オレンジ・リベンジ   作:妖魔夜行@

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第十六話「1点目」

 今日のランク戦室はまだ始まる前だと言うのに異様な盛り上がりを見せていた。普段はあまり見かけないA級部隊の面々もチラホラと見えることから、かなり注目度の高いランク戦だと思われる。

 ランク戦、と言うよりは解説に呼ばれた二人の方に注目が行っているようだが。

 

「B級ランク戦第4戦夜の部。実況は二宮隊オペレーター、氷見がお送ります。解説にはB級5位東隊から東隊長に、B級3位王子隊から蔵内隊員にお越しいただいています。今日はよろしくお願いします」

「ああ。よろしく」

「よろしくお願いします」

 

 片や元A級1位部隊の隊長でありボーダー初の狙撃手である東春秋。片やボーダーでも数少ない、トリガーの仕様をほぼ完全に熟知している隊員、蔵内和記。

 どちらか片方だけでも激レア(SR)な解説だと言うのに、今回は両者共に揃っている。言うなれば超激レア(SSR)だ。盛り上がるのも頷ける。

 

「彗星のごとき速さで瞬く間にB級上位に駆け上がってきた李隊ですが、今回は初の上位戦。厳しい戦いになると予想されます」

「そうですね。各隊のエース対決が勝敗を分けそうです。香取隊も鈴鳴第一も少し形は違いますがそれぞれエースを中心に連携する戦い方なので、連携相手に虎龍隊員がどこまで食い下がるのかが重要になってくるのではないでしょうか」

 

 蔵内がいったん区切り、東が話を繋げる。

 

「鈴鳴と李隊には狙撃手がいますが香取隊にはいませんからね。この不利をMAP選択でどうカバーするのか見ものです」

「なるほど……そういえば、東隊長と李隊長は師弟関係だと聞いていますが、師匠としてなにか思うところなどはあったりするのでしょうか?」

 

 氷見の言葉に東は苦笑しながら答える。

 

「もうあいつも一人前ですからね。とっくに俺の手から離れていますよ。まあ一つ上げるとするならば、弟子(・・)に格好がつくような戦いをしてほしいですね」

「弟子に、ですか? 師匠ではなく?」

「一人前になっても俺にとってはいつまでも可愛い弟子なので。カッコつけるなら弟子に見せてあげなさい、というわけです」

「李さんにそんなこと言えるのは間違いなく東さんだけでしょうね」

 

 会場の隊員、恐らくそこそこ古参の者たちから小さく笑いが零れた。ひときわ大きな声で「ちげぇねぇや」と聞こえた気がするが、気のせいだろう。

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

「まったく……東さんには敵わないな。あとで諏訪はシバく」

 

 李隊の作戦室で笑ってない笑みを浮かべながら李は呟いた。ミカンの顔は引きつっていた。

 

「そ、そうだリンゴ。香取隊と鈴鳴第一の情報を確認しよう。な。ひなも一緒に、な?」

「ででですねしましょうしましょう!!」

「そそそそうだねお兄ちゃん! えとえっと、香取隊は隊長の香取さんが点を取り、若村さんと三浦さんがカバーをするのが基本的な戦法だね」

「香取先輩のワンマンチームって評価だったよな。結局香取先輩を落とせば機能しなくなる」

 

 香取は隊長だが作戦などを考えたりはしない。香取も状況に応じて動き方の指示を出したりはするが、あくまでも彼女はエース。点取り屋だ。大まかな作戦の流れを若村が組み立て、オペレーターの染井が細かい部分を補完するというのが香取隊だ。

 

「鈴鳴も似たような感じでしたよねー? エースの村上先輩を後ろから援護して点を取る、みたいな」

「うん。ひなちゃんの言う通り、来馬さんも別役さんも自分から点を取りに行くって動きはあまりないよ。チャンスがあれば、とか、あとは……えっと、ぎょう、じゃなくて、ごふ?」

「もしかして漁夫の利か?」

「あ! そうそれ! ギョフのリを狙って他の隊が争ってるところを村上さんと来馬さんが挟み撃ちをする形で攻撃してくるパターンがあります!」

 

 鈴鳴第一の村上は攻撃手ランキング4位の実力者だ。弧月と大盾にしたレイガストを扱う攻守バランスの取れた攻撃手で、彼の堅い防御と鋭い太刀筋にはミカンも苦戦するほどだ。そして村上の強みと言えば何と言ってもその副作用にある。

