メイドのあくあとイチャイチャするご主人様 作:あくたんにオギャるユーレカ
ある日。朝食を食べ、父さんから開拓事業に関する勉学の本を渡され、自室で学習をしていると。
「ふんふんふーん♪おっそーじ、おっそーじ、楽しいなー♪隅から隅まで、ぴっかぴかー♪」
部屋の外から、楽しそうに歌を歌うあくあの声が聞こえてきた。
―あくあ、たのしそうだな。
笑顔で楽しく、一生懸命に仕事をしてる姿を想像し、微笑ましい気持ちになった。マリンさんが時折「あくたんは子供っぽくてかわいい」と言っているが、本当にその通りだと思う。
……僕が言うと家族全員から苦笑いをされるのは納得いかないけど。
「ふんふんふふーん……って、あれ?にゃーたん?あんたまた迷い込んできたの?ごめんね、今あたし仕事中だから、ちょっとそこどいてくれる?」
あくあの鼻歌が止まり、なにやら様子が変わった。
にゃーたん、ということは、この前迷い込んできた猫だろうか。
……しっかり勉強しておきたいところは読み終えたし、少し様子を見てみよう。
―あくあ、どうしたの?
「あ、テオ。この間来たにゃーたんが、テオの部屋の前で座ってて。ちょうどテオの部屋の掃除をしなきゃって時だからどうしようかと思って」
なるほど。やっぱりこの間の子か。
確かにあの猫は、扉を開けた途端本棚の上に登った前科がある。また以前のような事が起きるのではないかと心配しているのだろう。
―うーん……分かった。少し待ってて。
そう扉の前にいるあくあに声をかけ、棚の上に飾ってあるものを1つずつ降ろしていく。こうすれば、また棚の上に登ってしまっても心配はないだろう。
―あくあ。棚の上の物を退けたから、扉開けても大丈夫だよ。
重い物や、落として傷が付いて欲しくない物を降ろし、机の席に戻りながら話しかける。
「え?…ごめんね、テオ。勉強中なのにそんなことさせちゃって。ほらにゃーたん。ご主人様がお部屋に入っても大丈夫だよーって」
あくあがそういい、部屋の扉が開けられた途端。猫が飛び込んできた。
……僕の膝の上に。
「ちょ、にゃーたん、何してるの!?こら!ご主人様の膝の上から降りて!」
と焦りながら話しかけられるも、当人(当猫?)は素知らぬ顔をして。
何故か丸くなり、そのまま寝始めた。
「ええ、にゃーたん寝ちゃった……ど、どうしようテオ……」
まあ、外から迷い込んでいるのだし、結構汚れとかも付いているから、あくあはその事を気にしているのだろう。
けど、気持ちよさそうな顔をしているし、ここまで懐かれているのも悪い気はしないわけで。
―いいよ、大丈夫。また後で着替えの服を持ってきてもらえればいいから。それよりあくあは掃除の途中でしょ?こっちは気にせず仕事を進めてていいよ。
「う、うん……」
あくあは少し不安げな表情を浮かべながらも、踏み台に乗って掃除をし始める。途中何度かこちらを見てきたが、そんなに服に汚れが付くのが気になるのだろうか。
……それにしても、本当に気持ちよさそうに寝るな、この猫。試しに顎の下を撫でてみると、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
「……いいなぁ」
と、なにやらあくあが小声で言った。
―あくあ、何か言った?
「ひゃい!?な、なんでもないよ!あたし掃除終わったから着替え持ってくるね!」
……呼びかける間もなく部屋を飛び出して行ってしまった。一体どうしたんだろう。
「テオ、ちょっといいかしら?今度の会合の件で少し話があるのだけれど」
と、今度は姉さんの声が聞こえた。
ふと膝の上を見たが、僕は気にしなかったけど、もしかしたら姉さんは猫が嫌いだったりするだろうか。
「テオ、いないの?開けるわよ?」
と、考えていると姉さんが部屋に入ってきた。
「あら、いるじゃないテオ。返事くらいしてくれても、い、い……」
……姉さんが固まった。
―あ、あの、姉さん?この猫は突然来た訳ではなくて、僕から乗せたと言いますか……別に悪戯はしてないですからどうか……
自分でもよく分からないまま、何とか猫を庇おうとする。が……
「か……」
―か?
「かっこいい……!」
―なんて?
