結城友奈は勇者である Re:Start 作:半熟マシマシゆで卵
頑張って完成させるのでよろしくお願いします。
誤字報告とか分かりにくいんだよボケ!!とか改善点とかどんどん下さい。
不思議な夢を見ている。
デジャブという奴だろうか、どこかで一度経験した気がする。
夢の中の世界はとにかく赤かった。
真っ赤な炎が辺り一面に広がってる世界で、空中には不思議な紋様が描かれた円盤が上空を覆いつくすかのように鎮座していた。
夢の中の俺は一本の剣を握って上空のそれを睨みつけていた。
しかし、その様子は一目見るだけで分かる程、痛々しく傷ついていた。
纏っている衣服はボロボロで左腕はあらぬ方向に折れ曲がり、腹部にはぽっかりと大きな穴が開いて、血が噴き出ている。
夢の中には、同じくらいの年のまったく知らな女の子が4人いた。
次の瞬間、近くの場所に光が集まって、巨大な花が出現した。
花の中心部には二人、ピンク色の髪と黒髪の女の子がいた。
黒髪の女の子はどこかで知り合ったような気がする、どこだろうか。
そしてピンク髪の子が空の円盤に向かって飛び上がった。
それと同時に円盤は彼女を消し去らんと極太の光線を放ち、衝突する。
星すら砕けそうなその光線を彼女は拳一つで受け止める。
そして、彼女の足元に8つの花が咲き、彼女の拳が円盤を貫かんとした瞬間····
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「きろ!――起きろ、零児!!」
「――っだぁ!!すまん銀、寝てた」
耳元で叫ぶ少女――三ノ輪銀の声で彼――上里零児は飛び跳ねるように目覚めた。
「で、状況は?」
「アイツは須美と園子が引き付けてる。あたしがお前を運んだんだ」
零児は未だに安定しない意識から、自らがバーテックスによって攻撃を受けたのだという事を思い出す
「ごめん、あたしをかばって····」
「気にするな、頭の打ちどころが悪かっただけだ。ほとんどコイツで逸らしたからな」
そう言って零児は銀に手に持ったひと振りの剣を見せる。
彼の体には傷一つついてない。
彼は衝撃を打ち逃した後に転倒してしまい、その時の衝撃で気を失っただけである。
それを銀が樹海の陰に運んでくれたのだろう。
「戻るぞ。須美と園子だけで足止めが出来るほどアイツは楽じゃない」
「ああ、そうだな」
そう言って二人は樹海の陰から跳躍して戦闘場所である大橋に向かって走り出した。
しばらくしない内に大橋が見えて来る。
そのすぐ近くでは彼らの敵である巨大なバーテックスとその周囲を飛び回りながら矢を放つ鷲尾須美とバーテックスの放つ水流を受け止めている乃木園子が居た。
「チッ!!あんのキン玉野郎め」
「きききキン玉ぁぁ?!ちょ、零児そうゆうのは!!」
突然の下ネタに銀は赤面する。
小学6年生という思春期入りかけの時期であることを考えると仕方ないかもしれないが―――
「いや、だってねぇ····」
二人は相対する敵、アクエリアス・バーテックスを見る。
最上部に目のようなものを付けた一本の白いひもを、ひっくり返した殻付きどんぐりに下向きに二本の角を生やしたものに通し、その側面下部に大きな水球を二つぶら下げている。
その様相はまさしくアレである。
「合流するついでにあの玉袋をぶった切るぞ。俺は右を、銀は左側を頼むぞ」
「だーかーら!!あーもう分かった」
アクエリアス・バーテックスは水瓶座の名が示す通り、水流を使った攻撃を主とする。
水球から放たれる水流は工業用の超高圧ジェットさながらの勢いであり、さらに子供一人をすっぽりと覆うサイズだ。
先程、零児自身もその衝撃を覚えており、受け流したとは言え剣を持つ右腕は未だ少しに痺れている。
しかし、その協力な水流はあの水球からしか出ていない。
「てことは、それをぶっ壊せば何もできないだろ!!」
そう言って、零児と銀はアクエリアスの水球に向かってとびかかり、零児は剣を銀は双斧を降りかかるが――
「ヤベッ!?」「んなっ!?」
初めから分かっていたかのようにアクエリアスは二人の前方に向かって握り拳ほどの小さな水球を大量に展開する。
(樹海の陰からの完全な奇襲だったてのに!!)
