おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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 毎日更新って急にやめると思ったより精神に悪いですね。
 綺麗に締めた直後で難ですが、書いちゃったものは仕方ないので。


 本編中に無かった【面会】がもし行われていたらな妄想集。
 またの名を The 蛇足 and 没ネタ供養集。

 整合性さん? ifの世界じゃ彼は留守だ。



A-m あったかもしれない面会集

 

Case1:『イヤホンジャック』 at 林間合宿二日目夜(C3-10)頃

 

 

「───Hey! Listener's! ウチのライブに来てくれてマジ Thank you very much!!」

 

「……わぁ」

「おおう……ロッキンガール」

「ちょ、ま……待って!? ウチの『イヤホンジャック』こういう感じだったの!?」

 

 

 事の発端は就寝前の話題に出た、明日の夜に予定された肝試し。

 当日は"個性"に替わってもらうつもりだと漏らした言葉を、耳聡く『聞き』つけた耳郎との押し問答の末に急遽開かれた【面会】の場。

 そこで待っていたのは、白い机をお立ち台にして元気良く呼び掛け(コール)を放つ一人の幼女であった。

 

 メッシュで区切られた逆立つ髪に、大胆なアイラインで飾られた三白眼。

 スピーカーの付いた両耳から軽快な音楽を発し、キレのある踊りを披露しながら三人の訪問者(リスナー)を弾ける笑顔で迎え入れるは、耳郎響香の身に宿りし"個性"『イヤホンジャック』。

 

「Yeah! 会えて嬉しいよ、キョウカ! アユミ達も Thank you! も一つ感謝の Hug を!」

「わ、わぁ……ありがとう……」

「……耳郎さん。就寝前にこのテンションはキツイんだけど」

「イヤ、ウチに言われても!?」

 

 一同に順番に抱き着いていく『イヤホンジャック』に応対しつつ、『干渉』から小さく溢された呟きに同じく潜めた声で叫ぶ耳郎。

 当の幼女はそんなやり取りに気付く素振りもなく、再び机を舞台に喜びを奏で始めた。

 

「ま、まあ……こういう感じなら逆に頼みやすいし良かったじゃないですか」

「……ああ、確かに『無重力』さんみたいに耳郎さん似の幼女に出てこられてたら、あんな頼みはとても出来なかったわよね」

「う……そう言われたら確かに……え、えっと、『イヤホンジャック』?」

「What? 何か頼み事かい、キョウカ!」

 

 一度は想定外のノリとテンションに圧倒されていた一同だったが、元々の目的を思い出し、今もニコニコと踊る幼女へと事の次第を説明する。

 それなりに切羽詰まった耳郎の懇願をふむふむと聞いていた彼女は、やがてグッと握った拳から親指を元気良く天に立てた。

 

「───No problem! そんなのお安い御用さ!」

「よ、良かったぁ……ありがとう、『イヤホンジャック』!」

 

「You are welcome! それにしても本当に怖がりだなあ、キョウカは!」

 

 ほっと安堵の息を吐いた耳郎に、先にも増して明るい音楽を流し始める『イヤホンジャック』。

 そんなそれぞれの元に、また合わせるかのように宿主と"個性"の二人が歩み寄る。

 

 

「……あの、でも耳郎さん? わたし、一つ問題に気付いたんですけど……」

「……え、干河? 問題って?」

 

「いえその……まずわたし達みたいに『イヤホンジャック』さんに替わってもらうことが出来るかどうかもそうなんですけどね? 仮にそれが出来るとしても、わたしが耳郎さんに触れていないと間違いなく無理だと思うんです」

「…………え?」

 

「"個性"への意思の増幅は、相手に触れた上で同意が無いと駄目なので……肝試しがどういう形式になるか分からないですし……流石に一人ずつ行かされることは無いとは思いますけど───」

 

 

 

 

「…………あれ、この曲……確か子供用の教育番組で良く聞く曲のような…………あっ」

「…………」

 

