ダンジョンに穢れ持ち種族が潜るのは間違っているのだろうか? 再演   作:どらむすいいよね

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再掲。書き直しましたので初投稿です


プロローグは突然に

「とっとと、くたばれぇぇ!」

『──私は、ワタシ……は……』

「貴様は神になり損ねた魔女の‘影’。そんな不届な輩に妖精王の冠は渡さん!」

 

 ざんばらと切り裂いた‘なり損ないの女神’を蹴飛ばし。その断末魔を聞き届けて儂は天を見上げ、仰ぐ。大崩壊から妖精郷を守るためとはいえ、流石に無茶がすぎたか……重い下向きの風に逆らって穴に飛ぶのはもはや不可能だろう。

 

「死に損ないのせいでトんだ目に遭わされるな……次元の狭間とは聞いてあったが。全く、儂の冒険もここまでとは」

 

 妖精郷に迷い込み、その謎を解き明かしたまではいいがこの最後は。まぁ、儂は超越者だしそうそう簡単に死んでやる気はないが。

 緩やかに落ちながら辺りを観察すると、極彩色の景色は夜空の星々が如き煌めき。儂が儂でなくなる感覚を気合いで乗り越えてはたと気がつけば空に放り投げられていた。

 

 ごうごうと肌を撫でる、抵抗の風。このままでは地に叩きつけられて‘ジ・エンド’。しかし、儂に落下死などあり得ない。何故ならば……

 

「ここがテラスティアかどうかはわからぬが……んっ──!」

 

 ばさり。背に生えた‘翼’が、開き羽ばたく。上昇気流に乗り、そよぐ空の冷たい風が頬を撫でる。

 

「飛べるならばよし。ドレイクでなかったら死んでおったな……うむ。さて、ここは見覚えがないな。守りの剣も感じられぬところを見るにやはり……テラスティアではない、か」

 

 儂の故郷ではない……つまりは次元そのものが違う世界の様で、やたらと高い塔の様な建造物が目に入った。

 

「未来のザルツ地方ということもなかろうな……霊峰の‘神の階’があんな人工物な訳もなし」

 

 はてと、儂は思案するも。どうやらあちらの建物の元には城下町の様に、そして城壁に囲まれている様にも映る。

 

「人の多い街に行く方が無難かの……やれやれ、面倒じゃなぁ」

 

 入れるかどうかは置いておいて、な。儂は地に降り立ち。まずは乾いていた喉を潤さんと水辺を探す。地に耳を近づけて、その音を感じ取り。

 辿って歩けば、やはり川を見つけた。

 顔を洗ってすっきりしたいし、喉も乾いた……‘四次元かばん’の中にある空っぽの水袋ほど役に立たないものはないのじゃよ。

 

 ☆

 

 彼女は川の近くに着地して水袋に水を汲もうと川の水面を見た。

 

 水面には空が映っており、その水質はまったくもって問題ないものと判断できた。

 

「‘ピフィリケーション’も必要なさそうじゃな。巻物(スクロール)を破かずに済むならばヨシ。しかし、相変わらず儂は別嬪じゃな……」

 

 革製の水袋をかばんから抜き取り汲みながら、水面に映る自身の顔を見て彼女は思わずそう零す。

 

 吸い込まれるような深みのある、黄金の瞳が収まる少し垂れ気味な目尻。 鼻梁はスッと通り、唇は鮮やかな薔薇色か。 気色の良い肌は瑞々しく、女性であれば誰もが羨むであろう肌質なのは一目瞭然か。

 

 汲んだばかりの水。喉の渇きも限界だった彼女は水を呷り、喉を鳴らしつつごきゅごきゅと飲み干した。行儀が悪いが、手で口元を拭い水袋にまた水を汲む。

 ふと思い出したかのように、パチャリと水をすくい上げて顔に当てた。

 

「ちべたっ! でも、スッキリするのぅ」

 

 冷たい水で顔を軽くすすぎ、持っていたタオルで顔を拭くと息をつく。

 