バーテックスは総じて生物とは言い難い姿形をしている。
そのため目や口などは付いていない。
しかし、零児や園子に攻撃した時のように自分がどこにいて相手がどこにいるかという空間把握能力は持ち合わせているようだ。
さらに、アクエリアスの攻撃手段は水流であり、動き回る勇者に達に命中させるのは至難の業だ。
奇襲にも対応したことを考えると相当な知能を持っていると考えても良い。
二人の前方に展開した水球にも何かしらのギミックが存在するのだろう。
「なら、それごと!!」 「ぶった切る!!」
二人はならばと水球を両断しにかかる。
それぞれの獲物が水球にぶつかろうとした瞬間。
「二人とも、ダメ!!」
二人の耳に須美の甲高い声が入った。
零児はなんとか剣を振るのを止めれたが、銀は獲物が双斧である以上勢いをつける必要があり、彼女の双斧は水球を真っ二つにしてしまった。
「あっづぅぅ~!?」
銀は水球から飛び出してきた熱湯を左手に被ってしまった。
何とか他の部分は双斧を盾にしたようだが、それを持っていた手までは防げなかったのだろう。
「銀!!大丈夫か!!」
「銀ちゃん!」
「ミノさん!!」
思わず銀に駆け寄る三人。
「あぁくそ!あれ全部熱湯なのかよ」
「そうね。矢で落とした時湯気が出てたからね」
あのまま進んでいたら全身火傷コースだったことを実感し震える零児と銀。
「大丈夫?ミノさん」
「大丈夫だよ。料理で油が跳ねたときもこんなもんだ」
絶対に違うというツッコミを喉元に留める三人。
だが、銀が大したことないというのなら大丈夫だろうと結論付けて無理だけはするなと言い聞かせた。
「にしても、どうするかなコレ」
現在三人は樹海の陰に隠れている。
アクエリアスは今は進行を止め先程展開した水球を回収しているので作戦会議を開く余裕ができた。
「多分、あの水流は二本しか出せないと思うよ~」
「なるほど、細いのをたくさん打つってのは出来ないのか。後は何かあるか?」
「水は無限に出る訳じゃないと思うわ。さっきの水玉の時、左右の袋が縮んでいたもの。」
零児と銀が居ない間アクエリアスを引き付けていた園子と須美の言う事だけあってかなり説得力がある。
「おーけー。それだけ分かれば十分だ。他にも所見殺しがあるかもしれんが次で決めるぞ」
「よっしゃぁ、気合は十分!行くぞみんな」
「まったく、無茶だけはしないでね銀」
「よ~し。それじゃさっさと終わらせて打ち上げだ~」
各々がそう言って闘志を燃やす。
そして零児は自らの作戦を三人に伝えた。
「じゃ、突っ込むから須美。援護よろしくー」
「分かったわ。気を付けてね銀ちゃん」
銀が双斧に炎をまとわせ突撃する。
無論、アクエリアスがそれを見逃すはずがなく、右側の水袋から彼女に向かって水流を放つ。
小学生程度ならすっぽり覆えるほどの太さとそれに見合った威力を持つ水流を彼女は双斧に角度をつけて縦のように交差させて受け流す。
玲児が先程、剣でやったことを見よう見まねで再現したのだ。
彼女の体躯よりも一回り大きな双斧は思惑通り、水流を防ぎ切った。
曰く、剣で出来るならこれでも出来るとのことだが、人の技を一度見ただけで再現する彼女の戦闘センスはかなりのものだ。
ゆっくりとだが着実にアクエリアスに接近する銀。
そしてアクエリアスの意識が完全に銀に向いた瞬間、紫色の極大な矢がアクエリアスの右側の水袋を打ち抜いた。
「ナーイス、須美」
そして銀は双斧に炎をまとわして残った左側の水袋の破壊にかかる。
するとアクエリアスは先程と同じように小さな水球を展開して彼女の行く手を阻もうとする。
水球の展開はやはりかなりの水量がいるのだろうか、片方のみとなった水袋は四分の一ほどに小さくなっている。
そして銀は今水球の展開を確認した瞬間に体を捻りそのまま落下することでそれをかわす。
「もらったぁ!」
合わせるように零児と園子が水球の展開されてない方から斬りかかり、須美も最大威力の矢を再び放った。
二方向からの同時攻撃。アクエリアスに残された水量では迎撃は不可能であろう。
(獲った!!)