「ね、ねえ、本当に大丈夫なのかしら、『イヤホンジャック』さん? さっきから()()()()()()()()()()()()()()()があなたの耳から無限ループしてるんだけど……」

「……キョウカの」

 

 

「キョウカの、頼みだから……! だ、大丈夫……こ、ここここ怖くなんかないんだから……ッ」

「ただの強がりだったの!? それならそうと……ちょっと、耳郎さ───」

 

「ア、ま、待って!? キョウカの役に立つ、立てるなら……お、オバケなんて……オバケなんてオバケなんてオバケなんてオバケなんて───」

「……気持ちは買ってあげたいけど、どう見ても限界じゃない? その献身、誰も幸せになれないような……ああ、分かった、分かったから───」

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ヤオモモ! お願いクジ交換して、ヤオモモぉ!?」

「え、ど、どうしたんですの、耳郎さん!?」

 

「あ、あれぇ……そんなに私とペアなの嫌だったの……?」

「……違う、違うのよ、葉隠さん。耳郎さんにも色々と事情があって、その……」

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

Case2:『ハイスペック』 at 本編終了後?

 

 

「───HAHAHA! 全く君のおかげで随分と苦労させられたよ、『ハイスペック』君?」

「hahaha! それなら実験用マウスの一生がお望みだったと言うのかい、『私』?」

 

「いやいやまさか! ()()()の百倍は謳歌させてもらったさ、泥濘に塗れた絢爛たる世界をね! 私に宿ったのが君であったこと、この小さな脳髄の奥から感謝しているよ!」

「いやいやこちらこそ! (ケージ)の外で『偉人』になってみせるなんて奇天烈な発想、この真っ白な腹の底をほじくり返したって"私"からは飛び出さなかったさ!」

 

 

(……ねえ、『干渉』? あの会話……)

(ええ……お互いに言葉の選び方が、何というか……)

 

 

「折角だから一つ聞いておきたいのさ! 宿ったのが私でなかったならば、やはり君はこの社会に仇なしたと思うかい?」

「おやおや、らしくもない無意味な仮定なのさ! 『私』に宿ったからこその"私"であり、"私"が宿ったからこその『私』なのだからね!」

 

「それもそうだね、HAHAHA! 私としたことが年甲斐も無く興奮してしまっているのさ!」

「それはお互い様さ、hahaha! "私"もこの奇矯な機会に平静ではいられそうにないのさ!」

 

 

(……仲が良い、のかなぁ……?)

(……うん、まあ、言い争いではないわよね。少なくとも)

 

 

「しかし疑問だね! この部屋に招かれた者は一部の例外を除き"個性"を使えないと聞いていたんだが……私の脳みそがネズミのソレに戻った気はしないのさ!」

「ああ、それなら簡単さ! "個性"と共に身体に顕れる『体質』というものがあるだろう?」

 

「成程! すると鶏が先か卵が先か……まあ、私はネズミなんだがね! HAHAHA───」

「違いないね! hahaha───」

 

 

(……会話の流れについていけないです)

(安心しなさい、歩。私もだから)

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

Case3:『OFA』二度目 at 救助訓練レース(C3-4)頃?

 

 

「───オール・フォー・ワン……?」

「"個性"を『奪い、与える』……ッ!?」

「……そう、なんだ。僕もついさっきオール……っ! 八木さんから、聞いて……」

 

 迫る期末テストの報せにクラス中が危機感を与えられたその日の放課後。

 思いつめた顔の緑谷に求められ、再び開かれた【面会】の場で()()情報は彼女達に語られた。

 

「…………」

「……まァ、仕方ねえよなあ。舞台だけ作って耳を塞いどいてくれは通らねぇ」

「……知らないままで居られたら、それが一番なんだけどね……」

 

 かつての和やかな気配が幻であったか如く、張り詰めた空気を纏う八対の瞳。

 使命感と罪悪感が入り混じった彼らの視線を浴びながら、二人の少女は対照的な反応を示した。

 