「‘ディヴァインスキン’も無事とならば問題なかろ。あとは……そうじゃなぁ……ダメだ、詠唱を思い出せぬ」

 

 真語魔法を唱えようにもその詠唱、真なる言語の意味を思い出せない……モヤかかる違和感が痛烈に襲いくるのはおそらく。

 

「この世界の法則。型に嵌められたか……‘神’ならば超えてやるが、世界の法則となると流石に太刀打ちできんな……神殺しの‘超越者’とはいえど」

 

 超越者……それは神になることが内定した、というよりもほぼ神の様な存在とも言うべき者達ある。彼女はテラスティア大陸随一の‘軽剣士’だった。この実力にもなると小さな神となら一人でも殴り合いができるクラスとも言える。

 

「テラスティアでなければ、大して意味もないのぅ……マテリアルカードとかあるのじゃろうか? まぁ、なければこれで作れば良いがな」

 

 むむむと難しいことを考えてもわからないと割り切って、水袋をカバンに仕舞いつつ、ベルトに固定している‘アルケミーキット’を撫でた彼女が再び飛ぼうと翼を広げようとした時に、ガサゴソと茂みが揺れる。

 

「む、誰じゃ!」

 

 しゅらんと、涼しい音と共に多機能ブラックベルトに鞘を佩かせた剣を抜く。 手になじむその蒼銀の剣身は陽の光を反射する。

 剣を構えながら、茂みに寄っていく。 無論、翼を折りたたんでフード付きに改造した野伏のドミネイターマントで角と翼をその内に隠すのは忘れない。

 

「ままままままま、待ってください! ごめんなさい!」

「……」

 

 剣を突きつけられて腰を抜かしたのか、立てなくなっている……そこにいたのは、白髪に赤目という、ウサギのような少年だった。

 

「どうやら人畜無害な少年に剣を向けてしまったようじゃの……すまぬ」

「え、え?」

 

 剣を鞘に収めて頭を下げる彼女に驚いてか、少年は慌てふためいた。

 

「こ、こちらこそごめんなさい! 脅かしてしまって……えっと……」

「うむ? ああ先に名乗れと、な? 淑女(レディ)に、先に名乗らせるのかの? お主は、ん?」

 

 少々いたずらごころが芽生えた彼女は、少年に少しだけ意地悪がしたくなったようで。

 

「いいいい、いえ! ごめんなさい! 僕はベル・クラネルです!」

「フフ、すまぬ。 少々イタズラが過ぎたのじゃ。 ベル・クラネル……うむ、あい分かった。 儂は──シルヴァリア・ルーカスじゃ。 ルーカスさんと呼ぶが良い。 それで良いか、クラネルの?」

 

 シャイな少年を弄んだ罪悪感か、すぐに謝罪して自らの名を呼ぶことを提案した。

 

「はい! 大丈夫です!」

 

 そして、彼女は。 自らの名をシルヴァリア・ルーカスと名乗った。イタズラの侘びにと自らの境遇(いいところのお嬢様で、お転婆が過ぎて家出中)と言う嘘をベルに付きつつ。

 その話を聞いたベルは軽く頬を引きつらせていたが、他愛のないことであるとシルヴァリアは無視した。

 

「……という具合だの。 で、オラリオとやらに向かう道すがらこの川で水袋に水を汲んでおったのじゃ」

「なるほど、そうだったんですか。 じゃあ、一緒に行きませんか? 」

「むー……きっちりと儂をエスコートはできるのかの? クラネルのは」

「……が、頑張ります!」

「お、おう。 ならば頼むのじゃ(一体その自信はどこから来るのじゃお主……とは言わないでおくかの)」

 

 内心、辛辣な評価を下しかける自身を御して、シルヴァリアは息巻くベルの導きを受けて街道を進むのであった。

 

 ☆

 

「ふむぅ……ファミリア探しも楽ではないのう」

 

 儂はベルを迎え入れてくれるファミリアを探し、歩き回っていた。 あの出会いから数日共に歩いてわかったことが有り、どうにもベルは放っておくことが出来ない……同情ではないが、そう感じておる訳じゃが。