そこにいる誰しもがそう思った。
しかし、アクエリアスは零児と園子に対して水流を発射、須美の矢に対しては展開した水球を矢の射線上に配置し盾にして水袋を守った。
「うおっと!」
咄嗟に園子が槍の穂先を傘状に展開し水流を受け止めた。
「ぬぬ~。やっぱりこれ重いよ~」
「チィ!!支えてやるから我慢してくれッ!」
「む~、終わったらご褒美をしょも~する!」
「分かった分かった。サンチョでもなんでも一つだけ叶えてやるから!!」
「いよ~し!やるきがでてきたよ~、い~よいしょ~!!」
園子は渾身の力で水流を逸らしにかかる。
零児も剣を鞘に収め彼女の槍を一緒掴み踏ん張る。
「園子、合図で槍を少し上に向けてくれ。一気に奴の懐に入る!
須美!もう一発でかいの行けるか!?」
「もちろん。いつでも行けるわ!」
「おーけー、3,2,1,で突っ込む」
「ほいほ~い。じゃあいくよ~」
「「3,2,1,今!!」」
合図と同時に零児が目いっぱい身を屈めて走り出した。
「これでっ!終わりよ!!」
須美がもう一度フルパワーの矢を放った。
放たれた矢は零児の頭上を飛び越えた一閃がアクエリアスに迫る。
園子にはなった水流でアクエリアスの水袋は六分の一程度の大きさまでに縮んでしまっている。
さらに、一度目の須美の矢を防ぐために展開していた水球は消費している。
そのためこの矢を阻むものは存在しなかった。
ならばとアクエリアスは中心部の体そのものを盾として須美の矢を受けた。
アクエリアスの体の三分の一程が吹き飛ばされたがそうしない内に再生が始まる。
先程、須美が打ち抜いた水袋が未だに再生していないのをみるに水袋はあまり替えが効かないのであろう。
水袋がアクエリアス唯一の攻撃手段である以上中心部を盾にするというのは確かに合理的だが、それに一切の躊躇がないことからやはりバーテックスは既存の生物とは大きく違うことが伺える。
「それなら俺がッ!!」
元々あの矢は本命ではない。
バーテックスを相手にするのならば決して手を緩めず反撃の隙を与えずに撃破すべし。
300年間の人類とバーテックスの戦いで数多くの勇者を輩出してきた上里家・乃木家が編み出した戦い方の基礎中の基礎だ。
それら全てを零児は脳裏に叩き込んでいる。
故にこれからアクエリアスのとる行動も全部読んでいる。
アクエリアアスは零児に向けてなけなしの水を使い水球を展開する。
それが悪手とも知らずに。
そして彼はにっこりと笑い――
「やれ、銀」
「とぉりゃぁっ!!」
樹海の陰に潜んでいた銀がアクエリアスに向けて斬りかかった。
アクエリアスは零児に向けて展開した水球で殆どの水を使い果たしている。
後は、攻撃手段を持たない体の中心部を叩けば神樹様の『鎮花の儀』で追い払うことができる。
銀は落下の勢いと双斧の重さを用いてアクエリアスを両断せんと飛び込んだ。
しかしアクエリアスはこの期に及んでも抵抗を止めない。
少しだけ残っている水袋を銀の行く手に移動させる。
完全に攻撃態勢に入っていた彼女は勢いを殺すことができず水袋に頭部を飲み込まれてしまった。
勇者たちの攻撃によって10メートルはあった水袋は今はせいぜい30センチ程度にまで小さくなっている。
だが、子供一人の頭部をとり込み窒息させることくらいは造作でもない。
「銀!!」
「銀ちゃん!!」
「ミノさん!!」
三人から悲痛な叫び声が上がる。
即座に救出しようと須美は弓を構えるが――
「んなっ!」
アクエリアスは須美の射線上に銀が被るように移動させる。
これでは下手に手を出すこともできない。
園子の槍や零児の剣、須美の弓はかなりの威力を持つ。
それこそ水袋を銀ごと消滅させるのは造作でもない。
だからこそ動けないのだ。