 『強化睡眠記憶』。人の脳は睡眠をとった時に記憶の定着と整理を行い、少しずつ自分の経験としていくのだが、村上の場合、それを1回の睡眠でほぼ完璧に学習することが出来る。一度見た動きであれば、次からは即座に対応出来るのが村上鋼という攻撃手の強みだ。

 

 その村上に他の隊のエースを抑えてもらっている間、来馬と別役は背後に回りこみ挟撃してくる動きが多いとリンゴは説明する。

 

「村上は虎龍、お前が抑えろ」

 

 平常時に戻った李が会話に混じり、ミカンに向かって話す。

 

「はい。元からそのつもりです」

「よし。今回のMAP次第だが、恐らく俺とひなは余り役に立てないと思う」

「え? バリバリ働きますよ!」

 

 むん!と胸を張るひなに対して李はため息をついて答える。

 

「今回は香取隊にMAPの選択権がある。香取隊は狙撃手がいないのに対して、俺たちや鈴鳴には狙撃手がいる。となれば普通なら『市街地D』か『工業地区』を選ぶだろうな」

「うえぇー!? あたしあのMAP嫌いなんですよー……」

「香取隊か選ばないことを祈っておけ」

「うう〜……どうか市街地AかBが選ばれますように〜……!」

 

 手のひらを擦り合わせて祈るひなだったがその思いも虚しく、無情にもMAPは『市街地D』が選ばれた。

 

「……残念、『市街地D』だ」

「うやぁーん!」

 

 『市街地D』はMAPとしては狭いが大きな建物が多く、他のMAPよりも屋内戦が起こりやすい。ひながここを苦手としているのは屋内戦になると狙撃の斜線が通らないからだろう。

 外で構えていてもモール中心で戦われれば狙撃を狙うことは出来ない。かといってモール内に入れば大量の遮蔽物があり、当てようとすると開けた場所に出てしまいあっという間に距離を詰められて落とされてしまう。ある程度熟達した狙撃手(スナイパー)でなければ対応しずらい厳しいMAPだろう。

 

「選ばれちゃったら仕方ないよひなちゃん。がんばろ?」

「むう〜。ししょー、トリガー構成あれに変えちゃダメですか?」

「ダメだ。あれはA級に上がる時のためのものだし、そもそもまだモノにしてないだろう」

「ちぇー……大人しくこの構成でがんばります」

「そうしてくれ。さて、お喋りもいいが、そろそろ切り替えるぞ」

 

 李に言われ、キリリと表情を引き締めるリンゴとひな。ミカンは既に切り替えている。

 

「初の上位戦だが変に気張らなくていい。いつも通りのパフォーマンスを発揮出来れば問題ない相手だ」

 

 三人の顔を見回して李はゆっくり口を開いた。

 

「今回も勝ちに行くぞ」

「「「はい!!!」」」

 

 ランク戦が始まる。

 

 

 

■□■□■□■

 

 

 

 転送され、辺りを見渡しながらバッグワームを纏う。どうやらミカンはフードコートのど真ん中に転送されたようだ。

 

「……外は暗い? それに雨も降ってる」

『恐らく狙撃手対策だろう。外からは撃たせないという思惑が見て分かる』

 

 ミカンとは逆に外に転送された李が通信を掛けて香取隊の狙いを話す。物陰に隠れながらミカンは指示を仰ぐ。

 

「どうしましょう」

『虎龍はこのまま隠密して鈴鳴と香取隊の誰かがぶつかり合ったところで奇襲をかけるんだ』

「了解」

『あたしはどうしたらいいですか? 今一階の洋服売り場にいるんですけど』

『MAPを映します』

 

 リンゴがMAP共有を行ってくれたので自身の位置と李、ひなの位置を確認する。フードコートは2階なのでこのまま吹き抜けを飛び降りればひなと合流出来そうだ。

 

『ひなは動かない方がいいな。身を潜めて戦闘が始まったら上階を目指せ』

『らじゃー! って、途中で見つかったらどうしましょう?』

『そうなったら何とか外まで引き付けてくれ。虎龍も厳しくなったら窓張りの場所まで引っ張って来い』

 

 ニヤリと笑いながら続けた。

 

『この程度の妨害で俺の狙撃を封じたと思っているのなら、大間違いだと言うことを教えてやる』

 

