ダンジョンに穢れ持ち種族が潜るのは間違っているのだろうか? 再演   作:どらむすいいよね

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初めての一層

 バベルの薬品売り場でポーション等を買い。 準備した儂らは、始まりの道を抜けて上層。 1層目のダンジョンに足を踏み入れた。

 

「松明がいらぬのはどういうことかと思っておったが、こういうことだったのじゃな」

 

 魔剣の迷宮攻略(ダンジョン・アタック)は基本的に松明を常備する必要がある。 だが、この世界ではその常識は通用しないみたいじゃな。

 この先、自身の知識との擦り合わせが大事になりそうだが……ちなみに儂は暗視を持つため、暗闇でも楽々と見通せるがな。

 

「そうですね。まるで陽の光の下に居るみたいです」

「さて、ベルよ。 この先はゴブリンとコボルドというメジャー級な雑魚魔物の住処……しかし、気を抜くでないぞ?」

「は、はい!」

 

 ベルの返事を聞き、気を引き締めさせる。 と、ベルが茂み側に行くのを手を引いて止める。 いきなりで悪いかもしれぬが、ぎゅっと手を掴み握る。

 数瞬ほどビクッと強張るベル、なんだか顔が赤いような……? 

 

「茂み付近にはあまり近寄るでない。 頭は良くないが、待ち伏せが有効なのは奴らもよく知っておるだろう」

「──っ、なるほど。でもそれってこっちも利用できるわけですよね?」

 

 ベルの言い分もわかるが、ここは時間というものを気にすることにしようかのぉ。

 

「それもそうだが、おらぬ敵を相手に待ち伏せは滑稽じゃ。 ほれ、行くぞ」

 

 握っていた手を離すと、ベルは少し寂しそうな顔を。ぐ、仕方ない……また手を取り、先導してやることにした。

 

「全く、エスコートぐらいせんか」

「え、あ。ご、ごめんn「平時から、容易く謝るでないわ戯け」──は、はい」

「本当に悪いことをした時に、謝れば良い。 儂に悪いことなどしておらぬだろう、今のお主は」

 

 そうそう頭を下げるなと、ぴしゃりとベルに言い聞かせる。 謙虚すぎても、一周回れば卑屈になるから印象もあまり良くない。と、周囲を警戒、気配を感じたのだ。

 小声でベルに注意を促して軽く後悔した。

 

「ベルよ、武器を構えよ。 近くにおるぞ」

「は、はい!」

「戯け!? 大きな声を……あ」

 

 ベル、ここで痛恨のミスじゃなぁ。大きな声を出して返事したので……

 

「GOBUUU!!」

「グルゥオゥ!!」

「ガルルル!」

 

 ベルの声に気がついてやってきた、ゴブリンとコボルドが合計3体。

 

「やぁれ、不意打ちを教えようと思ったのに……まぁその機会はまだあるか」

「ご、ごめんなさい!」

「良い、許す。 寛大を心がけねばな」

 

 言いながら儂は腰に佩く魔剣、《號雷剣・彩雨(アヤメ)》を抜く。 さらに、もう片方の魔剣、《疾風剣・(アマツ)》も。

 

「起きよ、双牙天剣(アヤメアマツ)

 

 二振りの魔剣は、儂が主戦力として使う、ライフォス神より賜った魔剣だ。 10秒の間、神速の動きに応じてその切れ味を増す第三世代の神器。 使い手の移動能力に依存する剣であれど、儂ならば翼を拡げればその速度に追いつくものはおよそおらぬ。

 そして、二剣無双の条件が満たされたことにより……ステイタスに補正がかかる。 さらに翼を広げて、神速の翼が有効化される。

 さて、全力移動で戦場を駆け回ることができるので……肩慣らし程度だがこの雑魚どもを前座としようかのぉ。

 

「ベルよ、良く見ておくがいい。 技巧派の剣士(フェンサー)の剣舞を」

 

 そう、ベルに言うと儂はゴブリンとコボルドを狙って動く。

 翼を開き、羽ばたくと同時肉薄するが、その手前でつんのめ……しまった。

 

「まずはお前から……っととと?」

「な、シルヴァさん!?」

「キシャァァ!」

 

 つんのめってコケそうになり、直後にベルの悲鳴か。 しかしこれは……わざと隙を晒して、攻撃を誘う。 早まる知覚の世界で……コボルドの爪を掻い潜るように一気に加速して、攻撃の線からすり抜けつつ。

 

「グルォ!?」

「狙いが甘い。 10点くれてやるわ」

 

 ステップで一旦距離を取りつつの回避の直後に踏み込んで二閃。 アヤメアマツの二刀流で袈裟斬りに浅く斬って、のけぞらせながら、その次の一撃で頭を切り裂いて仕留めた。

 

 続いていくぞ……っと。 後ろから来ていたゴブリンの攻撃に対しては翼を一気に羽ばたかせて瞬間的に離脱。 そして、その横からきたコボルドの腕を切り飛ばし、次の一閃で首を刎ねた。 ……感覚的に回った(クリティカル)か。

 

「んー、軽い軽い。 軽すぎる」

 

 返り血をバックステップで避けて、ゴブリンに向き直るがゴブリンは後ずさる。 まぁ、アヤメアマツ……の切れ味は凄まじいからの。

 

「さぁて、首、置いていけ!」

「GOBUU!?」

 