「園子!銀を引っ張り出す!手を貸してくれ!!」
「分かった!!」
しかし二人をアクエリアスはひらりと躱して銀に取りつかせない。
しかも、その間も須美の射線を警戒しているようだ。
打つ手がない。
初戦で仲間を失ってしまうのかという絶望が三人を襲った。
だが――
「ヘ?」
「え?」
「うっそ~!?」
飲んでいたのだ。
もう一度言う。銀はアクエリアスの水を飲んでいたのだ。
「んぐっ····んぐっ····んぐっ····ぷはぁっ!!」
そして銀は水をすべて飲み干した。
直径30センチの球の体積は4/3×3.14×15^3で約8000cm^3、一リットルが1000^3なので彼女はあの場面で8リットルの水を一気に飲み干したことになる。
勇者になると身体能力が向上するがこのようなところまで強化されるのかと呆れてしまう。
ちなみに水にも致死量が存在し大体7~8リットルがそうだと言われている。
勇者システムがなかったら彼女は水の過剰摂取で死亡していたことになる。
「勇者は、根性ぉぉぉぉぉ!!!」
雄たけびを上げてアクエリアスに吶喊する銀。
そしてこれまでの鬱憤を全て叩きつけるかのように渾身の一撃をアクエリアスに叩き込んだ。
今度こそ観念したのか、アクエリアスはゆっくりとその体を粒子にしながら消えていき、大橋の上を大量の花弁が包み込んだ。
そしてバーテックスが消えたため樹海化が解かれ勇者たち一行をまばゆい光が包み込んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「それじゃあ、初陣の勝利を称えて~」
「「「「かんぱ~い!!!」」」」
今現在、勇者部一行は大型ショッピングモールのイネスの中のフードコートにて祝勝会を開いていた。
内容はもちろんアクエリアスとの戦いに勝ったことである。
費用はもちろん大赦持ちである。
まぁ、小学生程度の散財なら痛くもかゆくもないだろう。
「いや~なかなか強敵でしたなぁ、え~とえ~とポカリスエットだっけ??」
「アクエリアスな、それは別のスポーツドリンクだ」
「そ~だったね、園子さんうっかりしてたよ~」
「しっかし、連携訓練少しだけだけどやっといてよかったね、あの時はもうだめかと思ったよ」
銀の言うあの時とは、アクエリアスの水に捕まった時の事だろう。
あの時の絶望感とその後の驚きは今も色あせていない。
「ねぇ、銀ちゃん。ところであの水どんな味だったの?」
「えっとな、最初はサイダーの味だったんだけどな、飲むにつれウーロン茶の味になってったな。
めちゃくちゃ不味かったぞ」
その時のことを思い出したのか顔をしかめる銀。
「あーあー、バーテックスの水を飲んだ銀は体が半分バーテックスになってしまいました。
おしまい、ちゃんちゃん」
「ちょぉ!やめてくれよ零児、縁起でもない!!」
割と洒落にならないことを言う零児。
だが検査では別に異常がなかったし大丈夫だろう。
「れー君だめだよ~、あんまりからかっちゃ」
「ははは、ごめんって銀。ちょっと俺も言い過ぎたよ。だからほっぺを膨らませないでくれ」
零児は銀の膨れた頬をムニュッと潰す。
二人が初めて会ったのは小学四年のころ、園子・零児・銀が勇者として顔合わせをした時だ。
その頃から何か波長があったのだろうか、かなり仲がいい。
このように互いに気軽に触れ合える程度には。
ちなみにその一年後に須美が新しく勇者として選ばれ四人体制となった。
なぜ須美が一年だけ遅れたのかというと彼女は巫女と勇者どちらの素質も持ち合わせており、そのため彼女の取り扱いを大赦側が決めあぐねていたのだ。
「む~~」
その二人の様子を少し面白くなさそうに見つめる園子。
彼女は零児はそれぞれ乃木家、上里家という肩書上かなり小さなころから家族ぐるみでの付き合いがある。
