の寮とやらを見せてあげてもらえない? この子、こう見えてヒーロー科志望なのよ」
「えっ、それは……大丈夫なのかな?」
「先生方はきっと許可を出してくれるはずよ。……私も同行できれば良かったんだけど、この後ちょっと……寄る所があってね」
微かに苦笑を浮かべながら、『干渉』の視線がどこか遠くへと向けられる。
そんな彼女に対し、集団の中から一歩、歩み寄る影が一つ。
「戻ってくるんだよね? ……干河」
「耳郎さん……ええ、そのつもりよ。何日も掛けはしないわ」
「……分かった、待ってるから。それじゃ行こっか、えっと……通子ちゃん?」
「ウン、耳郎お姉ちゃン!」
それだけの言葉を交わし、『少女』の手を引いて集団に戻った耳郎は、一同を急かすようにしてその場を離れていく。
数人が不思議そうに振り返りつつも、少しずつ地上に向かい高度を落としていく緑谷達の元へと向かっていく中で、『干渉』の傍らには爆豪の姿が残っていた。
「あいつらにはそれで良いとして……麗日には全部話すんだろな?」
「ええ……緑谷さんを連れ戻すにあたって、そう約束したからね」
爆豪の問いにそう返答した後で、しかし『干渉』は先とはまた違った様子で顔を背ける。
その様子に眦を吊り上げつつ、それでも背中を向けた後で……彼は口を開いた。
「―――
「……っ!」
投げかけられたその一言に、『干渉』は一度その総身を震わせた。
振り返った彼女の視線を感じつつも、そのままの姿勢で爆豪は続ける。
「何をビクビク怯えてっかは知ったこっちゃねェがな。ここで逃げる気ならブッ殺した上で麗日の前に叩き出してやるからそう思っとけ」
「あ…………あなたこそ! ……緑谷さんに、伝えることがあるんでしょう?」
「……ああ。だから俺はてめェの先に行く」
「…………」
それだけを言い切り、爆豪は視界の先に居るクラスメイト達の元へと歩き去っていく。
その背中をじっと視界に映していた彼女は、やがて小さな呼気と共にその場から飛び立った。
「…………ありがとう、爆豪さん」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――ビルの影から影へと、音も無く空を滑る一つの人影。
夜闇と風の音の中、彼女の手に握られているのは、手のひらほどの無骨な端末が一つ。
「緑谷出久の連れ戻し……無事、成功しました。じきに級友達と共に雄英に辿り着くでしょう」
端末を耳元に、その先にいる人物へと彼女は朴訥とした声音でそれを呟く。
「それにしても……よくまあ私にこんなことをやらせようと思いましたね―――根津校長?」
『君ならやってくれると思っていたからね! 『干渉』君!』
『秘匿通信デバイス』。
その名の通り、傍受不可能な電波に乗って届くHAHAHAの声に、彼女は今一度、辟易を込めて息を吐いた。
「こちらとしては願ったり、ではありましたが……この機に一つ、聞いても良いでしょうか?」
『HAHA……おや、何かな?』
「通子ちゃんを介して私と
『干渉』の頭を過るのは、彼方より半身から伝えられた、予想だにしていなかった申し出。
対外的には脱獄者という立場で、どうやって接触するかと思案していた身として、渡りに船、と認識できれば気楽で良かったのだが。
「接触を図って来たのが
『ああ、そのことかい? 要因は様々あるが……まず第一に、肉体から離れた"個性"を介した連絡はキミ達の専売特許では無いのさ』
「…………えっ」
かつての肉体と"個性"の間に発生した
悍ましい悪意の果てに生まれた奇跡、という認識の中へ飛び込んできた事実に、さしもの彼女も思考を止めた。
『OFAにも同じ現象が確認出来ていたのさ。時期としては三月の決戦のすぐ後だね』
「…………既知の現象だった。それは理解したわ。……けれどそれじゃ、まだ足りない」
自分達だけだと思っていた『症例』が他に存在していたことに少なからず衝撃を受けながらも、『干渉』は尚も疑問を言い募る。
「結局、私と通子ちゃんをどうやって結び付けたというの? あの子は―――」
『反射ヒーロー リフレクションこと、
端末の向こうで息を呑んだ『干渉』に、根津の返答は続く。
『本人の申告した名前にヒーローの母を持つという証言。それに国内一のヒーロー輩出校校長たる私の伝手を活用すれば特定は容易だったさ』
「…………」
『物証が揃えば後は組み立てさ。幼くして脳無へと改造された少女に指示や知識を与え得る手段、その知識の範囲、そして"個性"の類似性……キミ達二人が意識の
「……根津校長」
『何かな?』
「私はあなたが恐ろしい」
『これは参ったね! HAHAHA!』
始めの内とは違った方向に疲労を滲ませる『干渉』に、根津は一段高くなった笑い声を返す。
しかし暫しの喜色から一転、重みを増した口調が同じ声で紡がれた。