 通信の向こうで怖い笑みを浮かべているんだろうなぁと思いながら索敵していると、階段の踊り場から三浦が姿を表した。キョロキョロと辺りを見渡し、敵影が無いと判断したのだろう。そのまま階段を登って行った。

 

「香取隊の三浦先輩が見えました。恐らく香取先輩、若村先輩と合流しに向かっているんだと思います」

『分かった。虎龍はそのまま三浦を追え。奇襲して落とせそうなら落としていい』

「了解」

 

 フードコートから少し顔を覗かせて敵影が無いことを確認して三浦の後を追い始めた。

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

 ミカンに補足されていることを知らない三浦雄太はチームメイトに通信をして位置を共有していた。

 

「華。ヨーコちゃんとろっくんのとこまであとどれくらい?」

『階段を登って右側に進むと本屋があるからそこを集合場所にして。麓郎くんは少し遠いけど葉子はもう着くから』

 

 いつも冷静沈着な頼れるオペレーターの染井華が淡々と指示を出す。よし動くぞと、三浦が意気込んだ瞬間、チームメイトの若村が焦った様子で通信を繋げた。

 

『すまねぇ! 村上先輩に見つかった!!』

『はあ!? 何してんの!!』

 

 通信越しに聞こえる二人の言い合いに三浦は眉を八の字に困らせる。

 試合が始まってすぐだと言うのに香取の機嫌が悪くなっており、若村もピンチに陥っている状況だが染井は表情を変えず冷静に指示を出す。

 

『葉子、麓郎くん、言い合うのは後。雄太、葉子と合流したら葉子のグラスホッパーで吹き抜けを登って麓郎くんのカバーに向かって。麓郎くんはそれまで持ちこたえて』

『わ、分かった!』

 

 幸いにもこのMAPは銃手に有利な場所が多い。数分なら攻撃手の村上相手でも時間を稼ぐことは出来るだろう。

 

「ヨーコちゃん!」

「さっさと下行くわよ。たくっ、麓郎のやつ何速攻で見つかってんのよ」

「あはは、まあまあ……」

 

  三浦と合流してすぐに悪態をつく香取。いつものことなので苦笑しながら諌める。

 

「グラスホッパーで吹き抜け通って一気に行くから、踏み外すさないでよ」

「分かったよヨーコちゃん」

「それじゃ──雄太!!」

 

 三浦の背後から強襲を仕掛けてきたミカンに気づき、咄嗟にアステロイド拳銃(ハンドガン)の引き金を引いた。ミカンは弾丸をシールドで防いで距離を取った。

 

「こ、虎龍!? いつの間に!?」

「つけられたんでしょ。雄太、グラスホッパー出しとくからあんただけでも麓郎のとこ行って」

「え?」

「早く!」

「う、うん!」

 

 グラスホッパーを起動している間、香取はシールドもメインのスコーピオンも出すことが出来ない。サブのスコーピオンを一振りでミカンと相対するのは宜しくない状況だ。

 振るわれる弧月をスコーピオンで受け止めるが元々スコーピオンは受け太刀に向かないブレードだ。4、5回も防げばヒビが入ってしまう。

 

『着いたよヨーコちゃん!』

 

 三浦からの通信を聞き、メインのアステロイド拳銃を起動させる。そして鍔迫り合いをしているスコーピオンの形状を鈎のように変形させて弧月を噛ませて動きを止め、がら空きの腹部に向かって発砲した。

 

「これで──」

「グラスホッパー」

 

 弾丸をシールドで防御したミカンはグラスホッパーを香取の腹部に当てて吹き飛ばす。その際に弧月を手放し、新しく構成し直すのも忘れない。

 致命傷とまでは行かずとも少しは削れるかと思っていた攻撃を完全に防がれてしまい、香取のイラつきはさらに増していく。

 飛ばされた勢いのまま体を回転させて手すりに足をかけて体勢を直す。その間にミカンが弧月を納刀した状態で距離を詰めていた。

 

(は? 何してんのコイツ。再構成間に合ってないこと気づいてないの)

 

 納刀した状態の弧月ではスコーピオンの速度に間に合わないはずだ。つまり、香取はミカンが攻め急いだ、と判断した。雑に戦っても勝てる相手だと、そう判断されたのだろうと。

 

