ONE PIECE 『ドレスローザ奪還』RTA【完結】   作:九時誤字くじら

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私はドルシネア

むかしむかし、あるところに

とてもやさしいおうさまがいました

 

おうさまは3にんのこどもに『スカーレット』『ティン』『ヴィオラ』となまえをつけて、とてもたいせつにそだてていました

つぎのおうさまは、1ばんうえのスカーレットです

 

やさしいスカーレットならだいじょぶだろうと、おうさまはあんしんしていました

 

ですがあるひ、スカーレットはいいました

「わたしはあのひととけっこんしたい、ティンがおうさまになってちょうだい」

スカーレットはへいたいさんとけっこんしようとしましたが、くにはそれをゆるしません

スカーレットはこころをやんで、びょうきになってしんでしまいました

だから、つぎのおうさまは、2ばんめのティンです

 

ひとのこころをわかるティンならいいおうさまになると、おうさまはあんしんしていました

 

ですが、あるひのことです

 

わるいかいぞくがやってきて、たくさんのひとがころされてしまいました

おうさまはあやつられ、くにのみんなはおもちゃにされてしまいます

 

そのわるいかいぞくを、ティンはくにのそとからなかまをつれてきてやっつけてしまいました

 

さいごにかいぞくのボスのくびをかかえて、ティンはヴィオラのもとにもどってきました

かいぞくのちでからだをまっかにそめて、ティンはいいます

「わたしはひとごろしのけもの、ヴィオラがおうさまになってくれ」

ティンはかいぐんのおふねにのって、どこかにいってしまいました

 

だからさいごのおうさまは、すえっこのヴィオラです。

ヴィオラはやさしく、ひとのこころをわかるちからをもつ、とてもいいおうさまです

 

リクおうはヴィオラをおうさまにしました

 

おうさまになったヴィオラじょうおうのおさめるドレスローザで、くにのみんなはいつまでもしあわせにくらしました

 

おしまい

 

 

海軍、軍艦の中で。

私はせんべいをバリバリと頬張る筋骨隆々の兵士の前に腰掛けて、その姿をじっと観察していた。

 

「……ん?もしかしてせんべい好きか?」

 

「いや……そういうワケじゃないよ」

 

「じゃ、やらん」

 

本来、私のやったことを考えれば船の中で処刑されてもいいくらいではないだろうか。

そう考えてから、ふと一つ思い当たることがあった私は海兵にただ一つの要望を伝えることにした。

 

──犯罪で得たものは、確か全て没収されると聞いたけれど……

 

「ドレスローザは、処罰しないで」

 

「あー、いいよ

 

「……ありがとう」

 

船の外から海を見渡し、持ってきてしまった悪魔の実を船の中に捨てる。

当たりでもないものだとわかっている悪魔の実を、わざわざ食う気にはなれない。

 

当たりの悪魔の実も持ってはいるけれど、それはドフラミンゴファミリーからもらったものだ。

 

「……はぁ」

 

あの後の事は、国にいる間に少しだけ聞いた。

シュガーは逃げられずに投獄され、コロシアムで『不戦勝』していたが途中で破られて普通に勝っていたと判明したこと。

モネは妹の刑期を短くするために国内の戦力として働き、キュロスの部下となりながらも密かにコロシアムの解放を狙っていると。

 

グラディウスはモネを逃した後は裏社会に逃げ込み、こっそり私の命を狙っていると。

 

ベビー5とバッファローは私の事情を知り、この事件からは身を引くと言っていた。

恐らく、カタギとして更生する気なのだろうが……まぁ、若いのだからやり直す事はできるだろう。

 

裏切った相手のことを思い出しながら波に揺られていると、その背の高い建物ではアイマスクの男が待ち構えている。

 

──この男が、恐らく私を連行する人間なのだろう。

 

「……へぇ、アンタが……ティン・ドルドって奴か」

 

「……はい」

 

「おれはなんだ、アンタを……こう……アレだ……イヤダメだ、忘れた」

 

思わずずっこけてしまった。

この男、グダグダである。

 

「ここ、インペルダウンじゃないんですか?」

 

「ああ……ここは『マリンフォード』ってトコだ。アンタは呼び出しがかかったってワケ」

 

「海軍本部ですよね?」

 

「よく知ってんじゃないの……世間知らずの王子様って聞いてたが、流石にこのくらいは知ってたか」

 

特に縛られるでもなく、氷の道を歩いてゆく。

この先、どこにいくのかは少し気になった。

 

何か手続きでもあるのだろうか、悪人を牢に入れるのに手続きが要るというのも不思議な話である。

 

──いや、法が国民を守るなら、確かに必要なのかもしれないが。

 

そうだ、このまま牢屋にでも入ってしまおう。

手続きはよくわからないが、きっと彼に手伝って貰えばなんとかなる。

 

そう考えてドアを叩いて、そっと開く。

 

「そなたが……何故?」

 

「……む?初めて見る顔じゃのう」

 

「クハハハ……つまり、この間抜けズラがフラミンゴ野郎の後釜か?」

 