つまり、園子には自らの方が付き合いが長いのにという思いがある。
無論、彼女にとって銀も零児もともに大事な友人であるが、それは別としてという感覚だ。
恐らく、小学生らしいちょっとした独占欲のようなものだろう。あれだ。お気に入りの鉛筆を貸したくないというのと同じである。
「たくっ、園子もそんな顔するな。言ったろ、なんでも一つだけいう事聞いてやるって」
「本当!いいの!?」
「わっ!?そのっちの目がシイタケになったわ」
銀のほっぺをムニュムニュしながらそういう零児。
先程とは打って変わって嬉しそうな顔をする園子、彼女に尻尾でも生えてたら今頃ぶんぶんと揺れまくっているに違いあるまい。
しかし漫画でしかないようなシイタケ目ができる園子は一体何なのだろうか。
「それじゃああれ食べたい!!みんなで一緒に食べようよ!」
そう言って園子が指さしたのはフードコートに存在するジェラート屋。
なかなかおいしいと評判だが小学生には手が出しずらいものだ。
(というか、ジェラート一つでワンコイン500円とかうっそだろお前)
イネスマニアである銀が過去に数度、醬油ジェラートなるよくわからんものを食したことがあるらしい。
彼女曰く「めちゃくちゃ美味しかったぜ」とのことだが····
「そんなんでいいのか?そのくらいだったらどの道大赦の経費で落ちるけど?」
「ふふ~ん、わかってませんな。こういう時にみんなで食べるからいいんじゃないか」
まったく答えになっていない事を言いながら店に向かう園子。
ちなみに銀はジェラート屋の名前が出た時点で店に向かった。どれだけ楽しみにしていたのか。
「まぁそれくらいなら構ないけど。須美、お前も食べるだろ?行こうぜ」
「え、えぇ。分かったわ」
そう言ってジェラートを購入する一行。
味は零児がラムネサイダー味、園子がウーロンソーダ―味、銀はいつも通りの醤油味で須美が抹茶味である。
なんたることであろうか、抹茶を選んだ須美以外なかなかのゲテモノを選んでいる。
「····なんでみんなそんなよく分からないやつを選んだのかしら····?」
「いやだってまともな味なかっただろあそこ」
引き攣った顔で問う須美だが、これも仕方がないのである。
選択肢には他にも、から揚げマヨネーズ味、ただの水味、マグロ味などとまともな味がなかったのだ。
そしてましなものを各々が選んだ結果、こうなってしまったのだ。
悪いのはあんな頭のおか····奇抜な味を用意している店側であり決して彼らに非はない。
「ごめんね、ミノさん。わたし醤油味のジェラートとか何言ってるんだろうって思ってたけど撤回するね」
「ま、まぁいいけど、····ねぇ園子、何をもってその味をチョイスしたのか聞きたいんだけど」
園子が選んだウーロンソーダ―味、これはアクエリアス戦で銀が飲み干したそれと同じ味だ。
「いや~どんな味か気になってつい····」
「いいけど、たぶん不味いぞ、それ」
そして恐る恐る園子はジェラートを食べた。
「ん゛ん゛??」
「そ、園子?」
「――いしい、凄くおいしいよコレ!!」
目をシイタケにして歓声を上げる園子。どうやらお気に召したようだ。
「え~、ほんとにござるか~?」
訝し気に尋ねる零児。銀も信じられないという目で見ている。
「すっごく美味しいよ、ほられー君もミノさんも食べてみて、あーん」
「あむ···マジだわ、ウーロンの苦みとソーダの控えめな甘さがいい感じにまじりあっていい感じになってる」
「わっ、ほんとだ」
「ほらほら、わっしーも」
「え、えぇ···はむ····確かにおいしいわね」
意外な発見に驚く一行、もしかしたらゲテモノのようなほかの味も意外とおいしい可能性が微レ存??