姉さんが発した言葉とは思わず、聞き返してしまった。
「テオ!なんですかそのポーズは!」
―いや、普通に座ってるだけですけど……
「椅子に座り、膝の上に眠っている猫を撫で、本を読む!それの何処が普通なんですか!なんて羨ましいっ……!」
どうしよう、姉さんが壊れた。
「ご主人様、お着替えをお持ちしまし……え、なにこの状況?」
「あくあさん、ちょうどいい所に!どう思いますか、テオのあのポーズ!」
「ええ!?お、お嬢様!?あの、落ち着いて……」
「これが落ち着いていられますかー!」
その後、騒ぎを聞きつけてきたマリンさんが姉さんを連れ出し、猫も窓から出ていったため、あくあから貰った服に着替え。
昼食を食べ終え、先程のおかしくなった姉さんをマリンさんと共に揶揄っていた。
「いやー、それにしてもお嬢様があんなに話を聞かずに暴走するなんて、そうそうないわよねー。いやー、なんか得した気分だわ」
―確かにそうですね。普段は落ち着いてるのに、お酒でも入ってるんじゃないかって思うくらい暴れましたね。
「もう、2人ともやめてください……仕方ないじゃないですか、ビビっと来てしまったんですから」
と、頬を膨らませて拗ねてしまった。
流石にやりすぎたかな、と思ったが、あくあが先程から一言も発していないことに気付く。
―あくあ、さっきから元気が無いけど、どうしたの?
「え?あ、いえ、大丈夫です。なんともないです」
そう返事をするが、少し悲しげな表情を浮かべている。
マリンさんと姉さんも話を聞いていたようで、あくあに声をかけた。
「あくたん、残りの掃除はわたしがやっておくから休憩しておいで」
「マリンの言う通りですよ。なんならテオと2人で話してきて構いませんよ」
「え?でも、あたしは別に……」
「いいからいいから。人の好意は受け取っとくものよ?」
「どうしても嫌だ、と言うなら、お嬢様命令として休憩させますけど?」
「そ、そこまでしていただかなくても!……わかりました、行ってきます」
そして、2人から目配せをされる。当然、されなくても行くつもりだ。
―じゃあ、僕の部屋に行こうか
「うん……」
そっと肩を抱き、食堂を後にする。
―それで、どうしたの?
「いや、本当に大丈夫だから。気にしないで。ね?」
そう否定されるが、何処と無くこの否定の仕方には覚えがある。あくあがこの反応をする時は、だいたい恥ずかしいのを知られたくない時だ。
―もしかして、猫に触りたかったとか?
「……ちが、わなくもないけど……そうじゃないの」
「あのね、テオ。……あたしのことも、撫でてくれる?」
ソファに隣同士で座り、ゆっくりとあくあの頭を撫でる。
「ふああ……気持ちいい……テオの手、落ち着く……」
―それにしても、撫でてほしいなんて言うから驚いたよ。どうして急に?
「うん……さっきにゃーたんが気持ちよさそうだったからいいなって……はふ……」
そう言いながら、ゆっくりと頭を僕の肩に置く。
―そんなにいい物なのかな?普通にしてるだけなんだけど……
「でも、テオだってあたしに撫でてもらったら嬉しいって思うでしょ?……あっ」
自分が何を言ったのか理解したのか、ボンっと顔を赤くする。
―うん、すっごく嬉しいよ。
「ちょ、そこは気を使って黙っててよ!すっごく恥ずかしいんだから!」
顔を真っ赤にしたまま、胸を叩いてくる。
―本当に嬉しいんだよ。こうしてあくあとのんびり話して、気兼ねなく恋人として過ごせるのが。
「テオ……うん、あたしもうれしいよ」
そうして頭を撫でていると、ふいにあくあが静かに目を閉じ、僕の肩にそっと手を置く。……これはもしかして、そういう事なんだろうか。
「ん……」
そうして、じっと待つあくあを見つめて、覚悟を決める。まつ毛が綺麗だな、顔が真っ赤だな、と思いながらあくあの肩に手を置き、顔を近付け。
僕らの距離が0になる直前、ギィ、と扉の音がした。
即座に距離を離し、扉の方を見ると、姉さんとマリンさんがニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「いやー、いいもの見せてもらいましたねぇ!ご主人様もあくたんもそんなになっちゃって!うっはぁ!甘酸っぺぇ!」
「甘いですねぇ、ものすごく。あ、こちらは気にせずどうぞ。むしろ続けてください」
と、好き放題言う2人。遅れて状況を理解したあくあが、肩を震わせて。
「ひにゃああああああああああ!!?」
遠くまで響き渡る悲鳴をあげた。
互いの手は、互いの肩に置かれたまま。
その後、あくあが2人に対して怒っていたが、2人はずっと笑顔のままだった。
猫は定期的にフランソワ家に入ってきます。フブキ姉さんは厨二入ってるのでこういうの見たらはしゃぐだろうなーと思って描きました。