──そこにいたのは、海賊だった。

 

一人は、ハンコック。

一人は、魚人の大男。

そして最後に、私の抱える生首を見て笑い声を上げた鉤手の男だ。

 

奥に一人、海兵らしき男もいる。

いったい、そんな人数でなんの用だろうか。

 

「……インペルダウンに送るんじゃないんですか、私を」

 

「否。国家転覆を目論んだドンキホーテ・ドフラミンゴを″討伐″した功績により」

 

──ティン・ドルドを王下七武海に任命しようと。

 

そんな言葉を言う未来が見えて、それを言われたくなかった私は思わず机に鉛玉を打ち込んだ。

ドンキホーテ・ドフラミンゴの一件もあったのに、すぐ後釜だ。

 

「……ふざけんじゃねえよ」

 

「落ち着け……ひとまずここは怒りを飲み込むのじゃ、ドルシネア。これはそなたにも利益のある取引じゃ」

 

「ボア・ハンコック!……まずテメエ、罪もない商船を襲う『極悪人』じゃねえか!」

 

ブラックマーケットとの繋がりから、ボア・ハンコックの罪は知っている。

彼女は、商船すら襲う″海賊国家″の女帝。

それが認められているのが、まずおかしい筈だ。

 

「ジンベエ!……テメエはひとまず置いとくよ、フィッシャー・タイガーが凄い奴だってのは聞いてるからな!まぁ、よく王下七武海に乗ってくれたよ……お前がここにいる事で魚人の認知が進んだのは功績だからなぁ!悪いことをしてるのも見た事はねえや!」

 

「む……?魚人島に行ったのか……?」

 

「行ったよ……まぁ混乱してたねぇ、ホーディとかいうアホがオトヒメ王妃をぶっ殺そうとしてたよ!署名は焼かれたが……まぁまた集められるだろう、オトヒメ王妃はそんな人だ」

 

「……⁉︎ホーディがか⁉︎」

 

どうやら、知り合いだったらしい。

ひとまずその辺は置いておくとして、私が気になるのはこの男だ。

 

「クロコダイル……アンタ、野心抱えてやがるな?ドフラミンゴの野郎と似た『心の音』が聞こえる……!七武海の立場を使ってどっかの国取ろうとか考えてんだろ!……それとも何か?世界か⁉︎」

 

「クハハハ……見聞色の覇気か?だが、仮にそうだとして非加盟国乗っ取るだけなら罪にはならねェ筈だ……そもそも証拠がねェ、おれを裁く事はできねえ、違うか?Mr.ドンキホーテ……」

 

「非加盟国も″国″じゃねェか!国を乗っ取ってなんで罪にならねえ!……証拠も知らねえ、要らねえ!テメエはこの場で殺してやるよ!」

 

「はいはい、落ち着いてェ……」

 

銃を抜いてキレる私を止めるように、黄色いシャツの男が現れる。

サングラスをかけた体格のいい男は私に耳打ちするべく、周囲をチラチラと確認してから屈んできた。

 

「ドレスローザの一件だけどねェ……七武海になってくれないと、リク王さんの政権は、『一人の海賊』が『政府の人間』から暴力で取り返したものを『政府の人間』に受け渡した事になっちゃうよォ〜?」

 

「……それが何か?」

 

「ン〜、大問題だねェ……君が七武海に入ってくれれば、『政府の人間』から『政府の人間』が受け取った事になって、万事解決なんだけどねェ〜……」

 

たしかに、私は海賊から略奪行為もした。

政府からの許可なしでの航海もした。

 

たしかに、このままだとリク王の政権にもケチがついてしまうかもしれない。

 

「王下七武海の失態は、今回私が話した件で明らかになりました。撤廃されるかもしれませんが」

 

「よっぽどの事じゃない限り、″事後処罰″……前まで許してたけど後になってダメになったからダメ!って奴はされないよォ〜!たかが一国のクーデター、実はそこまで大した事じゃないからねェ〜……」

 

──私は、裁かれたかった。

 

本当は、牢屋の中で余生を過ごすつもりだった。

私は、王様に向いていないから。

ドフラミンゴを殺すために生まれてきたのだと思っていたし、それ以外に生きる理由も見つけられず。

 

老人になったらヴィオラの治めるドレスローザの話でも聴きながら、刑罰で死ぬつもりだったけど。

 

「わかりました……七武海はやりますけど、″ティン・ドルド″はやめてください。偉大な父の名前を、海賊の返り血で染めたくはない」

 

「ン〜、名前を変えるくらいなら構わないよォ〜?」

 

「じゃあ、私は……」

 

──人殺しの獣としての名前を、何か。

 

そう考えたけれど、やっぱり私は一つしか思いつかなかった。

家族を殺して、相棒を殺して、王を殺した男に相応しい名前を、私は既に持っていたから。

 

「……ドルシネア!」

 

捨てた名前を口にすると、私は笑顔で涙を流した。

 

王下七武海、″獣心″ドルシネア。

私は今、再びここに誕生した。

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