 青髪の少女は何かに思い当たるかのように、口を開きかけては戸惑い混じりに顔を伏せ。

 金髪の少女はその様子を横目に、口元を覆った手を白く震わせる。

 

「……その、それってもしかして……『叔父───っ?」

「え───」

 

 事が動いたのは、青髪の少女がさらに何事かを口にしようとした瞬間。

 目を剥く緑谷が見たのは、彼女の側頭部を押し倒す勢いで荒々しく掴む、金髪の少女の手。

 

「【減速】」

「っ、ぁ」

 

「【減速】、【減速】……【減速】!」

「どぉ……し、ぇ───?」

 

 もたらされたのは、糸の切れた人形の如くかくりと項垂れるクラスメイトの姿。

 突然の凶行に呆然とする緑谷を、その背後で固唾を呑み身構えた八人を前に、金髪の少女は僅かの沈黙の後で、ポツリと呟きを落とした。

 

「……今から、私が挙げていく特徴に心当たりがあればそう言って下さらない?」

「か、『干渉』さん? 何を───」

 

 問いかける緑谷の声を余所に、朴訥とした口調で彼女は話し出す。

 

 それは、()()()()の身体的特徴。

 髪の色、瞳の色、口調。

 そして───かつての彼女が目にした限りの()()

 

 

「な……っ!?」

「おい、そいつァ……!」

「……まさか、君は……!?」

 

 

 それは緑谷にとっては何も思い当たることなどない、謎でしかない情報。

 しかしその背後で、口々に動揺を漏らすは彼が並ならぬ敬意を抱くOFA歴代所有者達。

 

 何か……重大な何かが語られていると、彼が判断するには十分過ぎる光景。

 そしてそれは、この場で語り手に立った彼女にとっても同様であった。

 

 

「……"私"が『干河歩』へと『与えられた』のは、今より十一年の昔」

 

 

 言葉の意味を緑谷が理解したのは、おそらくこの場で一番最後。

 

 

「その恩を以て彼女の母、干河心美は……娘をAFOの手先として動かしている」

 

「『奪われた』持ち主は、おそらく疾うの昔にこの世には……」

 

「ああ、今確信したわ。……USJの(ヴィラン)襲撃、あれは歩が母親に送った授業予定が要因ね」

 

 

 口元にだけは笑みを作り、しかし瞳には絶望を湛えて、彼女は椅子の上に項垂れる。

 丁度、隣に佇む意思を封じられたもう一人の少女と、酷似した姿勢を作りながら。

 

 

「───ねえ、緑谷さん? 私は…………どうしたら、良いのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「───と、いう感じかしら? あの当時だと私もまだ碌な覚悟も出来ていないだろうし、どんな結論を出すかは私にもちょっと分からないわねぇ……」

 

「「…………」」

《…………》

 

 

「……ああ、でもこの時の私なら、まだ引き返す選択肢も……いえ、結局私が歩にしてきたことは変わらないし……いえ、それでも今とはもう少し違う未来があった可能性も……」

 

「「…………」」

《…………》

 

 

「あ…………ま、まぁ、少なくとも当時の緑谷さんやオールマイトが私達を巻き込む選択肢を取るはずが無いし、考えても仕方ないことよ。うん」

《そ、そうですね!》

「そ、そうやね!」

「そ、そうだね…………軽く振って良い話題じゃなかったなぁ……」

 





 本編中では計五回。その内訳は『無重力』、『OFA』、『黒影』、『無重力』、『AFO』。
 中々に盛大な独自設定を作っておいて、描写したオリキャラは『無重力』ちゃん唯一人。

 無暗にオリキャラを増やさないという狙い通りにまとめられたとはいえ、完結させた後になってちょっぴり勿体無かったかなー、という思いから生まれた蛇足集でした。

 しかしOFA二回目はルート分岐になり得るなぁ……
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