 

「ベルよ。 お主、路銀は後いくらほど持っておる」

「えっとですね……あと3日程滞在できる金額かなぁって」

「切り詰めてそれかの。ううむ……」

 

 顳かみを揉み、思案する。 零細ファミリアとやらを探すしかないか。ちなみに、ガメル硬貨は使えぬが故に、紹介された冒険者ギルドにてガメル銀貨を換金してもらったら、そこそこな金額の‘ヴァリス’とやらになったのでベルを養うことは可能ではある。

 

「どうするかのう……」

「どこか、僕が入れるファミリアがあれば……」

「落ち込むでない、まぁなんとかなろうよ」

 

 項垂れるベルの背中をさすってやりながら、どうするかを考える。 儂はファミリアに入る気はない……いや、入れるのか、受け入れてくれるのかすら怪しいと思う。

 見た目こそ人ではあるが、魔物扱いする目をした奴に関しては殺さぬだけ感謝しろと思っておいたが。

 

「そこの君達! 悩み事ならボクが聞こう!」

 

 裏路地で少し休憩していた儂らにはその声が嫌に響いた。 透き通る愛らしい声と評するべきか。

 

「え」とベルが顔を上げる。 儂もチラリとその声の主を認識する。

 

 艶やかな黒い髪をツインテールに結っており、青みがかったその瞳。 若干丸みのある幼い顔立ちに低い身長……それに似つかわしくないその大質量のお胸様を持つ、男の願望を詰め込んだ様な愛らしい少女。 通称《ロリ巨乳》の人がいた。

 

「ボクはヘスティア。 君たちが良ければボクのところに、《ヘスティア・ファミリア》に来ないかい?」

「それは──願ってもない申し出だの。 いや、不遜な物言い失礼するのじゃ」

「シルヴァさん……!?」

「ヘスティア神よ……この異形でもそなたは、受け入れてくれるのかの……?」

「……だとしても、だ。 これは団員になってくれそうな人を探してるボクの都合でもあるし、ね」

 

 フードを外して‘白金の角’を現わに、ついでに翼も。 だが彼女はその異形を見ても「受け入れる」といった。

 

「ベルの。 ある意味、これはチャンスなのじゃ……ワシらを拾ってくださるというのであれば、迷わずその手を取るべきだの」

「シルヴァさんがそう言うなら……」

 

 とベルは言いながらヘスティアに向き直り、「ベル・クラネルです、ヘスティア様。 よろしくお願いします!」と物怖じせず言えていた。 うむ、よかったよかった。

 

 ☆

 

 神々はその異形を見て戸惑った。 濁りきった魂の色に。 穢れを内包しているその魂の色は曇天のごとくな銀色だった。 しかし、その魂を見て興味を持つ者もいたが、今は関係のないことなので割愛しよう。

 

 だが、どんな爆弾かもわからない彼女を自らの手元に置くのはどうなのか……と神々は興味はあるが好奇心よりもリスクが勝るその状況を良しとせず、受け入れることはできなかった。

 

 だが、ヘスティアは困りきっている彼女らを見て、本心からその手を差し伸べた。

 

「それは──願ってもない申し出だの。 いや、不遜な物言い失礼するのじゃ」

 

 そう言った女性を見ても彼女はもう止まらなかった。

 

 彼女の手で晒された白金の色をした角も、白銀の翼を見ても、ヘスティアは揺れなかった。 「まるでそれがどうした」と言わんばかりに。

 

「(誰も手を差し伸べないなんて間違ってる……! だったらボクが!)」

 

 その内心の決意を知ってか知らずか、彼女が連れていた少年が名乗る。 そして、彼女の名を聞いた

 

「儂はシルヴァリア・ルーカス……世話になるぞ、ヘスティア様」

 

 その日。 不敵に笑う龍のような少女をヘスティアは眷属に迎え入れた。

 

 これは後に‘銀龍姫(ジルバ・レーネ)’と呼ばれる龍の少女と、最速の英雄と女神が記し紡ぐ【眷属の物語(ファミリア・ミィス)

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