『……私の方こそ君を恐れているところはあるのさ。約十一万立方メートル空間内の物体を自在に操る"個性"……敵に回れば対抗し得る手段は限りなく乏しい。奴より先に君を押さえられたのは、紛れもない幸運だったと思っているよ』
「……そこは、通子ちゃんに感謝してください」
根津の言葉に対し、『干渉』が声音に乗せたのは、それに酷似すらした畏怖の色。
「
時間と肉体、両方に余裕が無かったが故か、はたまた流石の巨悪も
死柄木と共に決戦場から逃れたニア・ハイエンド達を追う形で、『少女』はあたかも遅れて合流したかのように最後尾に付き、そのまま疑われることもなく潜入に成功していた。
そうして巨悪当人が自身の肉体と合流する僅かの隙を突き、『少女』もまた肉体と"個性"の再会を果たしていたのである。……構図は逆だったが。
監視体制の強化により、眼前にするまでそれを感知出来なかった彼女は、目を白黒させながらも『少女』と共に脱獄を果たしたのだった。
『……それでいて、戻った後はシレっとミルコ君と合流していたし……何とも肝の太い子なのさ』
「……あれを見ると、やっぱり私は記憶を僅か継いだだけの"個性"なんだと実感するわよ……」
今頃はA組ヒーロー科の中で無邪気な十歳児をしているだろう『少女』を思い浮かべて、彼女は薄く苦笑いを浮かべる。
端末越しにそれを感じた根津も、乾いたHAHAHA……の一声でそれに応えた。
『―――さて、時間的にそろそろ目的地に着く頃じゃないのかな?』
「……本当にどんな頭脳をしているんですか、あなたは」
『そうだねえ、私も気になるよ! 私を私足らしめているのはこのネズミの小さな脳味噌なのか、はたまた"個性"『ハイスペック』君なのか! 君の時間が取れれば確かめてみたいところだね!』
「……まあ、私は、構いませんけど」
反応し辛い返答に目頭を押さえつつ、『干渉』は眼前に佇む
彼女にとっては馴染み深い、そして馴染みたいとはただの一度も思わなかった
『……しかし、頼んだ身で言うのもなんだが、本当に可能なのかい? 警備室にて囚われた当人の生体認証による停止作業を行わない限り、入る事も出る事も不可能だと聞いているのさ』
「ああ……それなら問題無いわ。何せ、前例があるもの」
『……前例?』
彼方で首を傾げた根津へと、彼女―――"個性"『干渉』は静かに言い放つ。
「おかあ……母が父を
『増力』(+N)+『反射』(×M :: -1 <= M < 0)=『干渉』
【加速】:+N
【減速】:+N × M(-1 = M)
【反射】:×M(-1 <= M < 0)
※イメージです。
具体的には原作333話に一コマだけ出演していますね。
今話およびC4-12話は急なプロット修正により生まれた回でした。
原作において当人曰く何のエビデンスもない勘によって超々大規模改装をやれちゃう根津校長は辻褄合わせに便利過ぎるのです。
そして修正のしわ寄せを受けるAFOさん。微妙に間抜けになっちゃいました。すまぬぇ……
でも流石に全個体を把握してるとは思えないんよ。特に(ニア)ハイエンド達は当人の投獄中に完成した(完成したとは言ってない)個体の筈ですし。
原作より生き延びた個体数が増えて一体の価値が相対的に下がったのも一因ということで。
またもう一つ本作での解釈としまして、
Q. 合宿でラグドールに『視』られた記憶が残ってるはずだし、タルタロス襲撃時に『干河歩』が獄中に居たことAFO側にバレてない?
A. 『サーチ』に100人までという制約があること、および原作343話のAFOの台詞からして病院跡より撤退する際に追い縋ったヒーローを記憶していたということなので、そのタイミングで多少の取捨選択があっただろうことが想定出来ます。
そうなると40人分の枠を埋める雄英1年生の情報など、緑谷くん以外は一人残しておけば十分と考えたとしてもおかしくはありません。
それなら内通者の記録を残すのでは? というのもありますが、原作青山くん一家が内通者バレした後で一度セントラル病院にて精密検査を受けていますし、短期間にしろ拘置所にも入れられていたようなので、彼の記録が残っていたならその辺りで違和感を与えた筈です。即ち残してあった記録は彼以外の誰かのものである可能性が高い。
その中でも隠密能力に優れた葉隠さんの記録を残していたというのが原作335話の描写である、ということで一つ。
原作では頑張る
秘密の共有、OFA制御と、積極的に彼に協力し、同じ景色を見ることが出来ている、という認識でいたところに蛇腔決戦及びその後の緑谷失踪です。
これで色々と情緒が爆発した結果が、本作の河原で決闘ルートでした。
原作でも頭に沸いた雑念への対処が己にグーパンだし、変なところで漢らしいんよね、この子。
この後、例の麗日さん見開きページです。止まらないヒロインの歩み。
本作では変化が無いのでカットしますが。