「舐めんじゃないわよ……!」

 

 両刀スコーピオンに切り替えて弧月を防ぎつつ首を掻き切ろうと考えた。そう考えていた。

 

 

 咄嗟に避けることが出来たのはこれまでランク戦で培ってきた経験と攻撃手特有の勘だったのだろう。

 

 気づけば香取の右腕は斬り飛ばされていた。

 

「な、嘘……!?」

 

 見えなかった。ミカンが弧月を振るう瞬間を捉えられなかった。B級上位部隊として様々な攻撃手と戦ってきた自分が、辛うじて避けることしか出来ない事実に動揺した。

 しかしその動揺が収まるのを待ってくれる相手(ミカン)では無い。流るように弧月を振るい怒涛の攻めを見せる。

 

「ぐっ、この!」

 

 残った左腕のスコーピオンで何とか防ごうとしたが、振るおうとした左腕は宙に舞い、香取の首は刃を受け入れることしか出来なかった。

 

『戦闘体活動限界、緊急脱出(ベイルアウト)

「……まさか初撃を防がれるとは。流石B級上位」

『一撃で決まるほど甘くはないだろう。香取はスコーピオンをマスタークラスまで収めているからな。むしろよく無傷で倒せたな』

「無傷ではないですね。最後にもぐら爪で足を抉られました」

 

 ミカンの右足の甲からはトリオンが煙となって零れている。最後の最後で香取は意地を見せた。そこも含めてミカンは流石と言ったのだ。香取がこの内容を聞いたら間違いなく切れ散らかすに違いないだろうが。

 

「香取先輩でこれなら村上先輩には完璧に対応されそうだな」

 

 個人ランク戦もしたことがない香取に反応されるということは、何度も斬りあっている村上相手には今までの居合はもう通じないとみていいだろう。

 

「リンゴ、他の隊はどうなってる?」

『若村隊員と三浦隊員が合流して村上隊員と交戦中だよ。来馬隊長と別役隊員の反応はないから合流しているのかバラバラに動いてるのかはわからないかな』

「了解。隊長、乱入してきてもいいですか?」

『そうだな……突っ込むなら村上の背後をとる形で入ってくれ。そのまま窓側に追い詰めるように動いてくれればあとは俺が撃つ』

『あたしは別役先輩と来馬隊長がどこから来るか警戒を続けますね!』

 

 二人の話を聞いてレーダーを確認する。いつの間に移動してたのか、ひなは今現在ミカンのいる2つ上の階に移動して下から上がる階段の入り口とエスカレータを見渡せる位置についていた。李も狙撃ポジションを変更しており、建物越しに若村と三浦の背後を取る形でイーグレットを構えている。

 

「分かりました。じゃあ、行って来ます」

 

 バッグワームを羽織って上の階を目指す。果たして上手くいくかどうか。

 

「あっ! 虎龍! 虎龍いましたよ来馬先輩!」

「まだ撃っちゃダメだよ太一。このまま鋼のところまで行ってもらって逆に挟み撃ちになるように動こう。それまで耐えてもらうことになるんだけど、大丈夫かな?」

『任せてください。押されてるふりをして少しづつ後退していきます』

 

 鈴鳴第一の反撃に気づくことは出来るのか。

 

 

 

■□■□■□■

 

 

 

 香取隊銃手である若村麓郎は焦っていた。

 開始3分で攻撃手ランキング4位という格上の相手である村上に見つかり自身の片腕を飛ばされ、隊長でありエースである香取が早々に落とされてしまい、現在合流した香取隊の攻撃手である三浦と共に村上と戦闘しているが、一向に落とせる気がしない今の状況に焦りを見せていた。

 

「クソッ、数じゃこっちが勝ってるつうのに……!」

 

 三浦が斬りかかり、防御して生まれた隙を若村が狙うのだが、村上はそれらを簡単に防いでいなしている。戦闘を開始してから5分が経つが、いまだに目立った手傷を負わせられずにいた。

 

(葉子を落とした虎龍がいつ来るかもわかんねえっていうのに……!)