 逃げ出したゴブリンの背中を飛翔して追う。 ジグザグにステップを刻んで、回り込み、蹴っ飛ばす。

 吹っ飛んだ先に瞬時に移動して剣を振る。 すると、くるりとまたもや回転。 ゴブリンの胴体と下半身が泣き別れる。

 

「ふん、こんなものか……」

「す、すごい……」

「ふふん、当然じゃ。 なにせ、ワシなのじゃからな!」

 

 超越者なのだ。ゴブリンやコボルド程度に遅れを取るわけがなかろう。

 

「さて、ベルよ。先に進むか」

「はい!」

 

 せめて魔法の試し撃ちもしたいなぁと考えてあると、近くに気配が。ベルは儂の倒したコボルドどもの魔晶石……いや、魔石を拾っておる。

 

「‘ディメンション・ソード’」

 

 呟くと、凄まじい魔力の塊が噴出。それは儂の剣の先に停滞する。

 

「ほぉ、こんな感じなのか。便利じゃなぁ」

「うわぁっ!? それ、魔法ですか!?」

「うむ。‘ディメンション・ソード’じゃ……あん?」

 

 またもや魔力が抜ける感覚。そして目の先には二本目の‘ディメンション・ソード’が。おい、二本もいらぬぞ!?

 

「速攻魔法の悪いところか、これは。まぁ良い、見ておれ」

 

 剣を構え、近くの樹の背後に隠れてこちらを窺っていたコボルドに‘ディメンション・ソード’を‘射出’する。イメージするだけで飛んでいったところを見ると、これは存分に使い易そうじゃな。

 

「ぎゅっぷぃ!?」

「うわぁっ!? なっ、樹が真っ二つになってますよシルヴァさん!?」

「見ればわかるわ。だが、そうじゃな……過剰な威力だのぉ」

 

 ズバン! とけたたましい音が上がり、ビクつくベルに苦笑い。その視線の奥では魔石ごと袈裟斬りにされたコボルドの上半身が血を散らしながらそのまま地に落ちて、塵となる。

 その奥でも樹が薙ぎ倒されておるな……なんじゃこの威力は。

 

「こ、この様に魔法は強力だがその威力も考慮して使わねばならんというわけじゃな」

「(む、無理やり講義に持って行ったぁ!?)」

「なんじゃ、ベルの。文句でも?」

「いえ! なんでもありません!!」

「ならば良い、うむ」

 

 樹を3本ほどぶった斬り、その効力を消失させた‘ディメンション・ソード’は霧散する。はて、この片っぽのはどうしたものか……む。

 

「そこ」

「GOBURUA!?」

「ぐぎゃっ」

 

 魔法を射出。そのまま近くにいたゴブリンを血煙にするだけに飽き足らず。その直線上にいたコボルドも上半身を吹き飛ばされ死滅する。

 ヨシ、これで持て余すことはないな。

 

「し、シルヴァさん? 魔石も消し飛ばしてますけど……」

「構わん。二束三文を気にしても仕方あるまい」

「そうですか……でも、もったいない様な……」

「……次は気をつけるとしようか。では、ベルよ。次はお主の番じゃ」

「はぁーい……って、へあっ!?」

「お前はただ見とるだけで良いのか? 安心せよ、ヤバくなれば助けてやろう。窮地になれば、な」

 

 ベルを矢面に立たせるべく、儂らは壁の方へと移動する。ダンジョンの壁から魔物は産まれる……その情報に間違いはなかった。

 倒したコボルド、ゴブリンが補充される様にウジャウジャと壁から出て来るのは……薄気味が悪いが。これが、この世界での摂理なのだろう。

 

「回避、逃げ回りながらでも良い。儂が矢面に立ってやるからとにかく攻撃を当てよ。背中にナイフを突き立てるだけでも良い」

「は、はいっ! くそっ、こうなったらやけだぁぁぁー!!」

 

 こうして、ベルが魔物を狩り。実戦慣れのきっかけを掴むまで、ヘトヘトになるまでダンジョンに潜った。とはいえ、数時間も潜ってはおらぬがな。

 儂自身も己の能力を把握できたし、最低限の手加減も覚えたのである程度格下の扱いにも慣れたのもイイ収穫じゃな。

 この世界で異質なレベル17。在野最高レベルが7と聞いているのでまぁ、うん。人類最強なのだろうな、儂は。

 故に、手加減をせねば容易く殺してしまうだろうと思い、早急にその感覚を掴む必要があったのだ。

 ゴブリンやコボルドという超格下相手に防御、素手で殴り殺さぬ様注意してデコピンやらで弾き飛ばす調整もなんとかできたな。

 まぁ、恩恵(ファルナ)を持たぬ者に手を挙げるわけにもいかんのは主様より聞き及んであるのでそうならぬよう、気をつけるより他ないだろうがの。

 

「そろそろ引き上げるぞ、ベルよ」

「はぁ……わ、わかり、ました。 はぁ……」

「それだけ動ければまだマシよ。もっと精進せねばな?」

 

 儂はそう揶揄ってやりながら、詠唱を開始する。

 

「『外界の理。 次元分かち、天に飛べ。 掴みし道、望むはかの故郷への道。 裂け、割さけ、斬さけ。 其は外界の理、一三位の法』──‘テレポート’」

 

 儂たちは、一層の奥深くから離脱するのであった。

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