「····ね~か、流石に」
バーテックスに立ち向かう勇気は在っても得体のしれないものを食す勇気はないようだ。
「いつも思うのだけれど、零児君って戦っている時と普段の時で結構違うのね。
何というか、纏ってる雰囲気というか」
確かに、零児はアクエリアス戦では基本的に戦闘の事ばかり考えているし、相応に鋭い雰囲気をまとう。
しかし、平常時は園子程ではないがなかなか自由な性格をしているし、割と人をからかったりする事が多い。
「まぁ、そういう表情というより仮面の被り方?みたいなのは大赦でやっていくためには大事だからって親父に教え込まれているからな。そこらへんはある程度メリハリをつけるようにしているんだ」
現在、四国をいや唯一残った人類を統治しているのは大赦であり、大赦という組織はかなり秘密主義な所がある。
零児は大赦のツートップたる上里の次期当主であり、それなりの教育を受けている。
様々な仮面を付け替えて素の顔を出さないようにするのは処世術の一つであり、様々な思惑が飛び交う大赦では必須の技能とも言えよう。
「もちろん、みんなと話すときが素の俺だぞ、信頼してるからな」
そんな彼が自らをさらしても良いと思える場所は三人のだれかひとりでも一緒に居る時か家族の前のみである。
「いや~明日になったら安芸先生にもお礼をいわないとね~」
安芸先生とは四人の担任の先生であり、四人の鍛錬の補佐をしてくれた大赦の神官の一人だ。
そして、園子と零児の家庭教師だったりする。
「そうね、安芸先生が連携の訓練の指導をしてくれなかったら負けてたかもしれなかったものね」
負けたかもしれない、というより十中八九負けていただろう。
それほどアクエリアス・バーテックスは強敵であった。
「そういえば零児と園子にバーテックスとの戦い方を教えたのも安芸先生なんだっけ?」
二人は勇者適性が確認された時点でバーテックスに対する知識を教え込まれている。
しかし300年分の交戦記録を整理し幼い二人に教えられるほどの知識を持っていたのは、当時対バーテックス戦における戦法を代々研究してきた安芸家の中で天才と称えられていた彼女しかいなかったのだ。
「そ~だよ~。12体全部のバーテックスの特徴と対処法を教えられたんだよ」
「けどバーテックスのもバーテックスで進化しているからな。
少なくとも今までの記録ではアクエリアスは熱湯の水球を展開しなかったし勇者をとり込んで窒息させようとはしなかったはずだからな」
改めて気を引き締めなければならない。
今日の戦闘を通して四人はそのことを明確に感じ取っていた。
「んじゃ、今日はこれでお開きにして帰って寝るか!!明日も学校だしな!」
「うへぇ~休みたいよ~」
「まったく、情けない子と言わないの。銀ちゃんも明日は遅刻しちゃだめよ?」
「うっ····ぜ、善処します」
そして彼らの初めてのお役目が終わった。
世界が続くか滅ぶのか。それは四人の小学生にかかっている。
はっきり言えることがある。
この世界は既に狂っている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「■■様、彼が動き出したようです」
「····そうか」
神樹の結界の外側。まるで太陽かの如く荒れ狂う炎の中には五人の人影があった。
到底人が存在できるとは思えない空間で、今世界の行く末を決める会議が開かれている。
「既に賽は降られたのだ。変更はない。
天照大御神らとの契約通り、我らは人類を滅ぼす。それだけだ」
「貴方様の仰せの通りに」
「「「仰せの通りに」」」
付き従う四人が集団の主たる女性に頭を垂れる。
「····待っていてくれ。あと少しで全部····」
そう呟く彼女の瞳はそこに映る炎にも負けないくらい紅かった。
次はほのぼの日常会です。
ところでタイトルのRe:Startってどういう意味なんだろうね?(すっとぼけ)