 

 早く村上を落とさなければ、それともこれ以上トリオンを消費する前に一時撤退して態勢を立て直した方がいいのか。どちらを選べばいいのか、若村は決めあぐねていた。

 そんな若村の内心を見透かすように、オペレーターの染井から通信が入る。

 

『麓郎君、雄太、そろそろ虎龍君が奇襲を仕掛けてきてもおかしくないわ。このまま混戦になっても葉子がいないんじゃ勝ち目は薄いし、ここは一旦引きましょう』

『華さん……! 分かりました。雄太、次に攻撃したらすぐ戻ってくれ。そのタイミングで俺が村上先輩の足を止めるからそこでカメレオンを使おう』

『了解!』

 

 指示通りに攻撃を仕掛けて、離脱しようとした三浦を村上が追いかけてきた。

 

「(なんで今になって!?)くっそ!」

 

 照準を村上に合わせて三浦を援護しようとするが、村上は若村を一瞥すると(シールド)モードのレイガストを向けて一言発した。

 

「スラスター、起動(オン)

 

 弾丸を押し退けながら迫りくる大楯に頭の中がパニックになり避ける動作に移るのが遅れてしまった。

 

「がはっ!?」

「ろっくん!」

 

 胴体に大楯がぶつかり吹き抜けのあたりまで吹き飛ばされる。心配した三浦が健気に名前を呼びかけるが、目の前に村上がいるときにするべき行為ではない。村上の弧月は三浦の弧月を弾き、返す刀で斬り捨てた。

 

「うわあ!?」

「雄太! くそっ!」

 

 慌てて起き上がり、銃口を向けるが村上はいつの間にか再構成させていたレイガストで弾丸から身を守り、飛び退いた。先ほどとは打って変わって、攻めていたハズのこちらが一撃離脱をされる側になってしまった。

 三浦はかろうじて心臓部は躱していたらしく致命傷までには至らなかったようだ。しかし、右肩から先を斬り飛ばされたので、これ以上の交戦は厳しいだろう。

 

「ごめんろっくん……」

「いや、俺の方が……」

『反省会は後にして、逃げて』

 

 染井の言葉にハッとなり、急いで村上から距離を取る。勿論逃がすつもりがない村上は追いかけようとするが、背後からの殺気に気づき、追撃は中断せざるを得なくなった。

 

「虎龍か……」

 

 ミカンの登場により村上から脱出することが出来た若村と三浦はホッと息を吐き胸を撫でおろした。

 

『安心するのは早いわ。来馬隊の二人の奇襲と李隊の狙撃に気を付けて』

「は、はい」

「華、僕たちはどうすればいい?」

『そうね、とりあえず上階を目指して。うちが点を取るにはもう捨て身の奇襲しかないと思うから──』

 

 通信してこれからの作戦を聞きながら染井の指示通り上に続く階段を目指す。残りのトリオンが心配だが、バッグワームを羽織りレーダー上から姿を消した。

 

「あった。物陰に隠れてないか確認したら登ろう」

 

 階段を見つけ、敵部隊が潜んでないか確認する。

 

「……よし、いないな。じゃあ──」

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

 もう少しで取れた点を逃す羽目になってしまった。目の前にいるミカンを見据えつつ内心溜息をつく。予想以上に若村に粘られたため1点も取れずに逃げられてしまった自分の不甲斐なさに対してだ。

 

「あれ、香取隊の二人がいない。もしかして遅かったですか?」

「ああ。もう少し遅ければうちの隊に2点が入っていた」

「それはラッキー。それじゃあうちはこれで2点目ってことだ」

 

 そう言って薄く笑うミカンを見て珍しいな、と村上は感じた。挑発に対して挑戦的な笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「俺はそう簡単には落ちないぞ」

「いやあ、どうですかね」

 

 ミカンの言葉と同時に村上の背後から緊急脱出の光が飛んだ。

 

『香取隊の若村君が落とされた! 李さんの狙撃よ!』

 

 オペレーターから入る通信を聞き、合点がいった。

 

「なるほど……そういうことか」

「はい。そして、3点目です」

 

 笑みを引っ込めたミカンは弧月を抜刀した。

 

「違うな。1点目だ」

 

 にやりと笑い、弧月を構えた。




自分自身でQ&A

Q・ミカンは開発室によく足を運んでいるらしいけど、どれくらいの頻度で通ってるの?
A・週2〜3でした。ランク戦が始まってからは週1、多くても2になりました。

Q・ミカンは開発室で何してるの?
A・基本的に寺島や漣にトリオン、トリガー関係の専門的な話を聞いています。二人ともいない、もしくは相手が出来ない時は日を改めます。

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